ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する- 作:ザンザザン!
銀髪赤眼の少女に徹底的にシゴかれ、アンゼリカは二日間で座学とシミュレーションを卒業した。
実機に乗り込む直前。改めて格納庫でファイアイーターを見上げている。
複雑で洗練された装甲の人型機動兵器だ。一目で次元の違う存在なのだと、はっきりと理解させられる。
アンゼリカがこれから乗り込む機体は白く塗装してある。フェンリル艦長、赤髪ツインテのゼフィリスの機体を借りるのだ。
ファイアイーター、正式にはFFR-14A9は《袰月》で運用されているハイエンド・アロウヘッドの最新仕様だ。
数万隻の主力艦隊に対して圧勝することを最低性能とし、既知の最大脅威の一つ
ファイアイーターは開発者であるグリムナイア博士自身の手で、各ライダーに合わせたカスタマイズが施されている。
どれもこれもピーキーな中で予備機という性格の強いゼフィリス機はプレーンなセッティングで比較的扱いやすい。
そのため、今回の試乗機体として白羽の矢が立ったのだ。
座学で得た知識と予習を想い返してから、少女は意を決した。
(行こう)
床を蹴り、宙に舞い上がる。銀髪の首席士官候補が接近すると、ファイアイーターのコクピットが開く。
アンゼリカが着ているナノシェルスーツの信号に反応したのだ。
滑り込むようにコクピットに入り、腰を下ろす。シートの後ろには簡易的なコ・パイロットシートが追加してある。
そこに座するよう指名されたライダーがやってくる。
「悪い。待たせたな」
金髪碧眼の小柄な美少女が開けっ放しのコクピットに入ってきた。ミエリだ。
「今日はよろしくな」
「こちらこそ」
言いながらアンゼリカの頭上を通り過ぎる金髪碧眼オレ娘。装甲部分を除けば厚さ0.01mmのぴっちりスーツに包まれた、引き締まった肉体美。
主席の士官候補生は無言で少女を見上げて、腹筋などに強い眼差しを送った。
I字型の装甲板が覆う股間が眼前を過ぎた時、言葉にできない物凄い背徳感が全身に奔っていた。
「よっと」
ミエリは颯爽とコ・パイロットシートに体を押し込んだ。小柄で胸の薄い肉体なので狭い空間もへっちゃらだ。
しかし、フレームだけの簡易座席がお尻に食い込んでくる。快適とはいえない席だ。
「万が一の時はお願いします」
「アンゼリカに限ってそんなことは起こらないと思うがな」
ナノシェルスーツの背中をシートに接続させつつ、ミエリは豪快に笑った。百戦錬磨の英雄が付き添ってくれているのだ。実感すると勇気が沸いてきた。
フェンリルのブリッジから通信が入る。赤髪ツインテの美貌が視界に飛び込んだ時、アンゼリカは思わず胸を高鳴らせた。
「ファイアイーターのコクピットは快適かしら、アンゼリカ?」
「シートは体格に合っていて座り心地抜群です。それに良い香りも」
アンゼリカは言ってから、大胆な発言をしたことを自覚した。
「それは良かった。昨日の晩に時間をかけて手入れをした甲斐がありました」
上品に口元に手をやって微笑むゼフィリス。とても妖艶な仕草だった。
緊張にゼフィリスとの交流による興奮が加わり、スーツの下の素肌に汗がひどく滲んだ。
オルランド星系王国でもアロウライダーなどの兵士は、多少の無害な身体強化を受けている。
だが、その程度ではファイアイーターの操縦でかかる負担にとても耐えられない。
そのため、ナノシェルスーツのリソースは生命保護と耐G機能に最優先されていた。
代償として、スーツの老廃物処理は最低限だ。具体的にはトイレパック以外は最低レベルに落とされていた。
おまけに特例として
「それでは幸運を祈ります。アンゼリカ・フェルト候補生」
「はっ! ありがとうございます艦長――――アンゼリカ・フェルト、FFR-14A9ファイアイーター、発艦シーケンスに入ります!」
ミエリと一緒に完璧な敬礼をしてから、アンゼリカは出撃した。
覚悟していたが、ファイアイーターの加速度は凄まじい。デルタセイバーの飛行形態の十数倍に匹敵するのだから。
急激な接続でショック反応を起こさないよう、神経直結デバイスは段階的に深度を上げていく。
深くつながった。力が溢れる、電撃的な感覚がアンゼリカの全身を駆け巡った。
(私の体が機体そのものになっているみたい)
それはアンゼリカ自身が宿す力によって向上した、ファイアイーターの出力を伝えるものだった。
制御系と深く神経直結したことで、次元兵装がアンゼリカの異能を拡大・拡張して機体に反映させている。
機体の周囲に
(この"視える"感覚には少し慣れが必要ね)
ほんの少し意識を外界に向ければ、周辺宙域の全てが手に取るように分かる。
念じるだけでフェンリルに"機体コンディションは極めて良好"と短いメッセージを送信できた。
機械的な補助があるので普段の異能行使より疲労は遥かに少ない。それでも消耗はするため、ここで一端拡張知覚のテストを終える。
友軍信号が猛烈な加速で接近してきた。もう片方のカタパルトから射出された漆黒のファイアイーターがアンゼリカをリードする位置に出る。
灰音の美貌が通信ウィンドウに映る。
「感覚や速度の違いに上手く対応できている。流石は士官学校主席」
「貴女に懇切丁寧に仕込んでもらったおかげよ灰音教官」
「褒めても何も出ないぞ。けど、ありがとう」
前方を翔ける灰音に続いて戦闘エリアに侵入する。CG描画された小惑星帯がある。
「これより戦闘試験を行う。グッドラック」
旋回して飛び去る漆黒のファイアイーター。
アンゼリカは体を強張らせ、敵襲に備えた。攻撃を誘うべく機体を直進させる。
来る。アンゼリカは反射的に奇襲を避け、デルタセイバーから転用したマシンキャノンを発射していた。仮想上の航宙戦闘機の編隊が全機爆散。
「いい反応、それに正確な射撃だ」
後ろのシートで、ミエリが褒めてくれた。
「お褒めに預かり光栄です」
アンゼリカは丁寧な口調でかつての英雄に返事しながら、次の動きをした。
眩いレーザーがあちこちから殺到してくる。
異能を用いずとも、攻撃レーダーが全身を走査して狙いをつけてくるのを知覚できる。
「この程度の攻撃なら!」
青色の閃光による弾幕がフォースフィールドによって水のように弾かれる。
先ほどと同じようにアンゼリカは応戦した。命中率約92%という誇らしいスコアで小惑星に四脚で張り付いた自律砲台を撃破。
我知らず、主席士官候補の美少女は好戦的に笑っていた。
大推力のブースターが真空に吼え、ファイアイーターが空間を駆ける。小惑星帯に突っ込み、そこら中にいる敵性反応を蹴散らす。
ファイアイーターは完全にアンゼリカの意に従ってくれた。
(少し速度を落とそう)
アンゼリカはブレーキペダルを踏み込んだ。各部スラスターが噴射して、急減速。
実際には推力より慣性制御の効果のほうが遥かに大きい。理想的な速度ぴったりになる。
一定の速度域であれば、ファイアイーターの慣性制御は完璧だ。望み通りの機動が可能になる。
小惑星が密集した空間をすり抜けるように進み、ただちに急加速。多少開けたスペースを高速で抜けていく。
その背後では追いかけてきた敵機がこぞって小惑星に激突して散っていく。マニューバキルだけで撃墜数は三十機を超えた。
デルタセイバー以上に俊敏で、繊細な反応だ。
無数の小惑星はアンゼリカの動きの妨げにならず、一方で盾の役割を果たしてくれた。恐れるのはアロウヘッドだけだ。
バスターキャノンが小惑星を吹き飛ばし、ファイアイーターを狙ってきた。
「遅い!」
既にアンゼリカは射手に接近しており、銃剣で刺し貫いていた。
万全の電磁スクリーンに守られた装甲を紙のように突き破る。
さらに異能によって広がった知覚に従い、レーザーキャノンを発射。貫通した閃光が後方にいたアロウヘッドまでも狙撃した。
それが最後の敵機だった。
アンゼリカが息を整えていた時、通信が入った。
「第二フェーズを開始する」
オルランドの可変型アロウヘッド、デルタセイバーに乗った眼帯の女教官が宣言。散開した士官候補生達の機体も含めてアンゼリカは捕捉。
さらに視界に描画され、現出するのは3ダースの艦隊。デルタセイバー部隊のの後方。
《殲滅大戦》時代から改良され続けている定番の戦艦ドヴォルザーク級を中心とする艦隊。
薙ぎ払うように荷電粒子の弾幕を避けるのは簡単だった。ファイアイーターは小惑星帯を離脱して急上昇。
小惑星帯は消し飛んでいた。加速のGがきつくなってきたが、アンゼリカは手を緩めない。楽しいのだから。
(興奮してるな)
後ろではミエリが不測の事態に備え、主席少女の脳波とバイタルを注視していた。
艦隊の支援砲撃を受けながらデルタセイバー隊が散開する。隊長機に乗っているのはロザリア教官だ。
『行くぞ、その機体の性能を証明してみせろ!』
「了解!」
望むところです教官!と心の中で付け加えるアンゼリカだった。
ロザリア教官を含めたデルタセイバー、さらにドヴォルザーク級戦艦を中核とする3ダースの艦隊、それも本来の十倍の性能に強化したものを含めても、アンゼリカは圧倒的だった。
異能を解放したこともあり、敵の動きが手に取るようにわかる。一撃でファイアイーターを破壊する艦砲射撃の巨大な閃光も、砲撃タイミングを把握すれば問題にならない。
損傷は
十分にチャージしてからファイアイーターの主砲を放った。バスターキャノンの弾体があらゆる防御を貫通して敵戦艦に達して炸裂。二個艦隊が丸ごと消滅した。
残りの艦を沈めつつ学友達のデルタセイバーを叩き落した。
残ったのは大河と教官だけだ。それに散開した僅かな艦艇群。
「くぅぅぅっ!!」
急旋回による横Gに振り回されないよう体を座席にくっつけつつ、アンゼリカはバスターキャノンを避けた。
有利なポジションからの偏差射撃を仕掛けてきたのはロザリア機だ。そちらに視線を向けつつ、すぐさまマシンキャノンを掃射。
変形して高速で離脱するデルタセイバーは機体を横に傾けて砲撃から逃れる。ロザリア機を巻き込まないように残りの艦艇が援護射撃してきた。
「邪魔をしないで!」
銀髪を振り乱しながら、アンゼリカが叫び、背部ミサイルランチャーのハッチが開く。放たれたのはキネティック弾頭の高速ミサイルだ。
弾体の質量と高加速によって装甲を穿つミサイルは、艦艇の側面に食らいつき内部構造を射抜いていた。
(教官の狙いは読めている!)
回頭し、バスターキャノンを構えるもう一機のアロウヘッドを睨む。
「大河は……そこか!」
『もらったぜ!』
先に離脱させていた巡洋艦がミサイルと砲撃を全力で浴びせて、アンゼリカの目を眩ませようとした。
タイミングを合わせ、熱血少年大河がバスターキャノンで狙撃。
辛うじて躱したファイアイーターがバスターキャノンを発射。巡洋艦撃沈。レーザーキャノンで大河機の胴体を射抜く。
最後に残った教官の機体に追いつき、マシンキャノンを上から叩き込んだ。
『すっごい。これがファイアイーター』
『一体何がどうなっていたのか。目で追えなかったわ』
『なんで教官と大河はあれに着いていけるんですか』
口々に漏らす士官候補たち。最後のセリフは黒髪低身長メガネ女子、ヴァーシャのものだった。
激しい機動を繰り返したアンゼリカは額の汗を拭った。
まるで天使になったかのようだった。プラズマ噴射の翼を背負い、破滅の剣を携えた天使に。
「正直驚いたよ。ここまで乗りこなせるなんて」
後ろのシートに座ったミエリが言った。仮想の艦隊の残骸が消滅する。
『最後のフェーズだ。私と勝負。ハンデ付き』
次なる敵機がプラズマの蒼い軌跡を描いて旋回してくる。
敵は漆黒のファイアイーター。畏怖を与える、深紅のカメラアイがアンゼリカだけを見つめた。
『デルタセイバー隊は退避!』
『二人とも応援してるぜ!』
教官の指示と大河の声援。それに続いて仲間達が声を掛けてくれた。頷いてアンゼリカは答えた。
(灰音機は性能を制限している。それなら私にも勝ち目がある!)
強気に笑い、アンゼリカは漆黒の敵機へと挑む。しかし、それは思い上がりだった。灰音のファイアイーターは一方的にアンゼリカを叩きのめしたのだ。
「はっ反則過ぎる」
数分間のうちに繰り返した模擬戦で息も絶え絶えになり、銀髪の首席候補生が口にした。
ナノシェルスーツの下の裸体は激しい運動のために、大変な有り様になっている。
改めて灰音の、《袰月》のエースライダーの実力を思い知らされることになった。
「熱い」
疲れ過ぎてファイアイーターを動かすこともできず、漂わせている。
快適機能のリソースを割いていることもあり、下に熱が籠っている。
アンゼリカと後ろから声がかかる。重い体を傾けて振り向く。
「ナノシェルスーツは分割したり開いたりできる。頭で考えながらこうやってみろ、少しは楽になるはずだぜ」
ミエリがお手本を見せてくれた。金髪の美少女が胸元からナノシェルの被膜をなぞる。すると、裂け目が生じて白い素肌が露わになった。
少し恥ずかしいが、背に腹は代えられない。アンゼリカがスーツを開いた時、豊満な胸の谷間から熱気がむわりと広がり、顔を顰めた。
(確かに気持ちいい――――)
汗まみれの白い素肌を空調の効いたコクピットの空気に当てて冷却する。
リラックスの時間は不意に終わりを迎えた。
フェンリルから緊急入電が入ったのだ。
「非常事態につき、訓練を中止します!」
真剣な口調でゼフィリスは宣言する。そのまま、原因となった放送をアロウヘッドに共有する。
中継された映像には傲岸不遜を絵に描いたような、軍服姿の美男子が映っていた。
戦闘艦の広大な中央指揮所に立っている。背景には太陽をモチーフにした国旗。アンゼリカを筆頭にオルランドの少年少女達は息を飲んだ。
「皇太子ゴルドリヒ!」
アンゼリカがその名を口にする。金髪の美男子こそ、オルランド星系を脅かす帝国の軍を司る皇太子であった。
ただならぬ予感が銀髪の首席候補生の脳裏を過る。
ナノシェルスーツの前を閉じるのを忘れ、汗が煌めく蒸れた豊かな胸の谷間を晒したまま、画面を見つめる。
『親愛なるオルランド星系王国の諸君、ご機嫌よう。こちらはゾンネンキント帝国"純潔の薔薇艦隊"旗艦ナグルファル。総司令ゴルドリヒ・ド・ラ・ゾンネンキントだ』
ゴルドリヒ・ド・ラ・ゾンネンキントは容貌通りの尊大な態度で語り掛けてきた。皇太子の座乗艦は全長140kmの次元要塞艦"ナグルファル"。
《殲滅大戦》において人類連合統制派が用いた究極兵器の一つである。巨艦を中心に数十万隻の艦隊が陣形を組んでいた。
『我らは新たに発見された『事実』に基づく惑星サフィロスの返還と大罪人たる旧ノースフェルト王国第七王女アンゼリカ・ノースフェルトの引き渡しを求めて参上した』
アンゼリカはその傲慢な宣告に己の名を聴いた途端に硬直した。通信ウィンドウに映る仲間達の視線が矢にように突き刺さる。