ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する-   作:ザンザザン!

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オープン・コンバット

 

 ロングレンジクラスは全機出撃。上方から自動殺戮兵団(プラネット・マーダー)に高速で接近してる。

 ミエリとしても因縁深い敵だ。

 奴らは地球制圧のための一大攻勢が頓挫した原因であるだけでなく、ミエリ・ライオネルの最期の相手でもあったからだ。

 

 状況はゾンネンキント帝国艦隊による攻撃という、予想された脅威のシナリオから逸れている。

 《殲滅大戦》当時最も高度な次元技術を有していた統一派内の過激派、終末派によって建造された自動殺戮兵団(プラネット・マーダー)の戦闘能力は桁違いであり、自己進化を続けているため、それは現在も変わらない。

 

 数十万隻の艦隊と140km級の要塞艦とは比べ物にならないほど強力であり、人類の生存を決して許さないのだ。

 

(だが、こいつならば)

 

 操縦桿を強く握る。ファイアイーターは銀河最強のアロウヘッドと呼ぶ他にない究極の機動兵器だ。

 その性能は、銀河における最大級の脅威の一つであるマーダー艦隊を駆逐する戦闘力を念頭に設計されている。

 何よりも今のミエリには頼もしい戦友が一飛行隊分いるのだ。

 

 改めて状況を確認する。ミエリは守るべきものを見た。

 

 青く輝く、サファイアのように美しい惑星。オルランド星系外縁に位置する惑星サフィロスの前方には、オルランド軍の艦隊が集結していた。

 ゾンネンキント皇太子ゴルドリヒ自らが率いる純潔の薔薇なる艦隊との交戦の直前に起った、プラネット・マーダーの襲撃に動揺することなく陣形を組んでいた。

 

 アダム・フェルト提督の指揮のおかげだった。アンゼリカの義父である史上最年少の提督は紛れもなく有能な人物だ。

 彼のような者が《殲滅大戦》時にいてくれたらどんなに良かったかと、ミエリに心から思わせるほどだった。

 

 艦隊を機動兵器から防衛し、同時に大きな脅威となる艦や大型兵器を相手取るアロウヘッドの数は膨大だ。フェルト提督の座上艦である要塞艦や空母がワープ・ドライブで駆けつけて、サフィロス防衛のために集結している。

 

 その中には一機のファイアイーターと十六機の最新鋭可変機デルタセイバーの姿がある。

 

(今更帰れ、なんて言えないよな)

 

 オルランド艦隊に加わっている白いファイアイーターはゼフィリス機であり、アンゼリカに貸し出されている。

 そして、デルタセイバーに乗っているのはロザリア教官と士官候補たちだ。少年少女達にとって初の実戦だった。

 

 ゴルドリヒ・ド・ラ・ゾンネンキントによる一方的な宣告の後。フェンリルに帰還した士官候補生達には二つの選択肢があった。

 デルタセイバーごと本星に退避するか、あるいはサフィロスの防衛に加わるかだ。

 差し迫った有事であるゾンネンキント帝国の侵攻に備えて士官候補たちは鍛え上げられており、戦場に出る覚悟もあった。

 

 アロウヘッドには魂魄(イデアコード)を抽出して送信する救命プロトコルが組み込まれているため、肉体をクローン再生することが可能だ。

 だが、確実とは言い切れない。それでも、アンゼリカ達は実戦参加の道を選んだ。

 

 

 ミエリはここにきて彼らが心配になった。新たに現れた敵、プラネット・マーダーはゾンネンキントの艦隊などより遥かに強力だ。

 できれば後退させたいが、アンゼリカ達も迫る脅威が強大だからこそ引き下がれないだろう。

 なにより、機動力で圧倒してくるシャイターンから艦を守るにはデルタセイバーが必要だし、ファイアイーターの殲滅力は戦局を傾けるものだ。

 

 一人、悶々とする金髪碧眼のオレ娘。

 

 ファイアイーター戦隊を先導する金髪のお子様先生ゼラが通信を入れてきた。

 

『士官候補の子達が心配なようだね』

『新兵のことはどうしても気になるんだよ』

『だけど、ボクらに出来るのは敵の数を減らすことだけだよ、ミエリ君』

 

 確か、その通りだ。

 

『ああ、判ったよ先生』

 

 無駄な不安を抱くより、敵を片付けることに集中しよう。ミエリは気持ちを切り替え、視界に映る、人類絶対の敵だけを見据えた。

 バスターキャノンはチャージを終え、トリガーをホールドしてある。引き金から指を離せば、殲滅の光として解き放たれるのだ。

 

 白亜の巡洋艦フェンリルに追随する直掩小隊。彼女達は別ルートから攻撃を仕掛ける手筈になっていた。

 灰髪の不良JKラヴィが小隊長を務める黒青色のファイアイーター部隊は、フェンリルの速度に追いつくために大型ブースターを装着している。

 持ち込んだ兵装ユニットはオルランド側に提供し、別方向からの脅威への備えにしている。

 

 組み立てられたレールキャノンなどの殲滅兵装に必要なジェネレーター及び高次エネルギー制御のための演算ユニット、全てを同時に《袰月》から持ち込んであり運用に支障はない。

 

 半面、現在のフェンリルは本来の火力の30パーセントしか発揮できないが、問題はない。

 

『無様ですこと』

 

 慣れ親しんだ強烈な加速感を愉しみつつ、残忍なお嬢様風、紅黒がせせら笑う。

 サフィロスに向かって敗走中の純潔の薔薇艦隊の構成艦の姿があった。

 前衛として配置されていた、空母を含んだ小規模な艦艇群が戦闘能力の大半を喪失しながらもプラネット・マーダーの包囲を突破したのである。

 救難信号もしっかり出していた。侵略しようとした国に保護を求める、なんとも情けない話だ。

 

『大将は中々踏ん張ってるじゃねえか』

 

 言ったのはラヴィだ。マーダー艦隊本体の後方。分艦隊に包囲された要塞艦ナグルファルと艦隊の姿がある。

 次元兵装装備型の高性能艦が揃っており、おかげで耐え凌いでいる。

 

『残念だけど、時間の問題よ』

 

 冷たく言い放つピンク髪の女王様。

 メティスは突然滅茶苦茶な言い分でオルランドに押しかけてきたゾンネンキントの皇太子がCICで喚き散らす姿を想像した。

 この女王様も大概な傲岸不遜だが、あの手の輩が大嫌いな性分であった。

 

『さて、ロングレンジ戦隊の諸君。お仕事の時間だ! ゾンネンキント艦隊の動きは気になるが、ボクらの最初の目標はマーダーの本艦隊だ、それを忘れないでくれよ!』

 

 ゼラの最終確認に全員が了解と返答。

 逃走中の純潔の薔薇艦隊、プラネット・マーダー艦隊、ナグルファルはほぼ一直線上に位置していた。

 マーダーがナグルファルを囲んで一息に撃沈しないのは妙だ。だからゼラは警戒している。

 

 ロングレンジクラスは編隊を崩して散開。空間衝撃砲やホーミングレーザーによる迎撃を抜けていく。

 的確なポジションを取り、魅惑的なボディラインを縁取る、ナノシェルスーツ姿の戦乙女達は一斉にバスターキャノンを解き放った。

 

 それよりも先に殺到したフェンリルの弾幕に続き、黒曜石の如き殺戮艦隊が超高エネルギーに呑まれていく。

 

 

 CICにおける金髪の皇太子の醜態は概ねメティスが想像した通りだった。

 

「ええい何をしている! さっさとこのガラクタどもを墜とさぬか!」

 

 ナグルファル艦内、分厚い厚い装甲に守られたCICで金髪の皇太子は怒声を張り上げ続けてる。

 日頃心掛けている王者の余裕というものは消え失せていた。メッキが剥がれたような有様だった。

 

 ナグルファルを含め、フォースフィールドの展開が可能な次元兵装艦は空間衝撃砲に耐えながら、どうにか応戦している。

 恒星を粉砕するナグルファルの艦首砲は素早いプラネット・マーダー相手には無意味だが、140kmという巨大さ故に砲やミサイルは効力を発揮している。

 信じられないほどの加速で飛び回る無人艦に砲撃を当てて撃沈しているが、純潔の薔薇艦隊の被害のほうが遥かに大きい。

 

 四肢が異様に長い、不気味な機動兵器の群れに包囲されており、それらの攻撃が徐々にフォースフィールドを減衰させ穴を開けようとしていた。

 マーダー艦隊の主力機動兵器であるシャイターンがバスターキャノンを装備しておらず、対艦攻撃力が不足しているのは幸いであった。

 

 しかし、艦隊を防衛するためのアロウヘッドは翻弄されて禄に役目を果たさず、爆散している。

 

 ナグルファルのモニターの一つに、18mのアロウヘッドより二回りほど大きい、次元兵装搭載の人型機。

 重厚な騎士甲冑のような威厳ある機体が映った。

 ハウレスというコードネームを与えられているマーダー兵器は対機動兵器において無類の強さを誇り、ナグルファル直掩のアロウヘッド連隊を易々と斬り捨てていた。

 

(無能どもめが!)

 

 無様を晒すばかりの臣下にゴルドリヒを増々苛立ちを募らせた。

 此度の演習の開始前に自らに忠誠を誓う将兵に皇族にのみ許された不死を与えると約束していたが、この戦いで死んだ役立たずどもは不要だ。

 戦闘が終わり次第、処分する。

 

 純潔の薔薇艦隊に退却の選択肢はなかった。物理的にも政治的にもだ。

 この場を切り抜けたとしてもオルランド星系を征服せず逃げ帰ればゴルドリヒは失脚する。

 

 軍事的な才能から父たる皇帝の寵愛を受け、直属の大艦隊はおろか、決戦兵器ナグルファルさえ指揮下に収め、勢力拡大を強く推し進めるゴルドリヒであるが、永く皇帝の座に居座る老いぼれを排除することは当面の目標の一つだった。

 

 そのために皇帝の野心を煽り、此度の遠征を企てたのだから。

 

 自身の才覚とこの大艦隊であればサフィロスを足掛かりにオルランド星系を掌握することは容易なはずだった。

 全宇宙を統べる覇者となるこのゴルドリヒ・ド・ラ・ゾンネンキントに敗北の屈辱を与えたアダム・フェルトとその親族に報復し、不敬への贖いとする。そして、オルランド星系総督となり、軍備を拡大しつつゾンネンキント星系においても蜂起の準備を整える。

 ゆくゆくは遠方の星系や艦隊国家を征服して版図を伸ばし、イーグル・ステイツ、グズマ連邦といった、数によるコケ脅しの列強を従え地球を玉座とする。

 

 これまでの人生がそうであったのだから、全てが思いのままに運ぶとゴルドリヒは心から信じ切っていた。

 だから、プラネット・マーダーという理不尽の前に、皇太子の理性は決壊寸前になっていた。

 

 突如、マーダー艦隊の頭上から降り注いだ眩い光の嵐が無人兵器達を一息に消し飛ばした。

 それは、超高出力のバスターキャノンによる砲撃だった。

 

「おお、ヴァルキューレ……!」

 

 CICが騒然となり、二個中隊規模のアロウヘッドによる攻撃であると管制官が報告する中、ゴルドリヒはその映像に陶然となった。

 神に祝福されし、聖なるゾンネンキント帝国の唯一正当なる後継者たるこの我が身を救うべく、戦乙女が遣わされたのだ。

 

 歓喜に一人で沸き立つゴルドリヒの耳に報告は入らず、自軍の技術力を遥かに超えるアロウヘッドに畏怖する将兵らの姿は目に入らない。

 

「ふっ機械如きが我が覇道は阻めるもの――――」

 

 金髪の皇太子が尊大さのメッキを貼り直そうとした時、艦内に爆発を意味する揺れが起こり、レッドアラートが鳴った。

 

「フォースフィールドが一部破れ、敵機がナグルファル内部に侵入しました! 次元兵装タイプの大型機動兵器を含めた部隊です! 動力炉に向かっています! 駄目です阻止できません!」

 

 再び、ゴルドリヒは態度を豹変させ、怒鳴り散らした。

 

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