ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する-   作:ザンザザン!

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ロングレンジクラス

 

 白頭鷲主義連合(イーグル・ステイツ)とグズマ連邦による艦隊間抗争で繰り広げられた電子戦は両軍無人艦隊の暴走を招き、近辺を警戒航行していた《袰月》はとばっちりで無人艦隊から攻撃を受け、スクランブル発進した防衛戦隊がこれを一時間かけて撃退。というのが今回の戦闘の顛末だ。

 

 戦闘部隊の肉体喪失者はゼロであり、僅かな軽傷者が出ているのみ。艦隊史に誇れる見事な勝利だった。

 

 長距離打撃戦隊のフェンリルをはじめ、出撃していた艦艇の多くが《袰月》に帰投し、残りは哨戒や随伴、残骸の回収といった任務につく。

 《袰月》は200km超の船体を持つ巨大極まりない艦であり、母港としての機能を有する。

 

 未成年部隊であることからロングレンジクラスの綽名で呼ばれることが多い、長距離打撃戦隊の女子高生らは全員が異能者であり、一騎当千のエースライダーでもあった。

 

 艦内の更衣室でナノシェルスーツを脱いで、シャワーを浴びて、制服に着替える。戦闘後に授業が再開されるのだ。

 

 汗を洗い流し、支給された純白のショーツを穿き始めた時には戦闘の疲労は消えてなくなっており、自分の体だというのにミエリを驚かせた。

 

(これが《袰月》の兵士の体か。それに、艦隊丸ごといける馬鹿げた性能のアロウヘッド。個の質を徹底するのがここのやり方だな)

 

 艦長であり艦自身でもある《袰月》管制AIの分体、袰月コノハから与えられた知識と自身の感覚を元に、そう結論付けるミエリ。

 

 イーグル・ステイツとグズマ連邦は億単位の艦隊を有する大勢力であり、それを維持する能力を有している。一方で《袰月》艦隊はそれより遥かに少ない艦艇で地球を目指している。

 数の上での兵力は少ないが、《袰月》は優れた軍組織と次元操作技術を筆頭に他艦隊を何世代もリードする技術力を有していた。

 

 担任先導で全員揃って基地に併設された巨大な学園の教室に入るまで、ミエリはクラスメイトに囲まれ、可愛がられ続けていた。

 

「では、今更も今更だが自己紹介をしてくれたまえ、ミエリ君!」

 

 クラスの担任兼部隊指揮官も金髪の美少女である。

 ゼラの肉体年齢は16歳前後、身長156cmとミエリより2cm高いが、子供っぽい雰囲気のためにお子様先生と呼ばれ、本人もそれを気に入っている。

 

 一人だけナノシェルスーツを着たまま教室に入っていて、両手を腰に当てたポーズで意気揚々としているゼラ。

 常在戦場、そして先生はいついかなる時でも生徒を護るものという、二つの心意気からゼラは戦闘装備を普段着にしている。

 

「えーとだな、今日から一緒に任務に当たるミエリ・ライオネルだ。よろしく頼むぜ」

 

 好戦的な気質のミエリだが、学校というものに通ったことがなく、魂魄(イデアコード)に書き込まれた知識を頼りに行動している。

 

 狂暴さで知られたエースパイロットらしからぬ、どこかぎこちない挨拶への応答は、拍手と歓声だった。

 

「うむ、素晴らしい挨拶だ、大変よろしい! ミエリ君は《袰月》に来てまだ一週間も経っていない身なので分からないことも多いだろう?困った時はボクやクラスの皆を遠慮なく頼ってくれよ。

 それと、席だが窓際の空いてる席を使ってくれたまえ。ファイアイーターのシートほど快適ではないが、木製の椅子も良いものだよ」

 

 言われた通り、ミエリは指定された席に腰掛けた。

 

 「改めてよろしくね、ミエリ」と笑顔で振り向いてくるのは、明るく人懐っこいがどこか猟犬のような小隊長のハレ。長く伸びた金髪は流れるようなストレートで、とても軍人に見えない。

 右隣の空いているが、使われている形跡のある席は、今日欠席した灰音という少女の物なのだろう。

 後ろの席に座っているのは黒髪褐色の実直なクール系、ククリスだ。

 

 ミエリは不意に窓の外を見た。校庭が一望できる。遠くに基地の設備を微かに見て取れる。

 空は青く、初夏の風が吹いて木々を揺らしている。太陽の日差しさえあった。

 

 もし、二十一世紀辺りの人間が突如この《袰月》の居住区に転移したとしても、ここが宇宙船の内部だとは気付けないだろう。

 

 艦内の文化は二十一世紀初頭をベースにしてあり、空間拡張された内部構造は艦の本来の体積を上回る。

 

 次元操作技術を主体として構築され、一つの不変的世界を内包する構造故に《袰月》は世界艦の艦種で呼ばれ、かつて在った平和で豊かな時代の地球が自然環境まで含めてミニチュアサイズで再現されている。

 

 艦の乗員の誰もが快く過ごすために考慮された環境であり、未成年の兵士に学園生活を送らせているのも精神の安定と連帯のためだ。

 ミエリが生を受けた頃にはごく一部の特権階級のものとなっていた生活がここでは当たり前だった。

 

 

 ロングレンジクラスでは、全科目を担任のゼラが教えており、本日最初の授業は古典文学であった。

 

「では授業をはじめるぞ。悪いが、メティス君、ミエリ君に教科書を見せてやってくれ」

 

 ミエリの机には筆記用具やノートなどが一揃いあるのに教科書だけ用意されていないのはあえてのこと。

 転入初日に教科書を一緒に見ることでクラスメイトとの交流を深めさせる、袰月コノハの計略であった。

 

「お安い御用よ、先生」

 

 空いている席を挟んで座っている、ピンク色の髪を長く伸ばした嗜虐的な雰囲気の生徒が立ち上がった。

 

(ビビるなよ、オレ! 相手は年下。女子高生だぞ、女子高生!)

 

 挑発的な笑みと他者を圧する態度に、少しだけミエリは気遅れした。

 メティスは身長が高い上にサイハイブーツなど履いており、ヒールの音を響かせて近寄ってきた。

 

「ありがとな、メティス」

「気にしないで、大昔の英雄さん」

 

 机をくっつけてから腰かけ、紙の教科書を開いて見せるピンク髪の女王様風女子高生。

 百点満点のザティストだが所作は丁寧でミエリへの思いやりを仄かに感じさせた。

 

 お子様先生がチョークで板書していた時代からの伝統で黒板と呼ばれるスクリーンにペンを走らせようとしたその時、教室の扉が開いて銀髪の美少女が入室してきた。

 

「心配をかけた。虚来 灰音、これよりクラスに復帰する」

 

 真紅の瞳で仲間達を見つめながら無表情のまま、淡々と口にする美少女。ロングレンジ部隊のエース、すなわちエースの中のエースたる灰音だ。

 ノースリーブのブラウスとミニスカートから露わになった四肢は抜けるように白いが、鍛えられており、歩みには強い意志が感じられる。

 

「もう良いのかい灰音君?」

「調整槽でぐっすり寝たので万全だ」

「それは良かった」

 

 無表情かつ無感情だが、灰音の雰囲気は柔らかく話しかけやすい。

 頷く銀髪の生徒の様子に安心したのか、お子様先生は満面の笑み。

 

「あら残念ね、可愛い英雄さんに恩を売るチャンスだったのに」

「私もミエリには興味がある。今回は譲ってくれ」

 

 軽やかに立ち上がり、メティスは自分の席に戻り、代わりに灰音が着席する。

 教室内の会話を聞いていたようで、すいと自分の教科書をミエリに見せてくれた。

 

「新しく入ったミエリ・ライオネルだ。ここのエースがオレに興味を持ってくれて嬉しいぜ」

「私も貴女のような戦士と一緒になれて嬉しい。よろしく、ミエリ」

 

 灰音は微かな笑みをミエリに向けてくれた。

 

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