ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する-   作:ザンザザン!

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ボスバトル ハート・オブ・オニキス

 

 《殲滅大戦》から今日に至るまで、戦闘能力で人類を圧倒するプラネット・マーダーは単純な命令を実行する人工知能に制御された兵器群に過ぎない。だが、奴らは何よりも人を殺すことに長けており、その戦略と戦術は創意工夫に富んでいる。

 「殺戮せよ」それこそが、この漆黒の戦闘機械群に与えられた至上命令なのだ。

 

(騎兵隊(オレたち)が蹴散らしてお終い、とは端から思っていなかったが)

 

 太刀を腰にマウントした、純白のファイアイーターのコクピットの中。ミエリはかつてないほどの加速度を感じていた。

 網膜投射HUDのレーダー上、ゾンネンキント艦隊の生き残りを示す光点は赤に変更されている。

 艦内に侵入したマーダーにより、基幹システムをハックされ、急加速を開始している。文字通り、殺人的な速度であり、艦内の惨状が容易に想像できた。

 

 無事だった艦やアロウヘッドは瞬く間に叩き落されている。代わりに乗っ取られたゾンネンキント艦から無人制御で機動兵器部隊が出撃していた。その予備戦力はかなりの数だった。

 

『ミエリ君と灰音君は旗艦から出てきた全翼機を全力で墜とすんだ! 残りは気にするな、私達で片付ける!』

 

 金髪のお子様先生が飛行隊長として素早く指示を出していく。ゼラに「了解っ!」と声を揃えて返答して、灰音との二機編隊を組んだ。

 

『それじゃ、しばらくお別れだね!』

『幸運を』

 

 金髪のJK小隊長と黒髪褐色の寡黙なJKの機体が飛び去り、サフィロスに向かうチームに合流する。試作小隊と妖精小隊の間に二機が位置した。

 

 急加速を開始した純潔の薔薇艦隊旗艦ナグルファルを撃沈するべく、残りの小隊と巡洋艦フェンリルが攻撃を開始。激しい光条と誘導弾の応酬が起きている。

 

 全長140kmに及ぶ艦体が、尋常ではない破壊力によって粉砕されていくが、ロングレンジ戦隊を押し退けるようにナグルファルは加速していた。恐らく、艦そのものをサフィロスにぶつけるつもりだろう。

 オルランド艦隊の付近で自爆するだけでも十分以上の被害が出る。動力炉の暴走で放出されるエネルギーは地球型惑星を消し飛ばして余りある。

 

 普通に考えれば、古臭い設計の艦とはいえ、次元兵装付きの要塞艦を沈めるには心許ない戦力だ。

 だが、ミエリは不安を感じていない。ロングレンジクラスの戦乙女達は頼れる仲間達だ。必ずあの巨艦を破壊してくれる。

 

 だから、迷うことなく黒と白で塗装されたファイアイーターはフルスロットルで翔けられる。爆炎と粒子瞬く宇宙を突き進む。

 二人が撃墜を命じられた全翼機はハックされた艦隊と別方向から、惑星サフィロスに向かっている。

 防空圏を単機で突破できる超高性能機なのだろうとミエリは推測した。

 

 ファイアイーターは加速を続けているが、いまだ目標に追いつけてない。

 性能相応な耐G機構と《袰月》で用意された強靭な肉体でも苦痛な加速度に達している。それはアロウヘッドとしては前人未踏の領域だった。

 元々の肉体の基準が抜けきらないミエリにとっては生きているのが不思議だった。

 

『前方、上と下から来る』

 

 灰音が発した警告に気を引き締め直す。

 全翼機が射出してきた多数の攻撃端末がミエリ達に一斉攻撃を仕掛けてきのだ。

 加速し続けていなければ全翼機から引き離される状況では厄介な敵だ。

 

『邪魔だ!』

『ミエリの邪魔、しないで』

 

 二機のファイアイーターは二重螺旋を描いて飛び、互いの航跡を重ねながら応戦した。

 頭上から六機編成、二編隊で接近する攻撃端末のレーザーを掻い潜る。

 戦術AIがミエリの視線に反応して、敵機をロックオン。アサルトレールガンを掃射、片方の編隊を全機撃墜した。

 

 さらに錐もみ上昇を掛けながら、フォースフィールドでもう片方に体当たりする。

 無人兵器の黒いボディが高次元域との接触によって、光と化し飲み込まれていく。

 編隊を解き攻撃端末は逃げようとするが、ファイアイーターは飢えたサメのように執拗に追いつき、最後の一機に接近する。

 

「おらっ!」

 

 ミエリは巧みに自機と攻撃端末の位置を調整し、背後に回り、後ろに蹴り出した。

 敵機を踏み台にすることで加速して本来の標的である全翼機の追撃を再開する。

 

 下方から突っ込んでくる自爆型の攻撃端末は灰音が相手をした。高速で背後を取ってきた自爆型端末に対して、漆黒のファイアイーターが急速反転。

 

「くっ……!」

 

 黒紫のスキンと黒い装甲で構成された重厚なぴっちりパイスーが包む肢体に反転によるGが一気に降りかかる。

 銀髪赤眼の少女エースでも、流石に歯を食いしばるほどの重圧だった。

 だが、ミエリの前で格好悪い振る舞いはできないと奮起して、灰音は苦痛を堪えた。

 

 慣性制御機構により、灰音機は背中を向けながら前進を続けている。左腕のショットガンを連射。当然、攻撃端末は散開するが、連射された散弾は敵の未来位置を狙っており、瞬く間に全機が爆散する。

 端末機首の弾頭が炸裂したことによる爆発に気を取られることなく、灰音は再び機体を反転させた。

 

 全翼機に動きがあった。黒色の機体表面に深紅の模様が流れ始めたのだ。縞模様のような高速のパターンだった。黒瑪瑙の心臓(オニキスハート)と呼んで良さそうな姿だ。さらに後部や上面が開き、高出力レーザーと荷電粒子の光弾が殺到してくる。艦隊クラスの弾幕が全幅100メートルに満たない機体に内蔵されていた。

 

 機体のカメラを通して、光学処理された映像を視認しているのに、オニキスハートの装甲に流れる深紅の光を見ていると、目が痛くなってくる。

 パイロットの視覚を攻撃するための発光パターンだ。

 

『むー目が痛い。ミエリは平気?』

『いや、結構辛い』

 

目を細めながらミエリは苦笑いする。

 

『なら、ミエリのためにも超特急で墜とす』

『嬉しいが、こういう時は焦ったら負けだぜ』

『それはそう。反省』

 

 一撃でフォースフィールドごとファイアイーターを射抜く高出力レーザーを避け、弾幕を抜けていく。

 

 オニキスハートは左右に大きくスライドしながら光弾をバラ撒き始めた。

 密度を増した弾幕の僅かな隙間を見抜き、二機は駆け抜けなければならなかった。

 それだけではない。高次元干渉波の警告が出た直後、二機が避けたレーザーが何もない空間を反射、再度襲い掛かってきた。

 

「ちょっと不味いか!?」

 

 サイドスラスターを急噴射して、機体を躍らせるミエリ。ファイアイーターそのものは無事だが、フォースフィールドが貫かれていた。掠っただけでこのダメージだ、直撃は避けなければならない。

 

 漆黒のファイアイーターが右前方に飛び出し、離れていく。

 

『なんとかしてみる。後はミエリに、任せる』

『灰音――――よし、頼むぜ!』

 

 銀髪の少女の断固たる口調に疑う余地はない。ミエリは灰音に即答した。「見ていて」と告げてから灰音はオニキスハートの弾幕に飛び込んだ。漆黒の人型機動兵器は一気に肉薄する。

 

 頭上から反射してきたレーザーが漆黒のファイアイーターを狙う。

 着弾より一瞬早く瞬間的な急加速をかけ、灰音はそれを避けた。汗が散り、極限の戦闘機動に苦悶の吐息が漏れる。

 全翼機が絶え間なく放つ光弾が、急速に間合いを詰める灰音の機に集中し始める。

 やがて、オニキスハートの全ての火力が確実に銀髪美少女の機体に当たるコースを取る。

 

 破壊的な光の雨が漆黒のファイアイーターを襲ったが、しかし、灰音機は無傷であった。それは銀髪赤眼の少女が持つ規格外の異能によるものだった。彼女はごく僅かな時間、あらゆる事象から自らを切り離すことができる。

 

 無敵時間を使った回避と同時に反撃を行う。拡散型バスターキャノンが放たれ、破壊の閃光が空間に広がっていく。

 これで決まるとは思っていなかった。オニキスハートは機体を捻るような動きをして、バスターキャノンを掠める。

 それによって装甲が剥がれ、融解しているが、致命傷ではない。凄まじい反応速度、そして防御力だ。

 

 去っていく漆黒の全翼機に灰音は短いメッセージを密かに送っていた。返答は、ない。

 灰音は少しだけ俯き、体の負担を軽減するために機体を減速させた。二つの光が遠くなっていく。

 

「てやぁぁぁぁぁぁぁっっ!」

 

 灰音が作ってくれた隙を使い、ミエリは突撃していた。雄叫びと共に太刀を引き抜き、回避機動の末に激突コースに入ったオニキスハートに全速で突っ込む。

スピンして翼でファイアイーターを叩こうとする全翼機だが、ミエリ機の姿が掻き消える。超短距離ワープ、フラッシュシフトだ。

 

 ミエリには高次元エネルギーの流れを感じ取る、特異的な才能があり、それを応用することで他者の異能を模倣することができた。

 金髪ツインテのイケ雌、イリシアに付き合ってもらい、彼女のフラッシュシフトを覚えたのである。

 

「これで――――どうだ!」

 

 転移した白いファイアイーターは、上段から斬りかかった。これは流石に避けられない。フォースフィールド同士が干渉して中和される。斬撃が装甲を切り裂き、深く食い込む。食らいついたファイアイーターを振り払うべく、回転する全翼機。

 ミエリはコクピットで踏ん張りながら、最大出力のスラスター噴射で進行方向を操る。

 視界にはデータリンクしているオルランド艦隊の砲撃圏内に入ったという警告が出たが、離れない。

 

『艦砲射撃はそちらにも来ます! 回避を! ミエリ!』

『わかってる、こっちは心配するなアンゼリカ! それよりそっちにも敵が来るんだ、気を抜くなよ!』

 

 これから砲撃を抜けたマーダーに対処しなければならない主席士官候補生の少女に告げて、オニキスハートと一緒に荷電粒子の砲撃とミサイルの弾幕に突っ込む。

 砲撃に対してオニキスハートが盾になるよう強引に向け、滅多打ちにする。

 そのまま、タイミングを見計らい、蹴って離脱。サフィロスに向かって弾幕を抜けていく。

 

「よぉっ、し! 抜け――――たぁっ!」

 

 金髪のオレ娘は生きていることを噛み締めながら反転する。オニキスハートは確かに砲撃に呑まれ、跡形もなく消し飛んでいる。背後にはサフィロスがある。機体は既に軌道上に入っており、推力を使わなければ引力に引き寄せられてしまう。

 

 息を整えながら、ミエリは戦況を確認する。残りのプラネット・マーダーも文字通り、全滅していた。

 前方遠くで凄まじい光が炸裂するのが見えた。そこから離脱していく幾つもの青い噴射の軌跡があり、こちらに向かってくる。

 

 マーダーに乗っ取られたゾンネンキント帝国の部隊もファイアイーター隊と艦砲射撃があらかた片付け、どうにか弾幕を抜けたアロウヘッドには、アンゼリカのファイアイーターと士官候補生達のデルタセイバーがすぐさま応戦。少年少女達は遺憾なく訓練の成果を発揮していた。

 

『どうだ、やってやったぜ!』

『はぁっ!? 何自分がやったみたいに言ってやがるんだ。あのデカブツを沈めたのは、私ら殲滅小隊の攻撃だったぞ!』

『いやいや、待ちたまえ。殲滅小隊と直掩小隊のバスター砲撃は完全に同時だった。先生はしかとこの目で見たからね。皆よく頑張ってくれたよ!』

 

 早速口喧嘩を始める灰髪の不良姉御と紅髪のシルフの姉の方。仲裁する金髪のお子様先生。クラスメイトの姿を微笑ましく思うツインテの艦長。

 

 通信回線はすぐにプラネット・マーダー相手の完勝を歓ぶオルランドの兵士達の声で一杯になった。

 それを聞きながら、オルランドの防衛艦隊に近付こうとするミエリだったが、漆黒のアロウヘッドが高速ですれ違った。

 

『おい、灰音どうした! トラブルか!?』

 

 サフィロスに向かって降下していく灰音の機体に慌てて呼びかける。

 

『そう、トラブル。海が私を呼んでる。だから先に一泳ぎしてくる』

『なっ!? 待てよ、勝手に動くな! だいたいどこの海岸に降りるつもりだ!』

『安心して。大丈夫なところ、リサーチ済み』

 

 灰音の行動に困惑しながら、引き留めるべく追う。

 しかし、漆黒のファイアイーターは速く、青を湛える惑星サフィロスの大気圏に突入してしまう。

 

 灰音に引き離されながらも、ミエリは海岸に着陸した。コクピットを解放する。

 戦闘でかなり消耗しているのだが、透き通った海に惹き付けられるように外に出てしまった。

 

 オルランド星系一の観光惑星というだけある、澄んだ大気だ。潮風が少女の金髪を撫でる。

 

 飛び降り、砂を踏み締めて、足跡を残しながら歩き出すミエリ。

 

「たく、後でどうやって誤魔化すつもりだ」

 

 口では呆れるミエリだが、微笑んでいて足取りは軽やかだ。

 先に降りた黒いファイアイーターのコクピットは開いていたが、灰音の姿が見当たらない。

 

 足跡を追いかけると、波打ち際に放られた黒基調のナノシェルスーツがある。

 スーツの下にアンダーウェアは装着できない。灰音は生まれたままの姿で、海に飛び込んだのだ。

 立ち尽くすミエリの前に、潜っていた灰音が水飛沫を散らして姿を見せた。

 銀髪の少女の裸体は、澄んだ海と相まってこの上なく幻想的だった。

 

「ミエリも泳ご? 気持ち、いいよ」

 

 その時の灰音の美貌は、魔性さえ備えていたと思う。

 ミエリはナノシェルスーツの着脱スイッチに手を伸ばした。そして、青色のナノ被膜に覆われた指が、ゆっくりとスイッチを入れる。

 

 戦闘で籠った熱量が汗と一緒に解放され、ミエリは思わず顔を顰めてしまう。汗塗れになり、火照った体を洗い清めて鎮めたい衝動に支配される。

 ナノシェルスーツを砂浜に残して、しなやかな裸体を曝け出す。

 金髪オレ娘は銀髪赤眼の少女が待つ浅瀬へと無言で歩いた。

 

 灰音はミエリの手を取り、ただ静かに微笑んだ。そのまま、抱き寄せる灰音に抵抗せず、白い肌の少女の柔らかさに身を任せた。

 

「ちょっと汗臭い、ね。それに、アドレナリンが濃い」

「言うなよ。恥ずかしいだろ」

 

 自分より背の高い灰音を姉のように感じて、安らぎを得ながらミエリは呟くのだった。

 

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