ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する- 作:ザンザザン!
プラネット・マーダーを撃退してから数日後。ロングレンジクラスは士官候補生達と共に惑星サフィロスにて休息を楽しんでいた。
ビーチパラソルの下、少し遊び疲れてミエリは横になっている。士官候補生達と《袰月》の女子高生達が浮かれ騒ぐ声に紛れ、打ち寄せる波音が聴こえる。
オルランド王国政府が保有するこのビーチで過ごすまでの出来事を思い出す。プラネット・マーダー撃退後も緊張は続いた。皇太子の戦死に皇帝が激怒し、最精鋭艦隊の全滅に帝国が混乱する最中、ゾンネンキント星系にもプラネット・マーダーがワープ・アウトしてきたのだ。
主力艦隊を喪ったばかりのゾンネンキント軍は抗しきれず、一直線に進軍してきたプラネット・マーダーにより首都惑星は十二時間で粉砕。皇帝を含め皇族の大半が死に絶えた。首都惑星に政府機能を集約していたことが災いし、星系は無政府状態に突入。
フェンリルの親善交流団に続き《袰月》から出発していた《大雷》級戦艦"翔鶴"を旗艦とする小艦隊はゾンネンキント星系に乗り込み、プラネット・マーダーの殲滅及び、攻撃を加えてくる残存ゾンネンキント艦隊の無力化を迅速に完了した。
オルランドの艦隊と一部のゾンネンキント艦隊と合流して、現在も民間人の救助やオルランド星系への一時避難などの戦後処理に追われている只中である。特にオルランドにとって頭の痛い問題がゾンネンキント星系再建への関与度合いであり、昼夜を問わず会議が続いている。
チェアから起き上がるとミエリはビーチバレーに興じる集団に視線を向けた。オルランドの士官候補とロングレンジクラスのペアを組んでおり、その背中が見える。
健康的なお尻を突き出すように身構えている赤髪は士官候補生のネーナだ。彼女はスポーティーなビキニ姿で、鍛えられたアスリート型の肉体美を露わにしている。相棒は試作小隊の黒髪シニヨン、リーゼだった。
こちらは、白い肌に映える黒色のモノキニ姿で布面積が少なく、際どい。艶っぽいリーゼに限らず、ロングレンジクラスの女子高生達が選んだ水着はどれも刺激的なデザインであった。
ミエリが水着を新調する突撃小隊の仲間達に伴って購入したのは、鮮やかなブルーに白いラインアクセントが入った競泳水着だ。しなやかな体付きによく似合う。股間の鋭角度が恥ずかしいが、足捌きがよく、涼しいのが大きな利点だった。
ビーチバレーの試合はスピーディーに進行していた。
「追いついた! お願い!」
打ち返されたボールに向かって駆け出したリーゼが倒れ込むように、ぎりぎりでレシーブした。
「これで決める! てえい!」
ネーナが跳び上がって決めたスパイクに巨漢の男子生徒は追いつけない。試合終了を告げるホイッスルが鳴る。
ハイタッチで勝利を讃え合う赤髪の健康美少女と黒髪の妖艶な美少女。対戦相手は巨漢の男子士官候補マルコと、邪悪で残忍な紅髪のシルフ、エイリだった。ホルターネックのビキニで白い肌を露わにしている。肢体を締め付けるダークレッドの水着は妹のエルザレドとお揃いだ。
立ち上がろうとするマルコを見下ろすエイリの険しい表情が遠くからも見え、ミエリまでもが思わず身構えた。
「とっとと立て! 次は勝たせてやるからな!」
「はっはい!」
エイリに応えて堅物の男子は立ち上がる。ミエリの心配は杞憂に終わった。その後もペアを次々に入れ替えながら試合は続く。
競泳水着の上にパーカーを羽織り、砂浜を歩いていく。
「あっミエリちゃんもやってく?」
「いや、遠慮しとく」
通りかかった時、声を掛けてきたのは殲滅小隊のアラヒナだった。透き通るような白い髪に赤い瞳。挑発的な笑顔が魅力的な少女だ。
ビーチバレーのコートでは熱血少年大河とメガネの低身長女子ヴァーシャがペアは組んでいる。対戦相手は妖精小隊の久遠と火狩だ。妖精小隊はシルフ族の抜きん出た造形美に似合う、神秘的な模様があしらわれた水着に身を包んでいる。大河の熱血全開のサーブで試合は始まった。
ミエリが向かったのはバーベキューの支度を始めた灰髪の長身JKの元。ラヴィが気付いて振り返る。
引き締まった筋肉質な肉体にスポーティーな黒ビキニが映えるJKは「どうしたチビ助?」と陽気に微笑んだ。
狼を連想させる野性的な美貌には真夏の太陽がよく似合っている。
「何か手伝うことはないか?」
ミエリはラヴィを見上げながら訊いた。
「これはオレたちの戦場だ。お前は遊ぶなり、泳ぐなりして腹を空かしておきな」
そう言って、海のほうを示す不良の姉御。波打ち際、突撃小隊の面々がそれぞれ異なるカラーの競泳水着姿で泳ごうとしていた。
ククリスの褐色を引き立てる白地にブルーのラインが入った競泳水着がまず目に入った。寡黙な褐色JKは長い黒髪をポニテールにしていた。
金髪の突撃小隊長ハレは濃紺色の競泳水着だ。長い金髪はヘルメットを被る時のように結んでいた。
黒に赤いラインの競泳水着を着て灰音は海を眺めていた。ミエリは生まれたままの姿で海に入った時の銀髪赤眼娘の柔らかい肌の感触を思い出してしまった。
いつもの面々の中に、フリルをあしらった白ビキニ姿が意外と大胆な主席士官候補生アンゼリカが混じっていた。そのアンゼリカが振り向いて、こちらに手を振った。
「貴女も泳いできなさい」
背後から女王様の声がした。
いつの間にか後ろに立っていたメティスの水着は黒いスリングショットだ。股間から肩までV字の布地が渡り、幾つもの金色のチェーンがストラップとして前後を留めている。
ピンク髪の艶然とした長身な女子高生を前に金髪碧眼オレ娘は圧倒された。殆ど露出している白い肌と黒い布地のコントラストに心拍数が上がる。
メティスの後ろを見れば不良小隊の残り二人が食材を入れたクーラーボックスを運んできていた。ダウナーな不良娘のクーリエはカットの深いビキニにラッシュガード。
お嬢様の紅黒は黒を基調としたホルターネックのワンピース水着だ。腰回りにはシースルーのフリルスカートが付いている。
「上着は預かっておいてあげる」
「あっああ。頼む」
有無を言わせない態度でメティスはミエリのパーカーを預かった。ミエリはラヴィの横を駆け抜け、小隊の仲間達の元に向かった。
「あっミエリ! もういいの?」
「寝てすっきりした。これからまた泳ぐんだろ? 混ぜてくれよ」
軽くストレッチしながら、ハレが笑いかける。ミエリは小ぶりな胸を張って元気さをアピールしていた。
海から上がり、バーベキュー会場に連れ立って向かう。ミエリの前にいるハレが気持ちよさそうに大きく伸びをしていた。
「明日から忙しくなるな」
ミエリは隣を歩く銀髪の主席士官候補生に話し掛けた。
「望むところです」
意気揚々と笑って見せるアンゼリカだった。艦砲射撃を抜けて突っ込んでくるマーダーを叩き落したことは士官候補生達に自信を与えていた。
ファイアイーターを見事に駆ってみせたことで、アンゼリカはグリムナイア博士の目に留まった。
ファイアイーターと同コンセプトの次元兵装搭載型アロウヘッドの開発が明日ついに寄港する《袰月》との共同で行われるのだ。
そのベース機には同じく博士が興味を示したデルタセイバーが用いられることまで決定していた。
「その意気やよし。だがグリムナイア博士は強敵だぜ」
「心得ています。なんというか…嵐のような人ですね」
アンゼリカは有質量ホログラムとしてフェンリルの艦内に姿を見せた、ショートパンツに白衣姿の少女を思い出した。
それは初陣の興奮冷めやまぬ翌日のことだった。碧色の髪、陶器人形のような白く綺麗な貌。この少女こそファイアイーターを開発したグリムナイア博士だと赤髪ツインテの艦長から紹介されたのだ。
「ふーむ、君がそうなのか。ふむふむ、確かにポテンシャルはあるね――――ボクはグリムナイアだ。よろしくアンゼリカ」
挨拶する間もなく、ナノシェルスーツ姿のアンゼリカは身体の隅々まで博士に観察された。ほっそりとした美少女博士の身のこなしはとても身軽だった。
グリムナイア博士はアンゼリカを次元兵装搭載機のテストパイロットに任命して、テストの日程を告げて去っていった。共同開発に伴い、オルランド政府は博士に絶大な権限を与えており、如何なる立場の軍人でもテストパイロットに任命することができるのだ。
《袰月》の先進開発局を取り仕切るグリムナイア博士は一騎当千のアロウヘッドという馬鹿げた代物を実現した鬼才であり、徹底した試験を行うことで知られている。
当初はプレーンな調整だったミエリ機も博士立ち合いの元で、完璧に仕上げられたがそれに伴うテストの過酷さはミエリを疲労困憊させるほどであった。
「それに王女様だっていう誤解も解かないとな」
「ええ。そっちのほうが深刻なんですよね」
金髪のオレ娘の指摘に、溜め息混じりに答える銀髪の優等生。座乗艦の加速で磨り潰されたゾンネンキントの皇太子が告げた"事実"は当のゾンネンキント星系にも報じられていた。
善政を敷いていたノースフェルト王国のプリンセスが他の星系に逃げ延び、宇宙軍提督の養女になっていたという物語は見え透いた偽りであってもゾンネンキント帝国の圧政に苦しむ人々には魅力的だった。
ファイアイーターを駆ってプラネット・マーダーを迎え撃つ姿が中継されていたこともあり、アンゼリカは救世の王女としてゾンネンキント星系で虐げられてきた人々に神格化されつつあった。
「平和維持部隊の指揮を執る傍らで義父は誤解を晴らしてみせると言ってくれましたけど」
私のせいで余計な仕事を増やしてしまったと気が重くなるアンゼリカであった。ただでさえ、無法地帯と化したゾンネンキント星系で利益を得ようと乗り込んできた大小様々な勢力との折衝という難しい仕事を抱えているのに。
ミエリは思いつめたようなアンゼリカの顔をしばらく見つめる。
「まっ今日は楽しんで仕事のことは明日から考えようぜ」
自分にも言い聞かせているようにミエリは言う。「はい」と元気良く銀髪の優等生は返事をしてくれた。少女達は砂浜に足跡を残しながら歩んでいく。