ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する- 作:ザンザザン!
今日は慣らし運転だが、手を抜くつもりはない。烈鷹のジェネレーターが始動し、ミエリの可愛らしくも筋肉のついたお尻に振動が響く。アロウヘッドの駆動音と身体に伝わる振動、そして神経リンクシステムから流れ込む情報。それらはアロウライダーにとっての魂の燃料だ。
隣のホワイトキャバルリーのコクピットでは、後部シートに座ったリーゼが親指を立て、前部シートのイリシアに合図していた。黒髪シニヨンの長身な淫魔風JKは素早く全ての動作チェックを終えたのだ。
『ミエリ、準備はいいか?』
『OKだ。先導頼む』
金髪ツインテのイケ雌JK、イリシアは頷き、機体を前進させる。十分に距離が空くとミエリの烈鷹も第一歩を踏み出す。十数メートルの人型マシンが律動的に歩み、質量を感じさせる地響きを起こしていた。
指定の発着場まで機体を歩かせ、離陸した。ミエリの烈鷹は蒼いキャバルリーを追うように上昇していく。
《袰月》の内部には空間操作技術によって、艦全長よりも遥かに広大な空間が広がっている。ファイアイーターなどの軍用アロウヘッドを駆って訓練に励んでいるミエリにとっては既に慣れ親しんだ空だ。
(観光客か)
ミエリは飛行場周辺でカメラや携帯端末などの撮影機器を構える人々を目にした。撮影しているのは駐機場のアロウヘッドや航空機、それに今しがた離陸したミエリ達の機体だ。搭乗者の注視に反応して、視界の一部に拡大窓が表示された。
『へぇ、こんな所にも来るんだ』
観光客に気付いたリーゼが物珍しそうに眺める。
オルランド星系の至宝と名高い観光惑星サフィロスを
おかげで《袰月》は出航以来、最大級の注目を浴びていた。観光客があちこちに押し掛け、軍事的なショックに匹敵する文化的なショックを受けている
『せっかくだし、手でも振ろうか?』
バストアップ画面のリーゼが手を振るジェスチャーをした。注目されるとサービスしたくなる性質なのである。
『それよりカッコよく旋回して見せたほうが喜ぶんじゃないか?』
操縦桿から手を離し、旋回の手振りをするミエリ。
『私もミエリに賛成だ――――では、行くぞ!』
涼やかな微笑みから、真剣な表情になりイリシアは機体を鋭く旋回させた。蒼いキャバルリーに伴い、オレンジ色が鮮やかなアロウヘッドがエンジン音を轟かせ、旋回する。
轟音に誘われ、空を見上げた観光客達は旋回する二機の人型マシンに歓声を上げた。人々の視界に数日後に催されるヘッドフラッグ・レースの広告が慎ましく表示され、大会の存在を知らしめた。
「ついでに宣伝しちゃいました~♪」
リーゼがコンソールを操作して、拡張現実の公共領域に広告を表示したのだ。
イリシア達のアロウヘッド後方にくっつき飛ぶ。海岸線を超え、海上を航行中である。
『新型のテストはどうだ?』
イリシアが訊いたのは、ミエリがテストパイロットとして招集されたデルタセイバータイプFの事だ。
『わたしも興味あるんだよね~機密に触れない範囲でいいから、教えて欲しいな』
操縦桿を握ったまま、ミエリは『グリムナイア博士は相変わらずキツい』とまず一言。苦笑する金髪ツインテと黒髪シニヨンのクラスメイト。
二人とも試作兵器を扱う小隊のため、博士の元で試験に臨むことが多いのである。ミエリと苦労を分かち合える関係だった。
『オレもアンゼリカも毎日クタクタだ。けど開発は順調ではある。最高の機体に仕上がるぜ』
金髪のオレ娘は断言した。
自由飛行空域に入り、烈鷹の性能を実際に試す。イリシア達のホワイトキャバルリーも編隊を解き、ウォーミングアップに入っている。
操縦桿を横に倒せば、オレンジ色のアロウヘッドが傾く。フォーポイントロール。
「おっいいねえ。シミュレーション通りの反応だ」
機敏な反応にミエリの気分がアガる。フットペダルを踏み込み、急加速。
「ふぬぬぬぅ……!――――結構余裕だな」
慣性荷重は余裕で耐えられるほどだ。ファイアイーターの出鱈目な出力に身体が慣れ切っているのを実感した。
ミエリは左右に跳ねまわるように動いてから、慣性制御ドライブで垂直急降下をかけた。海面スレスレで急上昇。烈鷹が押し退けた大気により、海面に水飛沫が上がる。
「こんなトコか」
一通りの動作テストを終えたミエリは再び二機編隊を組み、模擬レースのコースへアプローチをかける。この一帯はヘッドフラッグレーサー向けに解放されている空域なのだ。
レースコースのスタート地点に滞空し、管制AIからの合図を待つ。参加しているのはミエリ達を含めて七機だ。今行われているレースが終われば開始される。
「良い調子だな、ミエリ。ますますレースが楽しみになってきた」
「そっちもな。出場するからには全力でやるぜ」
ミエリとイリシアは言葉を交わし、視線で火花を散らした。金髪ツインテのイケメン女子の背後では、スタート時の加速に最適な出力が出るよう、黒髪シニヨンの淫魔風JKが設定している。
小柄ながら魅力的なスタイルの金髪オレ娘は不意にハイレグなレーシングスーツの股間を見つめた。
食い込みがきつくなっていた。急いで股間のハイカットな布地の頂点を引っ張り、元に戻す。同時にレースが開始される。
「やべっ!」
慌てて最大加速。イリシア機、蒼いキャバルリーと並走するが、次第に離されていく。直線では推力で劣る烈鷹の機体特性は不利だ。
視界に投影されている外界の光景に、CGによるコースラインが表示されている。このラインから外れれば失格となる。高さと幅は七機のアロウヘッドが競い合うには広すぎるくらいだ。
制限された空域の都合上、サーキット状のコースを周回する形式になっている。そのため旋回性能に優れた烈鷹は有利、なのだが気を抜けない。
イリシアの技量とリーゼのサポートの合わせ技によるものか、キャバルリーは速いのだ。それでもミエリは最後のカーブでイリシア達を追い抜き、トップに躍り出た。
「このまま一気に駆け抜ければ!」
オレの勝ちだ!笑みを浮かべる金髪オレ娘だが、蒼色の機体が徐々に距離を詰め、最後の急加速をかけて勝利をもぎ取った。
イリシアに追い抜かれ、先にゴールされたことに動揺してしまい、後続にまで抜かれる。二位はパールホワイトカラーのアロウヘッドだった。ミエリは三位でゴール。残りは少し遅れた。
「くっそ~~~!」
悔し気だが、顔は笑っている。ミエリはすぐに反省点を見出し、次のレースに繋げるべく思考を巡らせた。
ミエリは息を整える。二時間弱のレースで繰り返した激しい機動で消耗した機体を休ませるべく、ゆっくりと旋回する。他のアロウライダーたちも同じく。身体の熱は冷めそうにない。速さを競うのは戦闘に負けないくらい興奮し、夢中になれた。
そこに命のやり取りはないが、技量と戦意のぶつかり合いはある。
『悪いな、そう簡単に勝たせてはやれない』
華麗な仕草で汗を拭い、金髪ツインテが告げた。
『分かってるさ。まだ晩飯まで時間あるよな? もう一回だもう一回だ!』
『いいとも。私もまだまだ飛び足りないところだ』
『わたしだって! サポートするからねイリシア!』
再びスタート地点につき、第二走。イリシアとリーゼはミエリの学習能力に舌を巻いた。レースでの駆け引きや有効なマニューバーをすぐに掴んだのだ。
烈鷹とホワイトキャバルリーはゴール直前で並行し、同着。イリシアの意地とリーゼの必死の機体制御による結果だった。
ライバルとの接戦に疲れ切り、少女達はシートに身を委ねて荒い息をつく。
踏ん張って広げた両脚の間では、ハイレグスーツの股間部分が危険なほど食い込んでいたが、直す気力がしばらく湧かないほどの疲れだった。
「参ったな。脱帽だ」
金髪のオレ娘の腕前を改めて思い知るイリシア。リーゼも同感だったが、今は同意する声を上げる元気がない。体力以上に集中力が激しかった。
ミエリ達は飛行場に向かって進路を取っていた。夕食には試作小隊長のアナスタシアとその忠実なメイドのノエッタが同席する。
『あの白い機体、ステイツ製の新型か。随分気合入ってるな。世間の認識じゃ辺鄙な田舎扱いのはずだろ、
ミエリはゆっくりと空域を離れていくパールホワイトカラーのアロウヘッドが気になっていた。
重厚かつエッジな装甲に威圧的な面構え、大推力のブースターを装備しつつも、各部に戦闘機風の空力パーツを装着して空力性能も意識した設計。
SA-22クロムカイル、
ミエリ達が参加するレースにエントリーしており、名簿によるとライダーはクリスティ・サンダーランド。ハニーゴールドの髪が眩しい、いかにもステイツ人らしい陽気な雰囲気の美女だ。
最新鋭の軍用機を民間人が用いている点に関してはステイツの人間であれば、合点がいく。地球帰還を目指す二大艦隊国家の片割れであるイーグル・ステイツにおいては、金で買えないものは殆どないのだ。宇宙軍艦隊の一部さえ、私設警備部隊として巨大企業が指揮権を保有している。
対価を支払える限り、あらゆる行為は正当化される。それが個々人の自由を極限化した白頭鷲主義の根本思想だ。
イーグル・ステイツ製の最新鋭機を眺めていると、当人から通信が入った。
『出ていいか?』
『問題ない』
ミエリは了承を得てからイリシア機との共有チャンネルに迎え入れる。蜂蜜色の髪の若い女が通信画面に映った。
『ヘイ! 応えてくれて嬉しいわ! 私はクリスティ・サンダーランド』
クリスティという女は外見通り、陽気かつ距離を詰めてくるタイプであった。
『この国のヘッドフラッグはホットだって聞いていたけど、サフィロス防衛の英雄さんまで参加するなんて、本当に素敵なレースになりそう』
陽気に笑う蜂蜜色の髪の美女。口振りからするに、本番では優勝を狙えるくらいの自信があるようだ。
『あんたプロレーサーか何かなのか?』
クリスティのド派手なカラーのレーシングスーツ(ミエリ達の太股が露出するタイプと異なり、全身を覆うボディスーツ型である)から推測するミエリ。
『ええ! 普段はステイツや同盟国でのレースで荒稼ぎさせてもらってるわ。このマシンも賞金で購入したものよ。お金を払える限り、欲しいものはなんでも手に入るのが私の国のいい所なの』
金髪ツインテのイケ雌、イリシアは目を細めた。笑顔で述べるクリスティの言葉の裏に、どこか祖国への批判が込められているような気がしたのだ。
『ねえ、ディナーを奢らせてくれない? アロウヘッドで戦うってどんな感じなのか知りたいの、話を聞かせて貰えたら嬉しいわ』
『ごめんなさい、先客が入っているの。それじゃ、レース本番でも正々堂々戦いましょうクリスティさん』
『あっちょ――――!』
リーゼは一方的にクリスティとの通信を切った。
『どうしたリーゼ?』
スキンシップが激しく、際どい悪戯もしてくるがリーゼは決して無礼な真似をする少女ではない。理由があるのだとミエリは悟った。
『あの人、ステイツの諜報員だよ。深く関わると面倒なことになる。行こ行こ』
黒髪シニヨンのクラスメイトは素っ気無く言葉を発した。
『諜報員? そりゃまた厄介だな』
苦笑いする金髪オレ娘。速さを競うことを考えるだけでは済まないようだ。