ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する- 作:ザンザザン!
中庭から鹿威しの音が響く。ミエリは華やかな着物姿で緋色の毛氈に正座していた。茶会に参加している試作小隊の面々の優美な佇まいに負けないよう、背筋をぴんと伸ばし、気を張っている。
レースの前日、ミエリ達を茶会に招いたのは、長い銀髪を豪奢な簪で纏めた美女であった。袰月ネレ、《袰月》管制AIの一人である。保安局を統括するネレは神々しく、魅惑的な造形の肢体を和装で包んでいる。
「おっ来たぞ」
廊下からやってくる四人分の気配を察して、ミエリはネレに言った。襖が勢いよく開き、長身朱髪の美女が姿を見せる。
「お待たせ皆の衆! 三人とも大変素敵な装いになったよ!」
飄々とした、それでいて妙に威厳のある美声。髪をポニーテールにして、着物をきっちり着込んだ神薙 終である。
「ささ、入って入って」
大雷級戦艦、翔鶴の艦長にして《袰月》最強クラスのアロウライダーでもある美女に促され、恐る恐る入室する三人の少女。アンゼリカ、ネーナ、ヴァーシャのオルランド士官候補三人娘だ。《袰月》を観光中、偶然にも終と遭遇し、この茶会にも招かれたのである。三人の着物は終が着付けていた。
「しっ失礼します!」
アンゼリカはぎこちなく動いていた。正座すると、ネーナとヴァーシャが続く。三人娘は揃って緊張していた。
不慣れな作法というだけでなく、茶会の主催者が《袰月》の最上位権限を持つ存在だというのが、アンゼリカ達に強い緊張感を抱かせていた。
「こっこの度は招待ありがとうございます! 袰月ネレ艦長!」
黒髪メガネの低身長女子、ヴァーシャがネレに礼を言う。
「こちらこそ。オルランド王国からの客人をお招きできて光栄だわ」
ネレに見つめられたアンゼリカ達はその美貌に魅了され、陶然としていた。少女達が我に返ったのは、ネレが茶を淹れ始めた時であった。
今回催されたのは和風の茶会で、抹茶ではなく煎茶を用いている。茶を淹れ終えると、ネレは茶托を招待客に差し出した。
「あはは、そんな硬くならなくていいから。辛かったら足も崩しちゃって」
「緊張していてはお菓子もお茶も美味しくないでしょう? どうぞ、楽な姿勢で愉しんでいって」
亭主役であるネレから薦められると、アンゼリカらは顔を見合わせた。
「いえ、そういうわけには……」
きちんと正座したミエリ達を見ながらネーナが呟く。
「お気遣いありがとうございます。私達は大丈夫ですからお構いなく」
アンゼリカは着物で抑えられた胸元に片手を添えると、ネレを見つめてオルランド代表として応えた。
「なら言い過ぎるのも良くないわね。では、お茶会を始めましょう」
《袰月》に身を寄せた当初、ミエリはこの邸宅で管制AI達に奉仕されながら暮らしていた。おかげで和風の茶会の作法はばっちりだ。
可愛らしい和菓子をまず目で愉しみ、香りを味わってから、竹製の菓子切りで上品に口に運ぶ。
それから、上品な渋みのあるお茶を頂くとほっとした気持ちになった。顔を綻ばせて一息つく金髪のオレ娘であった。
見たところ、アンゼリカ達は和菓子も緑茶も気に入ってくれたようだ。自分が好きになった物を他人も好きになってくれると、なぜだか嬉しい気持ちになる金髪のオレ娘。
クラスメイトのJK達、特に不良小隊の四人組が頻繁に遊びに誘ってくれる理由が分かってきた。
アナスタシアの所作はやはり完璧だ。ネレと茶葉や菓子のことを話している。お菓子はともかく、茶葉は上質で美味しいこと以外、ミエリにはさっぱりだった。
メイドのノエッタにとって究極の奉仕者であるネレなど《袰月》管制AIは尊敬の対象であり、理想像だ。茶を淹れる所作や客人のもてなし方などを見て学んでいる。
一方、最愛のお嬢様の可憐な着物姿も拝んでおくのも忘れない。
金髪ツインテのイケ雌JKイリシアと黒髪シニヨンの淫魔JKリーゼは着物姿で畳に正座していても普段通り。静かに茶を味わうイリシアにリーゼが話し掛けている。
「ミエリ、お茶の御代わりは?」
「頼む」
ネレに促され、ミエリは空になった茶碗を茶托ごと差し出した。
「ミエリの小隊の娘達はハキタのレースクイーンを務めるそうね。レースが一段と華やぐわ」
茶を注ぎ終わると、芸術的な造形の白い手がミエリの元に茶托を戻した。
「昨日、衣装の一部の写真が送られてきたぜ。レースの運営に頼んだら、ちょっとだけならOKしてくれたって」
ミエリの脳裏に、携帯端末のチャットアプリの突撃小隊グループに共有された画像が浮かぶ。
要請を受けた教導学園を通してレースクイーンとして働くため、制服着用でリハーサルに出向いたハレ達は三人揃ってミニスカートをたくし上げて、衣装の下半身を露わにしていた。
ハキタ・ワークス伝統のホワイト&スカイブルーで彩られたハイレグレオタードだ。過剰な鋭角で切れ込んだレオタードの下半身、長い脚に肉感的な太股、食い込みの圧でリフトされた股間が三人分並んでいる。
特にククリスの褐色肌と白いハイレグ衣装のコントラストは鮮やかであった。
美少女JK達の美しく鍛えられた曲線を引き立てる、刺激的なコスチュームを思い出すと、ミエリは赤面しそうになった。
「それと一つだけ通達があるわ」
ネレの真剣な表情と声音に、思わず背筋を正す少女達。しかし、ネレが何事か告げる前に室内に乗り込んでくる者がいた。
「その件は僕から話そう」
襖が開き、入ってきたのはショートパンツの軽装に白衣を羽織った碧髪の少女。《袰月》が誇る天才科学者、グリムナイア博士である。
「わっ博士! どこから湧いて来たの!?」
おどける終をスルーして、グリムナイア博士は胡坐を掻いて座った。突然の来客に対して、ネレは虚空から生成した茶碗を手に取って茶を用意する。
「ミエリ、君らに接触してきたステイツの工作員がいただろう。彼女の話をしにきた」
「クリスティとかいう姉ちゃんだろ? 何かあったのか」
ミエリは軽く身を乗り出していた。グリムナイア博士は真面目な時もたまに冗談を言う時も真顔なので、どっちだか分からない。
「彼女が気に入ったので、支援することにしたよ。その方がレースも盛り上がるだろうからね」
そう言って、差し出されたお茶を一口、いや飲み干す碧髪の少女博士。
「いつもながら急ですね」
「うむ」
当たり前のように利敵行為と取れる行為を口にする博士に、流石のイリシアも呆気に取られていた。
「いやいや、うむではなく! 博士、事前に保安局に話は通してくださったんですよね!?」
長距離打撃戦隊員であると同時に、保安局の要員でもあるリーゼは、普段の淫靡な気配をかなぐり捨てて、グリムナイア博士に確かめる。
それに応えたのは保安局長であるネレであった。
「安心しなさいリーゼ。博士の行動は私が承認したものよ――――だけど」
言ってから、優雅としか形容しようがない動きで立ち上がり、グリムナイアの背後に回り込むネレ。
「あくまで非接触での偵察という話だったわよね? 勝手に他国の工作員と接触するどころか、援助などされては困るわ」
オルランド王国から来た三人の士官候補少女達が見ている前で《袰月》の管制AIは、握り拳で少女博士の側頭部を捻じ込みように圧迫する。
長身かつ豊満な体付きの有機義体で碧髪の少女を押さえ付けるようにして、グリグリ攻撃を続ける。もがく博士の動きで着物がはだけることはなく、超然とした佇まいは保っているのは流石だ。
「いたたたた~……ごめん、ごめんて。あのクロムカイルというアロウヘッドは興味深かったし、何よりもだ。出来の悪い副作用だらけの強化薬に我慢ならなかったんだ」
抑揚のない声で一応痛がるグリムナイア。どうやら、ここにやってきたのは有質量ホログラムではなく実体のようだ。十五秒ほどネレのお仕置きは続き、博士は解放された。
ネレは博士の意図は理解している。クリスティ・サンダーランドなるステイツのスパイは《袰月》側に引き込める可能性が高く、そのための餌として支援を決めたのだ。
「ごめんなさい。客人の前で見苦しいところを見せてしまったわね」
元の位置に座り直してから、ネレはアンゼリカ達に謝る。
「あー痛かった」
自分の側頭部をさすりながら、立ち上がるとグリムナイア博士はミエリの方を見た。
「念のため、オルランド首都星軌道に仕上げ終わったF型を一機配備しておく。既にオルランド側にも許可も取ってある。君かイリシア達の機体からのコールで呼び出せるよう設定しておいた。有事の際には使ってくれ」
今回のレースは《袰月》からスタートして、ハッチを抜け宇宙空間に出て、オルランド首都星のゴール地点に降下する流れになっている。大気圏突入はステイツのヘッドフラッグGPでも数限られるレース構成であった。
「相変わらず仕事が速い。だけど有事って……心配し過ぎじゃないか?」
当日はオルランド宇宙軍と《袰月》防衛群が合同で警備に当たることになっている。テロ計画についても最大限警戒しており、その兆候はない。もしも、どこかの勢力の艦隊がワープアウトして暴れるような事態になってもすぐに対処できるはずだ。
「君達が大活躍したプラネット・マーダーの襲撃のような非常事態が起こらないとは言い切れないよ」
そう言ってから退室し、襖を閉めるグリムナイア博士。去り際、「それじゃ、健闘を祈っているよ三人とも」と言ってくれた。