ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する- 作:ザンザザン!
空気漏れを防げる程度の無害なエネルギーフィールドの隔壁を通り、広い通路を駆け抜ける。《袰月》の船外、宇宙空間に飛び出した最初のアロウヘッドはオレンジ色の烈鷹。ミエリ・ライオネルだった。
オルランド本星の衛星軌道から離れ、惑星を大きく周回するコースで最速を競い合っている。
ミエリは現在、五位の位置。イリシアが駆る蒼いキャバルリーのスラスター噴射を睨み、追い抜くチャンスを伺う。なんとなく、サブシートに座るリーゼが笑顔で手を振ってる気がした。
加速に向けて休ませたジェネレータに鞭を入れようとしたその時、ミエリは身を強張らせた。
「ちぃっ! 後ろからもプレッシャーか!?」
背中からビリビリくる感覚。茶髪の王子様系イメケン女子、アクィラのアロウヘッドが距離を詰めてくる。
金髪ツインテのイケ雌JK&黒髪シニヨンの淫魔風JKの乗機と異なるカスタムが施された、ライトグレーのキャバルリーだ。
『私と勝負してくれるかな、ミエリ・ライオネル!?』
アクィラはわざわざ通信を入れてきた。美麗な王子様フェイスの女子高生は挑発的に笑いかけている。
『望むところだ。振り切ってやるぜ!』
野性的な笑顔で応じながら、ミエリは鋭く機体を九十度バンク、スラスターの推力を集め、最大効率で旋回させた。左舷にオルランド本星が眩い。
『ふぬぬぬぬぅっ~~~!!』
だが、宇宙に煌めく光景を眺める余裕はない。歯を食いしばり、Gに耐えるミエリの表情は他人にはちょっと見せられない様相であった。
烈鷹はコースの端を占め、そこから反れないようぴったりと合わせてカーブしている。
アクィラのキャバルリーはスラスターのバックブラストで装甲が焦げる寸前の後方に位置していた。コースアウトの恐怖や旋回による荷重に負ければ即座に追い抜かれてしまう。
ミエリは旋回しながら烈鷹を上昇させていた。アクィラ機を振り切り、前方のイリシア機を追い抜く。S字のコースで差が広がっていく。
「よっしゃ! 抜けた!」
喜色満面に叫ぶミエリの声がコクピットに木霊した。大気圏突入後のラストスパートで、烈鷹の空力特性を活かして追い抜く計画だったので、嬉しい誤算だ。
残るライバル、トップ3はプロレーサー。その牙城を突き崩すべく、金髪碧眼のオレ娘は神経を研ぎ澄ます。戦闘とは異なる、心地よいスリルがアドレナリンを迸らせる。それは、快感だった。
レースに出て良かったと心から思っている。勝っても負けても、楽しみ尽くそうという気持ちだ。
そんなミエリの感情に水を差すかのように、最大級のアラートが鳴り響いた。
「テロ!? どこのバカだよくっそう!」
悪態をつきながら、やるべきことはきっちりやるのがミエリ・ライオネルだ。それは他の参加者も同様で《袰月》の乗員達は素早くデータリンクを形成、情報共有を受けた。
所属不明、完全武装のアロウヘッド六機がレースコース目掛けて急速接近中。
警備の手薄な宙域を抜け、慌てて要撃に上がったオルランド宇宙軍のデルタエッジ二機が既に中破している。
レースは当然中止。緊急避難経路は既に指示されている。
『テロリストの機種はヴェスパね、連邦も非合法作戦で好んで使ってる機体だけど』
一拍子遅れて、ステイツからの刺客クリスティ・サンダーランドがデータリンクに参加した。
ハニーブロンドの髪が陽気な美貌に似合う、ステイツの女スパイはテロリストの正体が母国の不倶戴天の敵たるグズマ主義連邦だと勘ぐっている。
『結論を出すのは後でいいだろう。援軍が到着するまで、敵は私達が引き付ける。皆は指示に従い退避してくれ』
金髪ツインテのイケ雌、イリシアはクールに言った。黒髪シニヨンの親友、リーゼと共に駆る機体は既に不埒な襲撃者の方向に向き直っている。
『お前らだけにいい恰好はさせたくないな。オレも行かせてもらうぜ』
『流石は我ら長距離打撃戦隊のエース! 頼りにしてるからね!』
『任せてくれ』
サムズアップするミエリにリーゼは嬉しそうだ。ミエリを皮切りに、軍民を問わず数名のライダーが名乗りを上げてくれた。残りの参加者は整然と退避していく。
『ここで引いたらステイツのアロウ乗りの名が廃るわ。私にも手伝わせて!』
臨時で編隊を組んだアロウヘッドチームにクリスティのクロムカイルも加わった。
《袰月》の新鋭レースアロウヘッドを確保するべく、ステイツが送り出した最新鋭軍用アロウヘッドは武装を取り外してなお、厳めしいシルエットを形作っている。
状況に気を配りつつ、素肌が露出したレーシングスーツを着込んでいる者達は、最悪の状況に備えた。
『スーツを起動するぞ。できれば宇宙空間に放り出される事態は避けたいもんだが』
ミエリは股間の食い込みを直すと、コクピットに備え付けられたパワードスーツを起動。これは緊急脱出や宇宙空間での作業に用いる軽量の簡易強化服だ。
駆動音が響き、コクピットの両側が可動。現れた鉛色の装甲が四肢を包んだ。
頭部には重厚な装甲ヘルメットがレーシングスーツのアタッチメントに固定される形で装着される。
最後にレーシングスーツの露出部分を埋めるべく、装甲からナノマシンが滲み出て保護被膜を形成。
Tバック様式のスーツでもしっかりカバーされている。
短時間で装着が完了し、レーシングスーツに合わせたカラーリングに装甲表面が変色する。
頭部と手足を保護するだけの装甲であり、胴体部分は元々のレーシングスーツのままだが、密着型宇宙服と同一の素材で出来ているため、問題ない。
『こちらミエリ、パワードスーツを着終わった。問題なしだ』
他の機体からも問題なしの報告があり、イリシアは静かに頷いた。
「このスーツも結構好きなんだよね~♪ 特にイリシアが着るとパワードスーツとのギャップがセクシーで」
これから厳しい戦闘に突入するというのに、リーゼはあっけらかんとした声音で呼びかけた。
パワードスーツで身を固めた二人の手足は重厚な装甲に覆われ、美貌もヘルメットに隠されている。
だが、胴体だけは美少女女子高生の目を見張るようなボディラインが剥き出し。突き出るような豊かな胸、鍛えられた腹筋におヘソ、股座にぴったりと張り付く極薄の特殊繊維。
硬質な直線に囲まれた、優美な曲線が視線を誘導する。リーゼの言葉通り、扇情的に見えなくもない恰好だ。
「平常運転だなリーゼは。見習いたいものだ」
皮肉ではなくイリシアは本気で言っている。操縦桿を握り直し、深呼吸する。
非武装で重武装したテロリストの機体に立ち向かうなど、いくら再生処置を受けられるとはいえ自殺行為だ。
一応、レース用のアロウヘッドにも作業用のプラズマトーチやマテリアルブレードなどが標準装備されている。が、射撃武器でガチガチに固めた機体に肉薄するのは極めて危険だ。
見物に集まっていた航宙艦船は大慌てで避難し始めているがアロウヘッドと違い、素早く動くことはできない。アロウヘッドの破壊力は艦艇に対して甚大な被害をもたらす。
だから、少しでも時間を稼ぐ必要があるのだ。
『守るべき人々がいる。ならばやるべきことは明白だ。力を合わせて頑張ろうじゃないか!』
イリシア機の隣で、ライトグレーのキャバルリーを駆る、王子様なイケ雌が勇ましく呼び掛けた。
言葉こそありきたりだが、心からのセリフであり、アクィラ自身も戦火に飛び込む立場だからこそ、心を打ち士気を大いに高める効果を発揮する。
透明なバイザーで覆われたヘルメット越しのイケ雌フェイスに凛々しい笑顔を湛えてのセリフだからというのもある。
『クリスティ・サンダーランドさん。《袰月》を代表して貴女の協力に感謝します』
『えっ!?――――ええ! テロとの戦いは
自分より年下の女子高生。しかし、魅力迸るアクィラの美貌に陶然とするクリスティに、もう一人の超ハイレベルなイケメン女子高生イリシアの一言は追い打ちとなった。
『ステイツの方々は民間人であっても強い正義感を持っているんですね! さっすが、最大の地球帰還艦隊!』
民間人という建前を忘れたクリスティの発言をそれとなく指摘するリーゼ。美少女に悪戯する時とはまた異なる、悪い表情を浮かべていた。
バストアップウィンドウ付きの会話なのでしまったという表情が丸分かりだ。そんなクリスティに苦笑するミエリ。
『歓談の続きはテロリストをとっちめた後だな』
ロックオンアラートが鳴り響き、一転して真剣な表情になる金髪オレ娘。
『敵機ミサイル射出。数は二百超っ! 私達を狙ってくれてるのはいいけど、これはちょっとしんどいかも』
異論を挟まれることなく即席チームのリーダーになったイリシアの後方、サブシートで黒髪シニヨンの淫魔風JKが警告する。
『各機散開っ!』
イリシアの指示が飛ぶ。レーダーを埋め尽くす無数の誘導弾を振り切るべく、非武装アロウヘッドが軌跡を刻みながら宇宙空間を機動する。
その中でミエリが駆るオレンジ色の機体は一際鋭く、激しく宇宙を翔けていた。