ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する- 作:ザンザザン!
六機の乱入者を迎え撃つ競技用アロウヘッドの即席チーム。
非武装の利点である身軽さと、誰よりも速く駆けるためにチューンされた機体は、ブースター装備の戦闘マシンを翻弄し、その目的を邪魔していた。
誘導弾の群れを引き付け、ミエリは烈鷹を急上昇させる。
『ヘイ、ミエリ! 手筈通りにいくわよ!』
『そうしてくれ!』
友軍表示のコンテナが青い噴射炎を背負い、こっちに突っ込んでくる。
共闘することで、クロムカイルは実戦向きによく造られたアロウヘッドであるとミエリは実感した。
そして、これがステイツらしさか、とも感じている。
重戦闘機タイプの機体は複雑なマニューバーが求められるヘッドフラッグ・レースの軛から解放され、大推力に物を言わせて飛んでいた。
『3、2、1――――ブレイク!』
ミエリとクリスティの声が重なる。二機は慣性制御ドライブによって直角に曲がった。
追尾していたミサイルはアロウヘッドならではの回避運動に追いつけない。二群が激突して爆発が連鎖した。
さらに離れた宙域でも爆発が一つ。大型ブースターを背負ったモスグリーンのヴェスパが損傷していた。
「よし、当たった」
ミエリはニヤリと笑う。ミサイルを回避しながら、反撃を行っていたのだ。ヴェスパの進路を予想し、慣性モーメントまで利用し尽くして加速を与え、マテリアルダガーを投射したのである。
実体の刃は見事敵機のブースターに突き刺さり、爆発を起こしたというわけだ。
『Jesus! どんなマジックを使ったの!?』
『ただダガーを投げただけだ』
素っ気なく答えると、通信画面のクリスティは信じられないという顔をした。
敵機を損傷させたことに安心する暇もなく、すぐに頭上からアサルトレールガンの掃射が迫る。
(一方的に撃たれるってのは気分が悪いな。レールガンが一丁あれば、落とせるだけにもどかしい)
美しい弧を描くカーブから鋭い切り返し。敵のFCSを翻弄するオレンジ色のアロウヘッド。
視界から敵機を囲むターゲットコンテナが消えるが、感覚を頼りに位置を把握し続けている。
バスター砲撃の閃光が周囲で瞬き、一瞬だけそちらの状況把握にミエリは意識を割く。
艦船の密集方向に放たれた砲撃が一発あった。冷や汗が滲んだが、被害はゼロ。偶然ではなく、リーゼの頑張りのおかげだった。
(リーゼ様様だな)
コ・パイロットとしてキャバルリーの機体制御を行いながら、黒髪シニヨンのJKは電子戦と戦闘管制を行っている。
電子戦装備のないレーシングマシンでは限度があるが、イリシアに頼み込んで積んだ通信機材が役に立っていた。
通信プロトコルの脆弱性を悪用したクラッキングで、敵機のシステムに不調を起こさせ、攻撃を受ける可能性がある艦には警告を出しているのだ。
リーゼは壮絶なマルチタスクを涼しい顔でやってのけている。
普段は淫蕩で、悪戯好きで、ちょっと怠惰なところもある、悪いお姉さんだが、戦場ではプロフェッショナルな働きをする戦闘JKである。
『そっちにいる三機を孤立させるから、さっきダメージ与えた機体から火器をどうにかもぎ取って! そしたらわたしがハックするから!』
当人から通信が飛んできた。通信画面のリーゼは苦しそうな息遣いをしていた。イリシアも負担をかけないよう配慮しているのだろうが、飛び回る必要のある機体では、限度がある。
『お安い御用だ!』
装甲ヘルメット越しに最高の笑顔で返事をして、ミエリはペダルを踏み込む。烈鷹のスラスターが咆哮し、滑らかなバレルロールで獲物に向かう。
ヴェスパは目標を邪魔なアロウヘッドの小集団に変更。三機編隊で螺旋を描くマニューバーを取りながら突っ込んできた。
ブースターに被弾した機を含む編隊は速度を合わせるために、推力を落としている。
テロリストのアロウヘッドの動きは、一見すれば無人機のそれだが―――――
『咄嗟の動きが有機的だ。あれは機械にはできないよ』
イリシアとキャバルリー同士でコンビを組むアクィラが敵の動きを分析した。
王子様系のイケメン女子は乗機のリミッターを外し、大型ブースター装備の機体に追いつくスピードを発揮していた。
加速による苦痛に気概で耐え抜き、余裕ある表情を保っている。
『有人機だろう。だが、決死の覚悟も狂気も感じられない』
ライバルであり、友人でもある茶髪イケ雌の言葉を引き取る金髪ツインテのイケ雌、イリシア。
『なら生体CPUだね。できるだけコクピットは狙いたくないな』
生体CPU。機載AIや母機からの指令を元に機体を制御する部品として組み込まれた人間のことだ。
『オレもリーゼに賛成するぜ』
リーゼの方針にミエリも賛成だった。もしかしたら救いようのない悪党を再利用しているのかもしれないが、経験上、生体CPUにされるのは罪のない人々だった。
特に部品として適している、幼い子供たちだ。
《袰月》の技術ならば、犠牲者を回復させることもできる。助けない理由はなかった。
『生け捕りにするということね。やってみせるわ!』
率先して、クリスティはやる気を示した。
自らも自由を謳う国家に人生を奪われた身であるため、他人事とは思えなかった。
他のアロウライダーからも次々に了解の返答。さらに難しい状況になったというのに、民間人を含めて迷いがない。
戦意をいっそう燃え立たせ、ミエリはターゲットに肉薄した。もう片方の編隊は宣言通り、他のライダーが抑えてくれている。
「逃すか! 大人しくしていてもらうぜ!」
大型ブースターを損傷したヴェスパを追い込んでいる。
敵機は反転。後退、つまり逃げ惑う船がいる方向に向かって飛行しつつ、ミエリを迎撃しようとする。
右腕のバスターキャノンが烈鷹を狙い、高集束エネルギーが瞬く。ミエリはサイドスラスターを点火。歯を食いしばり、荷重に備える。弾かれるような急加速で加害範囲を逃れる。
「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
電磁加速された銃弾の雨をギリギリで避けながら、上昇で振り切ろうとするヴェスパを追う。上からかかる押し潰すような圧力に、ミエリの小柄な肉体がシートに押し付けられている。
烈鷹は抜群の運動性能を発揮し、ヴェスパから見て右側に回り込んだ。
金髪のオレ娘は格闘技の訓練を思い出し、操縦を完全思考制御に切り替える。
機動兵器サイズに拡大された、一糸纏わぬ己をイメージした。これが一番滑らかに機体を動かせるイメージなのだ。
「せいっ!」
ミエリの意識下、仮想の宇宙に金髪碧眼の美少女の裸体が躍る。鋭い蹴りを叩きこんだ。手応えあり。
打撃は敵機の右肩に強い衝撃を与え、バスターキャノンの使用を封じた。
次の瞬間には宙返りで左側に跳び、推力で勢いをつけて前腕から先をもぎ取る。
機体前面に装備されたバックスラスターを噴射して、烈鷹は後退。トドメは僚機に任せる。
『まずは一機!』
パールホワイトのアロウヘッド、厳めしいシルエットのクロムカイルが頭上から猛襲。ヴェスパの頭部を蹴りつけ、諸共に降下していく。
『リーゼ、頼む!』
『待ってました! こんな時代遅れのプロテクト一瞬で――――ほらできた!』
合図すると、リーゼが遠隔でアサルトレールガンをハッキングする。
ロックが解除され、使用可能に。射撃競技が含まれることもあるため、レース仕様のアロウヘッドにはFCSが残されている。
視界隅に表示された兵装ステータスに目を奔らせる。残弾は約半分、余裕だ。
『もうひと踏ん張りだ、持ってくれよ!』
乗機に呼び掛け、ミエリは全身の力を振り絞る。リミッター解除コードを入力。
出力上昇に呼応して、烈鷹のツインアイが光る。過剰給電によるものだ。
ツインアイの残光を残しながら急加速。散開していくターゲットに目を走らせる。
アサルトレールガンを装備していた機体はクリスティが無力化してくれた。残る敵は五機。一斉にミエリを狙ってくる。
弾幕を抜け、敵機より高い位置を占める。
ミエリは引き金を引いた。弾丸が敵機の武装や四肢を射抜く。
それでもブースターが生きている限り飛び回ろうとするヴェスパが、他のアロウヘッドに取り押さえられる。
リーゼは取り押さえたレーシング・アロウヘッドに近距離レーザー回線を開くよう頼み、ヴェスパを遠隔でクラック。強制停止させた。
残りは二機。ミエリは動きのいいヴェスパをロックオンしていた。
才能のある者を乗せているのだろう。振り切られないようにしながら、距離を詰める。
「ちょこまかと! 逃げるな!」
鬼神の如き表情で叫ぶミエリ。
烈鷹のフレームは設計限界を超えたマニューバーに悲鳴を上げている。
元々、酷使を想定しているレーシング仕様のマシンだが、今取っている機動は無理の限界を遥かに超えたものだ。
単に攻撃を避けるだけでなく、射撃で敵の武装と航続能力を奪いつつコクピットを破壊しないようにする。
そんな無理難題をこなすためには、是が非でも適切な位置から攻撃する必要がある。
高速で動くアロウヘッド相手であれば、機動による負担は何倍にも跳ね上がった。
ヴェスパにアサルトレールガンを向け、掃射。
攻撃はミエリの意図通りになり、損傷したモスグリーンのアロウヘッドが宙を漂う。
これでアサルトレールガンは弾切れだ。しかし、問題はない。
『最後の一機はこちらで引き受ける』
『そこで見ていてくれミエリ!』
イリシアとアクィラの声は勇ましく、迫力があった。
まずアクィラ機が紫色のプラズマを力場で固定したプラズマトーチを大型ブースターにねじ込み、破壊。即座に離脱。
爆風で吹き飛ばされ、バランスを損なったヴェスパをイリシアの蒼いキャバルリーが真っ向から抑え込み、黒髪シニヨンのJKがすかさずクラッキング。制御システムを黙らせた。
宙域は静かになった。ミエリ達はヴェスパから距離を取り、応援の到着を待っている。
『お疲れ様』
『そっちもな。援護感謝する』
クリスティに礼を言いながら、この襲撃を仕組んだ親玉はきっと今頃憤慨しているだろうとミエリは思った。
できるのなら、今すぐにでも捕まえてやりたい。
イリシア達に目を向けると、白灰色のキャバルリーに接触していた。
『かなり無理をしたようだな。帰りは曳航していこう』
『そうだね、お願いするよ』
リミッターを外して、強引にブースター装備の機体と互角の速度を発揮したアクィラの乗機は限界を迎えていた。
「今日もキミはよく頑張ってくれた。お互いゆっくり休もうじゃないか」
レーサーとしての愛機に語りかけ、アクィラはパイロットシートに身を預けた。
大きく伸びをして、ボディスーツが張り付く魅惑の腋を露わにする王子様系のイケ雌。
リーゼがシートとの接続を解除した。イリシアはその意図は察した。
「ネレ艦長から許可をもらったわ。保安局の演算リソースで襲撃犯の母艦を突き止めてみる。悪いけど、機体を少し寄せてくれる? ある程度近付いたら自力で泳いでいくから」
「了解」
キャバルリーが宙を漂うヴェスパに接近する。
その最中、天井に背中を張り付けるようにしてリーゼが頭上を通り抜けた。回転してイリシアの真正面に。抱き着くリーゼをイリシアは拒まない。
重厚で武骨な装甲に覆われた長身美少女JKの肢体のうち、ラインが露わになったままの胴体。極薄スーツ越しに豊かな乳房同士が押し付けられ、圧力で変形する。
くっきり浮き彫りになっている、割れた腹筋同士も接触していた。イリシアとリーゼはそれほど強く抱き合っていた。
「電子式の自爆装置は止まってるけど、機械式の単純なのがあれば動作する。万が一があり得るわ。だから離れていてね」
「心得た」
イリシアがクールにほほ笑む。コクピットハッチが開く。
「それじゃ行ってきます」
金髪ツインテの親友の感触や体温に勇気を分けてもらい、リーゼは敬礼しながら宇宙空間に飛び出す。
遠方ではオルランド宇宙軍の部隊よりも早く、本星の軌道を発ったデルタセイバーF型が飛来していた。