ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する-   作:ザンザザン!

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フルブレード・フルブラスト

 

 オレンジ色の烈鷹に接近してくる次元兵装対応型デルタセイバー。白と青を基調に、赤と黄が各所のアクセントカラーになっている。

 

 ミエリはタイプFと乗機をランデブーさせた。ミエリの主観では仰向けになっているタイプFのコクピットが開くと、それを合図に宇宙空間に飛び出した。

 

 無人のコクピットに滑り込むと、タイプFの正面装甲が速やかに密閉される。

 登録されたアロウライダーを確認した機体管制システムが覚醒する。同期したヘルメット内の投射装置を介して、網膜投影HUDが起動。

 

 オルランド王立宇宙軍のエンブレムと《袰月》先進開発局のロゴが並び、型式番号とペットネームが表示される。

 暫時的にタイプFのコードネームで呼んできたが正式名称が決まったようだ。名付けたのはグリムナイア博士だろうか?

 

「デルタセイバーFb(フルブレード)か。いいじゃねえか」

 

 このアロウヘッドを一騎当千の機動兵器たらしめる次元兵装デバイスは正常に稼働。

 ミエリを介して高次元からのエネルギーを取り込み、機体性能を大幅に向上させた。

 

 慣性制御推進で後退し、烈鷹から離れる。反転して目標に機体を向けた。襲撃してきたアロウヘッドの母艦だ。

 

『それじゃ、悪いけど仕上げはよろしくね』

『おう、任された』

 

 ヴェスパから離れ、蒼いキャバルリーに戻るリーゼがひらひらと手を振っていた。

 

 黒髪シニヨンのJKは電子戦及びサイバー戦担当としての本領を発揮。機体と生体CPUが記録していた全情報を即座に解析したのである。

 

 さらにオルランド星系王国に状況提供してもらい、星系内にいる母艦を特定してみせた。

 それどころか生体CPUの知覚情報から首謀者と思われる少女の顔まで抑えた。

 

 書類上、民間輸送船ということになっている当該の艦に逃亡の素振りはない。無関係を装い何食わぬ顔で逃げる算段なのだろう。

 

『大丈夫だと思うけど一応伝えておくね。機密保持プロトコルが妙に温かったわ。普通ならフライトレコードなんて自動消去するはずなのに、殆どそのまんま』

 

 その一方でプロテクトは強固だったとリーゼは告げた。後で首謀者が判明するよう仕向けられていたということだ。

 

『バレるのも計画のうちってことか?』

『そういうこと。けど即バレは想定してないと思う。ミエリがかっ飛んできたら目玉が飛び出るくらい驚くはずよ』

 

 会話しながらミエリは操縦桿を力強く握り、フットペダルに足を乗せた。

 

『とにかく、レースを台無しにした不届きものをとっちめてくるぜ。高みの見物か知らねえが、のんびり観戦していたことを後悔させてやる』

 

 蜂蜜色の髪の陽気な美女と金髪ツインテのクールなJKのバストアップ映像が視界の隅に表示される。

 

『Good luck! ミエリ!』

『武運を祈る』

 

 クリスティとイリシアが声援を送ってくれた。共に戦ったアロウライダー達も愛機に敬礼の姿勢を取らせている。

 

『デルタセイバーFb、ミエリ・ライオネル出撃するぜ!』

 

 ラフな敬礼で応じて、ミエリはフルスロットルで機体を発進させた。

 強烈な加速度はさっきまで乗っていた烈鷹と比べものにならないが、対G機構も性能相応なので苦ではない。

 

 クラスメイトであるアナスタシア所有のクルーザーを横切りながら、人型形態から戦闘機形態にチェンジ。

 複雑な変形を一瞬で完了して戦闘機に変じたアロウヘッドはエルロンロールでスピードの歓びを体現しながら、さらに加速する。最大推力。

 

 

 レオポルディネ・ディ・ラ・ゾンネンキントは艦橋で怒声を張り上げていた。

 

「ええい! なんとしても振り切れ! 最寄りの連邦州艦隊に逃げ込むのじゃ!」

 

 指示を出し終えると、金色を頂く頭を乱暴に掻き毟る。レースの襲撃に失敗してからレオポルディネは憤慨を続けている。

 

 迅速なる意思決定の元で発行されたオルランド星系王国からの証拠付きの逮捕状。突き付けられた停船命令を無視して全速力で逃亡している真っ最中だ。

 

「なぜ機体に記録が残されておるか!? 斯様な無能は妾の臣下にいらぬ! この場を切り抜ければ、すぐに見つけ出して処断してくれる!」

 

「僭越ながら皇女殿下、我らを陥れようと企む不届き者の工作によるものかと」

 

 傍らかに立つ女副官ゾエは冷静な声でレオポルディネを宥め、進言する。

 

 「不届き者」というフレーズを譫言のように数回繰り返してから、第四皇女はまた叫んだ。

 

「ならばその者を捕えよ! 細工に気付かなかった無能どもと共に処刑する!」

 

 怒り狂う元第四皇女に睨まれても、工作の主犯であるゾエは欠片も動揺せず己を裏切者の候補から逸らした。

 皇女と持て囃され、我儘放題に育った少女は御しやすい。しかし、宇宙軍派閥のスパイである女副官はひどく焦っていた。

 

(無能で威張るだけの小娘と一緒に心中など願い下げだ! 私には正しいグズマ主義世界を連邦に取り戻す使命がある!)

 

 今、この場で中央政府派の人間として逮捕されるのは好ましくない。

 元々、わざと証拠を残しレオポルディネが今回のテロの首謀者であると一週間ほどで露呈させる想定だった。

 

 しかし、《袰月》の技術はゾエの想像を遥かに超えるレベルにあり、諸共窮地に陥っている。無能への嫌悪はゾエの真の主人も同じなのだ。

 

「敵機α、新型アロウヘッドの射程に入るまで残り百二十秒! 信じられないほど速い! ダメです、本艦では振り切れません! さらに別方向から敵集団β、オルランド宇宙軍パトロール艦隊が接近中、こちらは三百秒後に会敵します!」

 

 レーダー要員が悲鳴に近い声で報告する。星系から脱出するワープ・ドライブに必要な速度に達する前に捕捉されてしまう状況だった。

 

「どいつも、こいつも! なぜこのレオポルディネ・ディ・ラ・ゾンネンキントの高貴なる復讐の邪魔をする! 不敬であるぞ!!」

 

 コンソールに拳を叩きつけて吠え狂う第四皇女。レオポルディネの傲慢さに鼻白みながら、ゾエはモニターに映るデルタセイバーなるアロウヘッドを睨んだ。

 

 次元兵装を搭載したアロウヘッド、銀河最高の知性を自負するグズマ連邦の科学アカデミーでかつて一笑に伏された概念が現実となって襲い掛かってきている。

 

 モニターから第四皇女に体ごと向き直り、心配するふりをしつつ考えを巡らせた。

 

(《袰月》もまた地球帰還を目指す艦隊国家。連邦を部分的に上回る技術力を持ち、思想面でも相容れぬ奴らは今後、白頭鷲主義連合(イーグル・ステイツ)を上回る脅威に成りえる――――あらゆる権謀術数を用いて対処するよう強く進言せねば)

 

 本来の派閥に復帰して、対立派閥の要人を失脚させ、レオポルディネの連邦での地位を奪い取った後の戦略を練り始めている。それは現実逃避であった。

 

「もはやこれまで。伴をせよ、ゾエ。そなたがいれば妾の神聖な復讐は続けられる」

 

 生の感情とエゴ剥き出しの怒りから一転、急に悟ったような顔を浮かべたレオポルディネはパスコードを入れ、コンソールの下から何かを取り出した。

 それは体にぴったりとフィットするパイロットスーツであり二着あった。続けて、格納庫に待機させておいた機体の出撃準備を命じる。

 

「"スヴォーロフ"で彼奴らに目にモノみせてくれるわ。時間がない、この場で着替えるぞ」

 

 ゾンネンキント帝国の第四皇女は立ち上がり、グズマ連邦ではまずお目にかからない装飾過多なドレスを意外なほど素早く脱ぎ始めた。

 人間性は最悪の暴君ではあったが腐っても皇族に名を連ねる者、胆力は人並外れてた。

 

 レオポルディネは硬直するゾエを視線で促してもいる。

 

「……御意」

 

 他に道はないと悟り、ゾエもまた軍服を脱ぎ捨てた。

 

 先に下着まで脱ぎ終え、軍人として鍛えた肉体を艦橋で曝け出した。周囲の視線を気にしながらぴっちりしたパイロットスーツを身に着けるべく、引っ張り上げていく。

 

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