ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する-   作:ザンザザン!

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ジャイアント・イージーキル

 

 赤を基調としたハードシェルと漆黒の極薄被膜によるパイロットスーツを着込み、レオポルディネ・ディ・ラ・ゾンネント三級政務官、あるいはゾンネンキント帝国第四皇女は"スヴォーロフ"のコマンダーシートに座っていた。

 

 スヴォーロフは紅に塗装された大型機動兵器だ。大雑把に人体を模したような人型、四肢は簡易的。全身に強力な火器を内蔵しており、フォースフィールドの展開能力を備えた次元兵装搭載機である。

 

 レオポルディネが庇護者の二級政務官より贈られ、私的に所有する機体であり、オルランド艦隊との本格的な交戦や自動殺戮兵団(プラネット・マーダー)との遭遇等の事態を想定して運び込んでいたのだ。

 

「出撃せい!」

「はっ!」

 

 レオポルディネの前方にある操縦席でゾエが応じた。女副官もレオポルディネと同じパイロットスーツを装着していた。

 十数名の整備要員が機体から離れている最中で衝突の危険があったが、そんなことはおかまいなしに艦尾ハッチに体当たり。

 加速と自重でハッチを吹き飛ばし、輸送艦を置き去りにして離脱していくスヴォーロフ背部にある十二基の光学兵器射出口が展開。

 

「我が裁きの雷受けよ!」

 

 火器管制を握るレオポルディネがトリガーを引けば、ホーミングレーザーが斉射される。

 

 艦橋に残した兵達には降伏信号を出すよう命じていた。減速する艦に自らも速度を合わせたオルランドの追撃機、デルタセイバーFbを狙っての攻撃だった。咄嗟に加速して回避運動を始める人型機動兵器に紫色のレーザーが殺到する。

 

 当たる、レオポネディネとゾエは確信していた。しかし――――

 

「その手には慣れっこなんだよ!」

 

 ミエリが戦場に出た頃には偽装降伏からの奇襲は常套手段だった。慣性制御ドライブに保存しておいた慣性を解放。歯を食いしばる。

 

「くぅぅっっ!」

 

 弾かれるような猛加速の中でスラスターを迸らせ、さらに軌道を変えてホーミングレーザーを振り切った。

 

 紅の大型機動兵器、その上方を占ている。バスターキャノンを構えるデルタセイバーFb。回避運動と平行した短時間のチャージだが問題なし。

 薄緑色の光が敵機前方で炸裂。空間を揺らす衝撃波が巨大な機体を煽るが、フォースフィールドで相殺され、ダメージはない。

 

 第二段階への改修に合わせて搭載された新型バスターキャノンは圧縮したエネルギー弾体を高速で射出し、着弾によって炸裂させるものだ。

 直撃せずとも、広範囲に生じた衝撃波で敵機に損害を与えられる。

 

 大型機動兵器は未知の兵器に驚いたようだが、姿勢制御スラスターでバランスを取り戻した。

 

 ミサイルの一斉掃射がデルタセイバーFbに襲い掛かる。ミエリはアンダーバレル・オプションとしてレーザーキャノンと銃剣がセットされたマシンキャノンで応戦。銃火が噴く。

 

『最後の警告だ! 全兵装をロックして投降しろ!』

 

 ミサイルは迎撃し、ホーミングレーザーには素早い切り返しで対処。レーザーのうち二発はフォースフィールドに掠らせ、軌道偏向させて弾く。

 

 突っ込んでくるデルタセイバーを睨み、レオポルディネは通信回線を開いた。

 

「殿下、お止め下さい! 通信は証拠に残すことになりま――――」

 

 ゾエの制止空しく、第四皇女は宣言。さらに機体胴部の拡散ビーム砲を発射。

 

『不敬者め! ひねり潰してくれるわ! このスヴォーロフをたかが一機のアロウヘッド如きで止められると思うな!』

 

(このバカ娘! どこまで私の脚を引っ張れば気が済む!)

 

 通信に応じたレオポルディネを内心でゾエは罵った。しかし、すぐに冷静さを取り戻し、操縦に専念する。

 今この場をなんとしても切り抜けなけばならないのは彼女も同じなのだ。

 

 本来の計画が狂い、自国の最新兵器で逃げ出す大失態を冒した身が、手ぶらで軍派閥に復帰することは叶わない。

 新型アロウヘッド、次元兵装を搭載して超高性能を実現した機体とそのアロウライダーを鹵獲するつもりでいた。

 

(へぇスヴォーロフって言うのか、あのデカブツ)

(分析、敵機スヴォーロフがグズマ主義連邦製である可能性、89%)

(ありがとなエスリー、俺も同感だぜ)

 

 迫ってくるビームの閃光と高熱源警告が視界に広がる最中、ミエリは機載AIと思考のやり取りを交わしていた。

 

 機体を戦闘機形態(ファイター)に変形させ、急降下してビームを掻い潜る。

 一撃離脱戦法を取る紅の敵機を追いかけた。推力の面でもアロウヘッドを凌駕していたが、デルタセイバーFbの速度と運動性は桁違いだ。

 

 民間の艦船群に被害が及ばない宙域に敵機を追い込む。

 跳ねるようにロールして、背後を取ってハイマニューバミサイルを発射。白煙を曳く高機動誘導弾は飢えたサメのように目標に食らいついていた。

 

『お生憎様、こっちのデルタセイバーはただのアロウヘッドじゃないんでね!』

 

 ミサイルの着弾を知らせるHIT表示が乱舞するなか、ミエリは意気揚々と吼えた。

 

 連続的な爆発でスヴォーロフのフォースフィールドが弱まっており、そこにマシンキャノンの機銃掃射を浴びていた。

 高次元エネルギーを纏った砲弾が装甲を削る。その威力に焦り、スヴォーロフは被弾から逃れるように急旋回する。しかし、振り切るには至らない。

 

 反撃に転じるべく、女副官は急制動と共に操縦桿を右に倒した。

 

「殿下、今です!」

「分かっておるわ!」

 

 ゾエは機体を急反転させ、主砲を敵機に向ける。皮肉にも阿吽の呼吸である。拡散ビームと時間差で全身の武装を解き放ち、濃密な弾幕でアウロヘッドを圧殺せんと試みる。

 しかし、敵機はレーダーと視界から消失しており、全力の砲撃は空振りとなった。

 

 「どこだ!」という声がコクピットで重なっていた。第四皇女と面従腹背の女副官は首を振り、血眼になって敵機を探し回る。

 

「後ろじゃ、ゾエ!」

 

 不意に背後からの急接近警告。

 

「ぬぉぉぉぉぉぉ!?」

「うわぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 爆発と衝撃で巨大な機体が回転し、振り落とされないようレオポルディネとゾエは必死で操縦桿にしがみつく。

 

 瞬間移動の異能、フラッシュシフトによって一瞬で背後に跳躍したミエリはさらなる連撃を加え、スヴォーロフの紅の装甲を加速度的に損壊させていく。

 

 その最中、通信が入った。

 

『できればその機体のパイロットは生け捕りにしておきたいわ。お願いできる?』

 

 《袰月》 管制AI分体、ネレが頼んでくる。保安局長として今回のテロの主犯は抑えておきたいのだろう。

 

『コノハからもお願いします』

 

 それに続き同じく管制AIであり、そのまとめ役であるコノハからも要請が。

 

『防衛群としても鹵獲を希望する』

 

 鋭い眼差しと各部に甲冑をあしらったメイド服が印象的な管制AI。艦隊防衛群を司るハガルが実直な態度で言った。

 

『ワシも皆に賛成じゃ』

 

 管制AI分体の最後の一体、泰然自若としたカイネがメイド服を押し上げる、豊かな胸を誇示する姿勢で述べる。

 

 満場一致の要請に金髪のオレ娘は笑顔で『了解!』とだけ返事して、敵にトドメを刺すべく必殺のマニューバーを開始。

 

 

 同時刻。《袰月》艦内。ハキタ・ワークス主催ヘッドフラッグ・レース中継会場。レースクイーン控室。

 

 拡張現実ウィンドウにデルタセイバーFbとテロリストの大型機動兵器の戦闘が生中継されている。

 圧倒的な戦闘の光景は、オルランド星系全土を沸かせ、凄まじい視聴者数とコメント数を叩き出していた。

 

「いいぞいいぞ! そのままやっちゃえミエリ!」

 

 長い金髪の猟犬風ギャルJK、ハレはミエリの活躍に大興奮。激しい身振りででっかいお胸が陽気に弾んでいる。

 

「今のマニューバーの意図はですね――――」

 

 褐色が白と青のハイレグユニフォームに映えるククリスは、レースクイーン達に戦闘の流れを解説していた。

 

「えーとククリスさん、拡散ビームの弾幕にあえて突っ込む動きにはどんなメリットが? 素人目には自殺行為にしか思えないのですが……」

 

 観戦しているレースクイーンの一人が疑問をぶつけた。

 デルタセイバーFbが放たれた拡散ビームの閃光の僅かな隙間を縫って距離を詰め、バスター砲撃で下半身を粉砕したところだ。

 

「仰る通りです。敵の意表を突くことができますが、リスクが高すぎます。普通なら絶対にやらないマニューバです」

 

 即答してからククリスは続ける。

 

「ですが、それを平然とやってのけ、成功させるがミエリなのです」

 

 戦友(クラスメイト)としてククリスは断言する。

 ミエリの名が出ると「おー」という感心の声が重なった。金髪のオレ娘は《袰月》でも有名人となっていた。

 

 ククリスの背後に立って戦闘を見物する銀髪赤眼JK、灰音は静かに頷いている。

 

 

 交戦開始から七十五秒。決着の段階となった。

 

 上半身だけになったスヴォローフは、バスターキャノンの炸裂に煽られ、制御を欠きながら垂直上昇している。

 

「もう限界です! 脱出を! どうか!」

 

 レッドアラートで騒がしくなったコクピットで、ゾエは悲鳴を上げた。

 敵アロウヘッドの性能は圧倒的でスヴォーロフは赤子のように翻弄されていた。容赦ない攻撃が浴びせられ、レーザーで左腕部が根元から切断される。

 

「ひぃ!?」

 

 半泣きになり、残ったスラスターと慣性制御の最大出力で機体を右に猛加速させる。ゾエは連邦のエリート軍人として華々しい経歴を誇っていたが、過酷な任務を避け、厄介事は他人に押し付けて成り上がった手合いであった。

 コクピットにまで響く衝撃に、モデルのような長い脚が震えている。

 

「ならぬ! せめてあの機体に一太刀浴びせるまでは!」

 

 対してレオポルディネの戦意はいまだ旺盛だった。ビビり散らす女副官を一喝し、背部ホーミングレーザーを撃ち込む。

 

(やった! 兄上、レオポルディネは貴方の仇を討ちましたぞ!)

 

 確信できる軌道で、憎たらしいトリコロールカラーのアロウヘッドに向かう追尾レーザー。十二条の光が直撃し、閃光が敵機を包んだ。

 

 直後、レオポルディネは激しい衝撃でシートに叩きつけられた。

 

「なっ何が起こったのじゃ」

 

 強打した頭に鈍い痛みを覚えながら損傷を確かめる。殆どのシステムが停止している。それほどのダメージを一瞬にして受けたのだ。

 

 スヴォーロフを破壊したのは、自らが発射したホーミングレーザーであった。

 

 ミエリはククリスのフォースフィールドを強化する異能をコピーし、アレンジを加え、攻撃の反射をやってのけた。

 反射後のレーザーの軌道は自力で調整しなければならなかったが、上手くいった。

 

 上半身だけでも巨大な機体の装甲はボロボロになっている。スヴォーロフをオルランド宇宙軍の空母まで曳航し、甲板に下ろした。

 

(せっかくだ。面を拝んでやる)

 

 己の機体も甲板に固定すると、コクピットを開いてミエリは宇宙空間へ。

 スヴォーロフに流れていき、装甲が破れて露出したコクピットハッチに手をかける。

 

 気合を入れて異能による筋力強化と簡易パワードスーツの力を合わせてハッチを強引にこじ開ける。

 

「大人しく―――――」

 

 言いかけてミエリは絶句した。

 

 軍人らしき長身の成人女性と通信に応じてきた少女、テロの首謀者であり連邦に亡命したゾンネンキントの第四皇女がスキンタイトスーツ姿で醜い争いを繰り広げていた。

 

「貴様の馬鹿げた企てのせいで私の人生は台無しだ! 私が導かねばグズマ連邦は堕落するばかりだというのに! 全人民の未来を奪ったのだぞ、貴様は!」

 

 女が怒声を張り上げる。通信をONにしているので、ミエリにも聴こえていた。

 

「なっ!? 気が狂ったのかゾエ!? 妾にそのような口を利くとは! いかに貴様でも許さぬぞ!」

 

 少女、レオポルディネが激怒して身を乗り出す。迎え撃つようにゾエと呼ばれた女が立ち上がり、身を翻した。ミエリの位置からは尻を突き出している格好だ。

 

「お前の如き小娘の赦しなど無用だ! せいぜい利用し尽くてやるつもりだったのだからな!」

「狗どもの機体に証拠を残したのも貴様か! こっこの裏切者めぇ!」

「今更気付いたの? 皇女殿下はお間抜けであらせられる!」

 

 ゾエは嘲笑し、レオポルディネは拳を振り上げる。

 

「ゾンネンキントにおいて皇族への背信は最大の大罪なるぞ! この! この! この! 大人しくせい! 妾自らが絞め殺してくれるわぁ!」

「小娘の力で大人が殺せるものか! だいたい貴様の国も皇族もとっくに消えてなくなっているだろうが! すぐに兄上の元に送ってやるぞレオポルディネ!」

 

 ハッチがこじ開けられたことに気付かないほど、口論に熱中している。

 

「何やってんだこいつら」

 

 ミエリはため息一つ。取っ組み合う二人の首にそれぞれ手刀を打ち込み、気絶させた。

 

 

 

「全機収容完了。乗せられていた子達の快復は可能だって」

 

 前方でコクピットシートに座るイリシアに笑いかけるリーゼ。

 

「それならば良かった」

「お見舞いの予定入れておく?」

「ぜひそうしてくれ」

 

 二人は合流したオルランドと《袰月》の混成艦隊を手伝い、ヴェスパの回収を行っていた。

 テロに使われたアロウヘッドは医療設備が充実した《袰月》の巡洋艦に収容され、生体CPUにされていた子供たちの治療が既に開始されている。

 

「それじゃあ、私達も降りようか」

 

 着艦コースを指示するガイドラインが視界に表示され、イリシアは管制に従って機体を飛ばした。

 蒼色の旧式アロウヘッド、キャバルリーはオルランドの空母に着艦した。共に戦ったアロウヘッドが格納庫に並んでいる。

 

 格納庫の与圧が開始される。その間に二人はパワードスーツを取り外した。露出部分を保護していたナノマシンは解けてパワードスーツに引き戻される。こうして、ハイレグスーツのみの身軽な恰好になった。

 

「ふぅ」

 

 リーゼは頭を振って、密閉されたヘルムで籠った熱気を振り払っていた。

 金髪のツインテールが空間に靡く。イリシアは大きく伸びをしていた。

 

「やあ、待っていたよ」

 

 ヘルメットを外して、ショートヘアの茶髪の王子様系イケメン女子、アクィラが呼び掛ける。クリスティなども含め、迎撃に参加したアロウライダーが勢揃いしていた。

 

「すまない。遅くなった」

 

 イリシアはアクィラと視線を交わす。

 

「どうも~」

 

 魅力たっぷりの笑顔でオルランド宇宙軍の整備兵らに挨拶するリーゼ。格納庫内の整備員の注目を浴びながら、イリシアとリーゼは着地。

 

 アイコンタクト一つでアロウライダー達と揃って整列。謝辞を述べるため、格納庫にやってくる艦長と広報担当官らを待つ。

 

 リーゼはクリスティの肩を突付くと小声で訊いた。

 

「返事は決まったかしら、クリスティさん?」

「ええ。《袰月》は素敵なところね」

 

 最新鋭機を駆ってテロリストと戦う羽目になった白頭鷲連合(イーグル・ステイツ)の女スパイはにこやかに答えた。

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