ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する- 作:ザンザザン!
灰音欠席の上で行われた二回目の出撃は無事に終わり、航路の安全は確保された。艦隊は連合の艦隊と一度別れながらも同じ目的地、演習宙域に向かっている。
――――ミエリは独り、戦場にいた。
空間がたわみ、閃光が爆ぜる。デルタエッジの背後にいた友軍がまとめて消し飛んだ。
スラスターを最大燃焼させながら、ここぞというタイミングでバレルロール、その最中にバスターキャノンを撃ち込む。爆発の中から何事もなかったかのように出てきた黒一色のヒトガタにミエリは舌打ち一つ。
「墜ちるまでやってやる!」
戦場を蹂躙する敵機に突っ込む。アロウヘッドより一回り大きい、機動兵器タイプのプラネット・マーダー。実際にやりあった時と違い、タイプ・タナトスとターゲットコンテナに表示されている。
宇宙空間を漂流していたミエリの機体から回収されたデータを基に再現されたシミュレーションプログラムなのだ。
弧を描きながら接近。銃撃の応酬を繰り広げる。火力ではマーダーが圧倒的に勝っており、直撃したら即、撃墜されてしまう。
こちらの攻撃のダメージはバスターキャノン以外微々たるもの。それでもアサルトレールガンの弾丸を一点に集中すれば、タナトスの四つ目アイカメラの頭部装甲を破損させられる。
優位な流れで戦闘を進めている。全体の損耗率は実際より五%少なく、母艦の損傷も軽微だった。
ミエリが配属されていた艦はプラネット・マーダーを研究するための設備と人員を有していたが、成果と呼べるものは上がらなかった。
若くして研究主任を務めていたノイミの陰った表情をふと思い出した。彼女はよくやっていたと思う。
戦場に意識を引き戻し、ミエリは尋常ではない速度で飛び回る紅い軌跡を追った。
互いの距離が詰まり、タナトスの姿がはっきりと見える。センサーを赤く禍々しく輝かせる、無人兵器は大型であることを除けば、アロウヘッドに酷似していた。多数の高機動スラスターとパネル状の慣性制御ドライブが刺々しいシルエットを描いている。
既にバスターキャノンのチャージは終わっている。かつては頭部を吹き飛ばして機能停止に追い込んだが、今回は胴体に風穴を開けて爆散させるつもりだ。
「ちぃっ!」
散弾が降り注ぎ、デルタエッジは緊急回避。胴体と右腕に被弾しないよう、他の部位を犠牲にしながら生き残る。機体を回転させ、直感でタナトスの未来位置にバスターキャノンを向ける。発射。視界がホワイトアウトする。
シミュレーションはそこで終了した。勝利を意味するCOMPLETEの文字が網膜に投射されている。コクピットをそのまま流用したシミュレータは密閉されているが、外からの歓声は聞こえる。
額の汗を拭う。ナノシェルスーツの下も汗でびっしょりだ。
ミエリが出てくると観客は拍手喝采。気恥ずかしくなる金髪のオレ娘であった。
仮想戦闘だというのに噴出したアドレナリンで昂っていたし、喉が渇いた。
「んっ――――」
不意に強い刺激が下腹部から駆け巡ってきて、甘い声が漏れる。
実戦さながらの緊張で生存本能が刺激され、ミエリの身体は敏感になっていた。小ぶりな胸の先端はいつもより硬くなっている。試作小隊の黒髪淫魔リーゼに見つかったら、ここぞとばかりに弄ばれてしまう状態である。
「ごめん、通して」
人だかりを掻き分け、銀髪の少女がやってきた。
「回復したのか」
顔色は健康そうだが、心配になって訊いた。
「大丈夫だ。喉、乾いてない?」
灰音はドリンクを差し出す。そのまま、シミュレーターが並ぶ一角から少し離れた場所で壁に身を預けて話をした。
自分の分もちゃっかり用意してあり、灰音は可愛らしい所作で清涼飲料水を啜っていた。
「どうしたんだ。らしくないじゃないか」
灰音はミエリに何か話しかけようとして、その度に躊躇していた。
「あっああ。そのえーとだな」
もじもじして、黒紫色のナノシェルの内腿をこすり合わせる灰音。無表情でクールな戦闘少女の初めて見る姿だった。
意を決してミエリの方を向く。胸が当たりそうなほどの距離で見つめ合う金髪と銀髪のJK。
「嫌われるんじゃないかと思ってずっと黙っていた。一応、機密だから安易に口外するなと言われてもいたし――――ミエリがさっき倒したタナトス。あれは私なんだ。今は人間だけど私はマーダーだったんだ。だから、ミエリを殺したことにもなる」
深紅の瞳がミエリの様子を窺った。
「知っていたぜ」
優しく包み込むような声音で、快活に笑うミエリであった。
「んっミエリ、大好き……!」
「わわっ! ちょっ! 急に抱き着くなよ!」
嬉しくて、感謝の気持ちも一杯で。思わず自分より背の低い金髪オレ娘をぎゅぅぅっと抱きしめる灰音の瞳は潤んでいた。
翌日。食堂にて。長距離打撃戦隊の面々はスイーツバイキングと洒落こんでいた。連合との演習に向けて英気を養うお題目で催されている。
翔鶴専属のパティシエ達によるデザートの数々が広大なテーブルに並べられ、競い合うように輝いている。兵科や階級に関係なく参加可能なバイキングであった。
他の艦でもそれぞれのやり方で戦意高揚の催しが執り行われている。
リラックスするために私服の着用許可が出ており、皆それに従っていた。《袰月》の最近の流行はお腹を露出させる短いトップス、それに際どいホットパンツ。
健康的かつ鍛え抜いた身体をアピールするのに向いたファッションなので、食堂内にも腹筋と太股を強調する美女と美少女が溢れていた。
ちなみにミエリは流行りに乗らず清楚な白ワンピースである。あっちこっちから熱い視線が注がれていた。
「昨日のニュース見たか?」
ミエリを同じテーブルに招いた灰髪の凶狼系姉御、ラヴィが同席している者たちに問うた。部隊ごとに集まっているわけではなく、仲の良い者同士で、あるいは空いてるテーブルに適当に座っていた。ロングレンジクラスも翔鶴で友人を作り、各々そこに加わっていた。
「予想通りの内容ではあったな」
我らが金髪ツインテのイケメス、イリシアが一言。巨大な企業グループであるハイペリオンは、大手メディアを傘下に収めており、《袰月》と協同しての治安維持活動は彼らに都合のいい形で報道されていた。
あたかも治安維持の主体は連合側であると見せかける内容で、巧みな編集でさも大戦果を挙げているかの如く演出している。
旗艦アンフィニにて、自信たっぷりにインタビューに答えていた禿頭の提督は名役者だとミエリはふと思った。
勿論、《袰月》としても虚仮にされっぱなしで終わる気はない。
食堂の片隅に《袰月》が招いた別な大手のメディアのクルーがおり、デザートを山盛りにして堪能している。感動さえしていた。
「あそこの人達とエルザレドちゃんと一緒にお話してみたけど、結構感じよかったな。シルフ族は初めて見るみたいで、ちょっと驚いてたけど」
殲滅小隊のアラヒナが口を挟む。
「まあねー」
試作小隊のリーゼの暢気な声。
「ステイツはまだ話せる人が多いよ。連邦の政治家――――政務官とか高級将校なんかはもう自分の世界観に凝り固まっちゃった感じさ。会話するのが大変なんだよ」
保安局員つまり諜報員でもある黒髪シニヨンJKの言葉は重い。
「いつもながらよく頑張ってるよリーゼは」
「ありがとーイリシア。ミエリもリーゼお姉さんを褒めて」
「はいはい。リーゼお姉ちゃんえらいえらい」
「両取りはずるい」
たまたまミエリ達のテーブルの傍を通りかかった灰音がむっとする。昨日の一件で、もやもやした気持ちが晴れて、足取り軽やか。
そういえば連合の話で一つ、皆と共有したい内容があった。
「大したことじゃないんだが」
そう前置きしてからミエリは続ける。
「アンフィニにオレの知り合いが乗ってるかもしれん。ニュースでちらっとだけど映ったんだよ。他人の空似かもだが」
プラネット・マーダーの研究を任されていたノイミ・ローレンらしき濃いめの茶髪の女性が白衣を纏って忙しそうに通路を歩いていたのだ。
タナトスと交戦した時、非戦闘員はコールドスリープに入っており、状況次第でポッドを射出する手はずになっていた。だから、宇宙を彷徨い続けた本人という可能性も一応ある。