ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する- 作:ザンザザン!
艦隊の代表者として、終は雷級巡洋艦で連合艦隊の中核連隊(数千から数万単位の艦艇が艦隊を組むため、編成には歩兵の単位を用いる)に出向いた。
翔鶴を預かり、時には専用のアロウヘッドで無双する神薙終は黙っていれば絶世の美女だ。凛々しく勇ましい肢体の暴力的なお胸が際立つ礼装軍服を着込み、少数の護衛を伴い連合の旗艦アンフィニに乗り込んだ。
式典での礼や挨拶は卒なくこなし、禿頭が眩しいロダン・フェリックス提督と握手を交わした。ハイペリオン・グループの重役を兼任しており、根っからの軍人ではない。にこやかな人柄で鷹揚。しかし、それが過ぎる面があると視た。
今回の演習は自軍の圧勝で終わると確信し切っており、終の勝つ気満々な態度に何の危機感も煽られていない。
連合、正確には現政権に強い影響力を持っているハイペリオン・グループは演習を通して《袰月》に戦力を誇示しようと目論んでいる。
"多少"優れた技術力を持つ程度の弱小艦隊国家に宇宙戦争とは資本と物量が決するものだという現実を叩きつけるべく、大人と子供の喧嘩じみた演習を仕組んだのである。
力の差を思い知らせる、という意図は実のところ、誘いに乗った《袰月》も同じだ。
演壇に立って、合同演習の場を設けてくれた連合への謝辞と演習への意気込みを述べていると、居並ぶ将兵の視線に戦意がますます高まった。
これから圧倒的な物量と進んだ技術によって叩き潰される弱小艦隊国家の代表者を嘲笑する目だったからだ。
(よーしキミたちに凄いモノ見せてあげるよ!っなんてね)
式典は滞りなく終わり、形だけの敬礼を持って送り出された終は今、巡洋艦から連絡艇に乗り換え翔鶴に戻っている。
「はーやれやれ。肩が凝った」
礼儀正しく正装などせず、ナノシェルスーツで堂々と登壇してやれば良かったと今では思っている。更衣室には脱ぎ捨てたばかりの礼装軍服が漂っている。
スポーティーな上下の下着もナノシェルスーツを身に着けるには不要なので脱いでしまう。
「よいしょっと」
《袰月》最強格の女修羅は下から脱ぐ派であった。汗を吸った下着を無重力の室内に浮かべ、ナノシェルスーツをラックから取り出す。
先に着替えを済ませた護衛が壁際で終を見守っていた。
黒系統のナノシェルで浮き彫りになっているのは、極限まで引き絞られた筋肉。スーツの腰には一振りの刀。
一対の角が目を引く、シルフ族とはまた異なる異種族の少女――――に見えるのは外見だけで実年齢は終と同じ。教導学園時代からライバル関係にあるジェラである。
ジェラの種族であるシュテン族は銀河系の外から訪れたとされる戦闘民族であり、鬼を彷彿とさせる外見をしていた。
少数ながら悪魔的な戦闘力と独自の次元兵装が施された大型機動兵器で恐れられている。
同族と
白系統のナノシェルスーツの首穴に足先から通し、スイッチを入れて体にフィットさせる。ナノシェルスーツには補正機能があるので、終の巨乳による肩の負担や動きにくさを軽減する。
サランラップの薄さ、光沢あるラバーのような質感のナノ被膜が終の身動ぎに合わせて、衣擦れの微かな音を立てた。
ジェラと一緒に翔鶴に戻った。彼女は格納庫に向かう前に
「指揮に期待しているぞ」
と厳かな口調で一言。
「ジェラに期待されるとちょっとプレッシャーだな~」
指で頬を掻きつつ、急ぎ足でブリッジに向かう終であった。
「お待たせ~」
大雷級戦艦"翔鶴"のブリッジ。美しい曲線の肢体に筋肉と覇気を纏った美女が入ってきた。
圧倒的な武と暴を兼ね備えながら、他者を圧しない明朗快活さがあるのが終という女で、居るだけでブリッジの空気が和む。
「お帰りなさい艦長! 式典での御姿とても立派でした!」
「ありがとーリジットちゃん。いやー緊張したよ」
操舵手のリジット・アベニューが振り返り、混血のルーツを示す活発な褐色の貌を向ける。
赤髪の女艦長は自分の席にお尻を下ろした。それに呼応してブリッジが下にあるCICに降りていく。
「式典に出ている間にフランドルのカリンカから報告があったわ。保安局の懸念は的中。連合はマーダーのリバースエンジニアリングだけでなく、それ自体の制御を試みてるわ」
副艦長のシフォンが告げた。フランドルは送り込んだワームで盗んだ機密情報の解析を完了したのである。
連合に対する電脳攻撃という危険かつ違法な手段に出たのは保安局が獲得した情報が大きな懸念になったからだ。
ロングレンジクラスの灰音が体調不良を起こした話も耳に入っている。それが、アンフィニから放射された信号によるものであることも。
「アンフィニのラボでの制御実験の成果は芳しくないわ。単純にマーダーを呼び寄せる結果になるというのがグリムナイア博士の所見よ」
「了解。実戦に移行するのも想定していこう」
密かな緊張が翔鶴艦隊に流れる最中、機動兵器部隊は出撃していく。
今回のロングレンジクラスはフェンリルから全機発艦する。白亜の艦体、底部に装備されたレールキャノンが厳めしい特務巡洋艦は艦隊の先頭を司っている。
「漲ってきたね」
白い機体に上半身を中心にした赤のツートンカラーが目立つアロウヘッドのコクピット。長い金髪を纏めてヘルメットを被ったハレが自分の機体に声をかけていた。
音速の翼で大気を切り裂き、大空を想うがまま駆けた制空戦闘機の末裔であることを誇示するが如き、鋭角的かつ洗練されたフォルムの人型マシン。FFR-14A9"ファイアイーター"。
「ハレ小隊長、小隊全機セットアップ終わりました~」
キャットウォークから整備兵の声がかかった。
ナノシェルスーツに工具を収納するポーチを装着した彼女たちは、特務巡洋艦フェンリルにおいては他所からお邪魔している立ち位置にあった。
「ありがと!」
間延びした口調の整備兵に笑顔でお礼を言う。いつになくハンガーは慌ただしい。
普段は自動整備システムの力を借りながら自力で整備しているが、今回は専門の整備クルーが翔鶴艦隊より派遣されている。
「そこ、ぶつけないでよ!」
「まだ時間あります。アサキャのバレルは新品にしときましょう」
「弾薬のオーダー纏まりました、自動給弾システムに流します!」
等々。あちこちで声を張り上げ、出撃準備に励んでくれている。
灰音に与えられている漆黒のファイアイーターの最終仕上げはグリムナイア博士が担当した。
「機体とスーツに中和機構を組んでおいた。これで信号は遮断されるからストレスなく操縦できるよ」
断言である。博士は相変わらずナノシェルスーツを着ていない。
白衣姿であり、減圧された格納庫の中で発した声が灰音のヘルメット越しに伝わっていた。
恐らくこの博士はホログラムで、音声は声帯から発されてるのではなく、通信しているのだと灰音は推測した。
「ありがとう博士。すまない余計な手間を取らせてしまって」
「気にするなよ」
それだけ言ってグリムナイア博士の碧髪の少女をした虚像は消えた。
発艦準備は滞りなく進み、フェンリルの直掩である不良小隊から出撃することに。
ダークブルーのカラーで統一された四機がカタパルトに順次運ばれていく。
『じゃ、先に出てるぜ』
部隊内通信でクラスメイトに告げる、灰髪の不良姉御。
『自分、燃えてきたっス!』
『あら、珍しいこともあるものですわね。かくいう私も連合の方々に技を披露したくて指が疼いているのですが』
その子分、ダウナー系三下ヤンキーのクーリエがやる気をアピール。乗っかるお嬢様風の紅黒。
『気合を入れるのはいいけど演習は長丁場よ? ペース配分には気を付けなさい』
ピンク髪の女王様メティスが釘を刺した。
不良小隊の次はアサルトフォートレスを装備した隊長機の出撃を合図に試作小隊が出る。さらに妖精小隊、殲滅小隊が上がった。
『お待たせしました。突撃小隊はゼラ先生を加えて出撃願います。幸運を!』
魅惑の美声で赤髪ツインテールの女子高生艦長ゼフィリスがゴーサインを出せば
『待ってました!』
『ゼフィリスも幸運を』
『頑張る』
『おう』
『皆の熱心さには感動するよ。ボクも本気でいかなければね!』
突撃小隊とクラスのお子様先生が士気旺盛な返答。
(やっぱ気になるな)
それは、過去が放つ重力に引き寄せられているようだった。ミエリはニュース番組にちらりと映った知り合いらしき女性の姿が気になって仕方なかった。
ミエリ・ライオネルが今、ここにこうして女子高生として生きていることを伝えたい。そのために一つ大胆な真似をする気でいた。
思考は発艦に伴う強烈な加速Gで一瞬中断された。歯を食いしばり、無数の推進炎が瞬く宇宙空間に飛び出す。何百もの光は友軍の機動兵器。
突撃小隊は先に発艦した殲滅小隊の深紅のファイアイーターに合流し、ゼラの黒とオレンジの二色に塗られた機体を先頭とする五角形の護衛陣形を組んでいた。
『レギ、ちゃんとついてこいよ。変な気を起こすな』
『エイリちゃん張り切ってる~♪』
『立派です姉様』
『かっからかうなよ!』
紅のシルフ、エイリは先生が一緒なので、普段以上に整然とした飛行を心掛けている。
艦隊同士が正面から激突する演習初戦の開始をアンフィニからロダン・フェリックス提督が宣言した。
上層部に届くまでに何百もの評価層を経た《袰月》の戦力分析は耳に心地よい、希望的観測に凝り固まっており、ファイアイーターなる次元兵装を装備した機種など高性能なアロウヘッドのみ警戒の必要あり、という現実とは全く異なる形で理解されていた。
旗艦である10km級巨大戦艦、翔鶴を含めた艦隊と機動兵器を圧殺するべく容赦なく一斉掃射を浴びせ、
『各機、防御と回避に専念! 一次攻撃は艦艇のみで行います!』
ゼフィリスがロングレンジクラスに旗艦からの指示を伝える。同時にフェンリルはレールキャノンを含めて全砲門を解放。翔鶴艦隊の攻撃はデータリンクで同期しており、余さず一万隻超の敵艦隊を狙い撃っている。
翔鶴とキメラが砲撃の中心だ。レーザーに荷電粒子ビーム、ミサイルが億単位で宇宙空間に溢れ、洪水さながらに連合の艦艇を飲み込み、撃滅した。
旗艦であるアンフィニを含めた新鋭艦や展開した機動兵器まで含めて全機が戦闘開始から二十秒足らずで全滅したのである。
モニターに表示されたCG映像ではあるが、その光景は黙示録のように壮絶だった。
「いくらなんでもやりすぎじゃないか」
ミエリは軽く引いていた。
連合側のスコアはゼロ。《袰月》の艦も機動兵器も一機も撃破できなかった。砲撃は全て迎撃されたのだ。
「全滅です。我が方の」
呆然とする禿頭の提督にCICのオペレーターが沈痛な面持ちで報告した。連合はこの日、《翔鶴》防衛艦隊群の実力を思い知ることになった。