ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する-   作:ザンザザン!

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ヴィクトリー・クライ・マイネーム

 数多の推進炎が光の群を成す。演習に勝利した翔鶴艦隊は次の演習の開始位置に移動していた。

 

 対する連合側の一万隻超の艦隊もフォーメーションを組み替えているが、その動きには当初溢れていた傲慢なまでの自信はなく、明らかに意気消沈していた。

 

 無理もない。

 

 数的には一千倍の戦力差がある白頭鷲主義連合(イーグル・ステイツ)側が酷敗を重ねているのだから。

 様々な想定の元で艦隊規模の模擬戦が複数回に渡って執り行われたが、その全てにおいて連合は全滅していた。

 

 ミエリ・ライオネルが属する長距離打撃戦隊はフェンリルと合流しており、赤髪ツインテのクラス委員長が操る巡洋艦に率いられている。

 

 白を基調に、赤と黒をアクセントとしたファイアイーターのコクピット。久遠は「うーん」と唸った。

 

『昨晩やった戦勝の祈祷が効き過ぎたのか? 火狩達に手伝ってもらったのが良くなかったかも』

 

 この結果を招いたのは自分かもしれないと、気弱なシルフの姫様は考え始めた。

 翔鶴艦隊はアロウヘッドが出る幕がないほどの圧勝ぶりで、ナノシェルの下の白い肌に殆ど汗を掻いていない。妖精小隊の三名も同様。

 

『考え過ぎでしょう』

 

 よく冷えた緑茶を飲み終えた白髪褐色の女侍風シルフ、八坂がまず一言。

 

『だね』

 

 コクピットで脚を伸ばしてストレッチしつつ、ボーイッシュな忍者の葉隠も一言。

 

『これは当然の結果だ』

 

 最後に腕を組み、鋭い眼差しで久遠を諫めつつ火狩が述べる。

 

『そっそうか、なら安心。うーむでも次の演習プログラムは機動兵器だけでの対艦攻撃だから祈祷が効いていて欲しいなぁ』

 

 連合の物量攻めを想像するだけで、ちょっとビビってしまう久遠だった。

 

 

『皆様、こちらをご覧頂いてもよろしいでしょうか?』

 

 試作小隊の幼い天才にして淑女、アナスタシアが口を挟んだ。

 ロングヴェール・ユニットに追加された広域偵察ポッドを演習で試しており、戦隊データリンクに連合艦隊の動きを詳細に分析したデータが表示される。

 

 戦隊の指揮官で先生でもある、ゼラは正規軍艦隊とタグ付けされたグループに着目。連合の艦隊はハイペリオン・グループの私設軍を上位として正規軍がその指揮下に統合されている。

 

『正規軍艦隊の生存時間が著しく伸びているね』

 

『それに比べてハイペリオンの私設艦隊は変化ないですね。瞬殺って感じ』

 

 やや小馬鹿にした口調の黒髪シニヨンの試作小隊員リーゼ。

 

『通信を分析してみたのですが、正規艦隊の方々はいわゆる現場判断で対応し始めています。対してハイペリオン側は減給などのペナルティで脅しをかけていますが、今のところ一顧だにしていません』

 

『意地でも勝つ気か』

 

 狼を思わせる狂暴な美貌の不良小隊長ラヴィは腕を組みながら、分析図を睨む。

 

『意地だけじゃないな。正規軍はマーダー慣れした軍隊の動きをしてる。上から抑えられてなきゃもっといい戦いができるだろうぜ』

 

『わたし達マーダー扱いかぁ~なんか嫌だなぁ』

 

 性能で大きく上回る敵との戦い方を心得ているということだ。金髪オレ娘、ミエリの指摘に陽気に笑いながらちょっぴり嫌そうなハレ。

 

『次は連合にとって極めて有利な状況設定ですから少しでも戦果を挙げようと躍起になるでしょうね』

 

 赤髪ツインテの艦長ゼフィリスが言う。内心では仲間達の幸運を祈っている。

 

『大々的に配信しちゃってるからねこの演習。チラっとコメント見たけど大変なことになってるよ』

 

 と殲滅小隊の蠱惑魔。

 

 《袰月》の軍事力は二大地球帰還艦隊を凌駕している、星間ネットワークを通して広まる認識と、それが与える連合への不利益を払拭する目論みがこの演習だ。

 

 ハイペリオン・グループは自前のメディアを使って大々的に生中継しており、その酷敗ぶりは株価を大きく下落させており、賞賛が溢れるはずだった配信チャンネルのコメント欄は悲嘆、失望、怒りで一杯である。

 

 従軍報道班は銀河最強を謳う連合艦隊が瞬殺されるリアルタイム映像をどうにか誤魔化すことを命じられ、地獄のフル稼働中。これ以上ハイペリオンの株価が下がれば責任を取らせると脅されてもいた。

 

 一方、《袰月》が招いた連合のメディアは千載一遇の好機とみてこれをありのまま報じ、攻撃元が推定可能な謎のサイバー攻撃も跳ね除ける。

 絶大な資本を背景としたハイペリオン・グループの専横に対し、その在り方や能力への疑問を投げかけている。

 

『どうであれ、こっちは全力で叩き潰すだけだぜェ』

 

 紅髪のシルフ、エイリが言い放つ。ミエリを筆頭に、皆その言葉に賛成していた。

 

 

 長距離打撃戦隊は少数の機動兵器部隊を伴い、一気に連合中枢艦隊を叩く。

 

 前衛の正規軍艦隊は的確に火力を振り分け、ファイアイーターやカレドヴルフといった次元兵装により、桁違いの性能を発揮するアロウヘッドを集中攻撃してきた。

 

『やるじゃん』

 

 背後で弾けた荷電粒子の爆光にミエリは好戦的に笑った。後ろにいた白燕の部隊が撃墜判定を下され、後退していく。

 

 連合は艦隊だけでなく機動兵器も総動員しているが、その物量に対して翔鶴のアロウ乗りも戦闘機乗りも臆することなく挑み、高いキルレシオを叩き出している。

 

 前衛艦隊の猛攻は長く続かず、バスター砲撃で切り崩されていく。

 

『電子妨害を最大出力でかけるぞ! その隙に中枢を叩いてくれ!』

 

 久遠の勇ましい声。各部隊の電子戦機はデータリンクしており、強力なECMを一斉に放出して敵艦隊の攻撃能力と防御能力の双方をダウンさせる。

 

 突撃小隊を含む切り込み部隊が前衛艦隊を突っ切り、大量破壊兵器を積み込んだ深紅の四機が躍り出る。

 

『やった一番乗り!』

 

『ジェノサイド』

 

『手筈通り、目標選定は各自でよろしいですね姉様』

 

『そうしろ。上手くやれよ』

 

 ただでさえ強力なファイアイーターのバスターキャノンに、起爆点からブラックホールを発生させる重力弾、分子分解砲、光子魚雷といった殲滅兵器が併せて放たれ、連合側の艦隊は旅団単位で蒸発する。視界に表示されているのはCGではあるが、地獄のような光景だった。

 

『突撃小隊の援護感謝します。おかげで最高効率での砲撃が行えました』

 

『ふん、一応礼は言ってやるぜェ』

 

『いえいえ、これがわたし達のお仕事ですから~』

 

 陽気な金髪小隊長ハレは能天気なトーンで紅シルフ姉妹に応える。誘導弾を撃ち落すのにレールガンやミサイルを使い、砲撃はバスターキャノンで吹き飛ばして殲滅小隊をここまで守り抜いていた。

 

 ミエリはフルスロットルで仲間達と駆け抜けていく。

 

 慣性制御パネルとスラスターを加速にフル活用し、突撃小隊のファイアイーターが敵陣に突っ込む。入れ替わるように、翔鶴所属のアロウヘッドが殲滅小隊の護衛についた。次元兵装搭載機カレドヴルフと白燕の混合による二個中隊。

 

『殲滅小隊は私達がガードする! 旗艦を頼む!』

 

『OK、任された!』

 

 それを率いるのは茶髪のイケメン女子、アクィラだ。勇ましい声音に後押しされながら、ハレは踏ん張って加速に耐える。

 

 旗艦アンフィニを守る中核艦隊は次元兵装を搭載した強力な戦艦を配しており、型通りの対応しかしてこないとはいえ手強い。だが――――

 

「翔鶴ほどじゃない!」

 

 以前の演習で億単位の砲撃を潜り抜けたことを思い出す。《袰月》の超兵器である戦艦や終のカスタム・アロウヘッド"シュラ"と戦った時に比べれば余裕がある。

 

『行ってくださいミエリ!』

『助かるぜククリス! 後で何か奢らせてくれ!』

 

 背部に大型シールドを装備しているククリス機が盾になり、対空砲火からミエリのファイアイーターを守る。攻撃が弱まった瞬間にククリスの背後を抜けて、最短でアンフィニの艦橋を目指す。

 

「ちぃっ!」

 

 純白のファイアイーターは横合いから介入してきたアロウヘッド"ヴェロス"をアサルトキャノンとホーミングレーザーで蹴散らす。ドッグファイトに持ち込まれる前に撃墜し、止まることはなく加速を続けた。

 

 まるでプラネット・マーダーのような漆黒の巨艦との距離が縮まっていく。

 

 突出したミエリ機をなんとしても撃墜するべく、敵艦隊は火力を集中しようとする。しかし、数隻の戦艦が味方を狙って砲撃を開始。大火力をぶつけ合う同士討ちが繰り広げられる。

 

『なんだ!?』

 

『おっナイスタイミングだったねえ、やほーミエリ。我ら栄えあるストライクハンマー大隊は敵艦の制圧に成功せりってカンジ』

 

 視界に移ったのはパワードスーツのヘルメットを外した派手なギャル、空間海兵隊のイスズだった。

 

 空間海兵隊は危険な突撃作戦を慣行し、恒星間航路確保の任務で溜まったフラストレーションを一気に解放したのである。戦闘宙域を突撃艇で潜り抜け、連合の中枢艦隊に肉薄。目星をつけた戦艦に乗り込んだのだ。

 

 パワードスーツを装着した正面攻撃隊とナノシェルスーツの軽装でメンテナンス通路などに忍び込む潜入部隊に別れ、空間海兵隊は敵艦CICの制圧に成功。制御を奪い取ったというわけだ。

 当然、艦内では銃撃戦が繰り広げられたわけだが、空間海兵隊の戦闘力は連合の保安部隊を大きく上回っていた。

 

 パワードスーツ同士の戦闘で完敗することは覚悟していた。

 

 しかし、裸同然のスキンスーツを着て、兵士だというのに派手な髪色にメイクをした女子高生の集団に機械化と電脳化を施した兵士で構成され、精強を誇る特殊部隊までもが敗れるとは想像してもいなかった。

 

 アニメの悪夢のような《袰月》空間海兵隊の強さをこの時、初めて白頭鷲主義連合は思い知ったのである。

 

 空間海兵隊の援護も受けながらファイアイーターはアンフィニに到達。フォースフィールドをぶち破り、接近した。ミエリはフルチャージしたバスターキャノンを艦橋からCICまで貫通できる位置で突き付けている。

 

 逃れようもない状況であり、旗艦の撃沈という敗北条件が満たされる。

 

 少し緊張しながら全帯域通信をオンにして、金髪のオレ娘は大きく息を吸い込む。そして勇ましく宣言する。

 

『アンフィニはこのミエリ・ライオネルが沈めさせてもらった!』

 

 勝気な笑顔で言ってのけたが、やはり少々気恥ずかしい。

 

 

 不良小隊はフェンリルの護衛から追加ブースターを活かした遊撃戦力となっていた。

 

『ミエリの奴、本当にやりやがりましたよ姉御!』

 

『チビ助は終の姐さんとだってやり合える奴だ。最新型だろうが連合の旗艦くらい訳ない』

 

 我が事のように喜ぶ三下系ヤンキーJKクーリエ。金髪の子分の騒ぎ様に対して、ラヴィは当然という顔だ。

 

『ここまでの負け具合で連合も少しは懲りてくれると良いのですが』

 

『同感ね。少なくとも馬鹿みたいな挑発は止めて欲しいわ』

 

 お嬢様風不良の紅黒とピンク髪の女王様、メティスは真剣にそう思っていた。連合機による接近で繰り返される警報にうんざりしていたし、メティスもラヴィと二人きりで過ごしていた濃厚な時間を邪魔されてかなりイラついていた。

 

 アンフィニから離脱して小隊と合流するミエリ。

 

『お疲れミエリ!』

『見事な対艦攻撃でした』

『ミエリの昔の仲間に伝わるといいな』

 

『悪いな皆。付き合わせちまって』

 

 コールドスリープで今日まで生き延び、連合の旗艦に乗艦しているかもしれないノイミ・ローレンに己の存在を伝えるべく、戦隊の仲間達の承認の元で一計を案じたのである。

 

 

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