ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する-   作:ザンザザン!

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ベリィ・オブ・ザ・ビースト

 

 突撃小隊はアンフィニ艦内のシャフトを急降下。

 純白のファイアイーターは後衛として、シールドユニットを翳したククリス機の背後についている。

 

 黒い内壁に禍々しい赤い光の輝きが奔り、四機のアロウヘッドを照らす。

 艦内にエネルギーを供給するラインが壁に埋め込まれているのだ。

 

『気味が悪いですね』

 

 神経接続デバイスからのレーダー・センサ情報と自らの視覚で油断なく周囲を見渡しながらククリスが一言。

 

 機動兵器通路の構造物にはプラネットマーダーの姿を彷彿させる歪さがある。

 アンフィニはマーダーを解析して得た技術で建造された艦とのことだが、ハイペリオンとて意図して気味悪くデザインしたわけではないだろう。

 理解が及ばず、形をそのまま真似せざるを得なかったのだ。

 

『判ってると思うが、フランドルからの情報じゃ艦の管制システムは相当な割合が乗っ取られてるそうだ。不意打ちに気をつけろ』

『まるで小隊長みたいじゃんミエリ♪』

 

 指揮官そっちのけで警告出したことで、ハレの機嫌を損ねてしまったか。

 

『悪かったよハレ』

『別に怒ってないよ~♪ アタシもミエリと同じ考えだしさ』

 

 揶揄うような笑顔を見せる陽気な金髪JK。

 

『ていうわけで、気を引き締めてかかろう〜♪』

 

 ハレが小隊長として改めて警告すれば

 

『承知しています』

『うむ』

 

 黒髪褐色と銀髪赤眼の戦乙女は即答である。

 

 奇襲攻撃を警戒しつつ、四機は長大なシャフトを飛び続けた。

 

 プラネット・マーダーによる艦内管制システムの掌握が進んだ場合のことをハレは考えた。もしそうなれば、アンフィニはマーダー犇めく遥か遠くの宙域にワープするかもしれない。

 

(そうなっちゃうと私達助からないんだよね~♪ やっばい♪)

 

 陽気なJKの端整な顔立ちに不安が浮かぶ。明るい気持ちはキープしているが、勇ましく開いていた長い脚がちょっぴり内股気味になる。

 無数の敵に囲まれ孤立すればファイアイーターとて生き延びることはできない。この突入作戦は時間との勝負だ。

 

 余計なことを考えてしまうのは、あまりにも静かすぎるせいだ。怪物の腹のなか(ベリィ・オヴ・ザ・ビースト)と化したアンフィニの艦内にあって、突撃小隊は何とも遭遇していない。

 

『コンタクト、アロウヘッド、数は七。機種はヴェロス』

 

 機影を捉えた漆黒のファイアイーターから灰音が報告。進行方向から接近する反応を超感覚センサが捉えたのだ。

 

『こちら――――所属第――隊――――要人護衛任務中――――』

 

 オープン回線でヴェロスの隊長機からコールがきた。黒髪褐色の寡黙なJKククリスは妙にノイズが多いことを訝しむ。

 

 ククリスに頷いてから、ハレは呼び掛けに応じる。バストアップ映像付きで、笑顔をサービスしながら大袈裟な身振り。ぶるんと瑞々しく豊満なバストを弾ませながら言う。

 

『良かったぁ。まだ無事な人たちがいたんだ。私達は援護に参上した《袰月》所属のアロウヘッド部隊です♪ 被害状況とか教えてもらえると助かります』

 

 この切迫した戦場に相応しからぬ、明るく陽気に砕けた調子の金髪ギャルJK。兵士として、小隊長として相応の態度もできる戦闘女子高生だが、今はあえて相応しくない態度を取って相手の反応を窺っている。

 

(ハレの空気を読まない態度に不快な素振り一つしない。やっぱこいつらは……)

 

 ミエリは整然と接近してくるヴェロスたちを睨んだ。青色の被膜と黒い装甲のナノシェルスーツに覆われた小柄な肢体は戦闘態勢を取っている。

 

『ノイ――――レン博士を含めた最―――人物を乗せた―――』

 

 ハレに応じることなく言葉を吐いて、七機のヴェロスは銃口を向ける。発砲。

 ビームマシンガンやアサルトレールガンの掃射がくる。弾幕がシャフトの通路を埋め尽し、被弾したファイアイーターが眩く輝いた。

 

 フォースフィールドに弾丸が受け止められ、分解された光だ。ファイアイーターそのものは完全な無傷。

 

『やはりマーダーに乗っ取られた機体ですね。生体反応はなし』

『やりやすい! とにかく墜とすぜ!』

 

 ミエリが叫んだ。

 ノイズ混じりだが、確かにノイミ・ローレンと聞き取れた。殲滅大戦時の知人はコールドスリープで生き延びており、この艦に乗っていたのだ。

 

(考えるのは後だっ!)

 

 今は眼前の敵を排除しなければ。

 

 突撃小隊は戦闘加速。灰音が一気に距離を詰める。

 ヴェロスが反応できないスピードで側面にとりつくと、ショットガンの接射で機体を上下真っ二つに。貫通した散弾がビームマシンガンを乱射する敵機を中破させた。  

 そこにククリス機が叩き込んだヘヴィーマシンガンがトドメになり、二機目を撃破。

 

『増援は私と灰音で抑えておきます』

『OK、私たちもすぐに行く!』

 

 残りのヴェロスはハレとミエリに任せて、漆黒とオレンジの二機は、シャフト底部に一気に降下。ここまでの静寂が嘘のように突っ込んでくるマーダーの群れ。

 

 怪物の腹が誘い込んだ獲物を消化し始めたのだ。

 

 通路をまっしぐらにかけてくる漆黒の殺戮機械を真っ向から迎撃する。ここでは異能と併せて正面からの攻撃を完全に防ぐククリス機のシールドとヘヴィーマシンガンの制圧力が大きな効果を発揮した。

 

 突然の物量攻めにも心を乱さず冷静そのもの。夥しい数の爆発が通路の闇を照らした。

 

 五機のヴェロスはたった一瞬で標的が二手に分かれたことで混乱した。そこを純白のファイアイーターが一気に突き崩す。

 

 撃ちっぱなしにできる背部のミサイルポッドの使用が推奨されるが、ミエリは拒否して優先度二位、手持ち火砲に切り替え。

 大口径アサルトレールガン、通称アサルトキャノンを両手に持って連射。細かく動いて反撃を躱している。シールドを装備した前衛タイプを含め、ヴェロス三機を蜂の巣に。

 

 ハレ機の一足先に降下した。

 

「やばっ置いてかれちゃう! パパっとやっちゃわないと!」

 

 まずはヴェロスの攻撃をいなす。ハレは狭い空間で華麗にバレルロールをキメた。コクピットで揺さぶられ、巨乳が弾んだ。

 空中機動で銃撃を避けつつ、残ったヴェロスを墜とす。爆炎が頭上で弾ける最中、先行した灰音たちと合流。

 

 既に殺到してきたマーダーは全滅しており、さらなる増援の気配はない。

 

『見てくれ。私とククリスだけで片付けたぞ』

 

 無表情なままピースして、灰音は戦果を誇る。

 

『二人ともさすがだね♪ よーし突撃小隊、再び前進っ!』

 

 意気揚々としたハレの合図で機体を加速させた。

 

 この先には居住空間がある。全長15kmの巨艦のそれは広大な都市となっていた。

 T2とT3、タナトス型のプラネット・マーダーはそこに居座っている。

 

 編隊の後ろで後方を警戒するミエリ、ハレ機は前衛に背中を向け、後ろ向きに飛行している。

 突然後ろから敵が現れた時に備えてのフォーメーションだ。

 

『さっき言ってたノイミさんってミエリの知り合いだよね? どうする助けに行く?』

 

 望むなら単独行動を認めるとこの小隊長の金髪ギャルは言っているのだ。

 

 嬉しい気遣いではあるが――――

 

『任務が最優先だ。そもそもどこにいるかも、まだ無事かも分からないんだぜ』

 

 金髪碧眼のオレ娘は努めて兵士の顔を作って答えている。冷徹を演じるミエリの内心を察したのか、ハレはそれ以上何も言わなかった。

 

 マーダーを呼び続けているタナトス・タイプを撃破しないことには、事態は好転しない。

 仲間たちの援護でここまで辿り着いたのだから、私情で抜けるなんて真似はできない。

 

 同時刻。護衛と引き離された宇宙艇は居住区に逃げ込み、瓦礫の隙間に身を潜めていた。

 

 ノイミ・ローレン博士以下、要人十数名を載せた脱出する手筈だった船艇だ。艦長や艦隊の総司令官であるフェリックス提督の姿はない。

 電子的に浸食されているアンフィニのブリッジにて勇戦している。というわけでもなく、T2の侵入直後からブリッジは隔離モードに入り交信を断っていた。

 

 周辺には漆黒の装甲を纏った殺戮機械が徘徊している。

 

 要人はおろか護衛の兵士までもが項垂れるなかで、ノイミはコクピットで外の様子を分析していた。

 視界は瓦礫で塞がっているし、マーダーに発見される可能性があるアクティブなセンサはオフにしてあるため、音響と振動が頼りだ。

 

(外に出られない以上、こんなことをしても意味はないのに……)

 

 肉体を捨ててパーソナリティだけで脱出する選択肢が取れない絶望的な状況に置かれた今、何か行動していなければ正気でいられなかった。

 パーソナリティとは魂魄(イデアコード)の連合での呼称だ。オカルティックな表現は好まれていない。

 

 人格をアップロードするインプラントが、ノイミをはじめとした要人には埋め込まれており、外部でクローン再生した肉体に人格を転写する形で蘇生できる。

 だが肝心の人格のサーバーになる艦船が次々に撃沈されており、肉体を棄てた傍から消滅する可能性さえあった。

 

「主任はどう思います?」

 

 隣にいる副主任が訊いてきた。彼はノイミより落ち着いているように見えた。

 

「そうね。これは今までにない行動パターンよ。マーダーが無防備な人間を殺さないで放置するなんて」

 

 T2、T3に引き連れられ居住区に乗り込んだマーダーはひとしきり建造物を破壊すると、シェルターに避難する民間人(乗員の家族やハイペリオン・グループの社員だ)を見逃した。

 

 抵抗する戦力が消え去った今は周辺を低速で飛んで警戒を続けるのみ。容易に破壊できるシェルターの位置が分かっているのに攻撃していない。

 

(非武装だから相手にしていない、そんな都合の良い話があるわけはないわ。後で使うために残してある。一か所に集まるのは手間が省ける……)

 

 ノイミの脳裏に浮かぶのはカプセルに閉じ込められた銀髪の少女たち。ベルカとチェルシーと仮の名を与えたコアマテリアルのように、捕らえた人間をマーダーの部品にするつもりなのか。

 

 怖ろしい想像を続けていたノイミの思考は、現実的な脅威によって打ち切られた。音響センサがマーダーの接近を報せたのだ。

 

「不味いですね。こっちに向かってくる」

 

 副主任の声には焦りが滲んでいる。

 

 瓦礫が払われ、いまだ青空が映ったままのスクリーンの空が視える。艇内のあちこちで悲鳴が上がる。ノイミはただ漆黒の歪な人型を見上げて硬直するばかりだった。

 

 シャイターン・タイプのマーダーが宇宙艇を両手で掴み上げようとする。その直前、彼方から飛来した砲弾がマーダーを撃ち抜き、機能停止させた。

 

 キャノピーからスクリーンの青空に瞬く四つの光が視えた。

 そのうちの一機をノイミははっきりと視認できた。《袰月》のアロウヘッド。純白のカラーリング。ミエリ・ライオネル。

 

『そこの宇宙艇、今から安全を確保する! しばらくじっとしていてくれ!』

 

 雄々しくも凛々しい少女の声がアロウヘッドから響く。

 砲弾、ミサイル、レーザーの閃光。ハイペリオンの戦力を蹂躙し続けていたマーダーがたった四機に撃滅されていく。

 

 我知らず、溢れた。ノイミの頬を一筋の涙が伝う。

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