ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する- 作:ザンザザン!
白頭鷲の紋章が船体に描かれた大船団は出航以来、地球への航路を取り続けていた。
護衛の戦闘艦隊を含めて、総勢で数百万に達する船団を率いるのは全長200km超の第七艦隊州の旗艦。長く突き出た丸い船体がクジラのような印象を与える。大抵の勢力で居住船として採用されている信頼性の高い船種だ。
白亜の特務巡洋艦フェンリルは、艦隊州の旗艦に入港していた。その更衣室に女子高生たちの笑い声が姦しく木霊する。
ファイアイーターの性能やクラスメイト達に頼れないミッションになる。自分の感覚と言葉だけが武器だ。上手くやり遂げられるか不安はあるが、アロウライダーとして培った精神力でそれを抑える。
ミエリ・ライオネルをはじめ、長距離打撃戦隊の面々は上陸用装備に着替えていた。
上陸用装備という仰々しい言い回しを誰が最初に考えたのか知らないが、要するに私服である。
《袰月》の運営議会は
技術提供や合弁会社の設立など矢継ぎ早に発表され、先んじて市場に出た《袰月》の製品やサービスに連合の国民は競い合うように群がっていた。
関係構築の一環として、長距離打撃戦隊のJK達は首都を訪れることに。
「オルランドでの外交任務よりもシビアではあるよ。ボクらは《袰月》の広告塔として、連合市民に好印象を与えねばならないのだからね」
戦隊を率いるお子様先生はブリーフィングでそう言っていたが、他の部隊が会談の警備や展示飛行といった任務を仰せつかっているのに、観光するのが仕事というのは少し気が引けた。
ミエリが考え込んでいる間にも、仲間たちはナノシェルスーツから着替えて、各自用意した私服でめかしこんでいる。
「うむうむ、皆、綺麗だ。眼福眼福」
「先生も早く着替えてくださいね」
自分と大して背丈の変わらない可愛らしい印象のゼラ先生は、大人っぽい黒いレースのショーツにガータベルトを装備した艶やかな恰好。
そこで手で止まっているので、赤髪ツインテの妖艶な委員長に注意されてしまう。
(オレも急がないと)
ナノシェルスーツを脱いだ直後なので、必然的に金髪オレ娘は素っ裸だ。被膜厚0.01mmのぴっちりスーツの下に着用できるインナーは存在しない。
ミエリは、この日のために用意した一張羅を取り出そうとしている。
「ちゃんとショーツは新品にしたか?」
紅い髪のシルフが意地悪な笑顔で言ってきた。息を呑むほど美しい造形の白い貌。
エイリは既に着替えを終えて、秋の気候に合わせたコートまで羽織っていた。
普段は灰音が間に挟まるのだが、銀髪赤眼の戦闘少女は二人の妹の着替えを手伝うため、外していた。
《袰月》特有の願掛けの類なのだが、新しい事に挑戦する時は新品の下着を付けると幸運が得られるというのがある。
「そういうエイリはどうなんだよ」
「私は一度穿いた下着はゴミ箱にポイする主義なんだよ。トーゼン、新品だぜェ」
綺麗な形の胸を張って、資源浪費を尊大に公言する紅シルフ。所によっては厳罰モノの所業である。
資源に余裕がありまくる《袰月》であっても良い顔はされない。
何か言いたげなエルザレド――双子の妹の視線。
「あれれ、おかしいなー」
丸メガネの紅シルフとお喋りしていた、黒髪シニヨンの淫魔JKが口を挟む。
「私の記憶だと、エルザレドと下着を共有してるんだぜェって、姉妹の固い絆を自慢していた気がするんだけど? 毎回捨ててたら共有できないよね?」
リーゼがニコニコ笑顔を向けると、エイリは白い美貌を朱色に染めて怒った。
「ばっ! バラすんじゃねえよエロ痴女リーゼ! ご自慢のデカ尻に紅葉付けてやろうか!?」
悪戯っぽい笑顔で黒髪シニヨンのJKが口を挟む。エイリは白い美貌を朱色に染めて、震えている。よほど恥ずかしかったらしい。
ミエリはクラスメイトのじゃれ合いを眺めてから、いそいそと着替える。
まず清潔な純白のショーツを穿き、「んっ」と息を漏らす。少し布面積が少な目で涼しいタイプ。股座の角度もややハイレグ気味。ぴったりフィットして動きやすいから気に入っている。
「よく似合っているよ」
「葉隠もカッコいいぜ」
「ありがと、ミエリ」
着替え終わると、声を掛けられた。キャスケット帽にスーツで男装している葉隠だ。
ボトムはショートパンツ。白い肌が眩しい素足を魅せていくスタイルだ。片目隠れのボーイッシュなシルフの魅力を引き出す服装である。
少年に擬態している葉隠と比べるとミエリはガーリッシュだ。クリーム色のセーターに、ブラウンのキュロットパンツ。足は艶やかな黒のロングブーツで固めている。
――――待ち人が来るまでの時間は長く感じられる。
茶髪の女研究者が置かれた状況は、アルベルト・アインシュタインが口にした相対性理論に関する冗談を否応なしに思い出させた。
ここは
茶髪の女研究者は現在、無職。ハイペリオン・グループの極秘かつ最優先プロジェクトの主任を任されていた立場からの大転落である。
突然、解雇を宣告された。
機密と代替できない知識を持つ立場であるため、彼女自身危惧していたように口封じされなかっただけでも拾い物であった。
多数の立て直し策が功を奏することなく、落ちぶれていくばかりのハイペリオン・グループの窮状がそうさせてくれた。
(とにかく気持ちを落ち着けよう)
ノイミは携帯端末を取り出し、ニユースサイトを開いて流し見する。自国の経済と政治の話は飽き飽きしているので、他のトピックに目を通す。
―――オルランド星系王国軍訓練生の大戦果! 旧ゾンネンキント帝国の残党による大規模テロを阻止!
オルランド王国が《袰月》から提供された高次元技術で建造した新型アロウヘッドーー連合が喉から手が出るほど欲している機体が配備された練習空母の活躍を伝えるニュースだ。
特に目覚ましい活躍をした真面目そうな銀髪の美少女と日系人らしい暑苦しい少年がインタビューに応じる写真が添えられている。
――――ヘッドフラッグレース人気が高まる《袰月》。クリスティ・サンダーランド選手が語る《袰月》流レースの魅力
連合から《袰月》に帰化した女性レーサーのインタビュー記事だ。蜂蜜色の髪の綺麗な女性で、明るい笑顔を見せている。
動画を再生しようとしたが、ちょうどその時、待ち人がやってきた。
綺麗に鍛えられた脚の白さが映える黒いブーツで颯爽と歩む、金髪の美少女。ミエリ・ライオネルだ。戦闘の後、彼女が駆る白いアロウヘッドは小隊の仲間と一緒にタナトスのコアを抱えて引き上げてしまった。
「遅くなっちまったな」
色々な意味で謝りながら、少女は隣に腰を下ろした。軽やかな所作にノイミは目を奪われていた。
「うっうん。私も今着いた所だから」とテンプレ染みた誤魔化しのセリフを口にする茶髪の元女研究者。活き活きとして凛々しいミエリの姿は、あまりにも眩しい。
(それに比べて、私は――――)
保身のために、非人道的な研究に加担した己への嫌悪感が込み上げてくる。
「私って気持ち悪いでしょ? 自分が生き延びるために、あんな奴らの手下になって。
タナトスの中に何が入っているのか判っていながら、あの娘たちに酷いことを……!」
最後に「本当、最低の女」と吐き捨てる。ノイミは感情を爆発させていた。
ハイペリオン・グループに拾われてからの出来事を全部打ち明けている。その間にも、どんどんヒートアップしていった。周りの目を気にせず、ミエリ・ライオネルに己の罪を告解していく。
「オレだって《袰月》以外に拾われていたら、ノイミみたいな立場になっていたかもしれない。強制されたんだろ? なら、気にするなよ」
全部を聞いてから、金髪オレ娘は言った。
「ミエリ……!」
「んむぅ!? ぐっ苦しい……!」
こみ上げてくる感謝の気持ちで茶髪の女研究者(現在、無職)は暴走した。
ミエリを抱き締め、セーター越しのおっぱいで、顔を挟んでいる。呼吸困難に陥る金髪のオレ娘を余所に、その体温、感触、匂いに我を忘れるほど興奮していくノイミ。
「ぶっちゃけ、私とあなたって同じ艦に乗っていたくらいの接点しかないわよね!? なのに――――なのに、どうしてこんなに優しくしてくれるの!?」
再び、感情のままに叫ぶノイミだった。ミエリは少し強引に胸の圧迫から逃れ、大急ぎで新鮮な酸素を肺に取り込むと、ノイミ・ローレンの瞳を真っ直ぐに見つめた。
「ノイミはあの苦しい時代を生き延びることができたんだ。そういう奴には過去に囚われて欲しくない。幸せになって欲しいって思う。変かな?」
また柄にもないことを言ってしまった気がする。目の前の茶髪の女性は、大騒ぎから一転。息を呑んでじっとミエリの瞳を覗き込んでいる。
「それと、ノイミに逢わせたい娘たちがいるんだ」
「娘たち? まさか……」
察したようで、ハっとなるノイミ。銀髪に赤い瞳の少女が、同じ色の髪と瞳で、少し幼い双子を連れて歩いてくる。少女達は三姉妹だった。黒で固めた服装。双子は華麗なゴシック風のドレス。
少し退廃的なジャケットにホットパンツ。そんな出で立ちの無表情な長女は確かな足取りで進んでいた。
深紅の瞳は無垢な妹たちを外敵から守り抜く、強い決意を滲ませている。
双子が目の前にやってくる。微笑んでいた。ノイミが彼女たちにした仕打ちを覚えているだろうに
「ご機嫌よう、ノイミ博士。改めて、ご挨拶させてください。
「ボクはチェルシーっていいます」
先に名乗った少女はまるで良家のお嬢様のよう。対して、もう一人の銀髪少女は活発な印象だ。赤い瞳は世界すべてに対する好奇心に満ちている。
しかし、落ち着きがないわけではない。片割れと同じく、嫋やかな雰囲気があり、ドレスが似合っている。
「貴女たち――――それにその名前は……!」
タナトスのコアに与えた便宜上の名前だ。それを銀髪の双子は誇らしげに名乗っていた。
「素敵な名前をありがとう、博士」
姉妹の声が重なる。いつの間にかノイミの頬に涙が伝っていた。
知人と銀髪の三姉妹の会話を穏やかに見守りながら、ミエリはもう一つの任務に関する話をいつ切り出すか考えていた。ノイミを《袰月》に誘うよう頼まれていたのだ。
今の彼女は無職らしいので、悪い話じゃないと思いたい。