ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する- 作:ザンザザン!
長距離打撃戦隊の母艦であるフェンリルは十数隻の
全長一km級の艦艇が十数隻。数千から数十万の艦隊が会戦を繰り広げるのが当たり前のこの時代においては、艦分隊と称される規模である。
フェンリルを中心に左右に大きく広がる楔陣形の後方に艦隊旗艦が続いている。旗艦を務めるのは電子戦闘に特化した
さらに艦隊の最後尾には巨大な艦が位置しており、目を惹く。全長五十kmという桁違いのスケール。他の艦が豆粒にしか見えないほどだ。
工廠艦、
土雷級は技術交流のために友好関係にある勢力に派遣されることもある。近頃では
艦隊の目的地は
そこに《袰月》は招かれ、艦隊を代表して管制AIの分体であるカイネが出席することになっていた。
現在、出航二日目。フェンリル艦橋。普段はアロウヘッドを乗り回している戦う女子高生たちは、ブリッジクルーとしても働いていた。
『こちら第三艦橋。観測準備完了しました』
「了解しました。では模擬戦の開始を宣言しますね」
中空に表示された通信ウィンドウに映る茶髪の女性が緊張した面持ちで報告してきた。
そんな女性に赤髪ツインテールのJK艦長、ゼフィリスは女性に大人びた気品ある微笑みで応えている。
フェンリルには複数の艦橋があるが、メインである第一艦橋以外使われていない。
だが、今回は第三艦橋を先進開発局が観測室として使っている。銀髪赤眼の姉妹と一緒に搬入された試験機のテストを監督するためだ。
茶髪の女性は設立されたばかりの合弁会社を通じて、フェンリルに派遣されたノイミ・ローレンだった。
ハイペリオン・グループから追放された彼女は《袰月》と連合の合弁会社にスカウトされ、無事無職を脱出していた。
そんなノイミは現在も
行動パターン、個体の性能、分布の解析を進めつつ、明らかなオーバーテクノロジーである殺戮兵器群を殲滅派が如何なる手段で手にしたのか、という起源の特定など本来彼女が望んでいた研究に邁進しているのだ。
人類全体に脅威に対抗する術を共有する一方、《袰月》の高次元技術を学んでくる大役を仰せつかっていた。
そして幸か不幸か、ノイミはグリムナイア博士に気に入られてしまったようだ。今回の試験では、いわば見学する立場のはずなのに全体の指揮役に突如任命され、プレッシャーのなかで仕事をしている。
「ノイミさんが試験に関わると知って、ミエリは張り切っていましたよ」
『えっええ!? ミエリが!?』
何気なくゼフィリスが告げるとノイミは大袈裟に狼狽えていた。
「後で会いたいそうです。良かったら空いている時間をあの娘に教えてあげてください」
ミエリとノイミは連合の艦隊州首都で出会って以来、連絡を取り合っている。
だが、今回連合から派遣される人員は内外に漏れないよう機密扱いされていた。艦内管制担当として名簿に目を通したとき、ミエリははじめてノイミが乗艦することを知ったのだ。
ノイミも初日からずっと忙しく、金髪オレ娘と会う時間がなかった。
食事もわざわざ持ち場に運んでもらったほどなのだ。
『必ず伝えておきます……博士何か?――――すみません、グリムナイア博士に呼ばれているので失礼します!』
振り向いたノイミが慌て気味に言ってから、第三艦橋との通信ウィンドウが消えた。
「なんか緊張してたね、ノイミさん」
と、言ったのは現在艦内管制を担当している小柄な美少女JKだ。灰白色の髪をサイドテールにしている。
艦内管制シートに腰掛けているのは殲滅小隊の小柄な蟲惑魔、アラヒナ。女子中学生くらいに見える小柄で、それでいて蠱惑的な振る舞いをする美少女である。
「大役を任されているのですから無理もないでしょう」
「それはあると思うけど、ナノシェルスーツのせいで余計に緊張してるのかも」
火器管制シートに座っている金髪ロングヘアの長身JK、どこか猟犬を思わせる鋭い顔立ちのハレが言った。
連合から派遣された人員にもナノシェルスーツが貸与されており、防衛艦隊群の兵員と見分けがつくように白系統のカラーになっている。通信していたノイミもしっかりナノシェルスーツを着込んでいた。
「このスーツのせい、ですか?」
言ってから自分の身体を見下ろすゼフィリス。
青色の超極薄被膜が四肢や首元の流麗な装甲の厚さで際立つナノシェルスーツは、十代後半の瑞々しい肉体を浮き彫りにしている。
赤髪ツインテールの気品ある美少女の豊満なバストは誇らしげに突き出していている。
ナノマシンで構成された厚さ0.01mmの被膜はおヘソどころか胸の先端までくっきりさせている。
そういえば確かに皆どこか落ち着かない様子だった――と、フェンリルに乗艦した連合の科学者、技術者一同に挨拶した時の様子を思い出す赤髪ツインテールの美少女艦長。
「ピチピチだもんね~このスーツ」
アラヒナは胸元の被膜を摘まむような仕草をする。実際には肌に完全に密着しているので、ほんの僅かな隙間も作ることができない。
慣れない者にとって、ナノスキン被膜の光沢と密着でこれでもかと強調されたボディラインは、素っ裸よりも恥ずかしいかもしれない。
だが、規則では軍務中はナノシェルスーツの着用が義務付けられている。その規則は連合からのゲストであろうと適用される。
「安全のためにもスーツに慣れてもらうしかありません。上着の着用が可能なことは通達しておきます」
「弱っちい体してるから恥ずかしいって感じるんだよ」
バイクシート型の操舵席に跨る紅髪のシルフがキャハハと嘲笑った。鋭い目つきに残酷そうな笑みを浮かべた殲滅小隊長のエイリだ。
(今のセリフちょっとラヴィちゃんっぽい……って言ったら怒るよねエイリちゃん)
そう思ったアラヒナだが、怒られないよう言葉を飲み込んだ。
灰白髪サイドテールの蟲惑魔JKが属する小隊のリーダーは不良小隊の姉御とはいつも喧嘩ばかりしている。本気で仲が悪いわけではないようだが。
「さて、模擬戦を始めましょう。三人とも待ちくたびれているはずだわ」
「りょーかい。それじゃ、アナウンスしまーす」
準備のため深呼吸する灰白髪サイドテールの蟲惑魔、アラヒナ。「いえーい♪」と囃し立てる火器管制シートの陽気金髪ギャル。
『淑女の皆様、お待たせしました!』
明るい調子でアラヒナは艦内に向けて呼びかける。乗員は例外なく女性なので淑女とのみ呼ぶ。
『これより本日のメインイベント!
ミエリ・ライオネル対銀髪の
待っている時間は長く感じる。それは実戦でも訓練でも変わらない。
すっかり少女のカラダに馴染んだ感のあるミエリ・ライオネルは乗機のコクピットで待機していた。
長距離打撃戦隊にのみ配備されているFFR-14A9"ファイアイーター"のうち、金髪のオレ娘の専用機は純白で塗装されている。
コクピットにディスプレイの類はなく、四方は装甲に覆われている。人型兵器アロウヘッドを駆るアロウライダーは視界投影型HUDを通して外界を視るのだ。
飲み干して空になった飲料水パックを放り捨てると、無重力で漂ったパックが壁の廃棄物シュートに吸い込まれた。
発艦してから、ミエリは宇宙の暗闇に瞬く星々を眺めながら時間を潰していた。
単独ではない。護衛機がいる。高速戦闘艦であるフェンリルに随伴するため大型ブースターを背負った黒青色のファイアイーターだ。
リラックスした様子の金髪オレ娘だったが、その時が来れば即座に気持ちを切り替え、戦闘モードになる。
「いよいよか」
ミエリの視界に模擬戦開始の合図が表示され、戦闘エリアに指定された宙域への侵入コースが指示された。
『ゴーサインが出たっスね。勝算の程は如何っスか?』
黒青色のファイアイーターに乗っているのは母艦の直掩を担当する不良小隊のクーリエだ。金髪の気だるげな不良娘で小隊長のラヴィを姉御と敬う絶対服従の三下。レトロゲーム好き。
「勿論ある。ていうか、負けてやれないぜ」
ミエリは強気に答えた。相手が灰音の妹で可愛い後輩といえど、勝負は真剣にやる。
各部スラスターの最終チェック。ファイアイーターの各部にあるノズルが可動する。
神経直結デバイスが反応して、初期加速が始まった。メインスラスターから青い噴射炎が迸る。
「それじゃ行ってくる」
『応援してるっすよ!』
フットペダルを一気に踏み込み、ミエリはファイアイーターを加速させた。
青いプラズマ噴射の光が炸裂し、純白のアロウヘッドに絶大な推進力を与える。
超低速からアロウヘッドの第一戦闘速度まで加速している。瞬間的な高加速によるGは相応だが、機体に備わった耐G機構に打ち消されていた。
二度目の炸裂でファイアイーターはさらに加速。第二戦闘速度を飛び越し、第三戦闘速度に達する。
金髪オレ娘は引き締まった身体を圧する荷重を感じ始める。これでもファイアイーターの最大速度の一割に満たない。
左右の操縦桿を力強く握り、ミエリ・ライオネルは獰猛な笑みを浮かべていた。
戦闘開始はミエリの宙域侵入を合図にしている。
「うおっと!?」
すぐさま光が弾けた。金髪のオレ娘は認識するよりも速く攻撃に対応している。その反応はアロウライダーとしての膨大な経験値の賜物であった。
ミエリはファイアイーターを宙返りさせ、頭上からの奇襲を躱す。
深紅のエネルギーの塊が高速で通り過ぎる。直後にはミサイルの弾幕が殺到してきた。
純白のファイアイーターは急旋回。別の方向からもミサイルが迫ってくる。
ミエリは振り切るのではなく、迎撃を選択した。
――――撃ち落す!
ファイアイーターの戦術COMが金髪オレ娘の思考を汲み取り、緑色のターゲットコンテナがミサイルを囲んだ。
ミエリが碧眼を流せば左腕に握ったロングバレルのアサルトレールガンが火を噴く。
ファイアイーターはレールガンを右から左へと撃ち流す。掃射でありながら誘導弾を的確に狙い撃ち、爆発させた。
機体の周囲に展開されたフォースフィールドでミサイルを防がないのは、爆発によって視界が塞がるのを嫌ったためだ。
ファイアイーターはアロウヘッドの対艦武装であるバスターキャノンを折り畳み、右手に通常火器である荷電粒子ビームライフルを握っている。
今回の模擬戦ではバスターキャノンは使用しない。それ以外は異能を含めて何でもありだ。
二挺の銃を構えて、ミエリは漆黒の敵影を睨んだ。ビームライフルを撃ち込む。ピンク色の眩い荷電粒子が空間を一閃。
純白のファイアイーターの反撃に散開してから、編隊を組み直す敵機。深紅のカメラアイが威圧的に光った。
『やるねミエ姉!』
最初のビームは長大なプラズマブレードから放たれた斬撃だった。漆黒のアロウヘッドを駆る活発な銀髪少女の声には平素にはない狂暴さが滲んでいる。
『参ります、ミエ姉様。簡単にやられないでくださいね?』
右腕のバスターキャノンと一体化した大型シールドを翳し、妹であり本来は前衛であるチェルシーの前に出るのは、虚来姉妹の次女。
嫋やかな口調に好戦的な気配が混じったベルカだ。
銀髪の双子が駆る漆黒のアロウヘッドはファイアイーターの兄弟機であるカレドヴルフだ。
先鋭的なフォルムは変わらないが、頭部は重厚な装甲に覆われている。
攻撃的な意匠の頭部装甲のスリットから複眼型アイカメラの深紅の光が幾つも放たれていた。
威圧感のある漆黒のマシンが巧みな連携で突っ込んでくる。
「簡単にやられてくれるな? それはこっちのセリフだ!」
意気揚々とミエリは吠え、銀髪の双子を迎え撃つ。