ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する-   作:ザンザザン!

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モック・コンバット

 

 暗黒の宇宙を裂くようなジグザグの軌跡はアロウヘッドの戦闘機動――しかし、速度は桁違いだ。球形に纏う淡い光はフォースフィールド。戦闘しているのが次元兵装搭載型アロウヘッドであることを示している。

 

 二つの軌跡が合流して二重螺旋を描く。かと思えば、迎え撃つ銃火とミサイルを避けるために散開(ブレイク)する。

 

 金髪のオレ娘、ミエリが駆る純白のファイアイーターと、二機のカレドヴルフ。両者は激しく撃ち合っていた。

 

 模擬戦の様子はフェンリルの展望ラウンジをはじめ艦隊の各所に生中継されている。

 使用されている砲弾やミサイルはCGではあるが、見た目では本物と遜色ない。

 

 展望ラウンジの一画にお茶会のテーブルが設けられており、金髪のシルフ姫様、久遠はテーブルを囲む一員に加わっていた。

 模擬戦の映像を食い入るように見つめて、「うわーいきなりエグい機動するなぁ」などと、感想を漏らす久遠であった。

 

 ミエリと虚来姉妹、双方への感想だ。

 

 ベルカとチェルシーの戦闘機動は、長女である灰音譲りの苛烈なもの。体質に合わせた専用スーツで負担が軽減されているとはいえ、凶悪な本能を剥き出しにした危険なマニューバーは、少女たちの出自を暗示していた。

 

「二人とも頑張っていますわね」

 

 ベルカとチェルシーの活躍に微笑む縦ロールの幼い淑女。お茶会の主催者はアナスタシアだ。優雅にティーカップを持つ手は、滑らかな黒いプロテクターに覆われている。

 

 休憩中とはいえ臨戦態勢だ。いつでも出撃できるようにナノシェルスーツを着ていた。

 

 お茶会の出席者は総勢四人。

 殲滅小隊の紅シルフの妹の方、エルザレドと試作小隊の金髪ツインテのイケメン女子、イリシアだ。エルザレドの姉であるエイリも誘われていたが断り、フェンリスの操舵シートに付いている。

 

 給仕役はお馴染みのメイドJKノエッタである。ナノシェルスーツでも装着したままのホワイトブリムがメイドという立場を静かに、誇らしげに示す。規則がなければメイド服に着替えているところだ。

 

 四肢などの部分装甲を除けば極薄のナノシェルスーツはお茶会の席で着る衣装としては、相応しくないかもしれない。

 なにせ、少女たちの体の線は剥き出し。おヘソはおろか胸の先端まで浮き出ている。

 

 久遠たちの思わず見惚れてしまうような長身の肢体も、アナスタシアの無垢なカラダも等しく、あるがままにラッピングされている。しかし、少女たちの気品ある振る舞いは、ナノシェルスーツの不釣り合いさを補って余りあった。

 

 アナスタシアは見た目では裸を晒すのと変わらない、ぴっちりスーツ姿を男の前に晒しても臆さない。薄い胸を隠すことも、気にする素振りもしない。ただ超然とした微笑みを贈るだけだ。

 

 奥ゆかしくも堂々とした主を、メイド少女は崇拝していた。

 

「確かにあの娘たちには勢いがあるし連携も巧い。だが、」

 

「まだまだですね。あれではミエリには勝てません」

 

 イリシアの言葉を引き取り、エルザレドが冷徹な声音で締めくくった。

 

 

 戦闘は大詰めに突入している。

 

 一見すれば戦況は、双子がミエリを追い詰めているようにしか見えない。

 

 攻撃の爆光を背負い、照らされる白い装甲のファイアイーター。炎喰らいのペットネームを持つ、超攻撃型の人型機動兵器。

 

『ハンデもらってるんだから勝たないとね!』

 

『もう一度包囲攻撃をかけます。チェルシーはタイミングを合わせて踏み込んでください』

 

『理解ってる!』

 

 猛々しく片割れと会話しながら、純白の目標を絶え間なく攻撃する二機のカレドヴルフ。漆黒の機体に、装甲に覆われた深紅のカメラアイ。ベルカとチェルシーを取り込んでいたタナトス級マーダーを模したカラーリングだ。

 

 二機のカレドヴルフは、二つで一つの生命体のように動く。それは姉妹の絆と天賦の才だけが成し得る戦い方だ。

 

 ベルカ機が近接戦闘に特化した武装構成のチェルシーのカレドヴルフに懸命に追き、それに合わせチェルシー機が減速。前衛と後衛が瞬時かつ有機的に交替する。双子の呼吸はぴったり合っていた。

 

 ベルカ機はチェルシー機を庇い、右腕の大型シールドのフィールドジェネレーターを作動させている。フォースフィールドによる減衰と併せて、ミエリが撃ち込んできたレールガンを弾く。

 

 ベルカのカレドヴルフはお返しに、シールドからホーミングレーザーを放つ。棺を彷彿とさせる長方形シールドの側面から高収束されたレーザーが撃ち出され、カーブしながらターゲットに迫っていく。

 

 バスターキャノンと一体になったこの大盾は攻防一体の複合兵装なのだ。

 

「行きなさい、我が眷属たち!」

 

 ベルカの反撃はそれだけで終わらない。普段の嫋やかな口調から一転、鋭く号令を発する銀髪赤眼の次女。右手を前にかざして攻撃を命ずるベルカの姿は、威厳ある女王のようでさえあった。

 瞬間的に転移してきた攻撃端末が、四方八方から火力を浴びせる。実弾、ミサイル、さらにレーザー。弾速も軌道も異なる弾幕で敵機が回避できる隙間を埋めてしまう。

 

 自動殺戮兵団( プラネット・マーダー)から解き放たれたベルカは、マーダーを統率する能力を失った。

 しかし、物質を召喚する能力は残っていた。"香りづけ"と呼ばれる一手間が必要だが、《袰月》製の自律兵器を戦場に呼び出し、弾幕で敵を圧倒することができる。

 ベルカの負担を考慮して、フル稼働には程遠い規模に抑えられている。それでもたった一機には過剰な集中砲火だった。

 

「ぬぅぅぅっ! 次から次へと玩具を出しおってからに!」

 

 歯を食いしばりながら、機体を回転させる金髪オレ娘。ミエリは数的に圧倒的に不利な状況でファイアイーターをかっ飛ばす。

 

「アナスタシアが羨ましがるわけだ!」

 

 これは余談だが。

 

 試作小隊長のアナスタシアは自身の周囲の物体を転移させる異能を持つ。アロウヘッドの戦闘においては、転送可能な範囲はアサルトフォートレスの弾薬庫にある武装が限度。そのため、距離を問わないベルカの無制限な転移能力を羨ましくも思っている。もっとも、アナスタシアの異能には、ベルカにはない長所があるのだが。

 

『さあ、行ってくださいチェルシー!』

 

 急激な加減速の繰り返しで揺れるカレドヴルフのコクピットに、ベルカの声が響く。衝撃は黒紫色のナノシェルスーツが受け止めているが、それでも苦痛はある。だというのに、ボーイッシュな銀髪赤眼の少女は笑っている。

 戦うことが心底楽し、嬉しいという表情だ。

 

「覚悟してね、ミエ姉!」

 

 猛々しく吼えるチェルシー。爛々と輝く赤い瞳は、狂戦士そのもの。

 

 稲妻のような機動で弾幕を抜け、プラズマブレードを手にしたカレドヴルフは、フラッシュシフト。残光を残して高次元に滑り込み、すぐさま三次元空間に戻る。

 

 チェルシーは瞬間移動で弾幕の僅かな隙間を抜けていく。双子であるため、互いの動きで手に取るように分かる。

 

 ミエリはフォースフィールドで攻撃を受け止め、さらに反射。まずはベルカが展開した弾幕に対処する。

 火線を相殺する、あるいは攻撃端末を破壊することで隙間を強引に作ってから、ファイアイーターもフラッシュシフト。

 

 今、まさに両手のブレードを振るってきたチェルシーから逃れる。

 

 触れるだけでもアロウヘッドの全身を融解させる必殺の光刃が空振るが、チェルシー機は四肢の反作用で素早く反転する。

 

「やっぱ避けるか! けど、これは無理でしょ!?」

 

 卓越した剣闘士の動きで、チェルシーは追尾を再開。

 今度は分身―――高次元エネルギーで構成されたコピーのカレドヴルフとペアで時間差攻撃を仕掛ける。分身と瞬間移動の組み合わせによる近接戦闘こそチェルシーの本領。

 無数の兵器を統率するベルカの援護と強敵の排除は少女の使命だ。

 

 

 次元兵装デバイスによって、空間戦闘スケールに拡大された異能を行使し合う超常的な機動兵器の戦闘。それは模擬戦であることを忘れるほど激しく、目まぐるしい。

 

 フェンリルの第三艦橋に設けられた専用の観測室では、時折歓声が上がっていた。

 三機のアロウヘッドが繰り広げている壮絶の戦闘は、観測作業真っただ中の技術スタッフをも熱狂させている。単純に絵面の派手さだけでなく、テレメトリーで送信される数値からくる熱狂だ。

 

「ふむ」

 

 碧髪のグリムナイア博士は一人だけ服装規定を無視したブラウスにショートパンツ、その上に白衣を羽織っている。時折、ゴシック風なドレスなどで盛装していることがある。だが、ナノシェルスーツを着ている博士を見たものは誰もいない。

 

 無表情にモニターを睨んでおり、スタッフが騒ぐのを注意しない。グリムナイア博士は仕事さえしてくれれば良いという考えの持ち主だった。

 

 能天気な《袰月》の技術スタッフに対して、茶髪の女研究者は緊張している。連合から派遣されたノイミだ。

 彼女は本来の仕事を超えて、双子とその乗機の試験を監督する立場にされていた。

 

 乗艦に際して支給されたナノシェルスーツのせいで落ち着かなかった――――どんな防護服より高性能なスーツとはいえ、超極薄、肌に着色したサランラップを貼っただけのような恰好なのだ。

 保守的な彼女はそんな格好したことがなかった。

 

 おまけに《袰月》の兵士は総じて美人だし、バストとヒップのボリュームが全体的に凄い(ミエリのようなスレンダー体形もある程度はいるが)。体も鍛え上げられているので、劣等感が刺激される。

 

 だが、模擬戦が始まると、そんなことは忘れてしまうノイミだった。片時も見逃さないようにモニターを注視しながら、ベルカとチェルシーのバイタルに気を遣っている。

 

「問題はないようだね。機体とスーツを入念に調整した甲斐があったというものだ」

 

「はい。二人のバイタルも正常です」

 

「それは結構なことだ」

 

 隣に立つグリムナイア博士に、ノイミは冷静な口調で応えた。

 

 

――――まだまだ子供だな、二人とも。

 

 青色被膜のナノシェルスーツを身に着け、重圧に耐える金髪オレ娘。激しい攻撃に、ファイアイーターの機載AIは離脱を推奨してきた。

 

(これで堕とす)

 

 ミエリは勝負を決するべく、その警告を無視する。ライダーの意志を汲み取り、視界投影されていた警告ウィンドウが消えた。ファイアイーターは右手のビームライフルを構え、精密照準モードに。

 

 スラスター噴射で回避と姿勢制御を併せて行い、ターゲットに三連射。ピンク色のビームは狙い通りに着弾。ベルカ機の大型シールドに覆われていない部位を叩いていた。

 

 まるで、ベルカの黒いカレドヴルフはビームに自ら飛び込むようだった。

 

 『きゃん!』、とベルカはまず可愛らしい悲鳴を上げた。

 自分が被弾したことに気付き、悔しい気持ちで胸を一杯にしながら、敬愛するミエリの白い機体を睨んだ。

 

「墜とされたというのですか……後退します」

 

 視界に躍る後退の指示に従い、カレドヴルフのバックスラスターを作動させる。胸部から噴射するプラズマに圧されて、ベルカ機は下がっていく。

 

 ベルカはヘルメットを解除した。ナノシェルスーツの一部であるヘルメットはすぐさま分解、折り畳まれて首回りのプロテクターの一部に。

 

 ウェーブのかかった銀髪が揺れ、汗が散る。どっと押し寄せてきた疲労に体が酸素を求め、ベルカは薄い胸を上下させながら呼吸する。

 その厚さ僅か0.01mm。黒紫色のナノ被膜がぴったり張り付いた、発展途上の双丘の先端。戦闘の興奮で硬さを帯びており、昂ぶった神経のため全身の感覚が敏感になっていた。

 

「ちょっとミエ姉、引き撃ちはセコいよ! ――――!? ダメ、墜ちる!」

 

 残されたチェルシーもすぐに撃墜された。アサルトレールガンとビームライフルの攻撃を集中され、必死で追いかけている間に戦闘不能にされた。

 

『う~、やられちゃった。ベルカと一緒なら絶対勝てると思ったのに』

 

 コクピットが警告灯の赤に染まり、撃墜を報せるアラートが鳴り響く。

 近接戦特化仕様のカレドヴルフは力なく宙を漂っていて、コクピットのチェルシーもぐったりしている。

 

「相手を蔑ろにしてちゃ、足元掬われるぜ」

 

 ミエリは双子のミスを指摘した。確かに連携は巧みだった。

 けれど、僚機の動きに意識を割き過ぎだ。肝心のミエリへの注意が疎かになっていたので、そこを突いて厄介な弾幕を展開するベルカを先に落としたのである。

 

『ベルカもチェルシーもよく戦った、立派だったぞ。戻ったら反省会だ』

 

 宙域で警戒していた漆黒のファイアイーターから通信。灰音はゼラ先生と万が一に備えて、ミエリ達の戦闘を見守っていた。

 

『畏まりました、姉様』

 

『はーい』

 

 素直に返事する銀髪赤眼の双子だった。

 

「それでは帰投しようか」

 

 黒にオレンジ色のアクセント、長距離打撃戦隊を預かるお子様先生ことゼラが促す。今日は慣らし運転だ。機体を調整して、明日から本格的なテストと模擬戦を行う。

 

「んっ? いや、待ってくれ。ワープ・ドライブ反応だ」

 

 ミエリが告げる。すぐさまデータリンクで反応が共有された。高次元空間を介する超光速航法はフラッシュ・シフトなどの例外を除き、三次元空間に復帰するまでの時間差と予兆がある。

 数百隻からなる船団が出現しようとしていた。

 アロウヘッドの巡航速度では遠い。しかし、ファイアイーターとカレドヴルフの高次元エネルギー応用推進であれば数分で辿り着く距離。

 

「やっぱり緊急ワープか」

 

 険しい表情でミエリが言った。リラックスしていたスレンダーな肢体に力が籠り、操縦桿を強く握る。

 

 現実空間に出現した船団から救難信号が発されており、穏やかではない状況なのは明らかだった。

 

『放ってはおけないな』

 

 救難信号の方向に旋回する黒とオレンジ色のファイアイーター。

 

『ゼラ先生、ボク達はどうすれば?』

 

『二人のことは灰音くんに一任しよう』

 

『連れていきたい』

 

 妹であるベルカとチェルシーを救助に同行させるか、という話だ。灰音はゼラ先生に即答。その返事に満面の笑みで応じる金髪のお子様先生であった。

 

『やった!』

 

『感謝いたします姉様。足手まといにならないようにしますね』

 

 灰音の判断に銀髪赤眼の双子は大喜びして、姉の期待に応えようとする。

 

「よし、ならノイミにはオレのほうから伝えておく。先生はゼフィリスに報告してくれ」

 

『心得た』

 

 ミエリとゼラで手分けして素早く連絡すれば、艦隊も船団を捉えて事態を把握済み。

 予想通り、救難信号に応じて船団を援護するよう指示が来た。

 

『では行くぞ諸君、遅れるなよ!』

 

 ゼラ機を隊長として五機編隊を組み、加速していく。

 敵と砲火を交えることが目的ではないが、実戦ではある。さっきまでの模擬戦とは異なる緊張感を包まれながら、ぴっちりパイスーの戦乙女たちは宇宙を駆けていく。

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