ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する- 作:ザンザザン!
ファイアイーター三機とその兄弟機であるカレドヴルフの二機による即席中隊は通常のアロウヘッドの数十倍の速度で、救難信号を発する船団に接近していく。
船籍は照合済み――偽装でないことが確定している。
ミエリ達がこれから救助するのは、千隻弱ほどの貿易船団。護衛艦共々損傷している艦船が多数を占めている。
黒基調のアロウヘッドのなかにただ一機、純白の機体。金髪のオレ娘、ミエリ・ライオネルの乗機は五機編隊にあって異彩を放つ。
スレンダーだが強靱な筋肉を備えるカラダに、青いナノ被膜のぴっちりスーツを張り付いている。
金髪は綺麗に纏められ、凛々しい気品があり、騎士を連想させた。
(これならベルカとチェルシーをドンパチに巻き込まずに済みそうだ)
把握している限り、戦闘に発展する事態ではない。
実力は十分、心構えも万全とはいえ、銀髪赤眼の双子を危険な戦場に立たせたくないという気持ちのミエリであった。
『相手は海賊か。やはり穏やかではないね。全機マスターアームをオンに。明確な攻撃意図があるものには即時反撃を許可する。警戒を怠るな』
自らも
(とはいえ、ゼラ先生の言う通りだな。用心に越したことはない)
マスターアーム・オン、攻撃用レーダーを思考トリガによる即応態勢に。超感覚センサの予測、負荷限度を戦闘レベルに。
緊張感に操縦桿を握るミエリの両手に力が籠る。
救難信号と一緒に被害状況の概要が送信されていた。それによれば、件の貿易船団は宇宙海賊の襲撃を受け、緊急離脱するも損傷を被り、救助を求めているとのこと。
海賊による追撃を示すワープ反応は出ていない。フランドルを旗艦とする本隊が到着するまでの安全確保が中隊の仕事になるだろう。
『船団とのコンタクトはボクが行う。接触後、灰音くんはチェルシーくんと一緒に救助活動を行うベルカくんを護衛。ミエリくんはボクと
銀髪紅眼の三姉妹から「了解」の唱和。綺麗な声がぴったりハモる。特に異能を駆使して、救助を中核を担うベルカの返事は気合を感じさせた。
「了解だ!」
同じくゼラに応じるミエリの声は灰音たちに負けないくらい威勢が良い。
「元気があって大変よろしい」
金髪を二つ結びにしたお子様先生は満足気に頷く。それからゼラは通信回線を開き、教え子たちに手本を示すかのように意気揚々と名乗りを上げた。
『こちらは《袰月》防衛艦隊群所属の長距離打撃戦隊、救助に参上した! 本格的な装備を有する本隊がすぐに到着するので、もう少しだけ辛抱してくれ!』
地球帰還を目指さず、居住可能な惑星を求めて流離う、あるいは航宙艦を維持しながらの生存に専念する艦隊国家も多い。
この貿易船団のそうした艦隊に属するものであり、真っ当な貿易で成り立っていた。
船団旗艦のブリッジは、物理的にあり得ない速度で接近する五機のアロウヘッドの反応に当初困惑した。
しかし、識別信号と直接の通信で《袰月》所属の機体と判明すると、半ばパニック寸前の状態だったブリッジに安堵が漂い始めた。
広大な銀河の中で、僅か数百隻で航行している小規模な艦隊国家である《袰月》と接触する――それはまさに天文学的な確率の出来事だ。
『ヴェドルカ』を名乗る宇宙海賊に襲撃され、辛くもワープ・ドライブで振り切ることに成功。
しかし、大部分の艦船が航行不能に陥りつつあるか、既に航行不能という窮地で、ツキが回ってきた。
「どうやら宇宙の藻屑になる事態は避けられそうだ」
「そのようですな」
絶え間ない決断の連続に疲弊していた船団長が艦長に向けて安堵の声を漏らす。
つい最近まで殆ど無名の泡沫艦隊国家であった《袰月》だが、大立ち回りのおかげで銀河中の注目を集めている。
救援の接近は船団全体にただちに周知され、事態の収拾に当たる全要員の士気を高めていた。
「なんだ……これ? アロウヘッド周囲に新たにワープアウトした機影、数は百機前後。恐らく救助と護衛のためでしょうけど、こんなことがあり得るのか?」
管制官の一人が異変を報告する。救助機の接近で感じていた安堵は困惑に変じていた。
漆黒のアロウヘッドを囲むように多数の作業艇と戦闘機が瞬間的にワープ・ドライブしてきたのだ。
反応を捉えた直後という高速の転移。既知の高次元技術では決してあり得ないことだった。
「向こうは《袰月》なんだ。考えても無駄だろう。
それよりも救助の妨げにならないよう火器管制システムの識別信号更新を徹底するように全船に通達してくれ。救助に来てくれた相手を撃つなど、船乗りの名折れだ」
艦長自身、当惑を感じていたがあくまで冷静に命令を下した。
「灰音、二人を頼む」
『うむ』
ミエリに頷く、銀髪の戦闘少女。編隊は二手に分かれた。ミエリはゼラ先生の黒とオレンジの二色のファイアイーターと
対極の位置で船団を挟むようにして、高速で警戒飛行する次元兵装搭載アロウヘッドならではの護衛陣形で、外からの脅威に備える。
『では、参ります』
損傷という内側の問題には、ベルカのカレドヴルフが対処する。灰音とチェルシーはその護衛だ。作業艇など戦闘目的以外の航宙機にも、ベルカは"香りづけ"を行い、召喚できるようにしてあった。
銀髪赤眼の次女の異能を試すために行ったそれが、救助ミッションに役立った。
損傷箇所を切除したり、応急処置を施したり。あるいは推力を失った船を押したりと、ベルカが指揮する自律兵器は忙しく働いている。
軌道軸を絶え間なく変えながら警戒する純白のファイアイーター。
二機のアロウヘッドによる警戒機動を遠目に見れば、数百隻の艦船を球形に囲むように光の軌跡が奔っているように見える。
「オレの気にし過ぎか」
小柄な肉体をぴっちりパイスーで包んだ金髪のオレ娘、ミエリはベルカ達の様子を心配そうに見つめていた。
ベルカは的確かつ懸命に働いているし、末妹のチェルシーと長姉の灰音の連携はばっちりだった。
懸念されていた敵襲や誤射もなく、貿易船団は救助活動を抵抗なく受け入れている。
ミエリは独断で貿易船団側の通信を傍受していた。
だが、一生懸命に救助する姿に警戒は解けたようで、好意的に応じてくれている。
(トラウマってやつかな?)
金髪のオレ娘にそうさせたのは、《袰月》での最初の救出ミッションでの経験であった。
墜落した植民艦にて、救助した人々に姿を見せたミエリであったが、数多の敵意や軽蔑の眼差しで迎えられた。
裸のようにぴっちりしたスキンスーツを身に着けた少女という存在は、彼らの禁欲的な宗教においては決して許されてはならない存在であり、理屈を超えた拒絶に直面したのである。
ベルカとチェルシーがもしも同じ目に遭ってしまったら――そう思うと、胸が張り裂けそうになる。
身を寄せ合い、敵意の視線から互いを庇う銀髪赤眼の双子の姿が鮮明にイメージできてしまう。
幸いにも今回の任務ではそうはならなかったが。
『二人のことが心配なのだろう? ここの人達なら大丈夫だ。ボク達は任務に専念しよう』
ゼラ先生が声をかけてきた。二人が駆るファイアイーターは互いに上下逆さになっている
「バレてたか」
心の内を見透かされ、気恥ずかしい金髪オレ娘であった。
『生徒の気持ちを察するのは得意なのだよ。なにせボクは先生だからね』
誇らしげに胸を張るお子様先生。
ゼラはミエリと同じく小柄だが胸のボリュームはある。お互いにナノシェルスーツを着て、間近で話しているとミエリは自分の小振りな胸を実感するほどだ。
『ミエリくんも灰音くんもすっかりお姉さんだね。あの娘達のお世話を立派にしているよ』
「そう、かな?」
『もっと自信を持ちたまえよミエリくん!』
言いながら宙返りする黒にオレンジ色のファイアイーター。
ゼラの諭すような話し方は優しく、教え子を肯定する気概に満ちていた。