ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する-   作:ザンザザン!

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敵対的で友好的なお誘い

「我らがミエリ・ライオネルはどこでも人気者だな。さっすが」

 

 人だかりを少し離れたところから見物して、キャハハと嘲笑うエイリ。鮮やかな紅髪のシルフは髪色と同じく鮮烈な深紅のドレスを身に纏っていた。

 

 彼女が自分で選んだ衣装だった。

 ドレスは白い肌に映え、タイトな仕立てで肢体の並外れた美麗さを見事に引き立ている。

 

 妹のエルザレドと部下のJK二人をお供にしてホールを闊歩していたのだが、ミエリを発見して足を止めた。

 

 大の男たちに囲まれて、逃げ出せず困っているミエリ・ライオネルの姿はなかなかの見物だ。

 

「ホント、ミエリちゃんってかっこいいよね。一人っきりでも背筋をビシっとして笑顔も忘れてないし」

 

「うむうむ」

 

 灰白色の髪をサイドテールにした蟲惑魔。女子高生には見えない幼い容姿のアラヒナはミエリの立ち振る舞いに純粋に感心していた。

 

 金髪褐色の謎めいたレギがその隣で頷き、同意している。レギは戦隊で最も謎めいた生徒である。予測不能な長身JKは褐色肌に映える白地に金色で装飾された旗袍で盛装していた。

 

 旗袍の側面は殆ど切り開かれている。前後に布を垂らしているだけの、極めて露出度が高い格好だった。

 四肢の鍛え抜かれた筋肉が露わになっており、武闘家を連想させる。レギ自身そういうコンセプトで着飾っているのだろう。

 

 眼鏡と穏やかで控えめな性格以外は姉と瓜二つのエルザレドは、注意深い眼差しでミエリを囲む者たちを観察している。

 

 姉にも自分にも優しくしてくれる金髪オレ娘がパーティーで華やかな活躍することは嬉しい。

 エルザレド自身、ミエリの優美高妙な立ち振る舞いに見惚れているのだが、ここはある意味では敵地だ。浮かれてばかりもいられない。

 

「姉様」

「分かってるよ。心配すんな。ヤバそうだったら助けてやるさ」

 

 用心深く仲間想いのエルザレドは、連合の人間が良からぬことを企んでいると疑っていた。

 その懸念を視線で静かに伝えると、エイリは片目を瞑って笑ってみせた。

 

 

――――ダメだ、これじゃ抜けられん。

 

 自分を取り囲む連合の軍人たちに上品な笑顔で応対しながら、しくじったとミエリは反省していた。

 

 いきなり大人数に囲まれたのではない。

 呼び止められて、会話に応じてるうちに次から次へとやってきて、ちょっとした人集りが出来上がったのだ。

 

 ヘッドフラッグ・レースで競い合ったクリスティ・サンダーランドもそうだったが、連合の人間というのは、やたらと押しが強い。

 それでいて笑顔で接してくるので邪険にするのが難しい。たとえ、単に好意からではなく、下心がある場合でもだ。

 

 明日以降に執り行われる環境試験や合同訓練の話だけではなく、プライベートな話題も振られている。

 

 というかそっちが主流になっていた。

 

 ホームパーティーとかバーベキューの誘いを何件も貰っている。

 他にも子供がアロウライダー志望で、ファンなので是非会ってくれないかと冗談交じりに言われたり。とにかく自分のフィールドに引き込もうとしてくる。

 

 おまけに星間ネットに挙げてる動画(ダンスとか日常を撮った他愛のないやつだ)の話までされて、ちょっと恥ずかしかった。

 

「嬉しいお誘いですが、スケジュールがびっしり詰まっていまして」

 

 とにかく、角が立たないように丁寧に断っていく。

 

 ミエリは暑さを感じていた。囲まれたことよる暑苦しさと緊張のせいだ。ピカピカの軍服を着た上級将校や将官とこんなに笑顔でお話したのははじめてだった。

 

 人目がなければ、手で仰いで涼を取っているところだ。

 ドレスの下。見えない部分まで徹底したお洒落としてドレスのコーディネーターに薦められた逸品である白のレースショーツのお尻に汗が滲んでいるのが自分でも分かる。

 

 せめて喉の渇きを潤したい。そう思っていたときだった。

 

「失礼、退いていただけるかしら?」

 

 人集りに呼びかける若い女の声はミエリにも聞こえていた。

 

(なんかイヤな予感)

 

 ハレのような異能による予知だとか読心ではない。ミエリの直感が敵意ともいうべき感情を察している。

 

 ミエリを囲む人だかりを言葉だけで掻き分け、少女はまっしぐらに接近してきた。

 

 金髪に碧眼、そして長身。白頭鷲主義連合(イーグル・ステイツ)の美意識にぴったり沿ったような理想的な美少女だ。強い意志と苛烈さを感じさせる眼差しが、こちらを見据えている。

 

 そんな金髪娘が身に着けているのはホットパンツの軍服だった。

 

 場の格式に相応しい礼装軍服だが、モデルのような白い肌の美脚をむき出しにしたボトムスは活動的な印象で、場違いでもある。

 それがむしろ魅力になっているのは、着こなしと少女の自信に満ち溢れた佇まいのおかげだろう。

 

 軍服に飾られた部隊章で、相手の素性は察することができた。

 

 稲妻を断ち切る斧槍(ハルバード)の猛々しいエンブレムは展示飛行の目玉となった五機の巨人機(タイタン)に描かれていたものだった。

 

 部隊章は星系に駐留する防衛艦隊ではなく、連合中央の特務部隊を示していた。

 

 機体のほうはAAS-004"イースデイル"という呼称の最新鋭機だった。

 巨人機(タイタン)は全長十八メートル前後の人型機動兵器であるアロウヘッドの倍以上のサイズを有する大型兵器だ。そのサイズからくる火力、装甲、推力で戦闘の要となり、《袰月》が次元兵装搭載型アロウヘッドを実用するまでは、次元兵装を装備可能な最小サイズの機動兵器だった。

 

「見事な展示飛行でした。部隊長さんでしょうか?」

 

 編隊を率いていた、この軍服の金髪娘はその隊長機に搭乗していたとみて間違いない。

 機体の肩に描かれていたパーソナルマークー―翼竜(ワイバーン)をモチーフにしたパッチを付けているのだから。

 

「そこまで理解しているのなら話は早そうね。パトリシア・シェリンガムよ」

 

 金髪のホットパンツ軍服娘は肯定し、名乗った。

 傲慢さと気高さが危ういバランスを取っている。そんな美貌が笑み、手を差し伸べる。

 

「踊っていただけるかしら、ミス・ライオネル」

「喜んで」

 

 ダンスのお誘いに、とびきり華やかな笑顔で応戦するミエリ・ライオネルであった。

 

 応戦、である。パトリシアは露骨にこっちを挑発していた。

 パトリシアの手を意識して強く握り、相手もその意味を察して強く握り返してくる。

 互いに親し気な笑顔を交わし合うのは忘れなかった。

 

 

 パトリシアと手を取り合いながら、軍人たちに丁寧にお別れの挨拶をして立ち去った。

 

「統制派の残党がしゃしゃりでおって」

 

 そのとき、ミエリを囲んでいた軍人の一人が憎々し気につぶやくのを耳にした。

 

 人類連合統制派、あるいは統一派とも呼ばれる。《殲滅大戦》で銀河を二分した勢力の片割れだ。

 高次元技術による超光速航法と通信を実現し、銀河に版図を広げた人類の統一政府である人類連合。そのうち、地球による植民惑星の絶対的統治を推し進めていた派閥である。

 

 後に統制派から分裂した殲滅派の参戦により、星系単位での自治を求める拡散派ともども甚大な損害を被り壊滅。

 拡散派の生き残りと習合する形で新たな勢力を形成することとなった。

 

 白頭鷲主義連合(イーグル・ステイツ)は、拡散派を主体としている。

 

 少数派である統制派をルーツとする人々が、かつて一大戦争を繰り広げた相手である多数派にどのように思われているのかは、想像に難くない。

 

「気にしてないわ。それに貴女という立場の人に同情されるのは屈辱よ」

「そうかい」

 

 気遣うミエリの視線に、パトリシアは拒んだ。はっきりとモノを言う。こういう娘は嫌いじゃない。

 

 

「あれは……?」

 

 ダンスフロアに向かう際、ミエリは殲滅小隊に気付いた。

 

 小隊はパトリシアと同じデザインのホットパンツ軍服の少女四人と対峙していた。

 小隊長の紅シルフ、エイリが進み出る。腕を組み、高い身長とハイヒールを活かして相手の少女たちを見下ろしていた。

 

 とはいえ、ホットパンツの少女たちもすらりと長い四肢の持ち主だったので、ヒールでぎりぎり優位を得ていた。

 

 囲まれている自分を見守ってくれていたのだろう。いよいよ助け舟を出そうしたときに、あの四人組が立ちはだかったというところか。

 

「あの娘たちは私の仲間よ。邪魔が入らないようフォローを頼んだの。心配しないで。無礼はしないよう厳命してあるわ」

 

 距離が離れているので、会話の内容は分からない。だが、少女たちは友好的なようで、エイリたちの警戒心は解れたようだった。

 

「そう…みたいだな」

 

 ちょうど紅シルフの姉の方、エイリと目が合ったので、「こっちも大丈夫だ」とアイコンタクトで報せる。

 

「踊る前に水分補給していい?」

「どうぞ、ご自由に」

 

 すっかり安心したミエリはパトリシアに訊いてから、飲み物を取りに向かった。とりあえず、闘り合う前に最低限の準備はできた。

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