ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する- 作:ザンザザン!
アルファ・フライトは無人機群の殲滅を開始した。
敵は二手に分かれている。居住区画をアルファ2ククリス、アルファ4ミエリが、中枢管制区画をアルファ1ハレとアルファ3灰音が担当する。
宇宙という広大な空間を主戦場に無双する、アロウヘッド・ファイアイーターにとっては狭すぎるフィールドだ。
「せいっ!」
金髪碧眼の猛々しい美少女は、胸部が薄く、筋肉が発達した、運動に適した女性体の全身を使った操縦にて気合一閃。
邪魔になるバスターキャノンを折り畳み、右手に握った太刀は、装甲を紙のように切り裂いて無人機を真っ二つにした。
ミエリが切り捨てたのはアロウレス。アロウヘッドから高価なバスターキャノンを取り払った簡易量産機が少数紛れていた。
三機をほぼ同時に切り捨て、爆発を背負いながら、錐もみ旋回にて地上へと強襲。
他の兵器と同じく、無人工廠で改良が加えられていたが、所詮スレイブ型人工知能群によるものでしかない。
革新的な性能向上はなく、《殲滅大戦》当時から進化したアロウヘッドの敵ではなかった。
《袰月》の標準的なアロウヘッドFAR-31"ガントレット"と勝負するにも、三倍の数が最低必要だろう。
とはいえ、対人兵器として極めて優秀だ。
人間が完全に実行することの難しいターゲットへの攻撃を機械にやらせるのは、大戦での常套手段であり、端的に言えば非戦闘員を含めた虐殺のためのモードが大抵の無人兵器に実装されている。
人間狩猟機としてのセンサーをフル稼働させた、慣性制御機構搭載機であれば人口数十万の航宙艦など二個中隊で五分とかからず皆殺しにできる。
そして、相手が無防備であるのなら、遥かに少ない数と時間で済む。
アルファ・フライトが敵を完全に駆除して、一息ついた時だ。
地獄の光景よりなお悍ましい戦場を思い出し、思わずミエリは頭を振って忌まわしい思い出を振り払った。
ナノシェルスーツを介して、バイタルをモニターしている小隊長のハレと部隊の最高指揮官であるゼフィリスはそれを察していた。
肉体も性別も所属も、生まれ変わったことを実感したい気持ちがミエリ・ライオネルの中に生じる。
ファイアイーターを歩行させ、センサーが捉えた崩れかけの教会に隠れた熱源に向かって呼び掛ける。
「もう大丈夫だ」
教会に避難していた民間人達が恐る恐る姿を見せ、洗練された装甲の人型兵器を見上げる。
禁欲的なのは建物だけではなかった。人々の服装は老若男女を問わず、簡素で素肌の露出を極限まで控えたものだ。
装飾と呼べるのは全員が揃って首に掛けた宗教のシンボルだけで、おまけに若い女性でさえ髪を短く切った髪型で統一しており、化粧など一切していない。栄養状態も平均未満だ。
全能型超高性能AIにデザインされた高性能な肉体と個性的な装いで飾り立てた人々が通りを歩く《袰月》とは対極的な文化だ。
だが、網膜に投影された映像に映る人々の姿はミエリの育った環境に酷似しており、親近感を抱くものだった。
同じ人間だと伝えたくて、ミエリはヘルメットを外した上でコクピットを解放してしまった。地上でどよめきが走る。
胸部のせり出した装甲板に立ったミエリがナノシェルスーツ越しに感じたのは、嫌悪や拒絶の視線だった。
厚さ0.01mmのナノ被膜で少女の裸体の大部分を覆い、局部など煽情的に思えるような装甲が配置されたスーツは、この艦の人々にとっては、異性を惑わす悪魔の装束であり、即座に極刑に処される不心得者の姿であった。
さらに言えば、男よりも強くあろうとすることも許されるものではない。体を鍛え、強力な戦闘兵器に乗ったミエリは、唯一絶対の信仰の元に理屈を超越した悪であった。
その場に居合わせた男達はミエリの体の曲線の魅力に、下半身を充血させ暴発させる寸前であったが、一方で教義に反する存在に、条件反射的な怒りを燃やすことで正しくあろうとした。
放射線すら完全に遮断するナノシェルスーツを着ていても、視線の暴力は防げない。ミエリは想定外の攻撃に身を震わせ、しかし逃げ出すことが嫌でその場に立ち尽す。
もう一機の巨人が威嚇するように地を揺らして降り立つ。アルファ2ククリスの機体だ。外にいるミエリに聞こえるよう、外部スピーカーを使う。
「ミエリ、後退命令です。フェンリルに戻りましょう」
「――――わかった」
体に突き刺さった眼差しを振り払うようにククリスに応じ、ミエリはコクピットに戻るとすぐファイアイーターを離陸させた。
オートパイロットでククリスに続く。戦闘の興奮は、とうに消え去っている。
ヘルメットを解除したままのミエリは己の短慮を恥じた。
人々に受け入れられ、あまつさえ救い主として感謝される、都合の良い妄想を抱いてしまったのだ。
陽気なJK小隊長の呼びかけに聞くに堪えない罵声で応じ、管制区画に立て籠もり続ける高位乗組員と上流階級を平和的に救出するのは、主力機の二十倍以上の性能を誇るファイアイーターでも不可能だった。
『そんなこと言わなくてもいいじゃん! お父さんやお母さんにそういう言葉遣いはいけませんって教わらなかったのかな!?』
ハレと灰音は来た道をすごすごと戻り、ミエリ達と合流した。
艦からの退去中に、ブラヴォー・フライトから通信が入った。ミエリを心配してのことだ。
「元気出せよチビ助。終わったら、ボウリングでも行って遊ぼうぜ。それとフェンリルの防衛は任すぜ、頼りにしてるからよ」
不良小隊を代表して凶狼娘ラヴィがミエリに告げた。
ハレ達と交代し、ブラヴォー・フライトと空間海兵隊が艦内の救助活動を引き継ぎ、二時間ほどで三百人余りの乗員をフェンリルで保護した。
半ば強引に隔壁を爆破して引き摺り出した、中枢管制区間に立て籠もっていた連中を含めた人数だ。
平行しての調査と解析で、艦が惑星に墜落した原因も概ね判明した。
宗教的な使命感に基づき地球を目指して出発したこの艦隊は、信仰する宗教の解釈を巡って数十年に渡る内戦に突入。
ついに砲撃戦に発展し、艦隊が急速に崩壊していくなかで、エンジンブロックに被弾したことから不時着を決断。
それを周囲の元同胞らが大気圏内まで追撃したのだが、惑星防衛システムは追撃側を高脅威と判断して集中砲火。
乗員は身分や区画の強度を問わず揃って燃え上がり、僅かな残骸が地上に散らばるまでに爆散した艦隊の中で、一隻だけ不時着に成功したのだ。
しかし、逆噴射による着地の衝撃は居住区画を中心に深刻な被害を与えた。強引に戦闘艦と居住区を合体させた設計による弊害だった。
墜落と無人兵器の攻撃を生き残った勇敢な住人が、ハッキングによって独断で救難信号を発信したという顛末だった。
救助完了からさらに二時間が負傷者の治療や生存者への説明などに費やされた。
価値観が全く異なり、おまけにこちらを悪魔扱いしてくる上に権力者は途方もなく傲慢。
地獄のような相手だったが、赤髪の上品な美少女艦長は、《袰月》管制AIの援護を受けて見事に交渉を成立させた。
《袰月》への帰還直前。ゼフィリスはやっとのことで艦内の女子トイレにお尻を下ろし、身軽になることができた。
「はぁ――――んっ…うぅぅ……!」
赤髪ツインテの美少女が悩ましい吐息を吐く。
後処理には、手の届く位置にある銀色の貝殻三枚を使うため、極めて衛生的だ。
清潔に処理して立ち上がると、ナノシェルスーツがゼフィリスの意志に反応。I字型装甲がスライドして、局部を再度保護する。
ナノシェルスーツには永久的な排泄物処理機能があるが、あくまで非常用の機能であり、艦内などではトイレを利用する。
実際、体が慣れ切らないように、処理の際に意図して違和感があるように設計されていた。
ちょうど横の個室が開き、金髪碧眼の美少女が姿を見せた。見た限り、ミエリはフェンリルに戻ってきた時より落ち着いた顔をしている。
並んで通路を歩きつつ、ゼフィリスから声をかけた。
「任務、お疲れ様。操縦もチームワークも冴えていたわ」
「ゼフィリスこそ。あの連中と長時間話して疲れただろう?」
「まあ、少しはね。けどもう慣れたし、タフな交渉向けの調律を施してもあるの」
ミエリに、大人びた笑みでゼフィリスは応じていた。
「見返りもなく、礼の一つもなし。よくそんな連中を親切に助けるもんだ」
「広い意味では、私達も彼らも銀河を共有する仲間、助けるのは当然の事よ。古い言葉で言えばシーマンシップというものかしら?」
背筋をぴんと伸ばし、スーツにぴったり包んだ乳房を誇らしげに揺らして赤髪ツインテールの艦長は言ってのけた。
星系を焼き尽くせるほどの武装を搭載した殲滅兵器を預かる身とは、とても思えない考え方だ。
《殲滅大戦》。その名は敵対陣営を非戦闘員まで含めて殲滅する戦略が多くの陣営で採られたことに由来する。
だが、ミエリは《袰月》の考え方のほうが好きであったし、今回の件は相手の価値観を考慮しなかった己への教訓として受け入れた。
「保護した奴らはどうなる?」
「《袰月》の雁字搦めの艦隊規則はお気に召さなかったわ。魂魄を艦に渡して調律する、なんて他所から見れば異常なやり方だから、亡命を希望するのは本当に稀よ。《袰月》が提供する新しい艦で旅を再開するか、どこかの艦隊か惑星への亡命を各自に選んでもらったわ」
「至れり尽くせりだな、羨ましい」
亡命先の手配どころか、艦艇の提供まで選択肢にあるとは。
威を示すために、過剰な軍拡を行う他の地球帰還艦隊と異なり、《袰月》は必要数だけを配備している。
さらに失った兵器をすぐさま補充する生産能力を有しており、高速ワープ・ドライブ付きの艦艇を都合する程度はごく簡単だった。
「とにかく、私達の任務は完了よ。それじゃ」
「ああ」
ゼフィリスがブリッジに向かい、ミエリは格納庫のファイアイーターで待機する。
赤髪ツインテの背筋を伸ばした優雅な歩み方を真似て、格納庫に入った瞬間、銀髪赤眼に奇襲を受けた。
「うおっと! はっ灰音……!?」
「ミエリは今日一杯頑張った、それに辛い思いもした」
灰音の抱き締める力はさらに強まる。
身長では10cm負けており、黒紫色にラッピングされた、程よい大きさの胸を押し付けられる。
「だから私がミエリをいっぱい褒めて、いっぱい慰める。ミエリは強くて、偉い。優しくて偉い。あの人達を安心させようとした」
ミエリは拒めなかった。空気を呼んでお互いの体温を感じられるように変成したナノマシン被膜から伝わる灰音の温もりと鼓動に身を委ねた。
金髪と銀髪の美少女JKは、ナノシェルスーツ越しに体を密着させ合い、股間部分の装甲をこつん、と当てた。
フェンリルの発進は二人が互いに満足するまで待つことになった。