ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する-   作:ザンザザン!

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水面下敵意のテストフライト

 白頭鷲主義連合(イーグル・ステイツ)中央軍のイーストン大佐はモニタースクリーンに映る映像を眺めていた。

 

 惑星S7軌道上に居並ぶ"客人"の艦隊。

 その中心には巨大な艦影は、惑星を見下ろすように鎮座している。

《袰月》防衛艦隊群の艦艇と土雷(ツチイカヅチ)級工廠艦"ヤズマ"だ。

 

――――ゲストに楽しんでもらうのが連合(ステイツ)の流儀だ。しかし、相応の対価は支払ってもらう。

 肩書き上では、一介の大佐でしかないが、イーストンは《袰月》の使節艦隊をこの星系に招いた張本人であり、階級以上の大きな権限を持っていた。

 

「我々と自由の価値観を共有する新たな友人《袰月》は、美しく強い。長らく連合の崇高な自由主義を蝕んできた強欲者達を打ち負かしたことは賞賛に値する」

 

 イーストンはブリーフィングの名目で、呼びつけたジドレ技術大尉に語りかけている。

 

 強欲者。合同演習を切っ掛けに僅か数ヶ月で衰退したハイペリオン・グループのことだ。

 崇高な自由主義の擁護者であるとイーストンは自負していた。

 それゆえ、ハイペリオンの拝金主義者たちが大人しくなったことは歓迎していた。

 しかしながら、"僅かばかり"高度な技術を持つだけでごく小規模な艦隊国家である《袰月》が連合の主義思想に全面的に服従することなく、むしろ自らの価値観を連合に広めようとしていることは好ましくなかった。

 

「彼らはいわば子供だ。それも大人相手に火遊びをしたがるような。過ぎたる力の危険さを理解していない彼らを、我々は大人として導かねばならないのだよ」

 

 イーストン大佐はそう断じた。

 誰が聞いても傲慢極まりない物言いであった。"我々"が指すものが決して白頭鷲主義連合という国家の総体ではない。

 

 ちょうど完了しかけていた航宙艦での暮らしに飽いた富裕層のための植民開拓事業を利用した。

 交流の名目で《袰月》の艦隊を呼び付ける計画を企て、自身が属する強硬派閥の権力で迅速に実現させたのだ。

 

 友好的な態度で接しつつ、任務上の必要性を建前にした理不尽な要請で、"事故"が起こる蓋然性を高める。

 そうして《袰月》に失態を演じさせ、内外に連合の優勢を示しながら、進んだ技術を分別のない子供から収奪していく。

 イーストンは急いではいなかった。その糸口を作り、徐々に切り崩していく。

 最終的には《袰月》をあらゆる面で連合の一部として取り込むことが目標であった。

 

「君が造り上げた"イースデイル"には期待している。くれぐれも失望させないでくれたまえ」

 

 ジドレの表情が強張る。最新鋭の巨人機(タイタン)AAS-004の開発責任者であるこの技術大尉に莫大な予算と人員を与えたのもイーストン大佐であった。

 イーストンの冷酷さを知るジドレは、計画が失敗した際に自分がどのような立場に置かれるか想像して恐怖に震えた。

 

「必ずや期待にお応えします。斧槍兵部隊(ハルバーディア)直近の心理評価によりますと士気は極めて高く、特に部隊長を任せているパトリシア中尉の戦意は旺盛です。作戦は必ず成功します」

 

 怯えが見て取れるジドレの返答にイーストンは「ふん」と鼻を鳴らした。

 

◆ ◆ ◆

 

 集合時間に予定通り集まり、ブリーフィングを済ませた長距離打撃戦隊は格納庫に移動した。

 

 先導しているのは戦隊長のゼラ先生だ。

 小柄なお子様先生の二つに結った金髪が揺れ、プリっと肉付きの良いお尻が意気揚々とした歩みの振動で弾み跳ねる。

 

 《袰月》から持ち込まれたアロウヘッドが搬入された格納庫は、連合の基地にあって、完全に《袰月》防衛艦隊群の占有領域として貸し出されている。

 割り当てられた格納庫や居住区の警備は防衛艦隊群が担当していた。連合側から警備兵や護衛を出すよう持ち掛けられたが、これだけは丁寧に断っていた。

 

 格納庫に立つ警備兵には身体の線が浮き出るナノシェルスーツを装着している以外にも、人目をひく要素があった。

 長く尖った笹穂耳の麗人たち――シルフ族の女性兵士が直立不動、毅然とした佇まいで守っているのだ。鮮やかな深紅のナノシェルスーツには壮麗な装飾が施され、腰には長剣を帯びている。

 

 紛れもなく彼女たちは騎士であった。

 格納庫を警備しているのはシルフの王家を守護する近衛騎士団だ。防衛艦隊群における独立軍ということになっている。

 

 近衛騎士団は、S7の様々な催しに出席する久遠の警護のために随伴しており、こうして格納庫の警備などにも人員を出してくれている。

 異種族と共存する《袰月》の在り方を示す意味合いもあった。

 

「お疲れ様でーす♪」

 

 などとハレが挨拶したり、長距離打撃戦隊のJKどもが声をかけると、シルフ騎士たちが華麗に敬礼で返す。

 連合の輩を寄せ付けない冷然とした眼差しが緩み、何人かは微笑みを見せてくれた。

 

◆ ◆ ◆

 

 格納庫にズラりと並んだ人型機動兵器(アロウヘッド)

 《袰月》防衛艦隊群が誇る最強の機動兵器、次元兵装搭載型アロウヘッド、FFR-14A9"ファイアイーター"ではなく通常型のアロウヘッドであった。

 

 ファイアイーターは軌道上に係留した特務巡洋艦フェンリルの格納庫に保管されている。

 テストに使うのは当面、《袰月》の開発局や企業から託されたアロウヘッドだ。

 

 そんなワケなので、連合の人間は基地に運び込まれた機体がファイアイーターじゃなくて落胆したかなとミエリ・ライオネルは思うのである。

 

「またミエリと離れ離れだ。私は寂しいぞ」

「だからってくっつくな。まったくもう」

 

 そんなミエリは銀髪赤眼の美少女に抱き着かれて髪の匂いを嗅がれたり、頬擦りされたりと好き放題にされている。

 食堂で会ってから灰音はべったりで甘えてきている。妹二人の前だというのに。

 

 ミエリの眼前には、虚来姉妹に割り当てられたお揃いの漆黒のアロウヘッドが佇んでいる。

 

 メンテナンスベッドに固定された全長18mのヒト型機動兵器はステルス仕様。

 これから灰音たちは連合の追跡を振り切って、軌道の工作艦ヤズマまで上がる。

 長距離打撃戦隊の位置は連合にマークされているので、ステルス能力のテストにちょうど良かった。

 

「実戦みたいなもんだ。抜かるんじゃないぞ」

「分かってる。ベルカとチェルシーだって気持ちを整えてある」

 

 一応、ミエリは促しておく。姉に名前を呼ばれた双子はゼラ先生との会話を中断して、こっちに向いてぴしっと敬礼。背後で拍手するお子様先生。

 

「乳繰りあってんじゃねーよ、バカップル」

「むー」

 

 灰音は深紅の髪のシルフにお尻を叩かれ、唸りながらミエリから離れた。

 

 颯爽と金髪オレ娘の前を通り過ぎる殲滅小隊長のエイリ。透き通るような白い貌に不満げな表情を浮かべている。

 両手を腰に当てた尊大な姿勢でエイリはその原因を見上げていた。

 殲滅小隊の部下であるアラヒナと複座型の重爆撃試験機に乗ることになっている。

 

 殲滅小隊の機体は三機。

 エイリとアラヒナの複座仕様の他、単座仕様にエルザレドとレギが搭乗する。どれも半砲台型、あるいは半人型と呼べる姿をしていた。

 航宙機に四肢に似たフレームを取り付け、バスターキャノンを搭載している。

 アロウヘッドの基本形から逸脱しており、勝手も異なる機体であった。

 

 見せ札と攪乱を兼ねて正式採用の予定がない試作アロウヘッドも混ぜてある。不良小隊や試作小隊の機体はそれだった。

 

 妖精小隊の流麗な装甲の機体は、近衛騎士団が独自に運用しているアロウヘッド"鳴風(ナリカゼ)"だ。

 

 演習場でのテストのみならず、展示飛行、さらに久遠自身にはシルフという種族の代表としての外交任務がある。

 いつものことだが、ビビリな姫様は緊張と重圧で硬くなっていた。

 

 並んだアロウヘッドを流し見て、ミエリは最後に自分の機体を見た。

 

 突撃小隊のアロウヘッドはどれも最新鋭量産機パラディンであり、その特徴であるブロック構造のカスタム性を活かし、様々な試作パーツを組み込んである。

 

 ミエリ・ライオネルが任されたのは新型推進・慣性制御系を組み込んだテスト機体だ。

 

(責任重大だな)

 

 ミエリ機にはパラディン・エフェックス(FX)というコードが振られている。

 

 この機体の推進・慣性制御系ユニットは今後、ファイアイーターやカレドヴルフといった次元兵装タイプのアロウヘッドにも組み込まれることが予定されている。

 

 重要度の高いテスト機だった。結果が悪いとグリムナイア博士にどやされる。プレッシャーも感じるというもの。

 

 ゼフィリスが近寄ってくると、灰音はミエリの隣に立った。

 

「またお世話になります。よろしく、ミエリ小隊長」

「こっちこそ。ゼフィリスが一緒だと心強い」

「うむ。私も安心だ」

 

 灰音が抜けた穴は赤髪の美少女艦長、ゼフィリスが埋める。

 オルランド星系王国でデルタセイバーに乗った際、小隊メンバーとなってその実力は証明済み。大局を見渡す判断力は頼もしい。

 

 ミエリは臨時で小隊長を拝命していた。

 指揮官という立場のほうが、ミエリが自分の判断で動けるという考えで、ハレが立場を譲ってくれた。

 

「隊長♪ いかなる命令にも従いまーす♪」

 

「何なりとご命令ください」

 

 おどけて敬礼する金髪長髪、巨乳のギャルJKハレ。

 その隣、ククリスも真剣な眼差しでミエリを見つめていた。

 

「おーいお前ら並べ。先生からありがたい訓示だ」

 

 各自任された試作アロウヘッドの現物を見上げたり、近寄って装甲に触れるなどしていると、不良小隊の灰髪姉御ラヴィが呼びかけた。

 両隣にお嬢様風の紅黒と女王様風のド派手なメティスを従えている。

 

「ほらほら、そこの二人もっすよ」

「はーい」

 

 ちょうど近くにいたダウナー系不良JKのクーリエが銀髪双子に促す。

 下級生ではなく仲間扱いされ、ベルカとチェルシーは嬉しそうだった。

 

「えーと……これは私も並んだほうが?」

「もちろん」

 

 イケメン女子な金髪ツインテに促され、茶髪で白衣なぴっちりスーツ女博士は列に加わった。

 

 生徒たちの凛々しい表情を眺め、ゼラ先生は満足気に頷く。

 そして、訓辞を述べた。

 

「長丁場になる。予想外のアクシデントも十分あり得る任務だ。皆、怪我がないように気を付けるように!」

 

 これを訓辞というかべきか。子供の遠足か何かの注意そのものだ。ミエリは思わず脱力してしまいそうになった。

 

 しかし、気が引き締まったのも事実。

 

 整列した長距離打撃戦隊のJKたちは、ゼラ先生に声を揃えて「はい!」と元気良く返事。その声は綺麗に重なっていた。

 

 

 

 

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