ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する- 作:ザンザザン!
ハード・エクササイズ
灰音が殺られた!という衝撃をミエリが受ける間もなく、そいつは突っ込んできた。
「ぐぅっ! こっのぉっ!」
神経リンクシステムがレッドアラートを鳴らしまくる。わかってるわっ!とミエリは戦術支援AIを一喝して、全力噴射で乱数回避。
激し過ぎる戦闘機動で、とっくの昔にコクピットは拷問器具と化しており、金髪碧眼のオレ娘を痛めつける。
常人であれば全身の骨が砕けるGだ。しなやかな、しかし鋼のように強靭なミエリの肉体とて、筋肉が悲鳴を上げているが、ナノ秒も休んではいられない。数億の火線が長距離打撃戦隊に殺到している状況なのだ。
致命的なレベルに達する寸前の慣性による重圧。心身の力を振り絞って抗いながら、ミエリは妖精小隊の通信を聴いて苦笑してしまった。
妖精小隊。優美な形に尖った耳が特徴的な異種族シルフィード、あるいはシルフとも呼ばれる美少女四人の小隊なのでそう呼ばれている。
高度な次元操作技術と異能を持つ彼女達は《袰月》の建造にも関わり、共に同じ世界艦に暮らす盟友であった。
『どっどうにか電子支援を持たせるぞ! だっだから皆、私を最後まで生き残らせてくれ頼むぅっ!』
『将来氏族を束ねる者がそのように臆病では同胞に示しがつかない。凛々しく、猛々しく振舞え』
友軍機の戦闘能力を大幅に向上させつつ、敵機の能力を低下させる。
文字通り魔法のような電子支援を行うのは、見た目だけならシルフの威厳ある姫、実態は臆病で泣き虫な久遠。
『だっだってぇ火狩、弾が当たるとぶるるってなってビービーってなって怖いんだぞぉ……!』
『全く、久遠は世話が焼ける! そこっ艦砲射撃を迎え撃つから下がっていろ!』
輝くような金髪を誇るシルフの氏族に連なる、鋭い眼差しの狩人にしてお目付け役の火狩(かがり)は呆れながらも甲斐甲斐しく援護する。
『微笑ましい限りですな、葉隠』
『だね、久遠と火狩の会話を聞いてくると落ち着いて――――っとこれはいけないな。フォローしてくれ八坂、フェンリルのカバーに加わる』
片時も集中を乱すことなく戦闘を続けながら、会話するのは絹のような白髪に褐色肌の女侍風シルフと、小柄な銀髪片目隠れ、ボーイッシュな忍者風のシルフ。戦闘の激しさに消耗しているが、それでも余裕の笑みは忘れない、強者達だ。
《袰月》の起源文化とシルフの文化は共存を続ける間に混ざり合い、貴人は和風の名前を名乗るのが一般的で服飾にも好んで和のテイストを取り入れる。
そして妖精小隊の面々は揃って、高貴な出自の持ち主であった。
今もコクピットでぷるぷる震えながら異能を行使している、小隊長の久遠のおかげで膨大な数のアロウヘッドと主力艦艇二隻、戦艦一隻という大戦力と渡り合えている。久遠による電子支援を受けて、自機に向かってくる敵弾を割り出し、経験則と直感でさらに絞る。
ブースターノズルの耐久性を信じながら、プラズマ噴射をぶっ飛ばし、迫ってきた強烈な圧に太刀打ちする。
アロウヘッド用の太刀同士の剣戟の激しさに、空間が震えるような錯覚を感じたが、あるいは、ミエリはそれが実際的に起こったのかもしれないと思った。
相手は装飾性をそぎ落とした無骨な武者鎧、そのような外装の、フルカスタムされたアロウヘッドだ。VA-11R"パラディン"、ファイアイーターと同時期に配備が始まった、最新鋭量産機に、近接戦闘特化を施し次元兵装を搭載したモンスターマシンは、《袰月》先進開発局と当のライダーの悪ノリの産物。
通称をVA-11Rカスタム"シュラ"。文字通り、修羅であるその機体は灰音の一瞬の隙を突いて、銀髪赤眼のエースを撃墜し、ミエリを襲った。
「ちく! しぉっ! おっ!」
飛んでくる弾とミサイルとビームを辛うじて躱しながら、鎧武者と打ち合い続け、ミエリは毒づく。
撃破目標の
しかし、ミエリには味方がいる。
艦載機を撃破しながら救援に駆け付けた、金髪の陽気JKとクールで実直な黒髪褐色JKがシュラと戦うミエリに援護射撃をしてくれた。
「艦長が前線に出てくるのは反則だろが!」
ハレとククリスの援護射撃に応じて、太刀で砲弾やホーミングレーザー、ミサイルなどを切り払うシュラから距離を取る。
『ハハハハッまだまだ甘いねミエリちゃん! 戦に卑劣卑怯非道はあっても反則はないんだよ!』
『うわっ! 今何をされたの私!? 怖いんだけど!』
『くっ!? 一秒抑えることもできないとは!』
シュラを駆るのは敵側の総大将なのだ。敵艦大雷級"翔鶴"艦長、
訳も分からず吹っ飛ばされた二人は衝撃で揺れる機体の中で大股開きで踏ん張って、バランスを立て直す。そんな恰好なので美少女JK達を護る、股間のI字型装甲板が酷く目立つ。
在学中はアロウライダーとして無双の限りを尽くし、卒業後は巡洋艦の艦長兼エースライダーとして大暴れに大暴れを重ね、現在は《袰月》上位の戦力である戦艦を任されている。戦闘狂の女艦長は、灰色のナノ被膜と白い装甲部分のナノシェルスーツを身に纏う。
極薄ぴっちりスーツで魅惑的な女体に纏った筋肉を際立たせ、シートに座する姿は、強く凛々しい戦の女神なのだが、顔付きが戦狂いそのもの。
割れた腹筋や下腹部のラインそして股間の装甲板といった煽情的な部位でさえ、武士の力強さが満ち溢れている。
終は放置すれば部隊丸ごと蹂躙されかねない相手なのだから、ミエリは気合を入れて、全身の力を振り絞る。
自信たっぷりに突き出た終の巨乳に対して、小ぶりな金髪碧眼の乳房が目に見えて揺れるほどの激しい動きでシュラを抑え込む。
その間に、生き残りのロングレンジクラスの仲間達が敵の数を減らし、敵艦の武装を無力化していく。おかげでミエリは終との戦闘に専心できた。
膝のバックスラスターにエネルギーを集中させ、炸裂させることで、目の前にいるシュラを押し返す。装甲に熱を受けた姿は笑っているように見える。
ホワイトグレイのカラーリングのシュラが敵意の稲妻となって駆けてくる。しかし、極限に達したミエリには終の動きが見え始めた。
『だんだんと掴めてきたぜ!』
『生意気! オトナとコドモの差をお姉さんがみっちり教えたげる!』
言いつつも、終は嬉し気だ。ミエリが太刀を使うようになると、活躍を聞きつけて稽古を付けたところ、たった一週間程度でミエリは最強格たる《袰月》の女修羅相手に防戦できるようになった。凄まじい成長性と一生懸命さだ。
そうでなければ生き残れない戦場に、否応なしに放り込まれたかつてのミエリ・ライオネルに思いを馳せつつ、終は軽い斬撃を様々な角度から叩き込んで崩しにかかる。
『オレは成人済みだわ! 女子高生になれって命令されたからやってるだけであって! だいたいオレの古巣の基準でいえば終は年齢三桁の』
『それ以上はいけない、私が自分を抑えられなくなる! 皆に愛されるチャキチャキな神薙終ではなく、ヒトを斬るしかできない殺人マシーンになっちゃう!』
これを耐え凌ぎつつ言い返すミエリに、かなり真剣に殺気を放ちながら、鋭く蹴り込む。額から垂れた汗が、終の目に入りそうになる。
灰音を撃破できたのは幸いだった。それに、これが演習でなければ異能がフルに使われ、違う流れになっていただろう。
というか、演習でも超常電子支援ありの状況でロングレンジのエース二人同時は、流石の終もきつい。
互いに次で決着がつくと、太刀を振りかぶった瞬間。戦闘の光をバックにした、ミエリと終の決闘は不意に終わりを迎えた。
翔鶴が撃沈判定をもらい、ロングレンジクラスの勝利が決まったのだ。
『どうにか、終わらせられたよ』
『脳神経がヒリついてますわ、戻ったら少し休ませていただきますわね』
金髪ツインテールの美貌、氷点下のイケ雌イリシアと、不良小隊の残忍お嬢様、紅黒が見事に成し遂げた。
命懸けの高機動戦闘と超高機動狙撃で重砲撃艦
そして、機を掴んだ特務巡洋艦フェンリルが本領の高速戦闘で翔鶴の注意と防御を引き付けてから、一機のファイアイーターがタッチダウンを決めて勝利をもぎ取った。
『皆私のために犠牲になってくれてゴクローサン! ちっとは褒めてやるぜ! ヤクタタズども! きゃはは!』
オープン回線で憎まれ口を叩く、そのライダーは頽廃的な印象のシルフの美少女だった。魔的な気配のある、スレンダーな肢体の長身。
長いフルネームを縮めて、周りにエイリとだけ呼ばせている彼女の機体は火力を追求して、それ以外の全てを捨てた殲滅仕様だ。
小隊長権限で指揮下の三機にも同じ構成のファイアイーターを使わせ、お気に入りの真紅のカラーリングを強要する、通称殲滅小隊の隊長である。
『ああ、よく頑張ってくれたエイリくん!』
金髪のお子様先生ゼラを筆頭に、JKどもは憎まれ口と傲岸不遜な態度を殆ど気にせず、本日のMVPの健闘を讃えるばかり。
『ちっこれだからここの連中はチョーシ狂うんだよ、本当ムカつく』
などと言ってシートに身を預けて通信を一方的に切るエイリ。ナノシェルスーツの下の引き締まった裸体は、途方もない量の汗を掻き、疲労と筋肉の痛みでしばらく動けず、キンキンに冷やしてあるドリンクさえ手に取れない。チームのために全身全霊を注いでいたのが丸解りだった。
ミエリもまた、疲れ切っていた。ヘルメットを解除して、金髪を晒す。通信ウインドの終がそれに食いついた。
『おっ綺麗な髪型にしたじゃん、ミエリ。まるで貴族のお嬢様、あーいや、勇敢な騎士の女子かな?』
『ありがとう、終。この髪型ウケが良くて嬉しい…かな』
ミエリは金髪を上品な編み込みのヘアスタイルにしていた。勇ましい印象の顔立ちに気品が備わっている。
髪型を褒められて、嬉しくなってしまった。ミエリはそんな自分の心が女の子になりつつあるように思えた。そういえば支給された女性用のショーツを、調律されているとはいえ殆ど拒否反応なく穿き、昨晩は自分で新しい下着を買おうとカタログを見て――――
アイデンティティの急激な変化にうっすら恐怖を感じるミエリだったが、大きく伸びをしてぴっちり被膜に覆われた終の乳房が弾むのを見て、魂魄の雄の部分が反応した。
『どうしたのミエリ? 急に真っ赤になって』
『なっなんでもねえよ! まっとにかくだ! しばらくファイアイーターに乗らないから、今日一日でたっぷり動けて良かったぜ!』
二人のやり取りを、灰音は静かに聴いていた。ミエリと終の通信回線は小隊共有のチャンネルを使っている。
専用の黒い重装甲ぴっちりスーツを着た、本日はあまりいいトコなしな銀髪赤眼は腕組みしながらミエリの変化に頷いていた。
この日の演習はロングレンジクラスが外交任務に駆り出される直前のものだった。
《袰月》を飛び出して、長らく星間ネットワークを介しての交流がある星系国家に派遣される。それは観光がてらの気楽な任務になるはず――――だった。