ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する-   作:ザンザザン!

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スタート・ミッション

 

 過ごしやすい夏日だ。学園中庭の整えられた緑は目に優しく、ミエリはそれが好きだった。

 最近、女子化が進行しつつある金髪碧眼オレ娘はミニスカート越しに柔らかい太股を即頭部で感じている。シルフ種の美少女に膝枕されている。

 

 意地悪そうな笑みを少し緩めて、エイリは読書に没頭していた。常に残酷スマイル、口を開けば憎まれ口を叩く紅いシルフは、普段よりも上機嫌だった。

 

 不意に物陰から三人分の視線を感じて、しっしと手で払う仕草をして、それから読書を再開する邪悪なシルフ娘。

 読んでいる本はアーカイブから製本したジャック・ケッチャム『老人と犬』。著者の作品の中で一番のお気に入りだった。

 

 エイリがページをめくる音、中庭の木々が揺れる音、夏の心地良い日差し。

 どれもこれもが心地よく、ミエリを微睡みに誘う。

 

 神薙 終率いる小艦隊との演習におけるMVPたるエイリは、ミエリを膝枕する権利を要求し、ハレはそれを渋々飲んだ。そして早速、昼休みに連れ出されたのである。

 

 昼食もエイリ率いる殲滅小隊の一員で、双子の妹であるエルザレドお手製の激辛サンドイッチを渡された。姉と正反対の丁寧で献身的な性格のエルザレドだが、料理だけは破壊的な辛さを好む。

 

 ショーツに滲むほど、汗を掻き、燃え上がりながら食べていた。味は最高で、完食したが体がまだ熱い。

 

「お寝んねしてもいいけどよ、そしたらここに置いていくからな、それも素っ裸でな。キャハハ」

 

 歌うような調子の、心地良い声音に悪意をたっぷりと込め、邪悪で残虐なシルフが脅す。

 おまけに眠気を誘うように、繊細な手つきでミエリの髪を撫でてくる。信じられないほどの安らぎが金髪碧眼のオレ娘に齎された。

 

 この性格最悪なクラスメイトがどこまで本気か分からないので、睡魔に抗う。一つ、話題を切り出すことにした。

 

「にしても人気者なんだな、あの二人」

「面が良くて、態度も良くて、強い。完璧だからなあいつら。まあ、私も好きだぜ、イリシアとか、アクィラみたいなのは。ああいう手合いが、ボロボロになって泣き喚くとブザマで最高だからな」

 

 ロングレンジクラス屈指のイケ雌と先日の演習に大雷側で参加していた、別のクラスのイメ雌の姿がある。

 試作兵装を扱う小隊の金髪ツインテ美少女、イリシアと茶髪の王子様系イケ雌、アクィラだ。

 どちらも身長170cm越、涼やかな目元の端正な顔立ち。胸と尻がデカいし、脚も長い。

 極限まで裾を切ったミニから覗く肉感的な太股は神々しいと感じるほど。

 

 イリシアとアクィラはともに凄腕のアロウライダーだ。先日、重砲艦火雷を巡って死闘を繰り広げ、演習の名場面の一つとなっていた。

 

 昼食を共にした二人が中庭に姿を見せると、多数の生徒に取り囲まれた。イケ雌二人は片や無表情、片や笑顔で丁寧に応対している。

 外見ならば、周囲の生徒達も素晴らしいものなのだが、内面から溢れる魅力がイリシアとアクィラを特別な存在にしていた。

 

 

「お前もそのうち毎日喧しいのに囲まれることになるぜェ。せいぜい幻滅されないように気を張って過ごせよ」

「マジか」

 

 ミエリ自身、学園にきてからの目覚ましい活躍で多数の注目を集める身だった。他クラスの生徒から声をかけられることも増え、何気ない言葉や仕草で喜ばれて、困惑したものだ。

 

 上品に髪を編み上げでまとめ、背筋を伸ばして歩く金髪碧眼JKの姿は格好良く、背は低いのに、人格は年上の男性で頼り甲斐がある、というのが人気のポイントになっていた。

 

 イケ雌達を囲んだ人だかりが、さっと左右に退く。

 

「また戦える日を楽しみにしている」

「私もだ、イリシア。しばらく会えなくなるのが少し寂しいよ」

 

 好敵手との別れの挨拶を済ませ、金髪のツインテールを颯爽と靡かせ、イリシアはエイリの元にやってきた。

 

「そろそろ時間だ。行こう、二人とも」

 

 その言葉に応えて、真紅の髪のシルフは本を閉じ、金髪オレ娘は大きく伸びをした。

 

 ミエリが教室に戻ってくると、黒髪褐色JKククリスが成形合板の椅子をさっと引いた。練達のメイドめいた所作に、感謝しつつ金髪のオレ娘は席にお尻を下ろす。

 

 

「それではブリーフィングを始めるぞ! 本作戦は《袰月》とボクらにとって極めて重要なものとなるので傾聴するように!」

 

 ロングレンジクラスの教室に揃った生徒達の美貌を眺めてから、金髪のお子様先生は、軽い調子でブリーフィングを開始した。

 

 ゼラはモニターにオルランド星系を映した。宝石のような惑星の数々に人々が暮らす、立憲君主制の星系国家だ。

 地球を目指す《袰月》の航路も表示されており、オルランド星系を通過するようになっていた。

 

「知ってのとおり、《袰月》は約二週間後に星間ネットワークを通じて国交のあるオルランド王国に寄港する。栄えある我が長距離打撃戦隊は先遣隊として派遣され、親善交流、視察、王立士官学校との共同訓練などを行うわけだ」

 

 あらゆる任務をこなしてきたミエリだが、今回のような任務は始めてで、緊張していた。

 ファイアイーターの高次元理力装甲も、アロウヘッド用としては銀河最強の威力を誇るバスターキャノンも役に立たないのだから。

 

「ところで星間ネットワークとは何か、ミエリ君軽く説明してくれたまえ」

「はっ!」

 

 突然の指名にミエリは狼狽えず、立ち上がる。周りの視線が集中する。

 

「ワープ・ドライブと並び、最初期に開発された高次元技術であり、現在の人類の文明同士を繋いでいる超光速ネットワーク・システムです。高次元を介した情報のやり取りにより、銀河全域をタイムラグゼロで繋ぎ、他星系や艦隊との交流に活用されています――――これでよろしいでしょうか、ゼラ飛行隊長殿?」

「うむ、グッドだミエリ君。ここでは君のいた軍隊のような言い回しは使わなくてよろしいが、軍人少女風の振る舞いも魅力的だったぞ!」

 

 笑顔で言ってから、モニターを示すゼラ。金髪のお子様先生は外交任務に備え、普段着のナノシェルスーツから礼装に着替えていた。

 教導学園の制服とさして変わらないタイプのものなので、ぱっと見誰が引率の教員か分からないという偽装効果を発揮している。

 

 ミエリの説明を捕捉するのであれば、星間ネットワークは光年単位の距離を隔てる人類間の物理的交流さえも可能にしていた。

 無人輸送などでの物資のやり取りだけでなく、意識を没入させた義体による物理的な訪問、さらにインフラが整備されていれば、実体を備えたホログラムと仮想知覚を介して現地を体験できる。観光地として売り出している場所なら、飲食物のホロプログラムまで用意されているほど。

 

 ネットワークからの来訪より遥かにリスクの高いワープ・ドライブ航法によって生身で訪れることは、敬意を示す行為と認識されていた。

 

 地球帰還艦隊さえも、このネットワークがなければ存在しえなかった。

 ある時、地球に残されたAIを名乗る存在が星間ネットワークを介して全人類に送信した、高度技術の数々と自然が完全に回復した地球の映像。

 自称AIは人類の再生を願って技術を提供し、また同時に地球が再入植可能になったことも告げた。それが多くの人類を、国家を、地球へと駆り立てたのだ。

 

 オルランド王国もまた、元々地球帰還艦隊の一つではあったが、その途中で荒廃した星系全体の環境改造と入植に舵を切った。

 この計画は驚異的な努力で成し遂げられ、今では有数の発展を遂げた星系国家の一つとなっている。

 

 大艦隊で地球という人類発祥の地を目指す巨大勢力の末裔達は、究極的な権威を示す玉座を諦めた国家を嘲笑する傾向が強かった。

 

 一方で、《袰月》の民は総じて権威に興味がない。調律によってそう設定されているのではなく、艦建造以前からの生来の気質であった。

 遥かに無邪気な理由でこの巨大な高性能艦を建造して旅立って、他の艦隊国家や惑星との交流を楽しんでさえいた。民生を切り捨て、膨張させた軍事力を笠に着た横暴さのある他艦隊よりも遥かに付き合いやすく、《袰月》は多くの友人を得ている。

 

 オルランド王国とは本格的な技術交換を数年前から始めており、今回は先遣隊として多数の技術サンプルを届けるのも任務の一つだ。

 

「ボクらは艦隊史上四度目の寄港で《袰月》に泥を塗らないよう心掛けねばならない。教導学園の生徒としての誇りと自覚を持って行動すること――――まあぶっちゃけ旅行なので、ハメを外さないようにして、気楽に行こう気楽に。とさて、ここからは現地で有事が起きた場合の対応について説明するぞ」

 

 画面が切り替わる。ゼラが少しだけ真面目に説明し始めた内容は、戦いを望まぬ者であっても、戦う力を持たねばならないという銀河の現状をミエリに思い知らせるもので、それが現実にならないことを切に願った。

 

 水着を含めた必要な物資を万端に整え、その日を迎えた。

 

 必殺必滅のレールキャノンに代表される下部兵装ユニットを大型カーゴ・ユニットに変更した特務巡洋艦フェンリルの艦形は砲塔が格納されていることもあり、戦闘艦らしさが減じている。

 

 規格外の速力だけでなく、外見の面でもフェンリルや女子高生達はこの任務に適しており、またカーゴ内に分解収納した本来の兵装は、任務の二面性をも物語っていた。

 

 ナノシェルスーツに着替えた女子高生達が快適な居住区で思い思いに過ごしているなか、ミエリはブリッジ要員を買って出た。普段は艦長席のみのブリッジだが、必要に応じて各種管制席が展開される構造になっている。ゼフィリスとしても負担が大きく減るし、仲間達と一緒に艦を操るのは、気持ちが弾んで好ましい。

 

(このシートはちょっと恥ずかしいな。ゼフィリス達にお尻を突き出してるし、何か視線を感じるような……)

 

 ミエリはシートに跨って、前傾姿勢だ。操舵席はバイクシート風の形状で、小柄な金髪オレ娘の、筋肉で整った素晴らしいヒップが後ろに向けて突き出されていた。装甲板がI字に食い込み、無粋な空気が入らないよう圧力をかけている、ミエリの上向きのお尻は、芸術でさえあった。

 

 赤髪ツインテの艦長の他、金髪のイケ雌イリシアの親友、黒髪シニヨンの蠱惑的なリーゼなど数名が管制シートにて肉感的なお尻を下ろしている。

 副長としてゼフィリスの後ろには灰音が立っていた。操舵席に座って緊張するミエリの様子を確かめるのを忘れない銀髪のエースである。

 

 本来ブリッジに相応しそうな、お子様先生は任務中の飲酒厳禁を言い渡されたので、ならばと行き付けのバーでしこたま酒を飲み、自室でぐったりしていた。しかも、少しでも苦しみを減らすべく、あられもない全裸姿である。

 

 ゆっくりと加速する白亜の船体。コノハを筆頭とする《袰月》管制AI達からの挨拶の後、見送り担当の戦艦、大雷級"翔鶴"から通信が入る。他の艦隊であれば決戦兵器として秘匿されるような次元兵装艦が、ラフな任務に駆り出されるのが《袰月》だった。

 ブリッジのARウィンドウに映る、終のバストアップ。間食の寿司(翔鶴の寿司職人のものは絶品として有名だ)を平らげ、愛用の湯飲みでお茶を啜っているところだった。

 

『それじゃ皆の航海の安全を祈ってるよ、それとお土産もよろしく!』

『ふふ、勿論です。終艦長好みのものをご用意しますね』

 

 長身の女修羅は華やかな笑顔と気楽な挨拶を送る。ゼフィリスは妖艶な笑みで応じて、美少女艦長の見栄えの素晴らしで終を昂らせた。

 

「これよりフェンリルはワープ・ドライブに入ります。ジャンプ・スタート!」

 

 ゼフィリスの凛々しい指令に従い、ミエリはワープ・ドライブを開始した。高次元に侵入したフェンリルは数時間後に、目的地であるオルランド星系に到着する。

 

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