ウォーヘッド・アンド・バスターキャノン-TS金髪オレ娘エースは美少女クラスメイト達と宇宙を駆け無双する-   作:ザンザザン!

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ハイド・イン

 

 フェンリルがワープ・ドライブを開始してから一時間後。ブリッジにナノシェルスーツ姿でホワイトブリムを装着した美少女が入ってきた。

 

「軽食をお持ちしました」

 

 クラスで最も身長が低く、幼い、しかし超然とした試験小隊長のアナスタシアに仕えるメイドのノエッタだ。

 自動人形のような、無駄のない所作で軽食を配っていく。

 

 妖精小隊の狩人、火狩が握ったおにぎりだ。普段から久遠の食事も彼女が作っている。

 料理の腕を誇る者が多いロングレンジクラスだが、熾烈な軽食当番争いに勝ち抜いたのは金髪のシルフJKだった。

 

「ありがとな、ノエッタ」

「この卑しい身には余るお言葉です、ミエリ様」

 

 ミエリは跨っている操縦席からサイドボードを引き出し、そこに食事とドリンクを置いてもらった。

 丁寧に一礼するノエッタは、髪も肌も白い。それが暗色系の色合いのナノシェルスーツとの際立ったコントラストを生み出していた。

 

「うーん旨い! やっぱり火狩のおにぎりは最高だなぁ!」

 

 他より三倍は大きいおにぎりを一口食べて、感激するのは大柄な金髪のシルフ女子。艦内管制担当だ。

 エネルギー効率の良い肉体を構築していることもあり、全体的に《袰月》の住人は小食だが、久遠はかなりの健啖家であった。

 

「横、いい?」

「勿論だぜ」

 

 シートに横座りしたミエリの隣に灰音が腰かける。体をぴったりと寄せてきた。流れるような銀色の髪が、ミエリに一瞬全てを忘れさせた。

 塩加減が絶妙なおにぎりに食が進み、二人仲良く黙々としていた。ボトルに入ったドリンクを啜って目を見開いた。

 

 緑茶ではなく紅茶だ。しかし、おにぎりに合う。これはノエッタが淹れたと見て間違いない。

 以前、アナスタシア主催のお茶会に招かれ、ノエッタの紅茶の手並みを知っていた。

 

 数時間後。フェンリルは月に寄港した。ミエリ達はオルランド王国が手配したシャトルで本星の国際空港に降りる。これにもまた数時間を要する。

 ロングレンジクラスは制服をきっちりと纏い、ベレー帽とサイハイソックスを装備した礼装仕様だ。

 今回ばかりは不良小隊の女王様、メティスも私物のブーツから切り替えている。

 

 シャトルにはアロウヘッドの護衛がついており、それはミエリ・ライオネルの過去に微かに触れるものであった。

 オルランド王国航空宇宙軍が採用している機種は馴染み深い。

 

 ヴィクター・エアロワークス製デルタエッジ・マークⅨ。《殲滅大戦》当時からアロウヘッドを開発・製造しており、現在は白頭鷲主義連合(イーグル・ステイツ)の企業となっているメーカーの最新鋭モデルだ。

 戦闘機を連想させる鋭いシルエットの機体は実際、航空機メーカーである同社の宇宙戦闘機に頭部と手足を取り付ける形で開発された。

 

 窓の外を飛ぶ、かつての乗機の末裔に想いを馳せていると、眠気が襲ってきた。

 だが、爆睡した姿を客室乗務員に見られるわけにはいかないのだ。

 

(いかんいかん! 寝たら一生の恥だぞミエリ・ライオネル!)

 

 頬を叩いて気合を入れるミエリだった。改めて案内されたシャトルの客室を見渡す。

 

(まさかこのオレが高級将校みたいな席に座って、サービス受けるなんてな)

 

 華美な内装のシャトルの座席は大きく、座り心地抜群だ。

 《袰月》の艦艇はおろかシャトルでも有重力環境が大半を占めるので、無重力の客室は少し違和感があった。

 

 フライトの時間が長いので、機内食が供される。

 手早くエネルギー補給ができるという点でとても軍隊らしい、おにぎりの次の食事は対極的なものとなった。

 

 シャトルの機内食は内装に相応しく洒落ている。切れ端みたいな肉のメインディッシュにソースとハーブが添えられ、ごく小さな付け合わせが端に盛られている。

 かつての肉体には全く物足りない食事だ。だが今の少女の肉体であれば、これだけで満腹になるし超高G戦闘を何時間もこなせる活力が湧き出る。

 

 隣の席には妖精小隊の褐色女侍シルフ、八坂が腰掛けている。

 彼女の食事の所作は見事であったため、釣られてテーブルマナーを過剰に意識してしまい、ミエリは慎重にカトラリーを操って食した。

 調律で技能を刷り込まれているが、やはり経験が伴わなければ不安がある。

 

「ほほう、勉強になります」

「うわーミエリちゃん上手」

 

 無重力でグラスに入ったドリンクを飲むことは大得意で、八坂や通路を挟んだ席に座る殲滅小隊の小さな蠱惑魔、アラヒナに手本を見せてやれた。

 

 テザートの繊細な甘味に目を輝かせながらミエリは完食した。

 

「皆さん完食なさるのですね」

 

 食器を回収する時、アフリカ系の客室乗務員が感心した様子でミエリにそう言った。

 

「えっええ――――招かれて出していただいた食事ですから無駄にはできません。私だけでなく皆も同じ想いのはずです」

 

 ミエリが最初はぎこちなく、しかし途中から露骨に取り繕ってエリート士官候補な美少女を演じたのを、客室乗務員は見抜いて笑った。恥ずかしくなったが、嫌ではなかった。

 

 この客室乗務員は、かつてミエリ・ライオネルがテオドール級軽空母に乗艦していた頃、酒保に勤めていた若い女性を思い出させた。

 

 彼女を乗せていた艦は撤退する旗艦の盾になることを命じられた。乗員は名誉の戦死を遂げ、出撃していたミエリのアロウヘッド隊は別の空母に着艦しそのまま転属となった。

 

 名誉ある最期。そう言って皆の死を悼むフリをして、その後も多くの人々を死地に追いやり、自分は贅沢の果ての糖尿病で死んだあの将軍の面を思い出して、腹が立ってきた。ミエリは深く息を吸い込み、気持ちを落ち着かせる。

 

 

 カタリナ・スプリングフィールドを筆頭に重要な来賓をもてなす任務を担う客室乗務員達は容姿、教養、能力の全てを兼ね備えたエリートだ。

 

(気楽なものね……お嬢ちゃん達は。私にとってもだけど)

 

 彼女は今回の任務にリラックスして臨むことができた。

 

 今日の乗客はニンフさながらで、容姿に絶対の自信があるカタリナでさえ激しい嫉妬を覚えた。それだけではない、耳の尖ったシルフィードという異種族を実際にこの目で見た時は嫉妬に勝り、感動した。宇宙にはこんなにも美しい生き物がいるのだ。

 

 だが、この教導学園なる士官学校の生徒達が話す内容は、まったく女子高生のものでお気楽なのだ。

 軍の教官らしい金髪碧眼の女性と、言葉遣いからそれほど豊かな家庭出身ではなさそうな、薄金髪の生徒が二十一世紀初頭のアニメーションの場面の話題で盛り上がってなんともお子様で、時代遅れで可愛らしい。カタリナは笑みを零してしまった。

 

 この舐めた反応こそが、今回の交流をセッティングした《袰月》とオルランド王国政府が大多数に期待するもので、カタリナはその術中にまんまと嵌っていた。

 

 

 巨大宇宙船からやってきた女子高生達はオルランド王国の星内ネットに大変な反響を呼んだ。映像や写真で少女達の美しさが話題となり、星系内の《袰月》への関心は大きく高まっている。

 

 しかし、軍事的な面はほとんど語られない、それどころか軽く見られていた。

 この時代の軍事力とは艦艇保有数であり、それが絶対的な物差しになっている。そして、その面では《袰月》は雀の涙ほどしかない弱小軍隊なのである。

 

 賢人めいた軍事専門家や《袰月》をオンラインで訪ねた者達の一部はその高度な兵器や軍組織について垣間見た事柄を語っていたが、それはあまりにも荒唐無稽であり、証拠映像付きでも出来のいいCGとしか思われていなかった。

 

 

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