冷蔵庫に女の子とロールケーキが入っていたので食べました。   作:匿名天使

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男だからね、仕方ない……ごめんなさい

 

 もうすぐで太陽も落ちてしまいそうな夕方。油で何かを揚げているような音が鬱陶しく思える。ただでさえ暑いというのに蝉の鳴き声が合わさることによって辛さ2倍。そんな夏を風物詩とも言える蝉の鳴き声とアスファルトから反射される地獄のような熱気を感じながら自宅の玄関の扉をゆっくりと開ける。

 

「ただいま〜」

 

 少し前までなら言わなかったその言葉を口に出すと奥からエプロン姿のナギサが顔を出してくれる。

 

「おかえりなさいハジメさん。お荷物お預かりしますね。お風呂が沸いているので汗を流してきてください」

「いつもありがとう。帰りにアイス買ってきたからこれも冷やしておいて」

「私の分はありますか?」

「勿論。ちゃんとナギサが好きなやつを買ってきたよ」

「ふふ。ありがとうございます」

 

 アイスと鞄をナギサに渡して脱衣所へ行き、汗がベッタリとついた服をぬるま湯で少し洗った後に洗濯機に入れて風呂場へ入る。シャワーで汗を流した後に少し大きい湯船に入っているお湯に浸かる。39℃ほどのお湯は心地良く、体の芯から温めてくれるようだ。

 

 

「あぁ〜」

 

 体温と湯温の差が大きい場合、交感神経優位となって反射的に声が出ることで筋肉に力が入り、お湯の熱さによるストレスから体を守る作用が原因で声が漏れてしまう。

 

 

 

 ………色々とダメだろ。

 

 なんだかんだで約3ヶ月間ナギサと一緒に暮らして、気づけば家に帰るとナギサが笑顔で出迎えてご飯を作ってくれている生活が日常になってしまった。

 すごくいい生活をしていると思う。朝はゆっくりと紅茶を嗜み、昼は日にもよるがナギサと一緒に作った昼食かナギサが作ってくれたお弁当。夜もナギサが作ってくれる。正直に言うならめちゃくちゃ楽しいしご飯も美味しくて最高だ。

 しかしナギサが元の世界に帰る方法を探していることを忘れてしまうほど、俺の毎日が充実してしまっている。

 食生活なんて適当に美味ければそれでいいと言った感じの生活から栄養や量、食べ合わせを考えられた食事に変わったことで体調がすごく良い。

 

 だけど普通に考えて20歳を超えた大人が女子高校生と同棲していること自体がアウトなのにその女子高校生に毎食作ってもらっているのは逮捕案件では?

 

 流石に17歳の子供に手を出したわけではない。法律的にも倫理的にも21歳の俺がナギサに手を出すのは普通にアウトだし、もしもOKだとしても彼女いない歴=年齢の俺にそんな度胸はない。というか俺は妹みたいだと思っている相手に手を出すほどクズではない。

しかし常識的に考えれば同棲しているだけで犯罪である。

 

 

 抱え込んだ悩みを落とすように髪や体をシャンプーで洗い流し、最後に冷水で熱った体を冷やすために浴びる。夏は最後に冷たい水を浴びるのが俺の習慣だ。

 

 タオルで体と髪を拭いて寝巻きとして使っているジャージに着替えてリビングにある買ったばかりの椅子と机に座り、ナギサが対面に座ったのを合図に「いただきます」と言った後にフォークを掴んだ。

 今日は夕食はほうれん草とベーコンのクリームパスタ、ポテトサラダ、オニオンスープ。

 パスタに刺したフォークをクルクルと回してほうれん草とベーコンを巻き込みながらパスタを丸める。その絡まったパスタを口に運ぶとクリーミーな味にベーコンの塩気が舌を刺激する。

 オニオンスープはタマネギ特有の甘味と旨みが口の中で広がり、強いコクのおかげで風味が口の中に残りつづけている。

 

 黙々と食べ進める。

 俺とナギサは食事中に会話するタイプでは無い。ティータイムだと別だが食事中に会話は少なく必要最低限のものしかしない。

 だからこそ今は味や匂い、食感を全力で楽しめることができた。

 

 

 

「「ごちそうさまでした」」

 

 手のひらを合わせて食事に感謝をすると食器を片付けて横並びで皿洗いを開始する。

 

「お口に合いましたか?」

「今日も美味しいかった」

「それはよかったです」

 

 微笑むナギサに適当な話題を振る。

 

「今日は何してたんだ?」

「今日はハジメさんに貸して貰ったRPG系のゲームをしているのですがラストボスだと思っていた魔王を倒しましたのに真の魔王が出てきたところです。それと前々から描いていた絵が完成しました」

 

 意外とハマってた件。

 このお嬢様にゲームや漫画などの庶民的な暇つぶし方法を教えてみるとハマってしまい俺が家にいない時はよくゲームをしている。

 

 ゲームに関しては知識として知っているがやったことがないと言った感じだったので新鮮なのだろう。

 しかしアクションや格ゲーは一部を除いて難しく酔ってしまい、パズルゲームは簡単すぎる。と極端なナギサはRPGなどのゲームにハマったらしい。どうやらコツコツとレベルを上げたり武器を強化していく要素が好きだと言っていた。

 

 ナギサのトラウマを刺激しないように渡すゲームや漫画はきちんと選んでいる。最初は好きにさせようかと思っていたのだが漫画を読ませる時に絵柄だけで選ばせると1番まずいやつを引いてしまったので俺が選ぶことにした。

 

 ちなみに1番まずいやつと言うのは『子供達の愛(物理)を背にして暴走したロボットを止めるために戦う男?』が出てくるあの作品である。

 

 

「ハジメさんは本日何をされましたか?」

「今日は大学で講義を受けた後にバイト行ってきただけで特に面白いことは何もなかったな」

「この後は何かご予定はありますか?」

「うーん、レポートの課題も出てないし特にないかな」

「でしたらご一緒にゲームをやりませんか?」

「いいよ、何する?対人?協力?」

「今回は協力にしましょう。ソフトはカービィはいかがですか」

「OK」

 

 そういえばナギサはカービィが好きになった。この前ワドルディのぬいぐるみをプレゼントした時は年頃の少女らしくぬいぐるみを可愛がっていた。その顔が見たくて色々なぬいぐるみをプレゼントしているとだんだんと俺の家が可愛いもので多くなったぐらいだ。

 

 皿洗いを終えた俺たちはSwitchでカービィを楽しんだ。

 

 

 

 

 

 チュンチュンと小鳥達の鳴き声が聞こえて目が覚める。

 どうやらナギサとゲームをしていて寝落ちしてしまったらしい。その証拠に布団やベッドで寝ていないしテレビも点けるままでナギサも隣でクッションにもたれ掛かりながら寝ている。

 

 ナギサをベッドに運ぶために抱えるととあることに気づく。ナギサの体がとても熱い。

 おでこに手を置いてみると明らかに熱を持っていることを確認できた。

 

 エアコンを点けっぱなしで寝てしまって風邪を引いたのかもしれない。

 そう考えた俺はナギサをベッドに寝かしてエアコンの温度を調節して布団を被せて風邪薬や飲み物、風邪に良く効く食べ物を買うために車を走らせて市街地に向かった。

 

 

 

 

 

 

 風邪薬、体温計、経口補水液、スポーツドリンク、ヨーグルトにゼリーマスクを買って家に戻ると玄関でナギサが倒れていた。

 すぐさま駆け寄り体を支えると俺の首に手を回して弱い力で抱きついてきた。

 

「ハジメ…さん……帰ってきてくれた」

 

 子供のように目覚めた時、俺がいなくて不安になってしまったのだろう。風邪を引いている時は肉体的にも精神的にも弱くなってしまうのを考えずに買い物に行った自分を憎みながらナギサをベッドまで運んだ。

 

「ごめんな、もうどこにも行かないから無茶はしないでくれよ」

 

 ナギサが俺の手を離してくれない。きっと誰かが自分の知らないところへ行ってしまうのが怖いのだろう。

 

「とりあえず熱を測ろうか。タオルで汗を拭いた後に体温計を脇に挟んでく……1人では無理そうだな」

 

 気絶するように寝てしまっている。それでも俺の手を握っているのは無意識下の行動なのだろう。

 

 体温を測ったところで治るわけでもないのだから諦めることにして、少し可哀想だが強引に握っている手を離し、冷蔵庫に飲み物やゼリーを入れに行って帰ってくるとベッドから抜け出そうとしているナギサがいた。

 

「はあ、はあ……ハジメさん」

 

 普段からボロボロなメンタルが熱による体調不良で悪化したと考える。子供が親のいない時間や空間に不安を覚えて泣いたり、親を探したりする母子分離不安に近い症状だ。

 

「はいはい、ハジメさんはどこにもいかないから安心しろ〜」

 

 そうやって諭しながらベッドに戻してお布団をかけて寝かし付けようと思ったのだがナギサが離れてくれない。

 

「ナギサ……離してくれ」

「いや!」

「………でも寝ないと風邪は治らないぞ」

「一緒に寝て!」

 

 その言葉に脳が一瞬の内に爆発と再生を繰り返しフリーズしてしまう。

 

 

 一緒に寝る?同じベッドで?逮捕案件すぎるだろ。というか幼児退行してない?前までのお嬢様の雰囲気はどこに行った…

 

「一緒に寝る以外ならなんでもしてやるからそれだけは勘弁してくれ」

「むー」

「ほっぺた膨らませている暇があるなら寝てくれる方が嬉しいんだけどな」

 

 ────なんだこの可愛すぎる生き物。

 

 やばい、可愛すぎて鼻血出てくるかと思った。

 

 俺はスマホの録音機能を起動した後にそのスマホを枕元に置いて自分ごとナギサをベッドの上に寝かせる。

 

 そこからはナギサが寝てくれるまで頭を撫でたり、子供を寝かしつけるように背中や胸のあたりをトントンと心音に近いリズムで叩きながら前向きになることを言うことにした。

 

「ナギサは可愛いね、すごいね、頑張り屋さんだね」

「えへへ」

 

 本当にこれで合っているのだろうか?

 少し前に見た大人を寝かしつける方法なのだが…変なプレイをしているみたいな気分になってきた。でもエッチな気持ちよりも妹を慰めているお兄ちゃんの気持ちの方が大きくなっている。

 

 

 その後10分間ほど褒め続けていると寝てくれた。

 大人は大きくなった子供というが今のナギサを見ているとその意味が実感できた。

 

 というかかなり危ない症状では?

 幼児退行してしまうほどのストレスか……最近はPTSDの再体験症状群が発症することも少なくなってきていたからこんな形で別の症状が出るとは思わなかったな。

 風邪による不安から幼児退行しているのだろうが高校生が幼児退行するのはちょっと早すぎると思う。

 

 

 次目覚めた時にまだ幼児退行していたらご飯を作る暇が無くなるので今のうちにお粥などを作っておく。そして飲み物も枕元に置いて、一応薬も置いて。

 後は何をするべきだろうか?掃除も洗濯もナギサが昨日のうちにやってくれているし特にすることがないな。ナギサの近くに待機してすぐにでも動けるようにしておくか。

 

 

 

 

 そうして待機していると時計の針が12時を告げる。

 

「ナギサ、起きろ」

「んー、ハジメさん…………あ、ああ!!お恥ずかしいことを!!」

 

 幼児退行している時の記憶が残っていたか。俺だったら死ぬレベルで恥ずかしいがナギサのような美少女でもやはり恥ずかしいのだろう。

 

「気にするな……とは言いずらいな。とりあえず熱を測るからこのタオルで汗を拭いた後に体温計で測るから」

 

 そう言ってぬるま湯で絞ったタオルを渡す。

 

「……あの……背中に手が届かないので手伝ってください」

「………え?」

 

 そう言うとナギサは服を脱ぎ始める。ナギサも俺と同じでTシャツをパジャマにしていたので一枚脱ぐだけで真珠のように白い肌が露出される。

 

「ちょっと待て!落ち着け!!せめて下着は外すな!!」

「………わかりました。では後ろを向いているのでお願いしますね」

 

 …なんだか遊ばれている気もしなくもないが背中を拭いた方がいいので仕方がなく拭くことにした。

 

 

 

 

「ありがとうございます」

「…気にしないでくれ」

「いえ、この事ではなく……この事もですが何度もご迷惑をおかけして外に出られない私が楽しめるようにとゲームや漫画、絵の具やペンと言った物を買ってくれたことや私の失敗をどんなことであれど許してくださったことに関してです。

ハジメさんはそれでも私に何かを求めることはせずに1人の少女として扱ってくれて私はとても嬉しく思いました。キヴォトス……トリニティでは誰もが生徒会長としての『桐藤ナギサ』を求めて、ミカさんとは桐藤家と聖園家という家同士の繋がりと『幼馴染』という立場が、先生も『桐藤ナギサ』が『生徒』という立場にいるという理由がありました。

私を私として、立場や家柄も関係無く『ナギサ』として見てくれた人はハジメさんだけでした」

 

 

 ナギサ……感謝を伝えようとしてくれているのはわかるのだが……殆ど頭に入ってこない。

 さっきまでは幼児退行していたから幼く見えていたが真面目な雰囲気で、尚且つ背を向けているとはいえ上半身ほとんど裸で話されても話が入ってくるはずがない。

 君はもっと自分のプロポーションの良さを理解した方がいい。

 

 しかし危機感の無さを指摘して良いものだろうか?

 ここで指摘すると俺がナギサをエッチな目で見ていると思われてしまうのではないだろうか?それにこの美しさを眺めておきたいと思っている自分すらいる。

 というか細すぎないか?内臓が半分ぐらい無さそうなほど細いのはどうかと思う。

 

 

「よし、拭き終わったぞ。流石に前は自分でやってくれ」

「はい、わかりました」

「拭き終わったらお粥食べて薬飲んで寝ろよ」

「ふふ。色々とありがとうございます」

 

 

 その日はナギサの体調を心配して、そしてムラムラして眠ることができなかった。

 

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