東方聖人録 《妖を従える聖人》   作:玄武の使者

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第12話

第12話

 

 

古代日本には“忌み子”と呼ばれる子供が居た。

 

 

古代日本だけでなく、世界各地に“忌み子”は居た。

 

 

“忌み子”とは、文字通り忌み嫌われる子供のこと。

 

 

その条件は色々あるが、人と妖怪の間に生まれた子供などは“忌み子”とされた。

 

 

また、双子=“忌み子”とされることもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浅井氏の子供を連れ去った鬼の紅鬼は突然自分の敗北を認めた。

本人は神子との戦いに満足したらしいが、その本心はまったく分からない。

何はともあれ、神子は紅鬼が住みかにしていた洞窟に入って行った。

そしてすぐに浅井氏の子供と思われる少女を発見した。

 

 

「君が浅井氏の子供?」

 

 

神子が少女に声を掛けると、少女の体がビクッと震えた。

 

 

「私は君を助けに来たんだ。さぁ、帰ろう?」

 

 

神子は少女に向かって手を差し伸べた。

少女は伏せていた顔を僅かに上げて、パチーンッと神子の手を拒絶した。

 

 

「え・・・・・・?」

 

 

「どうして・・・助けに来たのよ。このまま死にたかったのに!!」

 

 

少女の口から放たれる拒絶の言葉。

助けに来たことを喜ぶと思っていた神子はうろたえるしかなかった。

そして、うろたえる神子の肩をポンッと紅鬼が叩いた。

 

 

「この子は・・・・・・忌み子なんだ。」

 

 

「忌み子・・・・・・」

 

 

忌み子。

その単語の意味も忌み子と呼ばれた子供がどのような結末を迎えるのか、神子は知っている。

忌み子は不幸を齎す象徴であり、“忌み子”とされた子供は居なかったことにされる。

 

“忌み子”とされた子供はまずまともな生活を送ることが無理だ。

基本的に生まれて直ぐに殺されるか、生贄として生きながらえるかのどちらかが代表的だ。

少女のまったく整えられていない黒髪と痩せた顔と腕を見る限り少女は後者だろう。

 

 

「この目を持って生まれたために私は酷い目に会ってきた。

 もうあんな酷い目に会うのは嫌だ!!」

 

 

少女が前髪をたくし上げると隠れていた瞳が露になった。

そして、神子は目の前の少女が忌み子である理由を悟った。

 

少女の目は右目がブルー、左目がヴァイオレットになっていた。

未来で虹彩異色症、もしくはオッドアイと呼ばれる瞳を彼女は持っていた。

 

 

「だから、私はこのまま死にたかった。あの家に戻るくらいなら、妖怪に食われた方がマシだ!!」

 

 

「・・・・・・少し話がある。」

 

 

激昂する少女と戸惑う神子。

それを見かねた紅鬼は神子の手を引き、洞窟の外に連れ出した。

 

 

「あの子を見つけたのは偶々だった。

 倉庫に閉じ込められ、名前も衣服も与えられぬ少女。

 すぐに訳ありだと思った。しかし、ほって置くことが何故かできなかった。」

 

 

紅鬼は少女と出会った時のことを神子に語った。

その声に僅かに怒りが込められていることを神子は察した。

 

 

「あの子はわしにこう言った。“お願いだから、此処から連れ出して”と。

 その願いに応えてわしはあの子を攫った。だが、あの子の話を聞いて腸が煮え繰り返りそうになった・・・・・・!!」

 

 

腕を組んだまま座る紅鬼の拳がギリギリと強い握られている。

神子も紅鬼の隣に座り、黙って紅鬼の語りを聞いていた。

 

 

「いますぐにでも、あの場所を吹き飛ばしたい気分になった。

 だが、鬼と人間の盟約を思い出してな。そのままこの洞窟に帰ってきた。」

 

 

「もし、人間が盟約を破って助けに来なかったらどうするつもりだったの?」

 

 

「その時は本気で宮中を滅ぼすつもりだったさ。

 まあ、お前さんが来たことで盟約は無事に果たされたがな。」

 

 

紅鬼はそう言いながら笑った。

 

 

「さて、お前さんはどうする?」

 

 

「・・・・・・あの子を連れて帰ることは私にはできないわ。

 貴女こそ、あの子をどうするのよ?望みどおりに殺してあげるの?」

 

 

「それは内緒だ。だが、あの子の望むようにはしないとだけ言っておこう」

 

 

「そう。」

 

 

紅鬼の言葉に神子は短く応えると空に飛び上がった。

 

 

・・・

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

神子は紅鬼の洞窟を去り、いつもの花畑に降り立った。

その花畑には黎鈴が猫たちと戯れていた。

神子はふらふらと着陸すると、もはや定位置となっている樹に腰掛けた。

 

 

「どうかしたの?」

 

 

猫と戯れながら黎鈴が声を掛けた。

 

 

「ちょっと、ね」

 

 

そう言いながら神子は耳当てを外して地面に置いた。

 

 

「今日、攫われた子供を助けに行ったら逆に拒絶にされてね。」

 

 

「まあ、助けを拒絶する奴だって居るだろうね。

 言って置くけどね、神子。アンタの善意は単なる自己満足でしかないんだよ」

 

 

「そんなことない!!」

 

 

黎鈴の言葉を神子は強く否定した。大声で怒鳴ったために黎鈴と戯れていた猫は蜘蛛の子を散らすように木陰に隠れた。

それに対して黎鈴は首を左右に振った。

 

 

「アンタ、心の中では思ってるんじゃないのか?

 “自分は他人から感謝されることをしてる。だから、感謝されて当然だ”って」

 

 

「それは・・・・・・・」

 

 

神子は言い返すことができなかった。

黎鈴はそのまま言葉を続けた。

 

 

「でもね、幸不幸の考え方なんて人や妖怪によって違う。

 一見は不幸に見えても当事者にとっては幸福だったりするもんだよ。」

 

 

「・・・・・・・」

 

 

「アンタは単に善意を押しつけてるだけ。

 それで迷惑する奴も居る。喜ぶ奴も居る。

 人間や妖怪の本質はそんなに簡単に理解できるもんじゃないよ?」

 

 

「・・・・・・うん。」

 

 

それからしばらくの間、黎鈴も神子もお互いに黙ったままだった。

そして、ふと思いついた疑問を神子は彼女に投げかけた。

 

 

「黎鈴も、助けたことを迷惑だと思ってる?」

 

 

「・・・・・・いや。」

 

 

その時初めて黎鈴は猫と戯れるのを止めて、猫のような瞳で神子をジーッと見つめた。

 

 

「あのままだとアタシは間違いなく命を落としていた。

 だから、アタシはアンタに感謝してるよ。」

 

 

黎鈴はニコッと笑った。

 

 

「・・・・・・・ありがと」

 

 

神子は小さな声でお礼を言った。

 

 

「それに、神子の誰彼かまわず助けようとするのは良いと思うよ?

 神子はうじうじ悩みすぎ。拒絶されたなら、拒絶されたでほっておけばいい。

 感謝されるのは二の次。そう思ってやってみれば?」

 

 

「うん。そうするわ。」

 

 

神子も少しだけ笑みを浮かべた。

 




自分で言うのもどうかと思うんですが、最近更新が滞ってますね。
バイトとかレポートとかでリアルが忙しいのもあるけど、ちょっと脱線し過ぎて投稿を忘れてしまう。ストック自体は結構あるから大丈夫だけど。

電車の中では、基本的にケータイで小説執筆してばかりです。
もっともネタの書き溜め状態だが。現段階で5つくらいネタ作品がある。
まあ、どれもネタというのか分からないが・・・・・・・
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