プロローグ
とある人物の話をしよう。
その人物は古代の日本、現在で言う飛鳥時代に生まれた聖人だ。
非常に聡明で同時に10人を話を聞き、理解し、そして返答することができたという逸話がある。
白膠の木で四天王像を作り、後に四天王寺を建立したとされる。
当時の最高権力であった天皇の政治を死ぬまで支え続けた。
当時の人々は誰もがその人物を慕い、崇めた。
さらに、その人物は隋の国より渡来した仏教で国を治めようとした。
しかし、それはあくまで表の顔。
裏では仏教とほぼ同時期に伝わってきた道教という宗教を信仰していた。
いくら優れた才能を持っていても所詮は人間。いつかは老い、死神のお迎えが来る。
それゆえに、道教の最終到達点である仙人にまで至り、不老不死を得ようとしたのだ。
しかし、不老不死を得る前に身体を蝕まれてしまった。
その人物の名前は・・・・・・豊聡耳神子。
これはそんな聖人に転生した者の物語である。
古代日本の都。斑鳩宮。
当代の女性天皇、推古天皇のお膝元である都で整備された通りには頑丈そうな木材で建てられた屋敷や家が所狭しと並んでいる。通りを高貴な身分そうな装束の男性が行きかっている。
その通りを早足で駆け抜ける女性の人影があった。
まるで頭のてっぺんに耳が生えているかのような茶色っぽい色の髪型に時代に見合わない耳当て。
服装こそ周りの男性のモノと大差ないが、どことなく時代から外れてるような感覚がある。
しかし、それが自然なのか男性たちはその人物の横を気にすることなく通り過ぎていく。
「これは神子様。今日はどちらにお出かけで?」
都の出入り口にある大きな門を守護している門番が声を掛けた。
「少し、庶民の様子を見に」
「神子様も大変ですな。夜になると妖怪が出るのでお気をつけて。」
「ええ。」
そう短く返答すると彼女は門を出た。
門を出るとすぐに豊かな田園地帯と大通りな道が視界に入ってきた。
その先のほうには都の中とは違い、樹と藁で組み立てられた民家が立ち並ぶ集落が見えた。
彼女はまっすぐにその集落に向かって歩いていく。
しかし、集落近くまでたどり着くと方向を変えて集落のすぐ近くの森の中に入っていってしまった。
「・・・・・・・・」
そして、森の中に入ってすぐに彼女は耳当てを外した。
「ぷはぁ!!やっぱり仕事の後には誰も居ない森の中で羽を伸ばすのが一番ね。
屋敷の中だと全然休まらないし。」
周りに人が居ないのを良いことに思いっきり羽を伸ばす。
「たく・・・・・・どうしてこの時代の貴族は脳筋が多いのよ。
欲を隠してるつもりなんでしょうけど、私の前じゃ筒抜けなのよ。
・・・・・・まあ、女性である以上嘗めれるのは仕方ないけど。」
自己紹介が遅れたけど、私は豊聡耳神子|(とよさとみみのみこ)。
古代日本の飛鳥の都で政治に助言したりしています。悪まで助言のみです。
それと、私は普通の人間ではありません。わずか10歳で政治に口出しできるのもそれが関係しています。まあ、それについては追々。
「やっぱりこの森は落ち着くわね。都の中だと絶対に誰かの声が聞こえるし」
そんな愚痴っぽいことを呟きながら、神子はこの森の中にあるとっておきの場所に向かった。
その時、ガサガサという茂みで何かが動く音が聞こえた。
かなり遠くで音がしたが、神子は聞き取ったらしくその場で足をとめた。
鹿やイノシシの類・・・でしょうか?魑魅魍魎や妖怪の類はこんな真昼間に出てこないし。
一応、護身術は身につけてるし、宝剣も持ってるけど、面倒ね。
別のルートを探しましょうか。
神子は方向を変えて目的地までのルートを頭の中で模索する。
そして、無暗に戦うことを避けるために別のルートを進んだ。
「それにしても、今日は植物が元気ね。こっちは日照り続きで困ってるのに。」
ああ。そういえば、農民集落に灌漑システムを導入するように進言のはどうなったのでしょうか?
そっち方面の官僚は女で幼い私が政治に口出しするのを嫌ってたし。
神子は数日前の会合で会った官僚のことを思い出して溜息を吐いた。
純粋に神子の超人的な才能を慕う者も居れば、妬む者も居る。
そのため、神子の考えが反映されない時もあるのだ。
「・・・・・・止めよう。神子と同じようにふるまうのは無理だっていうのは転生した時からわかってたことだし。」
そんな独り言を呟くと、何かを振り払うかのように神子は目的地に急いだ。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
森をどんどん進んでいくと、神子は森がくりぬかれたようになくなっている場所にたどり着いた。
空から見ると森の中にぽっかりと穴が開いたようになっているその場所は季節によって色々な花々が咲き乱れている。
さらに、今は春なので色とりどりの花がぽっかりと開いた大地を埋めている。
「やっぱり・・・仕事の後に此処にくる心が癒されるわね」
少し頬を緩ませてきょろきょろと周囲を見渡す。
普通なら、誰も居ない神子の秘密の場所なのだが、今日は先客が居た。
「・・・・・・誰?」
小さなお花畑に座り込んでいたのは黒曜石のような黒髪に紅い瞳の少女。
肌の色は白く、まるで深窓のお姫様を彷彿させるが、何より目を引くのは黒い髪と紅い瞳だ。
艶のある黒髪は非常に長く、地面に届いてもまだ余裕がある。
次に紅い瞳は禍々しさを感じさせるが、ルビーの宝石のように美しい。
私はこの日、私の考え方を変えてくれた少女に出会った。
だけど、その少女の出会いは同時に私に悲惨な別れをも齎した。
どうも、玄武の使者と申します。
知っている人は知っていると思いますが、「東方転生伝」の作者です。
にじファン時代に投稿していた作品を復活させました。
こちらの方は大規模な修正は加えておりません。
リリなのの方の作品の修正(という名の書き直し)も残ってるのに何してるんだろう・・・・・・。