聖焔の軌跡 〜Miracle Lucas〜   作:ムササ

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今回は重い話です。苦手な方はご注意下さい。



#107 罪の証

『久しぶりね、神凪アキト』

 

その言葉に反応し、アキトが背後を見るとアキトを滅ばさんとする質量の魔力弾が飛翔してきていた。咄嗟にアキトはブリューナクを構えて防御体制をとろうとするが、気づくのが遅すぎた。サファイアで全身の速度を上げてもほんの数センチ足りない。アキトがダメージを覚悟した時。

 

『みゅう!!』

 

エレムがアキトの背中から飛び出した。

 

『みゅみゅみゅ……みゅーー!!!!!!』

 

エレムの尻尾が光り輝き、三本あった尻尾が魔力の塊となる六本の尻尾と合わさり、エレムを包む。するとエレムの前方、すなわち魔力弾の飛翔する空間が消し飛んだ(・・・・・)。跡形も無く。完全に空間ごと消滅した。

 

『ぎゅるるる!!!』

『エレム………?』

『あら、中々面白い物を飼っているじゃない。どう?元気してた?』

 

独特の高い声、そして何よりアキトが感じる魔獣の魔力。ユイのものでも、エレムのものでも無い禍々しく、黒き感情の混ざった黒色魔力。

 

『キリコ・ティーエンス………』

『覚えてくれていたのね、光栄だわ』

 

約半年前、コルノスティ王国を震撼させた大事件。シリウス本部、本部長グラツ・ティーエンス、またの名をオル・グランクが引き起こしたシリウス本部の反乱。その首謀者であるオル・グランクの実の娘のクローンとも言うべき魔獣の魔力と人間の細胞から作られし悪魔。グラツ・ティーエンスの実の子供であるアルド・ティーエンスとキリコ・ティーエンスのクローンである。幼い頃よりオル・グランクに育てられた二人は俗に言う【ノアの箱船計画】の当事者であり、アキトにとってはアルビレオの仲間、アンセム・エレサールを殺した仇の一人である。

そして、神凪アキトとキリコ・ティーエンスにはもう一つ知られざる因縁がある。

 

『………お前に会ったら一つ聞きたい事が有ったんだ』

『いいわよ、答えてあげましょう。同じ悪魔のよしみよ』

『うるせえ、俺は悪魔じゃねえ』

『あら、ごめんなさい。それで聞きたい事って何かしら?』

 

悪びれもなくそう言うキリコに殺意を抱きながらも、さっきからずっと威嚇を続けるエレムを宥めながらアキトは質問を続けた。

 

『………お前のその神の器。No.5死鎌 プルートは何処で手に入れた?』

『ポールスターにメンテナンスで預けられた時にかっぱらったのよ』

『お前は適格者じゃねえ。何でお前がそれを使える。それを使えるのは…』

『俺の兄である神凪シュウヤ(・・・・・・)ただ一人だ。かしら?』

『つっ!何でお前がそれを!』

『私ねえ、伊達にずっとポールスターに居たわけじゃ無いのよ?シリウスに関するデータは全部私の頭の中にインプットされてるわ。このプルートの本当の適格者。【死神】神凪シュウヤの事も。あなたの妹である世界で唯一の王の器二つ持ちの神凪コトハの事も。神凪アキト、貴方の事もね』

『お前が………俺たちの事を語るなぁ!!!』

 

アキトはブリューナクを構え、エレムの事など置いてキリコに斬りかかる。だが、キリコが少し指を鳴らせばユイがアキトに蹴りを入れ、アキトの体は大きな民家に吹き飛ばされた。

 

『みゅう!!』

『ーーあらあら、健気な子狐ちゃんね………いえ、あなたは魔獣じゃない。人間でもない。何これ、私の、シリウスのデータに全く載っていない魔力?……まあいいわ。今は神凪アキト。死んだらダメよ?あなたは私達の計画に必要なのだから』

『……誰が死ぬか』

 

アキトはまともに蹴りを食らったものの、咄嗟に受身をとり、何とか衝撃を緩和する事に成功していた。

 

『あらー。良かったわ神凪アキト。生きててくれてありがとう』

『棒読み口調で、それもお前に言われても嬉しくもなんとも無いな』

『つれないわね。にしてもデータの魔力より全然弱いわねあなたの魔力。あっ、そっか。あなたの魔力殆どか封印されてるんだっけ。ーーあんな事件(・・・・・)を起こしたから』

『!!!!』

『なーに驚いてるのよ。言ったでしょう?私にはシリウスの全てのデータがインプットされている。勿論コルノスティ王国で起こった全ての魔獣絡みの事件も。特に……【ゼウス】と【ヘラ】の事件なんて記載されないわけ無いでしょう?』

 

その時、アキトの脳裏に忘れる事の出来ないある思い出が蘇る。忘れたくて、忘れたくて。それでもアキトを縛り続ける罪の証。

 

『始まりは13年前。ベガの街の南西部に存在する名も無き小さな村』

『……めろ……』

『そこには健全な二人の両親と三人の子供が仲良く暮らしていました。』

『……や…めろ…』

『だけどある日、その家にとっても悪ーい人達がやってきて、こう言いました。『私達に協力しろ。さもなければこの村を滅ぼす』と』

『…やめろ………』

『しかし、その家の人達はそれを断りました。だけどその後事件は起こったのです』

『やめろ………』

『その家の次男が行方不明になってしまったのです。状況から察するにその悪ーい人達に誘拐されたに違いありません』

『やめろ………』

『両親は必死に探しました。しかし、三日後次男は帰ってきました。災厄(・・)を引き連れて』

『やめろ…!』

『災厄はどんどん村を破壊していきます。それを止める為にその家の両親は決死の思いで討伐に乗り出します』

『やめろ!』

『結果として、その災厄を止める事は出来ました。その両親の命と、その家の子供以外の全ての村人を犠牲にして』

『やめろ!!』

『それが、その一族に伝わる血の力。大量の魔力を消費する事で、対象の魔力を封印する魔法』

『やめろ!!!』

『そしてその時。その少年は神の器を抜き、No.1に適格する。その背中に消えない罪の証を残して』

『やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!』

 

それがアキトの決して消えない罪。背中に押された封印の魔力。ーー大好きだった両親を間接的にとはいえ、自分の手で殺めたという罪。多くの村人を殺してしまったという罪。幼いコトハに一度も両親との会話をさせなかったという罪。災厄を復活させた罪。決して解いてはいけない封印を解いた罪。痛みに耐え切れず、言いなりになってしまった罪。実の兄であるシュウヤに全ての後片付けを任せてしまった罪。結局一度も親孝行など出来ないまま、両親を見殺しにした罪。力及ばず、なんの抵抗もできなかった罪。なんの罪も無い自分よりも幼い子供達を殺した罪。災厄を復活させた事で、その後世界に変革を及ぼした罪。結果的に自分が世界を滅ぼしかけたという罪。ブリューナクを使えず、一度も報いる事ができなかった罪。そのままいけば普通の人生を送れたかもしれないコトハをシリウスの道へ引きずり込んだ罪。

 

憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い。

 

そんな幻聴がアキトの頭の中に流れ込んでくる。

あの日、アキトの所為で殺してしまった人達の呪いの声が、地獄に引きずり込まんとする怨嗟の声が、アキトを蝕む。

 

『あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』

(やめろアキト!!黒色魔力に飲み込まれるな!負の感情に飲み込まれるな!!)

 

ブリューナクがそう叫ぶも、もう遅い。

アキトの体が黒く染まっていく。キリコの合図で、アキトの中の魔獣が暴れまわる。契約の終えていない、力がアキトを蝕む。

 

コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル。

 

そして、アキトの意識は途絶えた。

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