その箱船は人類に牙を剥く。
ヘパイトスとの戦いを終え、アキトは医務室へと運ばれた。
『一人で行くなって、俺たちを頼れよな』
『ゴメンなケイ、でも俺はけじめをつけなきゃいけなかったんだ』
リラには一回弱々しく顔をぶたれ、泣き崩れてしまった。
ケイやケイト、エンドリアのアマリリスのメンバーにも、もう無茶はするなと釘を刺された。
次の日、アキトはアルビレオ支部の総力をあげた治療により、殆ど完治した。
『それじゃあ、今日も張り切って魔獣討b…』
『『『『させないよ?』』』』
他のメンバーからの怒りのこもった目を向けられ、アキトは黙るしか方法は無かった。
『全く…今日はアキトはお休みです!昨日の怪我がまだ完全には治って無いのに…』
『そうよー、またリラを泣かせる気?』
『そうですよ!』
『そうだぜー』
『うっ……』
半ば無理やりアキトは非番にさせられてしまった。
直ぐに戻ると言いながらメンバーも出て行ってしまうし、アキトは一人アルビレオ支部に残された。
『何やってよう…』
怪我をしているとはいえ、殆ど完治しているのだ。
日常生活に不便は無いし、戦闘だって出来るだろう。
『訓練とかやったら怒られそうだしなぁ……』
結局アルビレオ支部の中を見て回る事にしたのだった。
まず訓練場を覗くとそこにはオルガとミサトが新人の訓練をしていた。
『おうアキトか、ミッションはどうした』
『無理やり休まされました』
『ははっ、リラちゃんらしいわね』
『ならばお前も少し付き合え、お前がいると新人の士気が高まる』
『こんな怪我人に出来ることならば、あんまり辛いことさせないで下さいよ。怒られるのは俺なんだから…』
訓練場には三人の新人が魔法訓練をしていた。
『お前には一番左の奴を頼んだ。そいつも火の魔法を使う、コツを教えてやれ』
『よっ、よろしくお願いします!!』
『いや、でも、別にコツとかは…』
『光栄です!まさか神凪さんに教えて貰えるなんて……一生の誇りです!!!』
(ああー、ジントさんもこんな感じだったんだろうなあ)
一通り訓練した後、アキトはまた違う所へ向かっていった。
アキトが次に向かったのは支部長室であった。
『やあ、アキト君いい所に来たね』
『おお、アキトか、どうせミッションリラが置いてけぼりにしたんだろ、あいつ昨日のこと結構怒ってたからな』
『はい、全くその通りです。して、支部長いい所とは?』
『ああ、それはこれなんだが』
リックスが見せたのは”Project Noah's ark”と書かれた資料であった。
『ノアの箱船計画…』
『ああ、ジント君に秘密裏に探ってもらっていたものだ』
『お前にも読んでもらおうと思ってたんだが、そこへお前が来たって事だ』
『なるほど……』
資料を要約すると
・ナイトローズを使って魔獣を操り、人々を選別する。
・グラツに従う者、抗う者を選別し、抗う者には魔獣で制裁を加える。
・シリウスは解体し、グラツが全て取り仕切る
といった具合のものが書かれていた。
『これがノアの箱船計画の全容…』
『ああ、こんな馬鹿げた計画は止めにゃならん』
『その通りだ、近いうち攻撃を仕掛ける事になるやもしれん』
『その為には他の支部との連携が不可欠ですね』
『ああ、だがそれは難しいだろうな…』
『何でですか?』
『勿論私が話したさ、だが何処の支部も信じないうえに、信じたとしてグラツに従いさえすれば生き延びられるんだ。誰もが強くはないんだよ』
『そんな………』
『近いうちに私からアルビレオ支部の全員に話すさ、従うか、抗うか』
『それでも俺は抗います。俺は仲間を傷つけたグラツやナイトローズを許さない』
『私も同じ気持ちだ、みんながそうならば良いのだがね………』
アマリリス帰還の連絡が来てアキトは支部長室から出て行った。
『おかえりリラ、怪我はないかい?』
『はい!簡単なミッションだったし、負傷者ゼロだったよ』
『お前ら自重しなくなったよな………』
ケイはエントランスで抱き合っているカップルに呆れの視線を送る。
だが何も言わない、言えば何が飛んでくるか分からないから、触らぬ神に祟りなし。
だが、その時アルビレオ支部内に警報が鳴る。
【アルビレオ支部のメインシステム、フラッグにハッキング!これは……ポールスター、シリウス本部からです!!】
シリウス本部、その言葉に皆の顔が凍りつく。
それはすなわち、エントランスのブリーディング用の巨大モニターに映ったのは、
『グラツ・ティーエンス………』
グラツ・ティーエンスからの宣戦布告が始まる事を告げていた。
シリウスには各支部に一つメインコンピューターの様なものがあります、アルビレオのはフラッグという名前です。