元神王連メンバー「A」李堂 〜Anotherstory〜(リメイク) 作:ただの青い山羊
一回戦を終え、俺は身体を休めていた、霊波動を使ったせいで思った以上に体力を消費してしまったからだ
この一回戦で俺の身近な奴らは殆ど消えてしまった、もう残ってるのは俺の格上ばかりだろう
2回戦第一試合、豪鬼は傷は見当たらないものの相当疲労した状態で会場から出てきた、しかし何かがおかしい。
いくら他と比べて体力の無い俺が霊波動を使ったとしても倒れかけるほどの疲労には至らなかった、それに比べ特に俺よりも体力が多い豪鬼なら尚更だ、恐らく豪鬼は霊波動とは違う、もしくは更に上を行く技術を隠している、推薦者を疲労したとはいえ、無傷で倒した技術が
続く2回戦、俺はシード枠にいる推薦者が相手になる中できるだけ霊波動を温存して次に望みたいところだ
俺はまだ霊波動を発動してもただ体力を余計に消費して強化しているだけで効率も本来の霊波動と比べて少々悪い、だからこそ俺はここぞという時までできる限り霊波動の使用は避けなければならない
恐らく先程のペースで次の試合を切り抜けたとしても次の準決勝、決勝と勝ち進むのは難しい
(推薦者ってのがどれだけ強いのかわからねぇのが怖いな…………)
『続いて第2試合、安堂 李 対 癒姫の試合を開始します、選手は会場へお入り下さい』
「………………行くか」
──────────────────
俺が会場に向かうと、先に対戦相手の癒姫が待っていた
「遅かったね、待ってたよ」
「悪かったな、さっさと始めようぜ」
俺が言うと、煉獄による試合開始が宣言された
『それでは、2回戦第二試合、安堂 李 対 癒姫の試合を行う』
『始め!!』
──────────────────
試合が始まり、最初は互いに動かず様子を見た
(……………………広場から思っていたけどコイツ、強者としての雰囲気が全く無いな、戦闘力も俺より下だし、なんかフワッとしてるっていうか幼いというか、この殺伐とした状況に全く会わないんだよな)
(それだけオーラと殺気のコントロールが上手いってことか、それにさっきから能力を使って視てるのにオーラのゆらぎが殆ど見えねぇ……やりづらいな)
李が思考を巡らせていると、冷たく生気を感じられないような瞳をこちらに向け、口を開いた
「ねぇ、来ないの? もう戦いは始まってるんだよ?」
声音に挑発も熱も無いただの事実確認のような喋り方に不気味さを感じた俺は、微かに冷や汗を垂らしつつも苦笑交じりに答えた
「え? わざわざ待ってくれたのか? 閻魔推薦と聞いてどんな鬼が来るかと思いきや、結構優しいんだな」
「……ふぅん」
そう言い、俺の言葉を聞き流すと突然能力が反応した
——来る
そう思考した瞬間甲高い音が鳴り響いた、あまりに突然の出来事にまだ思考が追いついておらず、恐る恐る音が鳴った首元をちらりと見る。
オーラを纏った手刀が俺のナイフとぶつかり合い、ギリギリと鍔迫り合いをしていた
衝撃で腕が震える、ナイフ越しに伝わる重圧はとても少女の細腕から発せられるものとは思えない、手首から肩まで痺れるような痛みが走り、思わず歯を食いしばる。
ゾクリと背筋が寒くなった、もし一瞬でも俺の反応が遅れていれば俺は——
……嫌、考えるのはよそう、いまは眼の前の相手に集中しなければ。
そう考えた俺は直ぐ様後ろに飛び退き、距離を置くと能力を発動し戦闘力を再度確認する
(戦闘力が15万に上昇している、しかもあいつの反応を見るに恐らくまだまだ余力があるな、それなのにもう俺を軽々と超えていきやがった、これが推薦者のレベルか……)
ならば、と俺は第一オーラを解放し、そのオーラを足に集中させた
瞬刃
先程の癒姫と同等のスピードを持った一撃が先程のお返しとばかりに首元を狙うが、うまく受け流されてしまう
だがもう一撃ある、と進行方向とは反対の方向に切り返すと再びトップスピードを出すと今度こそ完璧に背後に回り込み一撃を放つ
──入った
振りかざしたナイフが喉元を狙うがその瞬間
ガギィンと鈍い金属音を鳴らしノールックで受け止められてしまった、しかも相手はオーラを纏っているとはいえ素手である、一体どれだけのオーラが纏われているのだろうか
俺はオーラを身体能力の強化に回し全力で押し込むが逆にじりじりと押し返されてしまう。
眼の前の少女によって策や技がことごとく単純な力とオーラ、そして洗練された技術でねじ伏せられている事実に、冷や汗が背を伝った。
「まじかよ……ここまで強いのか? 推薦者ってのは……」
「能力の精度は上等みたいだけど、他はたいしたことないんだね」
「五月蝿え!」
その後も攻撃を仕掛けるが目の前の女は俺の攻撃を難なく躱し、防がれた、これまで戦った相手とは明らかに次元が違う。
ただ攻撃するだけではその内こちらの魔力切れで確実に負ける、そう考えるたびに俺の中で焦りが膨らんでいく。
癒姫の動きは、まるで舞っているかのように滑らかだった、俺の踏み込みをわずかに外し、袖をギリギリかすめるかと言った距離で紙一重に避ける、刃が掠めたはずの肩口も、空を切っただけ。
逆に返しの掌底が胸板を打ち抜き、肺の中の空気を一瞬で奪われる。
「ぐぉぉっ……!」
呼吸が乱れ、視界が揺れる、さらに体制が崩れたその隙を狙うように蹴りが飛んでくる。辛うじてオーラで防ぐが、その衝撃は全身に響いた。
「はぁ……はぁ……」
「どうしたの? これで終わり?」
「くそっ!」
魔符『魔豪拳』
全力でオーラを放ち怯ませる事に成功するが、特にダメージが入っている様子もなく、少しは効いてくれよと微かに悪態をつきながら素早く距離を取った
(ここまで全力で攻撃を続けているというのに全くと言っていいほどダメージがねぇ、オーラの消費もそろそろやばいな……かといって攻撃を緩めるわけには……)
「もういいかな? じゃあちょっとペース上げるね」
癒姫の戦闘力が再び急上昇し、あっという間に50万に達した
(おいおいおいおい! ちょっと待ってくれよ、こんなの出鱈目じゃねえか!)
「じゃあ行くね」
そう言うと癒姫の姿が消え、あっという間に俺の懐に潜り込まれた
(来る! 避けきれねえ、せめてガードを!)
腕にオーラを集中させ胸の前でクロスし構えるが、癒姫が放った一撃は俺の防御を軽々と突破し、腕の骨が悲鳴を上げた、防御に使った前腕が痺れ、握ったナイフの感覚が遠のいていく。
胸郭を打たれた衝撃で呼吸が止まり、血が逆流する感覚に思わず吐き気を覚える。
「がはっ!?」
(なんつー一撃だ……こりゃ遠距離戦の方も期待しないほうがいいな……)
その後も癒姫は攻撃を続け、李を着々と追い詰めていった、オーラを纏った拳、蹴りがまるで業物の刃のように襲いかかった。
李も負けじと第一オーラや霊波動を最大限に活用し応戦するが、通常で50倍、霊波動を使用しても5倍という圧倒的なオーラの前には遠く及ばず、能力で素早く情報を入手しなんとか回避するのでやっとだ
全身の筋肉が悲鳴を上げ視界の端が白くかすむ、回避を一つ誤れば致命傷。そんな極限の綱渡りのような数時間にも感じる猛攻を紙一重でしのいでいた。
(このままじゃ押し切られる……仕方ねぇ、ここで使わなきゃ、もう勝ち目はねぇ)
李は深く息を吸い込み、オーラを凝縮させる。その声は低く、冷ややかに響いた。
堕符 迷宮理論
凝縮されたオーラが解き放たれ、2人を包み込むようにその場を覆い尽くした。
それから数秒後、癒姫の様子が急変した
「お前……何をした?」
初めて癒姫の口調が崩れ、焦ったような声色で俺に問いた
「この空間はお前の思考、感覚、経験、記憶、感情すべての情報を奪い、困惑させる世界」
「この空間に囚われたものはまず思考と感覚を」
そう呟くと癒姫の下から五感が消え去り、目から光が抜けていく。
何も見えず足がもつれ、立ち上がろうとするも思考がまとまらず、身動きをすることもままならない
「次に記憶と経験が失われ」
癒姫の下からまた何かが消えていく
ワタシは。誰だ、ナゼここにイる、クライ、コワイ、ワカラナイ
「そして最後には……」
感覚が無いので今自らがどうなっているのかもわからない
膝は崩れ落ち、身体が震え虚ろな目で何かを呟いている
失った感覚を取り戻そうとしているのか手に持っていた刀て何度も身体を刺し始めた、先ずは眼を刺すがそれでも視覚は戻らない、次に耳を、だが聴覚も戻る様子は無い、その後も腕、足、腹と次々に刺していくがそれでも空っぽになった自身の脳は満たされない
「自我を失う」
李がそう呟くと癒姫は持っていた刀を自身の脳に突き刺した
余程生命力が強いのか暫くジタバタともがいた後、突然糸が切れた様に動きが止まり、その身体が2度と動くことは無かった
『二回戦勝者、安堂 李』
「ふぅ……」
勝利に安堵した瞬間、鼻からたらりと血が垂れ落ちた、スペルで相手の情報を全て吸収した結果、脳のキャパシティを超えたのだ
李は腕で乱暴に拭い、もう一度深く息を吐いた。
待機場に向かって歩き出した瞬間、膝の力が抜け、ガクリと崩れかけてしまった
なんとか堪えたがその足取りは何処か不安定だ
(スペルの反動…………もう少し決着が遅かったらやばかったな……)
堕符 迷宮理論
使用者 安堂 李
李が扱うスペルカード
相手の情報を全て入手し、自我や感覚を無くし廃人化させる技
雅流のスペルと似ているがこちらの方が相手の情報を過度に入手する為、脳へのダメージや体力消費が非常に大きい
しかしその分、威力は雅流のスペルよりも大きい