たぬきの子   作:ーー

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4 ランク戦実況解説システム

 那須隊のみんなはやさしい。B級上がりたてで、トリガーもセットしたばかりの時に大人気なくボコボコにしても許してくれる。

 それに素直に「教えて」って言うから、もう何もかもを教えてあげたくなるよね。手取り雨取。

 

 まあ筋書き通りにならないと困るし、ほどほどに抑えないといけないというか、大したことは教えられないんだけど。

 

「遠隔シールドは個人差あるけど大体25メートル先まで張れるよ(普通に戦闘員になれるトリオンがあればね)他にも固定とか分割とか変形とか色んな使い方があるんだ」

 

「すごいね玲さん。もう27分割の両攻撃(フルアタック)でちゃんと弾道引けるんだ。バイパーの使い方だったら誰よりもセンスあるよ。ん? ……そりゃ僕は試作段階から使ってるからね。褒めてもナニもでないぞ」

 

「友子は返し技がうまいんじゃないか。いや、ホントに。僕は目がすごくいいから更に返せるだけで。サイドエフェクトって知ってる?」

 

「もっかいやりたい? ……ちょっと待ってて。これ終わらせるから」

 

 仕事を片付けて、トリガーをセットする。

 

 メインに、

 スコーピオン メテオラ シールド

 

 サブに、

 レイガスト スラスター シールド バッグワーム

 

 これで行こう。

 

 

 

 3人がまとまったところから中距離でよーいドン。茜ちゃんがバッグワームを着てどこかへ走り去った。友子は弧月を構え、玲さんはキューブを出す。だけど、弾道を設定しなくていい僕のメテオラの方が速い。

 

「メテオラ」

両防御(フルガード)!」

 

 初手は牽制のメテオラ。2人に両防御(フルガード)させた。

 

「旋空弧月!」

「バイパー!」

 

「スラスターON」

 

 距離15mで友子が繰り出した旋空を避けて、細長いスコーピオンを生成し逆手に持ったレイガストにくっつける。そしてスラスターで加速させて振り下ろし、さながら投槍器(アトラトル)のように投げ撃った。

 

「なっ……!?」

 

 右肩にブレードが突き刺さった。供給器官(むね)を狙ったんだけど外されちゃったな。だけどもう両手で弧月は振れないだろう。

 

「シールドモード」

 

 バイパーはしゃがんで盾を広げてガード。

──カッ

 

 視界の端に狙撃銃の光。アイビスだ。

 

「スラスターON」

 

 再度スラスターを使い回避。惜しかったね。

 

「茜ちゃんみっけ」

 

 玲さんに背を向けてシールドを展開。茜ちゃんに向かって走る。と見せかけて手負いのくま、友子を狙う。

 

「メテオラ」

 

 27分割。玲さんに撃って友子に斬りかかる。密着すれば援護しづらくなるだろう。

 

「くっ!」

 

 スコーピオンを使い至近距離で激しく攻める。片手じゃ友子はシールドを使っても防御が追いつかない。少しづつ傷が増えていく。

 

「それっ……おっ!」

 

 死んでる右腕をわざと切らせてカウンターを狙ってきた。ギリギリで避けたけど前髪が斬られた。やるね。

 

「くまちゃん! 下がって!」

 

「逃がさん」

 

 レイガストのブレードを刺股のようにU字に変形させ、友子を地面に押し倒し、スラスターで刺しこんでがっちりと抑えつける。そしてメテオラを置いて固定シールド。バイパーの両攻撃(フルアタック)とライトニングの狙撃による同時攻撃は僕には届かず、友子だけを爆死させた。

 

「次は……」

 

 茜ちゃんをやる。走る。

 光が見えた。これは──

 

「おっ」

 

 イーグレットだ。顔面に集中シールドでガードした。

 いまの精度いいな。

 次はバイパーが来る。メテオラで壊したレイガストを破棄して再生成。

 

「よっ」

 

 地を這うように迫る弾丸を飛んで避ける。が、追従するように上方向に弾道が変化した。

 

「予知かよ」

 

 レイガストに乗るように下に構えてガード。アイビスを避けて大玉でメテオラを発射…………命中。

 

 最後に残った玲さんはスラスター斬りを避けたところを脚ブレードで仕留めた。戻ってきた弾もシールドモードで防ぎ切る。

 戦闘終了。

 

 

 

 

「みんないい感じになってきたね」

 

「どこがよ。また一方的にやられただけなんだけど」

 

「前より上手くなってるって」

 

 ちゃんとしたB級部隊らしくなってきたんじゃないか。

 

「やっぱり深緑くんはとっても強いわ」

 

 これでも1人で1部隊扱いだからね。

 

「そうですね! こんなにちっちゃいのに」

 

「ちっちゃいは余計だ」

 

「いてっ」

 

 余計なこと言った茜ちゃんにかるーくチョップをお見舞いする。トリオン体だから痛くないはずなのについ言っちゃうのかわいいね。

 

 

 

 

 

 ◆那須玲◆

 

 

 

 ボフン、と勢いよくベッドに倒れ込み、徐にタブレット端末を取りだして映像を再生した。それは今日の戦闘の記録だった。

 

「深緑くん……」

 

 オペレーターの小夜子に頼んで、彼が含まれたログは全て自身の端末に送って貰っている。また容量に余裕がなくなってきた。

 

「っ!」

 

 自分が斬られた所を繰り返し再生する。これはあくまで反省のためである。自身のレベルアップのために、また同じ攻撃を喰らわないようにするために見ているのだ。

 

「かっこいいわ……」

 

 彼の得意技、脚ブレードのキレは凄い。惚れ惚れする。テレビで見た空手とかテコンドーとかの選手みたい。

 

──あくまでも、研究のためなのだ。

 

 だからこういうのは何回見たっていい。足をパタパタと動かして、玲はまた既に見た映像を見返す。

 

 

 ▽

 

 

 静かにランク戦を観戦した後、個人戦ブースに向かおうとした時だった。ツインテールの女の子が話しかけてきた。

 

「すみません! 私は新人の武富桜子と申します! あなたは幹部の息子さんだと聞いたのですが──」

 

「ンッ────そうだよ。僕は鬼怒田深緑。開発室長の息子だ」

 

 冷静に返事をしたが、実はかなりテンションがぶち上がり、脳内で実況が始まった。

 

 あぁーっと! ここでついに桜子だ!! のちに「ランク戦実況解説システム運営主任」になる女、武富桜子の登場だ〜っ!!! 

 誰から私の事を聞きつけたのでしょうか。幹部の息子である私に接触してきました! 一体何が目的だろうか。システム実装の足がかりとして話しかけた可能性が濃厚か! 

 

 いかん。おちつけ。

 

「どうしたの? 話聞こうか?」

 

 言葉間違えたかも。

 

「はい! 聞いてください! ここじゃあれなのでラウンジに行きましょう!」

 

「あ、ああ」

 

 問題なかった。しかし流石の熱意だな。

 

 

 

 

「────これらのメリットが、実況解説にはあると思います!」

 

「うん。そうだな、確かに」

 

 ランク戦に実況と解説があったら……という熱弁を聞き終え、時間を確認すれば10分以上経ってた。

 この子なにも資料とか用意してなくてもめちゃくちゃ口が回るじゃん。もう実況得意そうな感じ出してるみたいだ。

 

「僕としては、君のこの素晴らしいアイデアを実現できたらいいな、って思ってる」

 

「! じゃあ……」

 

「けど、さっきの説明だけじゃ上が首を縦に振るには足りないかなって」

 

「ムムっ……」

 

 それは君の趣味(メリット)だろうってところもあったしな。

 

「だからちゃんとした資料作ってプレゼンをしよう。協力するから」

 

「はい! よろしくお願いしますみのり先輩!!」

 

 握手。手ぇちっさ。かわいいな。

 

 

 

 

「ログに実況? いいね……了解。解説するのはいいけど君にもある程度知識がなくちゃな。少なくともトリガーの名前がすぐ出るようにしないと。あとマップの特徴とか」

「はい! 勉強します!」

 

 

「うん。いい感じのができた。で、これを部隊にばらまいてアンケートをとると。ならまず、東さんとこいくか」

 

 

「いっぱい指摘されましたね……」

「そうだね」

「他の部隊に見せる前にもう一回録りなおしていいですか?」

「もちろん」

 

 

「参考になった、が9割! やりました!」

「やったな。ほかの資料も蓮さんと響子さんがよくできてるって言ってたよ」

 

 

 

 

「っはぁあ〜〜〜!! 疲れました〜」

 

「お疲れ様。頑張ったな」

 

 なんやかんやあって上層部へのプレゼンを成功させ、実況解説システムの実装が決定した。

 

「みのり先輩のおかげです」

 

「大したことはしてないよ。全部君に頼まれたことをしただけだから」

 

 桜子は僕の手を借りなくても上層部を納得させられたはずだ。僕が手を出したことで、多分1シーズンほど時期を早めただけで。ちょっと右目が痛いですね……これは痛い。

 あー軌道修正がちょっと大変だよこれ。でもしょうがないよな。かわいい桜子のお願いは断れなかった。次のテコ入れ考えとかないと。

 

「大したことですよ! 先輩がいなかったら私、上の人とあんな風に話せなかったと思います」

 

「そんなことない。桜子は目的のためなら僕の手を借りずともいずれは同じ結果になるように動いてたよ。君はそういうことができる子だと思う。もしも僕が初めて会ったときに、『実況なんて興味無いね』って言ったとして、君は自分が諦めてしまうようなヤツだと思う? 違うんじゃないかな」

 

「それは……そうですね。諦めなかったと思います」

 

「だよね」

 

「……でも」

 

 きゅ、と手を握ってくる。

 

「先輩に協力してもらえたことはすごくうれしくて……楽しかったです」

 

 上目遣いで見つめながら、なんとも可愛いことを言ってくれる。なんだこれ。抱きしめていいのかな。

 

「みのり先輩。だから私、お礼がしたいんです。なにかして欲しい事があればなんでも言ってください!」

 

 ん? 今何でもって……

 

「深緑くん。ラボにいなかったから、探したわ」

 

「あ、望さん」

 

「! 元東隊の……」

 

 今見つけたみたいに言ってるけど、絶妙なタイミングで出てきたな。わざとだ。

 

「あら、取り込み中だったかしら」

 

「い、いえっ。大丈夫です」

 

 ぱっ、と桜子が手を離す。

 

「そう? じゃあ深緑くん、前に試作トリガーのテストしたいって言ってたじゃない。今日は私、時間あるから協力してあげようと思うの」

 

「ならお願いしようかな……桜子、また後でな」

 

「あ……はい、また……」

 

 

 ▽

 

 

「なんかいい雰囲気だったわね。最近あの子といることが多かったみたいだけど……」

 

「ランク戦実況の発案者だよ。望さんも後付け実況見たでしょ」

 

「あぁ、あれの……それで、随分と懐かれてるみたいね」

 

「やきもち?」

 

「なまいき」

 

 首に腕を回される。柔らかいものが当たる感触があった。

 

「ぬっ……望さん、苦しいよ」

 

「うそつかないの」

 

 首を絞める腕には全然力が入っていない。あててんのよ、ってことかい。ハレンチですよ。

 

 

 




2万回ログを見る那須さん。
瑠花ちゃんの護衛兼デートの回を書こうと思ったのですが、作者のデートエアプが露呈しまくりになってしまうので断念しました。
代わりというわけではないのですが、このオリ主の立場なら絶対関わるだろうなと思った桜子が登場しました。この子もかわいい……かわいくない?
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