たぬきの子   作:ーー

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オリ主の「どうしたの話聞こうか?」に、ここすき10つけてる人いて笑っちゃった。ありがたいんですけどね。ヒロインのセリフとかよりそこすきなん?(^^;
って思いました。




5 A級のエース

 ピッ、ガコン! ……カシュッ

 

「ふぃ〜、つかれた」

 

 缶コーヒーを飲んで一息つく。

 

 いや〜ここ最近色々と濃かった。

 鈴鳴支部が設立されて、鋼さんや木虎、木虎被害者の会の会員が入隊して、ランク戦が実況解説で盛り上がって……。

 楽しいけど忙しくもあった。仮想空間のアプデと艇の整備の手伝いもあったしな。サボる隙がなかったぜ……。

 

 まあいいや。今度マップのテストという名目でシューター対決(雪合戦)とかしちゃうもんね。雪だるまつくーろー。

 

 そういえばスポンサー様の息子、唯我尊が入隊してくるそうだが……。あいつをちょっと鍛えたら間接的にオッサム強化に繋がるか……? むしろ、オッサムのトリオン盛れてきてるし、入隊してきたらC級のフリして盾モード教えて実戦形式で(ボコボコにして)防御を鍛える予定だし、師匠ポジの一人である唯我にもちょっとした強化が必要だよな。

 いや別に今考えなくても、太刀川隊に入るまで置いといてもいいか。

 

「久々にソロ、いこうかな」

 

 空き缶をゴミ箱にポイ、スポッと投げ入れて呟く。

 と、不意に背後から声をかけられた。

 

「おう、来いや」

 

 男の声。振り返ればボサボサ頭に目つきの悪い男、

 

「カゲさん」

 

 影浦雅人がいた。影浦隊の隊長で、歳は僕の1個上。今はマスタークラスのアタッカー。

 ゾエさんがバイク免許取りに行ってる時に一緒に防衛任務につくという絶好の機会があり、なんやかんやあって楽しく斬り合える仲になった。

 

「今望さんと同じトリガーセットだけどいいかな?」

 

「ざけんな変えてこい」

 

「ですよね〜」

 

 ファントムばばあスタイルは嫌だよね。

 

 スコーピオン グラスホッパー シールド

 スコーピオン グラスホッパー シールド バッグワーム

 

「これでよし」

 

 

 トリガーセットを変えて個人戦ブースのエリアに行く。

 

「お、荒船さんと鋼さんがやってる」

 

「あ! みのり!」

 

「!……小南」

 

 まだNo1アタッカーの小南桐絵ちゃんだ。今日も可愛いな。本部に来るの久しぶりなんじゃないか? 

 

「ちょうどいいところに来たわね! ボコボコのギタギタにしてあげるからブースに──」

 

「悪い、まずカゲさんとやるから」

 

 ムキーっと喚く小南の声をBGMにブースへ入室。カゲさんと10本勝負だ。

 

 

 

「いくぜ!」

 

「やっぱそれだよね」

 

 マンティス。2本のスコーピオンを繋げる荒業。カゲさんの右手に細長い鞭のようなブレードが生成され、素早く、くねりながら向かってくる。

 

「はっ」

 

 こちらもスコーピオンを出し、力を込めて弾く。

 そして

 

「それっ!」

 

 もう1本出して、つなげて振るう。マンティスだ。

 

「ハッ!」

 

ヒュッ──ヒュヒュ────ビュッッ──

──ガッ──キッ───ガキィッ───

 

 僕は()の視覚で、カゲさんは触覚で。互いにサイドエフェクトを使って読み合いをしながら、斬りかかり、弾き、避け、また斬りかかって──切り傷を増やしていく。

 

「あはは!」

「ハァ!」

 

 距離およそ10メートルでのマンティスの応酬。段々速さが、鋭さが上がる。口角もつりあがる。

 カゲさんも笑ってる。余計笑えてくる。

 

「ヌルい視線(モン)刺してんじゃ、ねぇ!」

「ぬぉ……」

 

 感じちゃった? なんて、冗談を口にする余裕が無くなる程の猛攻。

 

 まだ速くなるのか。()()を使った先読みをしてもなお僕の方が遅れてきてる。高難度の音ゲーでもやってるみたいだ。

 目で追えても追いつけない。

 

 バキ、と。度重なる激しい衝突に耐久力が限界を迎え、双方のスコーピオンが砕けた。

 

 ──グラスホッパー。

 

「おりゃ!」

 

 攻勢に転じるなら今だ。グラスホッパーで思い切り踏み込んで一気に距離を詰め、二刀で斬りつける。

 

 ──よし、崩した。右腕を切り落とす未来が見え……。

 

「……へっ!」

 

「あっ────し」

 

 脚ブレードじゃん。しまった。

 左目の視界がズレている。攻撃を食らってしまうのが確定したのがわかった。

 

 カゲさんの右手を落とした直後に生じた隙に、踵のブレードで頭を貫かれた。

 

 緊急脱出(ベイルアウト)

 

 

 

「足ながっ」

 

 てか、やばいな。()()使ってないとはいえ、いきなり1本取られたぞ。ヤクザキック脚ブレードで。

 

「最近忙しくて接近戦の腕が鈍った……ってのはただの言い訳だな」

 

『おい、次だ』

 

『すぐ行くよ』

 

 いやでもやっぱ、楽しいな。

 

 

 

 ‎ ‎▷小南桐絵‎◁

 

 

「あいつら──1本1本が長いのよ!」

 

 見るものをドン引きさせる狂気の笑みで、変態的な斬り合いに興じる二人が画面に映し出されている。

 

 小南は両者の動きをしっかりと目で追いつつ、ぷんぷんに怒っていた。

 

「もう!」

 

 むかつく。深緑はボーダーに入る前、いや初対面からこちらを舐めたようなことばかりしてくる。自分のトリガーを盗って勝手に使うし、騙すし、やる時は毎回トリガー構成を変えてくるし、なにより……

 

「やっぱり全力を出さないのね……!」

 

 トータルで言えば小南が勝ち越している。純粋な接近戦のセンス、実力で言えば自分は誰より優れているという自信がある。

 

 しかし、鬼怒田深緑にはサイドエフェクトがある。ただの『動体視力強化』などではない力が。小南は、うまく言語化しきれなくともそう確信していた。違和感を見逃さなかった。

 

 深緑は攻撃を決めた時は必ず相手を見ている。けど、防ぐ時は受け太刀に使う自分のブレードやシールドを出す場所ばかりを見ている。敵の攻撃に対してはあまり注目してる様子がないのだ。それがおかしい。

 

 特にシールドを出す時の、弾などより既にシールドが出現する前の虚空に焦点をあわせているかのような目に不気味ささえ感じる。

 

 これはどういうわけなのか。聞いても……

 

「んー秘密」

 

 と言って教えてくれない。そんな言い方をされたら、何がなんでもその秘密を暴きたくなるというものだ。

 一度、勝ったら教えろと迫ると、

 

「……わかった。けど、負けたら僕の目について気づいたことを広めるなよ」

 

 そう言って。さらに奇妙な目をして、自分を圧倒的に──

 

 ブンブン、と小南はかぶりを振って10戦10敗の記憶を隅に追いやった。

 

 

「いつか絶対、全力のあんたを負かしてやるわ」

 

 

 ▽

 

 

「はぁああ〜」

 

 やりまくった。充分楽しんだが流石に疲れたな。

 トリオン体でも精神力の方はどうにもならない。いや、正確にはどうにかしようとしないほうがいいのだけど。生身の方にも影響しちゃうから。

 

「感覚派のアタッカー相手は疲れるな」

 

 中でも小南。勘が良すぎる。嫌いじゃないけど。

()()だけじゃ勝ちきれない相手って、やっぱりセンスがありまくるんだろうな。

 

「こんなトリガー使ってるって知られたらもっと怒られるよな……」

 

 低出力トリガー。本来のトリオン能力に対する出力を通常のトリガーより半減させたもの。

 まあこれはいずればれる。ばらす。

 

 遅くとも大規模侵攻以降は通常のトリガーを使うようになる。修達のB級ランク戦が始まれば隠す意味も全く無くなるからな。

 

「でもこの目のことはな……」

 

 やっぱり言いたくない。

 

 簡単に言ってしまえば、『やりたいと思えばだいたいなんでも出来る力』なんだ。トリオン体のスペックなら尚更。中二病みたいだけど、僕の()()は乱用するべきじゃない。玲さんの時はしょうがない。

 

 迅さんには言うことになるとしてもだよ? 特に、とりまる呼びを広めちゃうような、嘘が苦手なかわいい小南ちゃんにはなー。

 

 

 

 ▽

 

 

 

「これはこれは木虎ちゃん。僕に会いに来てくれたのかな」

 

「背筋が凍るようなこと言わないでください」

 

「返事と視線がつめたい〜」

 

 腕を抱えこみカチカチと歯を鳴らして、迫真の凍えた演技を見せてやると、木虎がイライラした表情になってくる。

 

「じゃあ別の人呼ぼっか? 雷蔵さんとか」

 

「はいはいそうですあなたに用があって来たんです!」

 

「みのりちゃんでいいよ」

 

 初対面の時、僕は戦闘体だった。木虎は年下の女子と勘違いしてそう呼んだ。とっきーすらぷるぷるして笑ってた。

 

「怒りますよ!」

 

 もう怒ってる。

 

「そうカッカするなよ。ブレード入れてオールラウンダーやるって決めたんでしょ? 君にピッタリなものをセットしてやろう」

 

 木虎にはB級昇格時にも1度、トリガーをチューニングしてやりつつスコーピオンをお勧めしていた。

 

『ガンナーは先に進むほどトリオンの差がもろに出る。木虎は身軽に動けるしスコーピオンも合ってると思うな』

 と。『いえ、大丈夫です』と言ってきかなかったが。

 

 まあ、結局はこうして貰いに来た。

 京介にも言われて、実戦を積んで、言われた通り『自分は銃手用トリガー1本じゃキツい』って実感が湧いてきたんだろう。

 

 今でも低トリオンの部類だけで考えればトップレベルなんだけどな。

 

 オペ転向後でも、作者の猫先生に『たぶん今でも麓郎とかより強そう』と言われるほどの草壁早紀が、現役時代勝てなかったほどだ。……うん??? 

 

「あれ木虎、まだ14だっけ?」

 

「そうですけど……いきなりなんですか」

 

「お前は才色兼備でしかも努力家だ。可能性の塊だ。素晴らしいな」

 

 胸が膨らむね。*1

 

「いきなり何なんですか!?」

 

「改めて考えると、やっぱり木虎はすごいと思って……よし完了。試し撃ちする?」

 

 スコーピオン(改)。回転機能つきだ。

 

「……します。相手してください」

 

 褒められた直後の、照れが残った顔でこのセリフ。なんか叡智だな……

 

「いいよ」

 

 訓練室に入り、僕のトリガー設定をいじる。

 

 メインに、

 アステロイド:拳銃型 スパイダー シールド 空き

 サブに、

 スコーピオン(改) 空き シールド バッグワーム

 

 木虎の今の構成から、メテオラをスパイダーに変えた構成でいく。実はもうスパイダー(改):拳銃型もできているが、木虎はまだスコーピオンを持ったばかりだし、本人が必要性を感じていないのに勝手に入れる訳にはいかない。

 

「さて、もんでやるか」

 

 

 …………

 

 

 

 

「少しは掴めたかな?」

 

「……もう1戦お願いします」

 

「おっけー、ラストね」

 

 

 木虎の弾は射程が短い弾速重視の設定だ。射撃は正確で、素早く走り回りながらも狙った所へ高精度で当ててくる。

 

 

「おっ、今のいいね」

 

「余裕で防いでおいて……!」

 

 メテオラでシールドを広げさせて、アステロイドに切り替え1点集中の精密射撃をしつつ距離を詰め、ブレードで割って倒す。

 

 この動きを何度か試してきて、さっきのは1番キレがあった。

 

「スパイダー」

 

「!」

 

 右手の銃を構え、撃つと見せかけてスパイダーを起動。木虎の足元にキューブをばら撒く。

 ラスト1本だから、まだ見せてない技を見せてやるか。

 

「それはもうくらわない!」

 

 足を狙ったツノを木虎は僕から見て左側に跳んで回避し、僕へ銃口を向けた。しかし、此方はもう既に狙いが定まっている。

 

「えっ──?」

 

 僕の左手に、スパイダーのキューブがひとつ残っている。

 

 ──足狙いじゃないんだよね。

 

「ばんっ」

 

 スコーピオンを三角コーンのようにしてスパイダーのツノに被せて射出。木虎の供給器官(むね)を撃ち抜いた。

 

 戦闘終了。

 

 

 

 

「もう1回……もう1回お願いします!」

 

「だーめ。また次の機会にな」

 

 木虎は心底悔しそうな顔で渋々帰った。本当に負けず嫌いだよね。

 

 

*1
希望や期待で胸が満ち満ちている、という意味

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