たぬきの子 作:ーー
お気に入り1000件突破ありがとうございます。
これからも頑張って書くのでよろしくお願いします。
「はいはい、僕も愛してるよーみなっちゃん。分かってるって、また電話するってば。そっちこそ親父とも話してあげなよ。じゃあな」
ぽちっと、画面のボタンを押して妹の深夏との通話を切る。すると背後から、どこか狼狽したような声色で呼びかけられた。
「み、深緑くん……?」
「あ。おつかれー玲さん」
「お疲れ様……」
うん? なんだか元気がないな。
「あの、深緑くん……さっきの電話って、彼女さん?」
「ん?! いやいや、全然違う。妹だよ、妹。てか僕彼女いないし」
『別にお兄ちゃんいなくても平気』とか言ってたくせに、最近は通話を長引かせようとしたり、やたらと予定を聞いてきたり、冗談めかして『愛してるー』なんて言ってきたりする、ちょっと変わった妹だ。
「────そうだったのね! びっくりしちゃった。妹さんかぁ……みな、って名前なんだ」
打って変わって、パッと明るい表情になる玲さん。
「あーいや、
「なるほどね。可愛い名前だわ」
僕はうん、と
「所でさっきまで元気なさげだったけど、どうかした?」
玲さんはううん、と首を横に振り、
「何でもないの。気にしないで」
ニコリとした。とてもかわいい。
「そう?」
根掘り葉掘り聞きたいところだけど……自意識過剰みたいな質問しちゃいそうだからやめとくか。
「ねえ、深緑くん」
「んー?」
「私、またあなたと遊びたいわ」
「──うん。僕も」
またそうやって息が止まるほどの可愛さを繰り出してくる。僕の内なる、
いくらでも予定空けたくなるね。これもあれも
▽
4月2日。
見つけた。
「望さん、おつかれさま」
「あら、おつかれさま深緑くん…………どうしたの? そんなに怖い顔して」
「昨日の夜、親父に理不尽に怒られちゃったんだよ」
「まあ、災難だったわね」
「誰かさんが、意味深な動作で『お
「いみしん……?」
すっとぼけた表情で首を傾げる望さん。可愛い仕草ではあるけども……
「いくらエイプリルフールでも、そういう嘘はよくないんじゃないかなーって」
「どういう嘘なのかしら」
「
ふい、と目が泳ぐ。まだしらを切る気かな。
「なんか言うべき事ない?」
「……本当にしちゃう?」
──カチン、ときた*1
「……わかった。加古隊に入る話は無しってことで──」
「ごめんなさい!」
望さんの6歳から続けている趣味である炒飯作りは、2割の確率で人を殺すレベルのゲテモノが出来上がるために大量殺戮兵器のような扱いをする者は多い。しかし8割は極うま炒飯が出てくるということは忘れてはいけない。
「美味し〜」
つまらない嘘の罰として望さんには、僕が覚えてるなかで1番美味しかった絶品炒飯を作って貰った。
外れの時とは天と地ほどの差があるんだろうな。ま、僕は未来視を使って死亡を回避するのでそのまま食べたことは無いけど。
ドリアに作り直しても微妙な味だったんだよな。
「……これじゃ罰にならないわ」
そう? 自由人な望さんからしたら、作れって指図を受けるのは面白くないと思うな。1度作ったものだから、さらに面白みに欠けるだろうし、
「片付けもやってもらうけど」
「それを含めてもね」
食べ終わった皿を持っていく望さん。エプロンをつけたままで、髪は後ろにまとめている。
「……グッとくるな」
ピクリと、望さんの耳が動いたように見えた。
聞こえちゃったかな?
▽
4月5日
「桜子、15歳の誕生日おめでとう。はいこれプレゼント」
「わぁ! ありがとうございますみのり先輩! 今開けていいですか?」
「いいよ」
「やったー! ……こ、これって、S〇NYのヘッドホン……しかも限定カラー、ブロッサムピンクの……!? 確か4万円を超えてたはず! これが、学生が後輩の学生に送るプレゼントなのかぁーっ!?」
「値段を叫ぶなよ、はしたないぞ」
「はわっ、すみません」
実況みたいに声張るじゃん。もはや職業病だな。てか、「はわっ」って何? かわいいんだけど。
「いいんですか? こんなに、いい物……再来月の先輩の誕生日に同じくらいの物贈るなんて、難しいですよ」
「そんなことしたら先輩の面目潰されちゃうっての。桜子にはランク戦で楽しませてもらってるし、他にもいろいろと世話になってる。日頃のお礼も兼ねて、ということで受け取って欲しい」
お給料もらってもあんまり使わないから、同じの10個は買えちゃうくらい残ってるんだけど……これは言わなくていいな。
「先輩……」
尊敬の視線が気持ちいい。心なしか、蒸し暑くなってきた。
「本当にありがとうございます! 一生大事にしますね!」
大げさだなぁ。ヘッドンホホなんて10年も持たないだろ。でも、そんな風に言われるとこっちまで嬉しくなる。右目で喜ぶ顔を予め視てはいたけど、声は分からないからな。
「やっぱ好きだわ」
桜子の声。
「じゃあ、僕は仕事に戻るから、またな桜子」
「──へっ? 先輩、今なんて……ちょっと待ってください! みのり先輩〜!?」
▽
5月。
「鳩原さん、行っちゃったな……」
これはどうしようもない。僕は
切り替えよう。次の入隊式はもうすぐそこ。やるべき事、やりたい事が目白押しだ。
「茶野真ちゃんだったか……」
根付さんから貰った入隊者のプロフィールや初期トリガーが記載された紙面を見てしみじみ思う。
感慨深い……長年の疑問をまた1つ解消することができた。
「しかし……」
ちょうど良かった。根付さんは第2の嵐山隊を作りたい。そのために茶野真と藤沢樹の2人を早めにB級に上げたい。僕はそれに協力する……裏で、黒江双葉と、来期に入るペンチメガネもとい三雲修と接触する切っ掛けを作りたい。
利害の一致と言っていいのかな。
とにかく、根付さんの根回しで僕は3人分のC級隊員としての籍を用意して貰った、訳だが……
拳銃使い
弧月使い
レイガスター
「……全部女じゃん」
おーい? 根付さん?? どういう事???
C級潜入用トリガーに声を高く変える手間が増えちゃった、ってそういう問題じゃないわ。戦闘体を成長前の姿にしてるからってさ。そりゃないぜ。あと何だこの年齢設定。特にレイガスター布滝りみ。「三雲先輩」と呼べってか。
──迅さんがなんかやったな? 未来視隠してたことに対する意趣返しってワケ??? くっそ〜
「……髪型と色も分けとくか」
女装趣味は、断じてない。
「できた。C級潜入用トリガー」
メインに
アステロイド:拳銃型 弧月 シールド レイガスト
サブに
モデルチェンジ 韋駄天(試作) シールド バッグワーム
これで急な任務とか、イレギュラーゲート発生時にもこれのままで対応出来るという寸法よ。C級が相手の時はモデルに合ったメイントリガー1種のみを使う事、スラスターがない事の2点だけ気をつければいい。
「我ながら、可愛いモデルができたな」
妹のようだ。そう、妹の容姿を讃えているだけであって、自分の可愛さに酔う、なんて事はありえないのだ。あ、そうだ。レイガスターには眼鏡をつけようかな。
「どうしたんだよ、ニヤついて」
「はぁーっ?」
……ニヤついてないが!? 冬島さんったらよ! 真木理佐にあることないこと言いふらしてやろうか?
▽
入隊式の日。C級に混じる僕に木虎がニヤニヤした視線を向けていてムカついたので、対小型バムスターの初訓練を緑川の半分のタイムである2秒で片付けてドヤ顔しておいた。分からせつつ、黒江に覚えてもらうことができた。
それから数日、接戦を演じながら樹くんと真ちゃんにポイントをあげている訳だが。
「……今日はもういいだろう」
B級下位レベルにすら届いてない状態で先に進ませるのは良くない。防衛任務やらせたらモールモッド1体発見からの茶野、藤沢、
という事で。弧月使いにモデルチェンジ。黄緑の髪と目の春日梨子(15)、現在3020ポイント。ブースに入って黒江を探す。他の弧月の昇格手前は……。
「あった……お! 3700いきそう」
早いぞ黒江、流石だな。しかし、もうちょっと早かった緑川と、最初から3600ポイントの木虎がいるということを知ってやきもきしていそうだ。
よし、対戦よろしくお願いします、と。
転送。
「! あなたは、2秒の……」
「こんにちは、黒江双葉さん。双葉ちゃんって呼んでいい?」
「……あたしに勝ってからにしてください」
「おっけー」
黒江は弧月を抜いて鞘を放り投げる。
カツンッ、と鞘が落ちた音が響くと同時に猛然と駆け出し、斬りかかってくる。
「はあ!」
「おっ、いいね。やっぱり今期では1番筋が良い」
「何言ってるんですか……あなたは私と同期のC級じゃないですか!」
あ、ちょっと口滑った……まあいいか。あとで言うつもりだったし。
「実は正隊員なんだ、僕は」
「は?」
「隙あり」
峰で弾き、袈裟斬りを浴びせた。
「なっ……!?」
「鬼怒田深緑、高校2年生だよ。よろしくね双葉ちゃん」
……自己紹介のタイミング間違えたな、と。
書いててこいつカスだなって思いましたね。
これで6月になったら桜子に「近々結成される海老名隊のオペやってね」って言うんですよ。そして自分は加古隊に入って新入りの師匠になるんですって。
春日梨子は設定だけ思いついて書く気が無くなったオリ主ネームです。
カス・ガリ子と呼ばれいじめられてた食べても痩せてしまう体質の子で、入隊後はトリオン体の吸収効率のおかげでムチムチに成長して女版レイジさんみたいになり、加古隊に入ってみんなから餌付けされたり喜多川真衣とおやつを取り合ったりしながら2人目のパーフェクトオールラウンダーとしてゴリゴリ無双する的な。話を広げられないのでやめました。