万魔殿総統、羽沼マコト   作:R1zA

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三か月ぶりに小説を書くのでリハビリ一発ネタ。
好評だったらエデン条約辺りまでは書くかも。


※注意
・マコト憑依物です。
・主人公が大分強キャラ化しています。ヒナを100としたら95位の強さです。
・某掲示板で見たイブキ元議長概念に触発されて書いたので、一部参考にしていますが、この概念自体は採用していません。 気になる方はようつべにまとめ動画があったので是非。


議長閣下はゲヘナ学園にお怒りのようです

 

 

 

 事実は小説より奇なり、とはよく言った物だ。

 

 それこそ創作だから許されるような。

 

 本来であれば、そんなものはあり得ない、見下げた妄想の産物だと一笑に付される程には現実味の帯びぬ出来事。

 

 

 ───輪廻転生、という概念を知っているだろうか。

 

 

 否、今回の場合は異世界転生と呼ぶべきだろうか。

 最早説明など不要であろうが、一応注釈するならば、命あるものが何度も転生し、様々な生類として生まれ変わること、と言うのが広義的な意味。

 

 いわば『前世』の宗教における、六道という解釈が原典ではあるが……昨今はまあ、どちらかというと異世界ものの創作小説等で聞くことが多い気がする。

 

 そして自分も、例に漏れず転生した。

 

 

 最期の瞬間さえ知らぬ間に人生を終え、状況を理解する前に第二の人生への片道切符。さらにほぼ全ての記憶が持ち越されているおまけ付き。

 

 ただ一つ何気なしに理解していたのは、とんでもない貧乏くじを引かされたらしいということだけ。

 

 

 

 

『───羽沼、マコト? なんか頭についてるし、かなり子供だけど。何故?』

 

 

 

 

 そこがなんの世界は理解していた。

 

 そして、己が誰になったのかも理解していた。

 

 

『……転生、或いは憑依? ブルアカ世界に? こちとらにわかなんだが? 超エアプ先生なんだが!?』

 

 

 ただまあ、如何せん知識が無かった。

 三周年という謳い文句に引き寄せられて、アプリを入れてから一週間にも満たない自分を転生させた挙句、推定最重要クラスのネームドに憑依させるのは、ちょっと性格が悪すぎやしないだろうか。

 

 

 

 

 ――過去の事も、今となっては懐かしい。

 

 

 この生における、『私』の原初。

 

 

 

 鏡を見て最初に映るのは、何処かで見覚えのある顔を幼くしたような姿の子供が、現状を理解しかねて頬をペタペタと触っている姿だった。

 

 

 

『確か、空崎ヒナを筆頭にした風紀委員一同に扱き下ろされてたイメージしかないんだが。多分、自分が後の方のストーリーとか見る前にこっち来たからなんだろうけど』

 

 

 初め、目を疑った。

 

 次に、これは夢に違いないと考えた。

 

 

『──あのなんかヤバイ高校で生徒会長してる人が実際に評価高くない訳ないし、ギャグ時空に擬態しただけの、()()()()()()()()()()()()()()()()だよな。学園モノの生徒会長とかいうクッソ美味しい立ち位置だし。……そういうキャラは好きだけど、なりたいとは言ってないぞ?』

 

 

 時間と共に夢ではないことをどうしても受け入れなくてはならなくなった時こそ、呆然としたが。

 

 唯一分かっていることと言えば、この肉体には自分も知り得た本来の持ち主が居ること。

 

 

『やっぱり、この世界の常識について行ける気がしない。何で銃の所持が義務化されてるんだ。そんなに安価なものだったか……?』

 

 

『前の歴史や言語なんて使わないし、知識のアドバンテージも皆無に等しい、か。数学系以外は基本一から学び直しだな。流石に知らないことが多すぎる』

 

 

『知力は足りず、力も未熟。求める先は遥か高み……本物と比べて無い無い尽くし、と』

 

 

『───まあ、それはもう仕方がない。でも諦めはしないぞ。このイカれた学園都市で生徒会長の地位にまで上り詰めた程の人物が、この程度で折れる筈は無い』

 

 

 

 羽沼マコト。

 通称∶きららGTAの名を関するゲーム、【ブルーアーカイブ】に登場していた人物の一人。

 ゲヘナ学園という、「自由と混沌」を校風とする学園の生徒会長であり、前の自分が唯一目を通すことの出来たイベントでは、黒幕に見せかけた三下悪役ムーブがやけに板についていた印象がある。

 

 

 

 ───だが、待ってほしい。

 

 

 あれほどの傑物の集う学校の長が、ただの無能で終わるだろうか。

 否、きっとその真の実力は風紀委員長に比肩するとまでは言わずとも、間違いなくこのキヴォトスにおいて最高峰のソレに違いあるまい。

 

 絆ストーリーを見た感じでも、殆どうろ覚えとはいえ所々に生徒会長の器を感じさせる描写があったことからも明らかだ。

 

 

 

 

 

 うん、きっとそうに違いない。

 そうであるはずだと、エアプなりに考える。

 

 しかし、なぜこんなことになったのだろうか。

 分からない。まったく何事も分からない。

 

 

 理由も分からずに押し付けられたものを大人しく受け取って、理由も分からずに生きていくのが、天命(さだめ)だとでも言うのなら、神という存在は随分と悪趣味だ。

 

 性別が変わったのは衝撃であったが…………まあ、失ったものを引きずっても仕方ない。

 十年近く経てば、じきに慣れた。

 

 

 

 ……だが、どうする? 自分に何が出来る?

 前の記憶という圧倒的アドバンテージを持っておきながら、この世界について、私は殆ど何も知らない。

 

 

 いつか、『先生』という人物が来ること。

 その『先生』が居なければ、解決出来ない問題がこの都市にはあり、結末次第では世界が滅ぶ。

 知っている部分を強いて言えば、精々この二点程度。

 

 

 知らぬ間に地雷を踏んで、滅亡Endなんて真っ平だ。

 

 心の何処かで知りもしない『原作』の影に怯えて、何も成せずに彼女の───羽沼マコトという人物そのものの株が落ちるなんてことがあれば、それこそ本来の身体の持ち主に顔向け出来ない。

 

 ならば、せめて役割程度は全うするまで。

 

 

『……羽沼マコトの名を、キヴォトスに刻む』

 

 

『与えられた役割(ロール)程度は、果たしてみせよう』

 

 

『一応、口調も今のうちに変えておこうか。……キキッ、こんな物で良いだろう。多分』

 

 

 彼女は、キヴォトスの支配───延いては自身の名を轟かせることを目標にしていた筈だ。

 記憶に確証は無いが、生きていくうえで、その程度の目標は叶えてやりたい。

 

 

 そんな目標を立てて、何年が経っただろう。

 数多の書物と共に知見を深め、幾度の戦闘で技術を掴み、積み重ねた経験が地位を掴んだ。

 一部の知り合いからは、何故そこまでしてその地位(万魔殿)に固執するのかと問われた。とはいえ己が『羽沼マコト』である為という以外、特に深い理由は無いので適当に濁す他ない。

 苦節十八年、長いようで短い日々であった。

 

 

 

 ……回想の割には、何か忘れているような気がする。

 

 

 

 

 

 ああ、そうだ。風紀委員会だ。

 今でも理由はよく分かっていないが、原作軸のマコトは風紀委員会に対して積極的にちょっかいを出しては何故か自爆していた記憶がある。

 とはいえ私にそんな強心臓は備わっていないので、風紀委員長直々の報復による銃殺End√なんて冗談じゃない、というのが正直な所。

 ……いや流石に死にはしないと思うが。爆発オチになるのは確実だろうけど。

 

 

 

 まあ、その辺りは自分なりのやり方で行かせて貰おう。

 私なりの価値観で、私に出来ることをするまでだ。

 

 

 

『キキキッ! 様子を見に来てみれば、随分と苦心惨憺の有り様ではないか! 風紀委員共!』

 

 

 思い立ったが吉日。

 即日決行と言わんばかりのノリで始まった、その日から今に至るまでに私が行った干渉の数々。

 うん、前言撤回。思い返せばめっちゃ好き勝手してたわ。

 びっくりするくらいゲヘナ脳してたわ。ごめんね。

 

 

『ん? 何だ、天雨行政官。……戦闘以外の業務は万魔殿(ウチ)に回してくれて構わん、と言いに来ただけだ。別に邪魔をしに来た訳ではないが……』

 

 

『……今日は既に下校時間だろうに。お前たちが体を壊すと治安維持に支障が出る。疾く帰るがいい』

 

 

 手始めに、仕事を幾らか奪ってやることにした。

 前々から思ってたんだ。何で本来治安維持が専門の風紀委員と、行政が専門の万魔殿で殆ど書類の作業量が違わないのかって。

 その辺りのガサ入れも含めて色々調べてみれば、風紀委員の捕まえた問題児の引き起こした被害総額や後始末の手続きに、各地への根回しや謝罪行脚など、まあまあな数の案件を風紀委員会が担当していた。

 

 

 やだちょっと働きすぎ……怖……

 

 

 あ、別に全然大丈夫なのね? 

 余計怖いんだわ。超人かよ。

 

 

 

 

 

 夏。

 今日もゲヘナは平和です。平和でした。

 平和だったんですよ、きっと。

 

 たとえ美食研の爆破した店複数からの苦情の電話が来て、今年から勢いの増してきた温泉開発部が夏休み記念とか言って自治区内でド派手に爆破活動してても正常なんです。

 

 万魔殿はコールセンターじゃねえんだぞ。

 

 

『【今期の夏季訓練内容提案書】か。今は長期休暇中なんだから、少しくらい休めばいいものを…………は? そんなものは無い、だと……?』

 

 

 ええぃ、冗談ではない!

 お前達が欲しかったのは、本当にそんな日常だったのか!?

 しかも何で訓練場所がヒノム火山なんだよ。夏だよ今。

 どうせやるなら徹底的にって考えがちょっとストイック過ぎて困る。

 

 せめて海とかにした方がいいって、マジで。いくらこの世界の人の身体が頑丈でも熱中症とかは洒落にならないから。

 

 当時は思わずそう言いそうになったが、ギリギリで堪えた。

 あんまり他人の考えにケチつけてたらしばき倒されそうだったから危なかった。

 

 

『今のお前達に必要なのは硝煙の匂いに塗れた職務活動などではない! 休みだッ!! 風紀委員には万魔殿より五日間の特別休暇を与えるッ!! 異論反論は認めん!!』

 

 ……思い返せばどうしたものか。

 

 つい勢いに任せて言ったは良いが、純粋に学生に休みが無いのはおかしいと思ったから言っただけなので、具体的に何かを考えていたわけでは無い。

 万魔殿の方が権限はあるからその辺りの手続きはどうにでもなるんだけど。

 

 

『……ん?「私達が居ない間の、ゲヘナの治安維持はどうするのか」、だと? ……そんなもの、私と万魔殿直轄の親衛隊の戦力があればどうとでもなる。一週間程度はな』

 

 こちとら神様仏様マコト様だぞ。

 

 中身はパチモンだがそれでもなお身体のスペックは最高クラスなのだから、舐められては困る。流石に空崎ヒナとのタイマンには勝てなかったけど。

 分かってたけどちょっと強すぎだよこあの娘。正攻法じゃダメージ殆ど通らないし。

 

 

『流石にそれ以上となると、自治区の運営との兼ね合いがつかなくてな。……お前たちは、精々一時の休息として羽を伸ばし、怠惰を貪るがいいさ』

 

 

 私が万魔殿に居て気付いたことは、ゲヘナはクソという事だ。

 ちょっと前世の価値観に寄っている類の人にとってはその名の通り地獄である。一度馴染んでさえしまえば良い場所だとは思うが。

 そういう訳だから、少しは休むことをお勧めしておく。……豆知識にもならん繰り言ではあるが、ある程度休んだ方が仕事も効率的に進むらしいぞ。

 

 

 

 ───ちゃんと休むんだな? ヨシ!

 

 

 

 とまあ、そんなことを何やかんやで続けて来ているわけなのだが、私の思い描いていた羽沼マコト像には近づけているだろうか。なにか間違ってはいないだろうか。

 ここ最近は風紀委員関連でちょっと一波乱あったけど、初等部からの飛び級でマイエンジェルことイブキ嬢も万魔殿に入ったからね。

 ゲヘナの治安もちょっとはマシになる程度には皆の癒やしになってるよ、あの子。

 

 代わりに私の万魔殿内ヒエラルキーは万年最下位になるのが確定してしまったが。

 やめてくれチアキ。マコト様はいじられキャラじゃないんだぞ。

 

 

 ……いやどうだろう。というか普段は大概こんな感じだったかもしれないし。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 今日はやけに騒がしい。

 

 にぎやかすぎて何が何だかわからないくらいだ。

 嗚呼、雲一つない晴天から差し込む日差しが心地いい。

 

 

「……天を仰いだ所で状況は変わらないと思いますが。マコト先輩」

 

 

 後輩からの言を聞き流しながら、意識を現実へと引き戻す。

 それと同時に、今の状況も何となく把握した。

 

 何気なしに今までの事を思い返していたが、随分と長い間呆けていたらしい。

 

 

 時は現在。

 

 万魔殿執務室は今も多くの役員達がせかせかと慌ただしく出入りし続けていて、てんてこ舞いという言葉がこれ以上となく当てはまる程には多忙を極めていた。

 大きく息を吐き、役員の一人に問う。

 

 

「……状況を教えてくれ」

「はい。先程、万魔殿の所有する印刷所近辺に温泉が眠っているという噂を聞きつけた温泉開発部が襲来。調査と称して暴れ回っています。現在は銀鏡イオリ率いる風紀委員が鎮圧に向かっている最中とのことです」

「そうか。ならば問題は無いだろうが、念の為第二と第四小隊を向かわせておけ」

「その、議長。大変申し上げにくいのですが……」

 

 

 震えるような声色で、言葉を濁す。

 大方予想はしていたが、口ぶりから察するに、報告はこれだけではないのだろう。

 軽く目くばせをして続けるように促すと、彼女はどもるように言葉を続けた。

 

 

「温泉開発部の活動開始とほぼ同時に、商店街の飲食店を美食研究会が爆破。現在は途中で給食部の車を強奪して逃亡を続けています。その中に連れ去られた給食部の部員が居るという事で、風紀委員長が捕縛に向かったのですが───」

「が?」

「今度は郊外で、スケバンとヘルメット団の抗争が発生しているらしく、第二~第五小隊はその対処に向かったので……不在、です」

「──そう、か」

「あ、あと先日、ゲヘナ自治区開発事業の提携をした企業の社長が夜逃げしたらしく、その影響で多方面から大量の違約金が発生しています」

「…………成る程」

 

 

 まだ大丈夫。まだ慌てる時間じゃない。

 心なしか己の発した声が震えていた気がするが、一応動かせる戦力に余力はあるし、今起きている事件は放置しておけばじきに収まる。

 所詮は希望的観測だったようだが。

 

 

「議長、報告です!」

 

 

 そんな事を考えたのが不味かったのか。

 先程の役員と入れ違いで来た彼女だが、息が微妙に整っておらず顔色も芳しくない。

 どうやら、ここまで随分と急いでやってきたらしい。

 

 

『(……絶対碌なことじゃないんだろうなぁ)』

 

 

 嫌な確信を持ちながらも、尋ねた。

 表情は未だに崩していないが、内心ちょっと冷や汗を流しているのはチアキやイロハ辺りにはバレているかもしれない。

 ほら見ろ、チアキなんてもう首に掛けてるデジカメを構えてスタンバっている。

 

 

「何があった。もうここまで来たら大抵の事では驚かない謎の自信が湧いてきてるんだが」

「そ、そうですか。報告内容ですが、便利屋が自治区内の企業とトラブルを起こしたらしく、それを耳にした天雨行政官が待機中の風紀委員の殆どを動かして、便利屋捕縛作戦を決行してしまい……まもなく戦闘に突入するとのことです。──では、後が控えていますので」

「そうか。というかまだあるのか」

 

 

「議長! 食堂の周辺にパンケーキに似た姿の未確認生物が大量発生したとの通報が相次いでいます! 至急応援を要請するとのことですが、現在風紀委員会はもぬけの殻で……」

「……」

「──議長?」

 

 

 震えた左手で、帽子を取る。

 

 武者震いとはこのことか。

 先程から、眉間を抑える左手が自制が効かないほどに震えている。

 特に理由もないのに変に平静を保とうとしているからなのか。もういっそ少しくらいはキレても許されたりしないだろうか。

 

 

「あはは! その顔、いつものマコト先輩らしくなってきましたね!」

「……それで? 実際どうするつもりなのよ、これ」

「どうって言われてもなあ……」

 

 

 だから私の写真を撮るな。パシャパシャするな。

 折角撮るならイブキの方が絵になると言っているだろうに。

 ……マコト先輩はなんか見てて飽きない? それ褒めてるのか?

 

 

 そんな事を言っていると、扉から軽いノックの音が聞こえた後に、風紀委員長こと空崎ヒナが入ってきた。

 死屍累々の様となっている自分を見たヒナは、一瞬だけ困惑して、その直後に何とも言えないような視線を向けてきたが。

 

 

「マコト。帰ってきたらアコ達が居なくなってたんだけど、何か知って───って、大丈夫なの? それ」

「あ、風紀委員長。お疲れ様です」

「……美食研はどうした?」

「全員捕まえて、さっき独房に入れてきた所。給食部の車とフウカも無事」

 

 

 ならよし。

 

 仕事が早くて何よりだが、今日は何故か半年に一度あるかないかというレベルでほぼ全ての危険分子連中が暴れているので、完全に焼け石に水。

 これでも支持率80%近くはある筈なんだけど、どうしてこう、少しは自制することが出来ないのか。

 もう嫌だ。勘弁してくれよゲヘナ。

 

 

「───イロハ、サツキ、チアキ、ヒナ。四名だけ残れ」

 

 

 皆小さく首肯して、退出していく。

 ヒナはまた何か始まったと言いたげに目を細めて、イロハは気怠げに溜め息を吐いた。

 サツキとチアキが何か話してるのを尻目に、くいくい、と袖を引っ張ってくるイブキを見る。

 

 

「マコト先輩、イブキは〜?」

「……休憩室の冷蔵庫にプリンを置いてあるから、取ってくるといい。イブキ一人でも大丈夫か?」

「うん! イブキ、一人で行けるよ! ありがと、マコト先輩!」

 

 

 扉の前でぺこりとお辞儀をして、休憩室へと歩いていくイブキ。

 つくづく育ちの良さを感じさせられるが、下手したらゲヘナ生徒の殆どが十一歳のイブキよりも素行が悪いと考えると、それはそれで複雑な気分になる。

 

 

 そこの所どうなんだろうか。

 何処まで行っても、自分がエアプだからキヴォトスがどういう場所なのかが分からない。

 なんならヘイローの存在や、大人が妙にモフってたりロボットだったりする理由も。

 

 

「……はぁ」

 

 

 一周回って、冷静になってくる。

 確か、美食がヒナに捕まって、温泉開発部がイオリ+風紀委員に追われてて、郊外では抗争が起きてるし、食堂近くでは謎の生物が闊歩してる、と。

 便利屋は……別にいいか。放置して。

 

 

「温泉の方は万魔殿からいくらか増援を送れば良いだろう。ヘルメット団の方にはイロハと戦車隊を派遣して制圧する」

「あー……はい、了解です」

 

 

 本を閉じて、いそいそと支度をするイロハ。

 ああやって面倒そうにしていても、頼んだ仕事はマジできちんとやってくれるので信頼している。

 

 

「食堂は……チアキと第七小隊に任せるか。あとチアキ、ついでにその未確認生物とやらの写真も撮ってきてくれ」

「分かりました! 『激写!〜突如食堂に現れた、未確認生物の正体とは〜』これで来週の万魔殿新聞の一面(アタマ)は決まりですね!」

 

 

 そうだな。

 その新聞を発行している印刷所、温泉開発部に襲われたから施設が生きてるかどうか不明だけどな。

 議長の椅子に座ってから始めた事の一つではあるが、割と好評だし売れてるので発行出来ないと困る。来季の予算の収入的な問題で。

 

 

「サツキは───夜逃げしたらしい社長の追跡調査、任せてもいいか?」

「ふふ、任せてちょうだい。マコトちゃん。今こそNKウルトラ計画の真価を発揮する時よ」

「……程々にな」

 

 

 あんな五歳児でも出来そうなタイプの催眠なのに、効果だけは本物だ。

 この前私に催眠誤爆した時は、記憶無いのに目が覚めたら救急医学部のベッドの上だったし、やけに身体はボロボロだしで散々な目にあったし。

 結局アレ何だったんだろうか。

 

 

「ヒナは便利屋の方に行け。座標は端末に送っておくが、深追いはしなくて構わん」

「……分かった。行って来るね、マコト」

 

 

 愛銃を構えて、駆けて行くヒナ。

 こっちの方が先輩なのに、あんまり負担をかけ過ぎるのもアレだろうという事で、出来る限りのお節介を焼いていた自覚はあるが、どうにもやり過ぎた気がする。

 だってこんな仲良いイメージ無いもん。絶対本来の世界線より懐かれてるよ。

 間違いなく良いことではあるんだけども。

 

 サツキが妙に気まずそうな顔をしていた。

 

 

「えっと……その、マコトちゃん?」

「ん?」

「今、追加の報告が来たんだけど───温泉開発部の何人かには、アジトの方へ逃げられたって」

 

 

 成る程。

 つまり───何を意味する?

 

 

「まあ……頑張って下さい、マコト先輩。私は虎丸を出しますので、これで」

「───畜生メェッ!!」

 

 

 万感の思いを込めてヤケクソ気味に、持っていた帽子を机へと叩きつけた。

 

 

 見てろよイロハァ!!

 手負いの温泉開発部如き、強キャラのマコト様一人で十分だということを見せつけてくれるわァ!

 場所にも既に目星はつけてるから、首洗って待ってろよマジで。

 

 

 もう嫌じゃ。勘弁してくれよキヴォトス。

 

 

 

 ───これは、原作の羽沼マコトが強キャラだと勘違いしたまま転生した結果、結果的に本来のソレから完全に逸脱してしまった、一人の馬鹿の物語である。

 

 

 

 

 

 





 総統閣下だったり型月の船長だったりの成分をインストールしたマコト様。 総統閣下タグが必要だったかは不明。
 本編やイベストで出るときは絆みたいな感じで活躍してほしいという願望があります。
 マコト、橘さん属性になれ。


 補足しておくと、マコトの中の人の原作知識はプロローグ&アビドス一章と三周年ゲヘナイベのみです。
 これでエデン条約では皆仲良く巡航ミサイル食らえるよ!やったね!
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