魔法少女にあこがれてたよね!?   作:スカイ・■

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マジアサルファ 1/2

柊うてなは魔法少女が大好きだ。

 

90年代に制作された女児向けの物から、セーラームーンやプリキュアなど全年齢版となって大人も子供も楽しめる作品をこよなく愛している。気に入った作品は必ず録画して三回は見直しているし、買ったグッズの手入れは欠かさない。

だが彼女は魔法少女という概念が付与された全てを愛しているわけではなく、昨今の女の子が変身すれば=魔法少女という話には一言物申したいタイプの人間であった。

 

ヒラヒラした服を着れば魔法少女?男の子が変身?……まぁそれはいい。

リョナ系も露骨に性的描写に力を入れるのも目を瞑ろう。

それでも性格がメスガキ...……昨今のインフルエンサーぶって配信活動でキャピキャピするのはなんだ?

怪獣を倒せば魔法少女なのか?周囲に被害を出して何故けろっとしてる?時代、時代で片付けていいものか?

そもそも魔法少女が見返りを求めたらそれはもう魔法少女ではないだろう?……と、語りだしたら止まらない。

 

いわゆる厄介ファンというやつなのかもしれない。

 

柊うてなが理想とする魔法少女像は巨悪を前にしても、心折れず、正義の為に立ち上がれる黄金の精神を持った存在だった。

 

 

「それでね!それでね!キュアマジアが!!!」

「う、うん……取り敢えず落ち着いて、ね?」

 

そして彼女が今日出会ったキュアマジアという存在。

 

文句無しのどちゃくそ好みの新人魔法少女。そのデビュー戦の第一目撃者となってしまったのだから感情の高まりは底が知れなかった。

 

「いやー!格好良かったなぁ!絶対これから人気出るよ!あ、サイン貰っちゃったけどもしかしてこれがキュアマジアの初めてのサイン!?」

 

昔から姉の体調を気遣って我慢してしまう優しい妹からのお願いだった。

ぎこちない文体で『うてなさんへ』と書かれた色紙を宝物のように抱き締めるうてなに、うつみはよかったねと血涙を流しながら喜んだ。

 

(う、ぅぅ……言えない。こんな状況でお姉ちゃんが魔法少女だなんて言えない!)

 

その手には修理した魔法少女のペンダントがある。本当なら帰ってきて直ぐに渡してあげようと思っていた。これからは貴女が魔法少女だと姉として最高のプレゼントをするつもりだったのだが……せめてこの熱が冷めるまではと、そっと変身アイテムを引き出しに仕舞う。

 

一週間か二週間か。ともすれば一ヶ月はこの調子かもしれないが、うつみはもう魔法少女に変身するつもりはなかった。あの時は、勢いで成ってしまったが魔法少女になる夢はとっくに諦めてしまった人間だ。今回は妹の危機を感じて飛び出してしまったが、二度もそんなことはないだろう。

 

 

 

 

 

「キュアマジアを探してきます!」

 

 

 

そんな調子で翌日の朝。日曜だと言うのに慌ただしく食パンを加えて飛び出していった妹を見送り、さて、とうつみは変身ペンダントを取り出す。

 

そして姿見に写った自分を見た。

 

「…………」

 

無論これから魔法少女に変身して、一人撮影会を楽しもうという訳ではない。

 

思い返すのは昨日の戦闘だ。性能によるごり押し戦法で何とか勝ったとはいえ、魔物の光線をまともに食らい、キュアマジアは軽い火傷を負ってしまった。

アドレナリンのお陰で戦闘中は気にならなかったが、帰る時は地味に痛くて涙が溢れたものだ。

 

医者に係っても直ぐには治らないと思っていたが、うてなが帰ってきた時には治っていた。

 

魔法少女になると自然治癒力も上がるのだろうか?

 

ふと疑問を覚えた。

漫画やアニメのように、当たり前のように現代に存在している魔法少女という存在。

 

杞憂ならいい。でも例えばまどマギのように、魔法少女になるのに何かしらの……それも致命的なデメリットがあるのだとしたら?

 

ゾクリと背筋に冷たいものが走る。

そもそもこれが魔法少女の変身アイテムであるとは限らないのだ。

壊れた状態で5個。しかも家の中にあり、それとなくうてなに聞いてみたが、こんな物を拾ってきた覚えはないという。

もしこれが魔法少女に変身するアイテムではなく別の用途に使われるものだったら?

仮に本物であったとしても素人の私が適当に改造したものが正規品と同じ安全性を保てているとは到底思えない。

 

……こんな得体の知れない物を嬉々として妹に差し出そうとしてただなんて私はバカか。

 

あまりにも趣味と現実が身近になりすぎていて、楽観視していた。

 

 

 

「……変身(トランスマジア)っ!」

 

 

目映い光が部屋を灯し、魔法少女キュアマジアの姿になる。

それと共にごとりと、酸素ボンベを運んでいたキャディーが独りでに倒れる。酸素ボンベと繋がっているチューブは何処にもなかった。

 

消えたわけではない。魔法の力で変化したのだと、キュアマジアは手首に付けられた腕時計のようなものを見る。

 

そこには98%とデジタルで表されているが、それは先ほどまで付けていた酸素ボンベの残量だった。

キュアマジアがふんっと力をこめて本棚を持ち上げると、97%と数値が変化する。

 

「やっぱり力を使うと消費が早まってる?」

 

 

そこで一旦変身を解除し、酸素ボンベからチューブを抜いて、ボンベを巻き込まないように変身すると少し息苦しさを感じた。先ほどのように本棚を持ち上げようとしても、重くて持ち上がらず、鼓動が早くなって汗が滲み出る。

 

「は、はぁぁぁぁ…………」

 

これ以上は不味いと変身を解除して酸素を補給する。

 

どういう原理なのかは分からないが、キュアマジアの力の動力源は酸素ボンベの残量に依存するらしい。

昨日変身前に気づいた時は2%となっていて何の数字だと頭をひねったが変身解除して直ぐに死にかけるとは思わなかった。

直ぐに設置型の装置にチューブを付け替えて事なきをえたが、もし酸素ボンベに付け替えていない状態で変身していた時のことを思うとゾッとする。

 

だが変身に酸素ボンベが必須だとしたら、エネルギー切れは私にとっては死活問題だが、うてなにはそれほどデメリットにはならない筈。

 

 

大技を使った時は何%減るのか?

 

走る時と歩く時ではどれぐらい差があるのか?

 

 

疑問に思ったことを片っ端からノートに書き出していく。

 

これから彼女がやろうてしていることは、この変身アイテムが安全であるかどうかの徹底した検証であった。

 

まずは家の中で出来ることから初めて行こうと思う。

そしてゆくゆくは人の迷惑のかからない場所で試さないといけないことが沢山ある。

 

ひとまず夕方までうてなも帰ってこないだろうと部屋の中で検証を続けていくこと半日。

 

 

まず、酸素ボンベの容量が最大の状態でかつ、激しい動きをしないで0になるまでの時間は三時間が限度。

それを過ぎると変身解除することはないが、パワー出力が大幅に低下。(それでも5キロぐらいのダンベルなら軽々持ち上げることは出来た)

そして魔法少女と言えばの魔法であるが、青いオーラのようなものを纏うのがキュアマジアの魔法になるらしい。

これを出すと毎秒1%の酸素を消費するので取り扱いには要注意。

 

ざっとこれぐらいのことが判明した。

 

 

設置型の酸素吸入機をつけて変身してみたが、やはりコンセントが外れた扱いになるらしく、ないのと変わらなかった。今のところ体に異常はないようだが、酸素ボンベもただではないので乱用するのは避けなければならないだろう。

 

(さてと……次で最後にしますか)

 

なので今日はこれが最後と決めて、新しい酸素ボンベに繋いで変身する。

家でやれることは粗方やり尽くしてしまったし、少しぐらいなら遠出してもいいだろうと隣街までひとっ走りする。

 

生まれてこの方、全力で走るという経験をしてこなかったので、風を切る感覚に何とも言えない清々しさを感じた。

 

 

そしてあっという間に隣街。この時点で残量は95%。走るぐらいなら消費も少ないようである。

まぁ駆けつけた時点で三割も消費していては世話もないのでこれは僥倖だ。

 

キュアマジアになった彼女は適当な高台に登って街を一望する。

 

 

先日の破壊の爪痕の残るその場所。

 

コンクリートがバターみたいに抉れとられた道路。

 

そして私が殴り飛ばした魔物にぶつかってひしゃげた電光掲示版などを見て罪悪感を覚える。

 

「本当、その……すいません」

 

「おうおう。やっと帰ってきたか、問題児。んん?」

 

 

思わず言葉が漏れる。返答を期待したわけでもない独り言だったが、後方から声が聞こえて飛び上がった。

 

「うひゃ!?っっってて!マジアサルファ!!?」

 

一体誰かと思えば、自分の住んでいる街を守っている魔法少女(トレスマジア)のマジアサルファではないか。

 

「一体どうしてここに!?それに何で私に話しかけて!?」

 

うてなほどではないしろ、現実の魔法少女も大好きな彼女とって推しが話しかけてくるというのは腰が抜けてしまいそうな衝撃だった。

 

一体どうして管轄外の街に彼女がいるのか、あと何故か少し機嫌が悪そうにしているのか、驚きつつ尋ねると、サルファは大きくため息をついた。

 

 

「ハァ…………どうもこうも、アンタが壊れた街の修復をほっぽりだして帰ってしもうたから私たちがその後始末をやらさられてるんやろうがい!!!」

 

 

その日、晴れ渡る空の下に特大の雷が落ちた。

 

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