魔法少女にあこがれてたよね!? 作:スカイ・■
「ここを、こうやって。そうやんねん」
「成る程~ゴーレム達はこうやって操作するんですね~」メモメモ
「そうそう!飲み込み早いやん!」
翌日。とは言っても学校終わりの放課後、土下座姿で出迎えた私に若干引きぎみになりながらマジアサルファさんは約束通り、マスコット達……ゴーレムさん達の動かし方について教えてくれた。
このまま魔法少女を続ける気はないが、それでも魔法少女達の知られざる一面が垣間見えるというのはファンとして堪らない。それに昨日は怒らせてしまって勝手に萎縮していたが、改めてマジアサルファという人物を見ると、姉御肌で頼りがいのある人であると好感も持てた。
「ゴーレム動かすのに下手な知識は要らんねん。ただ駅とか公園とか何処を優先的に直した方がいいとか教えてあげるだけであとは勝手にやってくれる。あとはたまーに重いものとか持ってくれってあっちからお願いしてくることがあるけど、魔法少女の力なら発泡スチロールみたいなもんやろ?」
「確かに魔法少女なら鉄骨だって簡単に運べるでしょうけど、それなら力持ちのゴーレムがいてもいい筈………力仕事を肩代わりさせてるのは魔法少女の慈善活動を民衆にアピールするため?それとも単にコストパフォーマンスを安く抑える為でしょうか?」
「知らんがな。そやけどおっきなゴーレムとか見たことないなー」
カシュッと炭酸ソーダを呷るマジアサルファ。
私は炭酸を飲むと噎せてしまうのでスポーツドリンクを飲みながらゴーレム達の動きを見守っていた。
ちらりと腕時計を見ると51%の表示。変身してから1時間ほど経つがサルファの言う通り殆どお任せ状態である為、思ったよりエネルギーを節約出来ている。
このペースならもう1時間もあれば作業は終了するだろうか?
帰りのエネルギー量を考えると最低5%。安全マージンで10%は残しておきたいので実は結構ギリギリな状況だった。
「なあ、自分。何で魔法少女やってるん?ペンダントを受け取った経緯の方は面倒臭いからもういいけど、魔法少女に成って魔物を倒したのは事実やろ?」
「……あの時は大切な人が傷つけられそうになってカッとなったんです。暴力なんて生まれてこの方、ぬいぐるみにだって振るったことはないのに、絶対に許せないって感じで力一杯暴れちゃいました」
「へぇ~」
「でもこの力は本当に偶然手に入れただけで、私にはそんな資格はないんです。だからもう自分は変身せずに、資格ある人にお譲りしようと思ったんですけど……」
「あーなぁー。いきなり蹴って殴っての世界に放り込まれたら、そうなるのが普通よなぁー。分かるわ~」
ここまでしていただいて本当に申し訳ないのだが、もう魔物と戦うのはあれっきりにしたかった。
戦う恐怖もそうだが、この力は燃費が悪すぎる。戦闘で消費するだけならまだしも、街の修復に時間を掛けすぎて力尽きるとか魔法少女界のダーウィン賞ものである。
酸素ボンベがなければ変身しても大人の男ほどの力しか出ないし、こんな欠陥品、うてなに渡したくない。
マジアサルファさんに仲介を頼めばヴァーツさんとやらが正規品と交換してくれたりしないだろうか?
最悪没収されたとしても危険なものではあるし、未練はないのだが。
「あのぅ……」
駄目で元々と覚悟を決めようとしたその時である。
地面を突き破り、また魔物が現れた。
「ほうほう、魔法少女が街を修復してる最中に出てくるとはええ度胸やないの。ちょうどええ、こっからは魔法少女の戦い方について教えたるわ」
「ええ!?今からですか!?」
現在丁度50%
戦闘で消耗が増すとして、大技を使うと10%は消費するので、かなり厳しいところだ。
「あ、私、先輩のカッコいいところ見たいな~なんて」
「なに甘えたこと言うてはるん。ジブンでやらんと覚えるもんも覚えへんやろ」
「いや、その……これ以上は私の命がぁ……」
「安心せぇ。危なくなったらカバーしたる」
「もぉぉぉう……」
変身を解いて、自分が戦えない存在であるとアピールしようかと思ったが、周囲の目が気になった。その中には親子連れの小さな女の子もいる。
それを見て思い出す。自分の場合はテレビの画面だったが、あの子のように魔法少女へと憧れた瞬間を。
……逃げちゃ駄目だ。今の私は魔法少女なんだから。
これは私のオリジン。生まれ持った病に絶望していた私の心に差した希望の光だ。それを無下には出来ないと覚悟を決める。
あの子の幻想を私みたいな偽物が壊しちゃいけない。
こうなったら速攻で片をつけて、今日は一旦帰らせて貰うしかない。
サルファさんには怒られるかもしれないが、次は菓子折りを持参しよう。
「──行きます!!!!」
魔物の近くにはまだ逃げ遅れた人たちがいた。そのままの勢いで魔物に近づいた私は蹴りでビルの上へと押し上げる。飛び出してきた触手を見よう見まねの徒手空拳で打ち払い、飛び出した私は青白い光を纏う。
それを拳に集中させ、思いっきり振りかぶった。
「レインボーミラクル!インパクト!」
残量39%
ゴムのような感触だった。
何度も跳ねて、街路時に突っ込んで止まった魔物であるが、よろよろと立ち上がる。
一応手応えはあるが、致命傷には程遠い。帰る分を残したとして、あと三回同じ技が撃てるが、削りきれるかは分からなかった。
「だったら!」
大きく飛び上がった私は青白い光を足に纏う。
幸いなことに、この力は扱い易い。剣のように鋭いイメージをすれば足の先は半透明の刃を象った。
「レインボーミラクル!サンシャイン!!!」
弾性があるなら、切り裂けばいいという愚直な策だ。
切れ味は愛用のカッターをイメージした。
だがこれは正解だったようで、バターみたいに魔物を両断して見せる。
残量17%
「え?嘘なんで!?もしかして形を変えたから!?」
どうやら同じ魔法でも指向性を変えることによって消耗具合は変化するらしい。
「でも、これで間に合った」
どきりとしたが、まだ許容範囲だ。サルファさんに言い訳する時間もあると振り返ると、彼女は私に向けて巨大な両拳を「ちょっ!?えええ!!?」
何かやっちゃった!?怒らせちゃったのかとたたらを踏んだ私の頬を拳が通り抜ける。
「魔物は消えるまで油断したらあかんよ」
大きな風船の割れるような音が二つ。どうやら私が切り裂いて倒したと思っていた魔物は二つに分裂していただけのようだった。
「は、はは」
流石はベテラン。私なんかペーペーとは比べ物にはならない。
「はよ立ちや。カッコいいところ見せなきゃあかんのやろ?」
先ほどの少女をちらりと見て、手を差し出す。
「……はいっ!」
私はサルファさんの隣に立ち、少女に向かってVサインをする。
「ヒーローの勝利です!!!」
「わぁぁぁ!!!キュアマジアぁぁぁ!!!」
うんうん。魔法少女はこうでなくっちゃね!
眩しいぐらいの笑顔にこちらまで嬉しくなってしまう。
「そんじゃあ作業に戻るで。あー魔物のせいで残業確定やな。でもこれもあの子達が安心して暮らせるようになると思えば…………ちょ待てや」
ごめんなさい!!!もう時間が!ほんとうに時間がないんで!
ここで止められたら命に関わってしまう。
私は青白い光を纏い、全速力で駆け出した。
「ぶわっ、と風の魔法ぅか?……あいつ、次会ったらタコ殴りにしたるからな!」
後日死ぬほど怒られたのは言うまでもない。