ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~ 作:龍翠
「もふもふ。もふもふ」
ウルとラキもやっぱり一緒に暮らしてるみたいで、早速クロの元に集まってる。クロがちょっと落ち込んでるのが分かったのかな。励ますみたいにクロの顔をぺろぺろとなめてる。
もふもふと戯れるかわいい妹……。うん。素晴らしい。
「ふへへ……」
「小夜さん。クロちゃんがなんだか落ち込んでるけど、何かあったんですか?」
「おっと……。うん。あったよ」
ドラコちゃんのことを簡単に伝えると、ミリアちゃんがそっか、とため息をついた。
「そういう子もやっぱりいるよね。仕方ないと思います」
「だよね」
「でも……」
ミリアちゃんの視線の先には、クロがいる。ウルの肉球をぷにぷにしていて、どことなく楽しそう。そんなクロの頭の上にはラキが陣取っている。なんだか楽しそうな状態だね。
それはミリアちゃんも思ったみたいで、微笑ましそうに笑ってる。
「その子が呼ばれた意味は、何かあると思う」
「そう? クロと同じ背格好なら呼ばれるんじゃないの?」
「多分、それだけじゃないよ。リオさんがそれだけで終わらせるはずがないから。他にも何か条件付けをしてると思います。クロちゃんには内緒で」
「へえ……」
それは、あり得るのかな? リオちゃんはクロにかなり甘いから、あまり勝手なことはしないように思う。
いやでも、甘いからこそ、クロのためになることなら内緒で何かをやったりもするんだろうか。そう思うとちょっとやりそうな気がしてきた。
「そのドラコさんって人の世界、行けるんですよね?」
「うん。そう聞いてるよ」
「一緒に行こう! みんなで会いに!」
にっこり笑って言うミリアちゃん。その笑顔はなんだか悪魔のような笑顔に見え……、あ、いえ、なんでもないです天使の笑顔ですだからそんなじっとりと私を見つめないでください。
魔女って、こわい。
ウルとラキ、それにフレルも一緒にドラコちゃんの世界に向かうことになった。ちなみにフレルは、ミリアちゃんが家の外で指笛を鳴らしたらすぐに飛んできた。なんというか、すごい。
クロは指笛の方に感動してたけど。
「ゆびぶえ。すごい。もっと。もっと」
「え? えっと……。こう?」
フレルが来てからもミリアちゃんが何度も指笛を鳴らしてる。フレルはそのたびにぴくぴくと反応してるけど、大丈夫なのかな。
五回ぐらいでクロも満足したみたいだから、改めて移動だ。一応、私たちの世界に戻ってからドラコちゃんの世界に向かうことになった。リオちゃんにも伝えておきたいし。
そうして転移してリオちゃんに伝えたところ、満足げに頷いていた。多分、こうなることが分かってたんだと思う。相変わらず不思議な子だ。
そしてまた転移。次の目的地は、当然ドラコちゃんの世界。
クロはいつも通りに転移をしようとしてるけど、不安にならないのかな。ドラコちゃんは、多分だけどかなり強い魔女だと思う。そんな子が住む世界。それも他人を信用しなくなる境遇。正直、不安しかない。
いや……。違う。クロも不安みたい。私の手を握ってるけど、いつもより少し力が強いから。ミリアちゃんもさっきまでと違って、顔色に少し緊張の色が見える。
そうだよね。二人とも、まだ子供なんだから。
いざという時は私がクロとミリアちゃんを守る。盾ぐらいにはなれるはず。
そう決心してる間に光に包まれて、そして視界が晴れた。
「さっぶ!?」
なにこれめちゃくちゃ寒い!? え、いや、冬とかそんなレベルじゃないなにこれ!?
「わあ」
わあじゃないが!? クロはのんきだね!
「あわわわわさむさむさむ……! よいしょ!」
ミリアちゃんが手を広げると、私たちの体を薄い光の膜が包んだ。ああ、すごい、寒さが和らいだ。今は少し肌寒い程度。すごく助かった。
「すごい。ありがとう、ミリア」
「ありがとう、ミリアちゃん。助かったよ」
「いえいえ。ただ私は火関係の魔法はあまり得意なわけじゃないから、これが精一杯だけど」
「十分だよ。十分すぎる」
ミリアちゃんは水や氷の魔法が得意と聞いたことがある。それでもこの寒さを防げるんだから十分だよ。いや本当に。あのままだと凍死したかもしれない。冗談抜きで。
改めて、周囲を確認してみる。ここは、山の上、かな? 今いる場所は平べったい場所だけど、すぐそこは切り立った崖みたいになっていて、地面がなくなってる。ちょっと怖くてのぞけない。
そんな場所に、家があった。石造りの家で、大きさはミリアちゃんの家と同じぐらいかな。頑丈そうだ。
「あれがドラコちゃんの家だろうね」
「すごい場所に住んでる……」
「びっくりだね……」
ミリアちゃんも森のど真ん中っていう一人暮らしには向かない場所だけど、ミリアちゃんにはウルたちがいる。それに一時間ほど歩けば村があるらしいから、そんなに困らないらしい。
でもここは違う。視界の先には雲が下にある。それだけでここがどれだけ高い場所にあるのか、容易に想像ができる。買い物とかも簡単じゃないはず。
どうしてこんなところに住んでるのかな。それとも、住まわされているのか。
考えても分からないか。ドラコちゃんに会わないと。
「クロ。どうする?」
周囲を興味深そうに見回してるクロに聞いてみると、クロはすぐに動き出した。まっすぐ石造りの家に向かって、そしてドアを叩き始めた。平手でべしべしと。
そしてすぐに、家主が出てきた。
「やかましい! 今日は良い気分なのに邪魔しおって……」
ドラコちゃんだ。その言葉はだんだんと尻すぼみになって、そして大きく目を見開いた。
「…………」
無言でクロを見つめるドラコちゃん。その視線は少し動いて、私と、そしてミリアちゃんを見る。そしてまたクロに視線を戻して、ええ、とちょっと引いた声を漏らした。
「さっきかっこよく別れたばかりじゃろ……。その日のうちに来るやつがおるか……?」
いや、うん。それはそうだね! せめて一日置いた方がよかったような気がしてきた!
「それで? 貴様は?」
「あの……。ミリア、です。よろしくお願いします」
少しだけ緊張した様子で頭を下げるミリアちゃん。リオちゃんの時ほど怯えてはないみたいだけど、それでも十分警戒してる。やっぱりドラコちゃんはただ者じゃないんだと思う。
「ミリアか。クロとは友達か?」
「友達です」
「うむ……。そうか。良い友達がいるではないか」
ドラコちゃんはなんだかほっと安堵したような顔をしてる。もしかして、友達になるのを断ったことを気にしてたのかも。
それなら、可能性はまだ十分にあるかな?
ドラコちゃんは改めて私たちを順番に見て、わずかに苦笑を浮かべた。
「来てしまったものは仕方あるまい。入るのじゃ」
そう言って、ドラコちゃんは私たちを招き入れてくれた。
壁|w・)ミリアちゃんは実は優秀な魔女。