ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~   作:龍翠

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ドラコちゃんの事情

 とりあえず……。せっかくだし、ドラコちゃんの話を聞いておこうかな。今後のためにも。

 

「ドラコちゃん。もうちょっと詳しく、あの人たちのこととか、聞いてもいい?」

 

 そう聞いてみると、ドラコちゃんはすごく嫌そうな顔をしながらも頷いてくれた。どうせ両親を見られたから、だって。

 

「面白い話ではないのじゃがな……。わしらの種族、竜人族は最強であることを誇りとするクソみたいにうざい種族じゃ」

「いきなりめちゃくちゃ言ってる……」

「言いたくもなるのじゃ」

 

 ミリアちゃんのつぶやきにドラコちゃんは吐き捨てるようにそう言った。

 

「だがの。どうにも最近の竜人族は弱体化しておるようでな。他の種族の上澄みには及ばなかったのじゃよ。それでも諦められず、強い者で結婚し、子供を生み……。そうして、わしが生まれた」

 

 ドラコちゃんが言うには、ドラコちゃんの才能は竜人族どころかこの世界の誰よりもずば抜けたものだったらしい。そしてそれは事実で、五十年ほど修行すればドラコちゃんはこの世界で最強の生命体になっていたのだとか。

 両親も、竜人族の仲間も喜んで、めでたしめでたし、なら良かったんだろうけど……。

 

「あろうことか、わしの両親も含む竜人族は、他の土地への侵略を始めたんじゃよ。わしは、侵略されているから追い返して欲しい、という言葉を信じて戦って……。気付けばわしは、終極の魔女と呼ばれるようになっておった」

 

 利用されていると知ったドラコちゃんは、この山に引き籠もって一人で生活するようになった、とのことだった。

 ちなみに今のこの世界の情勢は、膠着状態。ドラコちゃんがいなくなったから侵略を続けられなくなった竜人族と、ドラコちゃんの逆鱗を恐れて守りに徹する周辺国、みたいな感じらしい。

 今はドラコちゃんを味方に引き入れた国が覇権を握る、ということで、時折勧誘があるのだとか。さっきのドラコちゃんのお母さんのやつは勧誘とは思えなかったけど。

 

「人間はみな、わしの力にしか興味がない。誰も、わし個人を見ない。そんな者、見限って当たり前じゃろ?」

「それはまあ、確かに……」

「ところで、その……。クロは、なにをしておるのじゃ?」

「さあ? 思うところでもあったんじゃない?」

 

 クロはドラコちゃんをせっせと撫でてる。ドラコちゃんの背中にひっついて、いいこいいこしてる。たまに頬ずりしていて、なんだろうこの状況。

 

「いいこ、いいこ」

「う、ぬ……。恥ずかしいんじゃが……」

「だめ?」

「うぐぅ……!」

 

 クロの純粋無垢な瞳が! ドラコちゃんを襲う!

 なんてね。クロも両親といろいろあったから、一部重ねてる部分もあったんじゃないかな。

 そう言うと、ドラコちゃんは興味を示していた。

 

「何があったのじゃ?」

「んー……。クロ、話してもいい?」

 

 私の両親ではあるけど、どちらかと言えば被害の中心はクロだった。だからやっぱり、クロの許可が必要かなと思う。クロは隠してるわけじゃないからすぐに頷いてくれるけど。

 クロが頷いたことを確認してから、私は話し始めた。

 

「私の世界は魔法が一般的じゃないんだよ。そもそも魔力を持ってる人すらいないぐらいで、いたとしても魔法を使えるほどじゃない人ばかり。まともに魔法が使えるのはクロぐらい」

「つまり……。あの世界ではクロが唯一の魔法使いじゃと?」

「そういうことだね」

 

 クロが自分から魔法を使うことなんてなかったんだけど、それでも魔力というのは使わないと暴発するものらしい。クロの周りではあり得ないことが唐突に起こるようになって、私たちの両親はそんなクロを疎ましく思うようになってしまった。

 その結果、両親はクロに対して冷たく接するようになってしまった。ご飯がないのは当たり前、家から閉め出したり、体罰もしたり……。

 

 私もできるだけ助けようとはしたんだけど、私も結局はただの子供だから、できることには限りがあった。閉め出されたのをこっそり中に入れてあげたり、できるだけ一緒にいて体罰をさせないようにしたり。でも、私が見てないところではどうしようもなくて……。

 もう無理だ、と思ったから、私はクロを連れてあの家を出た。問題になるだろうけど、今のところはクロの魔法で誤魔化しができてるみたい。何をどうやったのかは分からないけど。

 

「なんというか……。お主の両親はクソじゃな。殺すか?」

「それはちょっと……」

 

 実力行使をしてもいいなら、クロにだってできたはずだ。でもクロは今も何もしてない。あんな両親でも、実の両親だ。さすがに手を出すことはしたくなかったんだと思う。

 

「まあ、気持ちは分かるがのう」

 

 そう言って、ドラコちゃんは苦笑した。多分ドラコちゃんも似たような感じなんだろうね。

 

「まあ、ドラコちゃんの境遇と比べると、私たちなんてましなんだろうけどね」

「阿呆。そういうものは比べるようなことではない。その辛さは本人にしか分からないのじゃ」

「ごもっとも」

 

 まさか年下に諭されるとは思わなかったよ……!

 あ、いや、待って。

 

「そういえば、ドラコちゃん、おいくつで……? 五十年修行したって聞いたけど」

「百と少しじゃな。竜人族ではまだ若い方じゃよ」

「おおう……。私たちの中ではぶっちぎりで年上だよ……」

 

 私とクロは当然として、ミリアちゃんも見た目通りの年齢だって聞いてる。だからドラコちゃんが最年長……かな? 年齢不詳がもう一人いるけど。リオちゃんが本当に分からない。

 

「少し脱線しちゃったけど! 傷の舐め合いをしたいってわけじゃないけど、できればクロと仲良くしてあげてほしいなって」

 

 む、とドラコちゃんが唸って、未だに自分を撫でるクロへと振り返る。クロは動きを止めて首を傾げて、不思議そうにしていた。

 

「まあ……そうじゃな……。この子は信用してもいいじゃろう。うむ。友達ぐらいなら……かまわんよ……?」

 

 え、なにこの子。めちゃくちゃしおらしくなってる。こう、今更嫌われたくない、みたいな感情が透けて見える。なにこれすごくかわいい興奮しそうぬへへ……。

 

「小夜さん気持ち悪いです」

「はっ!」

 

 ミリアちゃんに肘で小突かれて我に返った。本当に気をつけないと。

 そうしている間に、ドラコちゃんが言った。

 

「だが一つ言っておくが、わしの力をあてにはするなよ? さすがにそれは認めぬからな」

「うーん……。そもそも必要ないよね? ドラコちゃんよりもずっと強い魔女があそこにいるのに」

「は?」

 

 ドラコちゃんが固まってしまった。そういえば言ってなかったね。リオちゃんも魔力を隠蔽したままだったし。

 

「待て。待て待て待て。なんじゃそれは。誰のことじゃ」

「リオちゃんのことだね。クロの師匠」

「そんな強い魔女には見えなかったぞ!?」

「師匠。たぶん、かくしてる。師匠、とってもすごい」

 

 クロのその言葉にドラコちゃんは今度こそ絶句してしまった。

 信じられないのも無理はない。ドラコちゃんは長いこと、この世界で最強として君臨していたんだから。

 でも残念なことに、上には上がいるってやつだね。

 

「し……」

「し?」

「信じられるか! クロ! 今すぐお主の世界に行くぞ! リオとやらの力を見極めてやる!」

 

 最強はわしじゃ、なんて叫びながら飛び出していくドラコちゃん。ドラコちゃん自身もわりとプライド高いよね?

 

「あの、小夜さん。置いて行かれた場合、ミリアたちは帰れるの?」

「あ」

 

 それは分からない。マジで分からない。帰れなかったらとても困る。

 私たちは慌ててドラコちゃんの後を追った。マジで置いていかないでお願いだから!

 幸いと言うべきか、クロはしっかり待ってくれていた。さすがクロ、私の天使!

 




壁|w・)傷のなめ合い、ではないけれど、仲間意識は芽生えました。
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