ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~   作:龍翠

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閑話 終極の世界

 

 新しい友達、ドラコの世界はなんだか寂しい世界です。大きな山に小さな小屋でドラコは暮らしているからです。

 クロはそんなドラコの世界に遊びに来ていました。ドラコのお家で水をもらっています。この山名産の天然水だそうです。なんだかとても美味しい気がします。気がするだけです。

 

「クロ。せっかく来てもらったのに、こんなものしか出せなくてすまんなのじゃ」

「ん。おいしい」

「そう言ってもらえるとありがたい」

 

 ドラコと一緒にお水をくぴくぴ飲みます。なんだか清涼感がある気がします。ところで清涼感って何ですか?

 二人でお水を味わって、飲み終わったところでドラコが言いました。

 

「そうじゃ! せっかくじゃし、竜人族の里に行こうか!」

「ん……。めいわく。ちがう?」

「かまわん。まあやつらは何か言ってくるかもしれんが、気にする必要はないのじゃ!」

 

 ドラコはそう言いますが、むしろクロの方が気になります。

 ですが、ドラコの生まれ故郷、クロみたいな人とはそもそも違う竜人族の里。それはとても興味深いです。お姉ちゃんや師匠にもいいお土産話になるかもしれません。

 結局好奇心が勝ったクロは、ドラコのお誘いを受けることにしました。

 

 

 

 写真を撮るためのスマホを握りしめて、ドラコの飛行魔法で一緒に移動します。そうしてドラコに案内された場所は、とても高い山の頂上でした。

 ドラコが住んでいる山ほど不毛な土地ではありません。短い草で覆われた、緑豊かな山です。そんな山の頂上に、その里はありました。

 石造りの建物がたくさん並ぶ里です。道を行き交う人はみんなドラコのような竜人族……というわけでもなく、普通にクロのような人もいました。ずんぐりとした、いわゆるドワーフっぽいものもいます。

 なんだかたくさんの人種がいるみたいです。交流が盛んな里なのかなと重いながらドラコを見てみると、目をまん丸に見開いていました。

 

「なんじゃこれ」

 

 どうやらドラコもこの状況は知らないようでした。ドラコが言うには、もっと排他的な里だったみたいです。

 少しして、里の人がドラコに気が付きました。里の人はみんな敵意の籠もった目でドラコを睨み付ける……ようなこともなく、にこやかに手を振っています。とても平和です。

 

「なんじゃこれ」

 

 やっぱりドラコは知らないみたいです。クロも、ドラコを戦わせようとする人ばかりだと思っていたので、ちょっと予想外でした。

 唖然とするドラコと、興味深そうにきょろきょろと周囲を見回すクロ。そんな二人の元に、一人の竜人族の男が走ってきました。

 見覚えのある人です。ドラコの、お父さん。

 ドラコのお父さんは二人の目の前まで来ると、優しそうな笑顔で言いました。

 

「おかえり、ドラコ。そしていらっしゃい、ドラコのご友人。ゆっくりしていってほしい」

「いやまて、父よ。なんじゃこれ。なんか、なんじゃこれ」

 

 ドラコがちょっと壊れています。そんなドラコに、ドラコのお父さんが言いました。

 

「いや、なに。くだらない争いが一段落してからは、こうして交流が盛んになったんだ。今は大きな争いもなくて、平和そのもの。一族の最強を証明したいという者もまだ多いけど、それよりも多くの人がこの平和を気に入っているよ」

 

 お父さんが言うには、この平和はこの世界の最強である、終極の魔女ドラコが抑止力になっているからこその平和なんだとか。だから今ではドラコに感謝する人も多いらしいです。

 ドラコは自らの世界との関わりを断って、山に引き籠もっていました。その引き籠もっている間に、人々の価値観は変化していたみたいです。ドラコと平和を受け入れる価値観に。

 

「もっとも、ドラコがいるからこその平和には問題が多い。いずれは、抑止力がなくても平和を維持できるようにしたいと思っているよ」

 

 今はそのために、世界各地の重鎮が集まって、たくさんの話し合いをしているんだとか。

 無視できない大きな抑止力があるからこそ、世界はようやく一つになるために話し合いができる。なんとも皮肉なものです。

 でもクロはそんなことには興味がありません。ドラコの世界のことであり、ドラコがこの先の関わり方を決めることですから。

 でもドラコが忙しいのなら、竜人族の里の観光は後回しにした方がいいかもしれません。クロにだってそれぐらいの分別はあるのです。多分。

 

「ドラコ。どうしよう」

 

 言葉の足りないクロの問いでしたが、ドラコはその意図を正確に汲み取ってくれました。

 

「こやつらの事情なんかしらんのじゃ! ともかく観光じゃ! 父よ! 美味しいメシに案内せよ!」

「はは。了解だ。任せてくれ」

 

 今日はとりあえず観光優先みたいです。明日以降は分かりませんが、今日はいっぱい遊べそうです。

 お父さんの案内で、ドラコと一緒に観光をします。

 竜人族の里の名産品は、美味しいお肉と大きな温泉とのこと。温泉は本来は竜人族専用でしたが、観光客が増えてからはその人たち用の場所も作ったそうです。

 また、竜人族は長命な種族であり、最も長い歴史のある種族だと言われています。その受け継がれてきた魔法を学びに来る人も多いのだとか。

 

 なんだか、すごい里みたいです。ドラコを悲しませた里だと聞いていたので、これは本当に予想外でした。

 里の人も、みんなドラコを歓迎しています。ドラコに気が付くと、笑顔で手を振ってくる人も多いです。

 もちろんドラコを責める人もいるようでしたが、そんな人は他の人によって取り押さえられ、隔離されていました

 

「ドラコ。よかった。とてもやさしい。いいばしょ」

 

 クロの言葉に、ドラコは何とも言えない顔になっていました。

 

「わしの今までの悩みは……ばかみたいじゃ……。なんなんじゃこれ……」

 

 そうドラコは文句を言っていましたが、クロはドラコにちゃんとした居場所ができて嬉しく思います。

 でも、こうなると、ちょっと不安です。

 

「ドラコ。もうこない。おわかれ?」

 

 クロの世界には来てくれなくなるかもしれません。ちょっと不安になって聞いてみると、ドラコは鼻で笑いました。

 

「阿呆。クロの世界はわしも気に入っているのじゃ。今後も遊びに行くぞ!」

 

 それはとても嬉しいです。クロがありがとう、と本心から言うと、ドラコは照れくさそうに笑いました。

 そうして、ちっちゃい魔女とちっちゃい竜人族は、のんびりと里の観光を楽しみました。

 

 

 ところで。このドラゴンの尻尾のステーキというのは、どこで手に入れたものなのでしょう。誰かの尻尾とか……? 怖くてクロには聞けませんでした。

 




壁|w・)実はドラコが知らないだけで、竜人族の考え方は少しずつ変わっていたんだよ、というお話
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