ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~ 作:龍翠
王都の一等地にある魔法学園。私はその学園の生徒です。貴族か、貴族に認められるほどに優秀な者だけが通える学園のため、この学園に通うことそのものが一種のステータスになります。
私、エリーゼもそんな学園に通う一人です。ただ私は他の人と比べてそこまで優秀というわけではないですが……。ともかく、この学園で錬金術を学んでいます。
私は元々孤児のためか、貴族の方々からの当たりは少々きついものですが、それでもこの学園で学ぶことはとても楽しく思っています。
思って、いました。
「エリーゼ」
ある日、私は教授に呼ばれて、彼の目の前に立ちました。
ここは教授が担当する錬金術の教室です。とても広い教室で、大きなテーブルや椅子がたくさん並んでいます。錬金術の実験に必要な道具も部屋の隅の棚に多く揃えられている部屋です。
その部屋の教壇に教授が立っていて、私はその目の前にいます。私が通い始めた頃はとても優しかった教授の目は、今はとても冷たいものになっていました。見ているだけで怖いです。
「エリーゼ。これは、なんだ?」
教授が目の前に置いたもの。瓶に入ったそれは、先ほど私が作ったもの。
「ポーション、です」
「これが!? ポーション!? こんなどす黒い色をした水がか!?」
「…………」
教授が言う通り、私が作ったポーションは真っ黒な水になってしまっています。他の人が作ったものは半透明の青色になっているのに、私のものは真っ黒です。材料も作り方も間違い無いはずなのに、どうしてこうなっているのか、私にも分かりません。
「何故こんな色になる! どうやってポーションを作っているのだ!」
「…………」
私にだって分かりません。私の方が知りたいです。教授だって、じっと私のポーション作成を見守ってくれていたことがあったのに。
私も二年ほど前まではちゃんとしたポーションが作れていました。まだ幼いのにポーションが作れる、ということに才能を見いだしてもらえ、教授に学園を紹介されたんです。恩返しをしようと頑張っていたのに、気付けば私はまともにポーションを作れなくなっていました。
教授も最初は笑っていました。誰だってこういうことがある、と。むしろ材料は同じなのだから色が違うだけのポーションかもしれない、とまで言って飲んでくれたほどです。
その後、教授は原因不明の魔力暴走で倒れてしまったのですが。あれ以来、教授は冷たくなってしまったと思います。
私が悪いのですが。逆の立場なら私も見限るかもしれません。
「お前をここに入学させた私の立場というものを是非とも考えてほしいものだな」
「ごめんなさい……」
「謝罪は結構! 謝る暇があるなら急ぎ改善をしろ!」
「はい……」
くすくすと、周りの他の生徒の忍び笑いが聞こえてきます。
私が入学した当初は、皆さんとても優しい人たちばかりでした。最年少で入学したためか陰口もありましたが、いろいろと教えてくれる人が多かったものです。
それが、いつの間にか誰もいなくなって、こうして陰口しか聞こえなくなってしまいました。
私に近づいていた人も、結局は私に取り入ることだけが目的だったのでしょう。将来有望だと言われていましたから。それがとても、寂しいと思ってしまいます。
「エリーゼ。そろそろ危機感を持て。このままでは、お前を退学処分にしなければならなくなる」
「はい……」
「もういい。戻れ」
「はい……失礼しました」
教授に頭を下げて、私は自分の席に戻りました。
私は、どうすればいいんでしょうか。改善方法が分かりません。
私の自宅は王都の端っこ、門の側にあります。家の裏はちょっとした薬草畑になっていて、私が実家から持ち込んだものを植えています。
私の生まれはここから少し遠い場所なのですが、教授と出会い、こうして王都に連れてこられました。その時にわがままを言って、実家の薬草をこうして持ち込ませていただきました。
端とはいえ、王都の中です。土地代もきっと安くなかったでしょうし、教授には本当に感謝しています。
だからこそ、錬金術師として成功して恩返しをしかったのですが……。
「どうすればいいのかな……」
今日も私は自宅でポーションを作ります。鍋に水を入れ、火にかけて、薬草をすりつぶして鍋の中に投入。さらに薬草の効果を高める木の実を入れて、沸騰させながらまぜていきます。他にも少量の材料をいくつか入れて、丁寧に混ぜてできあがり。
そうすると半透明の青いポーションがお鍋の中にできるのです。
「真っ黒だけど」
やっぱり私が作るポーションは真っ黒です。本当に、意味が分かりません。
その後もポーションを作り続けます。少し量を変えてみたり、思い切って材料そのものを変えてみたり。そこまでしても、私が作るポーションは真っ黒のままでした。
どうしてこうなってしまうのでしょう。せめて理由が分かればいいのですけど。
夜遅くまで試行錯誤を繰り返していると、家のドアが勢いよく叩かれました。ポーション作成に集中していたので、思わず飛び上がるほどに驚いてしまいました。怖い。
鍋を気にしながらもドアを開けます。そこに立っていたのは、教授でした。教授の隣には学園長もいます。
「エリーゼ」
私の名前を呼んだ教授は、どこか悲しそうに眉尻を下げていました。
「学園の会議で決まったことを伝えにきた」
「あ……」
何を言われるのか、私はすぐに察してしまいました。
教授の隣に立つ初老の男性、学園長が言います。
「君の現在の成績は、我が学園にふさわしいとは言えん。よって、今月末までに何の成果も出ぬようなら、退学処分とする」
ああ。いつかこうなるとは思っていました。予想はしていましたけど、それでもやはりショックです。退学処分だけは避けたかったのに。
せいぜい励むように、と言い残して、学園長はさっさと帰ってしまいました。
残されたのは、私と教授。お昼頃のあの厳しい教授はどこへ行ったのか、今は申し訳なさそうに肩を落としています。
「すまなかった」
教授の言葉に、私は首を振りました。教授は厳しいことを言いながら、私を庇ってくれていたことは知っています。それが例え保身のためだったとしても、私にとっては嬉しいことでした。
「いえ。私のほうこそ、ごめんなさい。こんな結果になってしまって……」
「まだだ。まだ一ヶ月近くはある。だから、頼む。がんばってくれ」
「はい……。最後まで、がんばります」
もちろん私も諦めるつもりはありません。残りの時間は少なくても、最後まであがくつもりです。
何か聞きたいことがあればいつでも来なさい、と言い残して、教授も帰っていきました。
改めて、ポーション作成再開です。どうにか突破口を見つけないと……。
そうして心のどこかで焦りながらも作り続けて、けれどやっぱり手がかりすら見つからなくて。
誰か。誰でもいいから、助けて……。
そんなことを思った日の夜に、その子たちは現れました。
・・・・・
壁|w・)実は教授はわりといい先生。
というわけで、次の子です。……教授じゃないよ?