ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~ 作:龍翠
五月。ゴールデンウィークの連休が終わって、月曜日。
授業を終えて、私は帰り支度をしてる。ホームルームが終わったら買い物に行って、晩ご飯を作ってあげないと。今日は小さな魔女たちの中で一番食べるドラコちゃんが来るから、多めに作ってあげないといけない。
ミリアちゃんは、来るのかな。あの子自身は見た目通りにしか食べないけど、あの子のお友達がわりと食べるからやっぱり量がいる。
うーん……。ある程度保存できるものでごまかすか……?
「小夜ちゃん。聞いてる?」
「んあ?」
ぼんやりと晩ご飯の計画を立てていたら、隣から私を呼ぶ声が聞こえた。いつの間にかホームルームが終わってる。全然気付かなかった。
「小夜ちゃん?」
「ああ、ごめん。なに?」
振り返って聞く。そこにいたのは私の幼馴染み、田村陽奈だ。黒髪をショートポニーにした、活発そうな子。ちょっとだけ小柄で、小動物みたい。とりあえず撫でておこう。
「小夜ちゃん、急に何するの?」
「んー……。陽奈はかわいいなあって」
「はい?」
何言ってんだこいつ、みたいな目で見られてしまった。その視線はちょっとこう、心にくるからやめてほしい。
「それで? どうしたの?」
「やっぱり聞いてなかった……。小夜ちゃん、よければカラオケ行かない? この後、みんなで行くの」
「あー……」
陽奈は結構人気者だ。誰に対しても分け隔て無く、明るく接してくれる。だから陽奈を嫌ってる人はほとんどいない。もしかしたら陰口ぐらいはあるかもしれないけど、少なくとも私は聞いたことがない。
陽奈がみんなで行くって言うなら、本当に結構な人数が集まってるのかもしれない。この子はみんなを繋ぐムードメーカーだし。
でもまあ、私の答えは変わらないんだけど。
「ごめん、陽奈。今日は忙しいから」
「また? 最近付き合い悪くない?」
「あー……。いや、うん。ほんとごめん」
確かにそうだと思う。少なくとも今年度に入って、私は陽奈と遊んだことがない。
以前までは学校の帰りに遊ぶことがあったけど、今は早く帰って晩ご飯を作らないといけないから。みんなが待ってるからね。
「やっぱり、ご両親がうるさいの?」
「あー……」
このクラスで陽奈だけは、私の家庭の事情をある程度知ってる。クロの境遇も含めて。さすがに家出のことは言ってないけど、それでもこうして察してくれるから助かる。
「そんなところかな」
「そっか……。じゃあ仕方ないね! また誘うからね!」
「うん。ありがとう、陽奈」
「親友だからね!」
そんなことを笑いながら言って、陽奈は帰っていった。
いやあ……。不思議だよね。陽奈みたいないい子が、なぜか私を一番の友達だって言ってくれる。すごく嬉しいけど、ちょっと、なんというか、こそばゆい。嬉しいけど。
もちろん私にとっても陽奈が一番の友達だ。もう少し落ち着いたら一緒に買い物とか行きたいけど、せめて料理ができる魔女ちゃんが来てくれないとなあ……。
そんなことを考えながら、私は買い物に出発した。
スーパーで唐揚げの材料を大量に買って、我が家に帰宅。もちろん実家じゃなくて、クロが住む家だ。魔女の寄り合い所、なんてドラコちゃんが言っていて、まさにその通りだと私も思ってる。
大広間ではすでにドラコちゃんがいて楽しげな話し声が聞こえてきて……。いや、待って。ちょっと違う。楽しげな声は同じだけど、いつもとなんとなく違う気がする。
私がドアを開けて大広間に入ると、ちっちゃい魔女ちゃんたちが一斉に振り返ってきた。みんなかわいい。なでなでしたい。
「おねえちゃん。おかえり」
最初にクロがそう言って駆け寄ってきた。抱きついてきたのでそのままだっこしてあげる。ちょっと重たいけど、これぐらいならまだまだ大丈夫。
「ただいま。良い子にしてた?」
「ん。おなか、ぺこぺこ。ごはん、欲しい」
「はいはい。すぐ作るね」
「いや、待つのじゃ。その前に相談がある」
ドラコちゃんの声。視線を向けると、椅子に座ったドラコちゃんが難しい顔をしていた。
この場にはもう一人、リオちゃんがいるけど、こっちはいつも通り我関せず、みたいな態度だ。この子は最近あまり関与してこないようにしてるみたいだから、いつものことでもある。
「どうしたの?」
「うむ。庭に新しい穴ができていたのじゃ」
穴。当たり前だけど文字通りの穴じゃない。ドラコちゃんが穴と呼ぶものは、ドラコちゃんがこっちの世界に来た時に通った光のことだ。
それがある、ということは、新しい魔女ちゃんが来たっていうことかな。
「どんな子が来たの?」
「いや、違う。まだ来てないのじゃ。光があるだけじゃな」
「へえ……」
それはまた、珍しい、のかな? まだ三例目だからなんとも言えない。
「えっと……。リオちゃん、それはどういう状況?」
そう聞いてみると、リオちゃんが顔を上げて答えてくれた。
「異世界には繋がってる状態。ただあちら側の魔女が気付いていないか、警戒して触れていないか。そんなところ」
「なるほど。私たちが触れると?」
「あちら側に転移する」
ふむ……。なるほど。なんとなく分かった。
「つまりあれだね。こっちから行くか、向こうから来るのを待つかで相談していたと」
「そう」
クロが頷く。やっぱりこれが正解らしい。
うーん……。難しい問題だね。少なくとも私が何か言えることじゃないと思う。魔法のことなんて未だによく分かってないから。なんかすごいことができる、ぐらいの認識だよ。
でも、これだけは言える。
「お腹減ってない? とりあえずご飯を提案するよ」
「ごはん!」
「そうじゃな! その通りじゃ! さすが小夜、頼りになるのじゃ!」
私が言うのもなんだけど、この子たち単純すぎないかな?
壁|w・)とりあえずご飯!