ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~   作:龍翠

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錬金術

 エリーゼちゃんはそんな二人の様子を見て小さく笑うと、私たちを家に招き入れてくれた。

 庭に面した場所にある小さな小屋。そこがエリーゼちゃんの家らしい。この庭は裏庭ってことだね。私たちの家の庭と同じだ。

 小屋の中は、ミリアちゃんの家ともドラコちゃんの家とも違う、明確な特徴があった。

 部屋の中央に大きめの鍋が並んでる。それらは不思議なことに空中に浮いていて、その下は火をおこせるようになってる。鍋の数は合計で五個ほど。

 あとは、本棚やベッドがあるだけ、だね。まさに必要最低限だ。

 クロが興味深そうに壺をのぞき込んでる。少し考えてから、クロが言った。

 

「ポーション?」

「え……。分かるんですか!?」

「師匠。つくる。みてた」

 

 師匠、つまりリオちゃんが作るのをクロは見ていたらしい。その状態と似てるってことかな?

 ともかく。エリーゼちゃんはポーションを作ってるらしい。ということは。

 

「エリーゼちゃんは魔女じゃないの?」

 

 その問いに、エリーゼちゃんは頷いて答えてくれた。

 

「私は錬金術師です」

 

 

 

 錬金術。この世界で言うところのそれは、特定の素材を混ぜ合わせ、道具を作り出す技術のことを言うらしい。多少の魔力は使うけれど、やり方さえ覚えれば比較的誰でも使える技術なんだとか。

 多少の魔力を使っても、魔女とは明確に違うと思う。複雑な魔法陣や呪文は必要ないらしいし。

 

「その代わりに素材の組み合わせが複雑だったりしますけど……」

「ほん。びっしり」

「びっしりなんです……」

 

 たくさん並ぶ鍋の鯖で、私たちは床に直接座っている。人数分の椅子はないということで、クロの亜空間に入っていた座布団を使わせてもらった。

 そうしてからエリーゼちゃんの話を聞いていたんだけど……。錬金術、ちょっと楽しそうだ。魔力があまりなくても使えるっていうのが特に気に入った。

 だってそれは、私でも使える可能性があるから。

 

「それ、私でも使えるかな?」

「え? えっと……。少しでも魔力を扱えれば多分大丈夫ですけど……」

「絶無です」

「無理です」

「ちくしょう!」

 

 そうだろうとは思ってたけど! ちょっと悔しい!

 私だってさ。もっと幼い頃はいわゆるニチアサのヒロインアニメを見ていたんだよ。やっぱり、憧れるよね。かっこいい正義の魔法少女。

 さすがにあんなひらひらのコスチュームを着たいとまでは思わないけど、魔法かそれに近いものは使ってみたいと思うわけで。錬金術ならいけるかも、なんて思ったんだけどなあ。

 

 クロはエリーゼちゃんから借りた本をまじまじと見つめて、もじいっぱい、びっしり、なんて呟いてる。私も見せてもらうと、確かに文字でびっしりだ。小さい文字で細かく書かれてる。もちろん文字だけじゃなくて時には何かの図とかも書かれてるけど、それでもやっぱり文字が多い。

 なんだか学術書って感じだ。読めない文字だけど、読めたとしても眠たくなりそう。

 うん。これはもともと錬金術はだめだったね。

 

「ところで、クロの魔法のことは理解してもらえた?」

 

 そうエリーゼちゃんに聞いてみると、こくこくと何度も頷いていた。少し興奮しているのが見ていて分かる。

 

「はい……! お友達を見つける魔法なんて、すごいですし憧れます。私の側に来たということは、今回は私が候補ということですか?」

「ともだち。だめ?」

「だめじゃないです! お友達になりましょう!」

 

 小首を傾げて聞くクロをエリーゼちゃんがぎゅっと抱きしめた。ちっちゃい子が仲良くする光景は見ていて和む。素晴らしい。好き。ふへへ。

 

「小夜。顔が気持ち悪いぞ」

「失礼」

 

 ドラコちゃんに注意されて、ちょっと落ち着く。気をつけなければ。

 

「異世界に繋がる転移魔法……! まさに伝説級の魔法! そんな魔法を私も体験できるなんて、すごい……!」

 

 さすが錬金術師というか、すごい知識欲、なのかな? 魔法陣に興味があるみたい。

 

「私もそちらに世界に行けるんですか?」

「行けるはずじゃ。わしは何度も往復しているのじゃ」

「わあ……!」

 

 おお、すごい興奮してる。私には分からない感覚だけど、魔法を使う人にとってはすぐに分かるほどにすごいものらしい。

 でも、私はちょっと気になってる。

 エリーゼちゃんは良い子なんだと思うけど、クロとリオちゃんが作った魔法に選ばれるのはなんだか違和感があるなって。

 あの魔法で選ばれるのは、クロに近い背格好であることと、魔女であること。エリーゼちゃんは確かに魔力を少し使うらしいけど、それでも錬金術師だ。魔女じゃない。

 これは、どういうことなんだろう?

 

「のう。少し気になっていたんじゃが、この中身はなんじゃ? ポーションとは思えないのじゃが」

 

 ドラコちゃんが鍋を見ながらそう聞いた。さっきまでエリーゼちゃんはわくわくと楽しそうにしていたけど、その質問で一気に表情が陰ってしまった。

 エリーゼちゃんが鍋に長めの木の棒を入れる。そうしてから引っ張り出すと、どす黒いねっとりとした液体が付着していた。なにこれ気持ち悪い。

 

「きもい」

「うぐ」

 

 クロはちょっとストレートすぎるかなあ!? もうちょっと言葉を選んだ方がいいと思います!

 

「これは……なんじゃ? すさまじい臭いがするが……」

 

 そう。悪臭もすごい。いや、悪臭、なのかな? かなりきつめのハーブの香り、かもしれない。私たちの世界で言うなら、臭いのきつい香水、かな。

 

「これは……」

「ポーション」

 

 エリーゼちゃんが答えるよりも先に、クロが言った。

 

「え……。分かるんですか?」

「ん。しっぱいさく」

「うぐう……」

 

 ああ、失敗作なんだね。一目でポーションと分かってもらえたことにエリーゼちゃんは喜んでいたけど、失敗作と言われてやっぱり落ち込んでしまった。

 




壁|w・)魔女を召喚する魔法陣にひっかかる錬金術師。
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