ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~   作:龍翠

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失敗の理由

「鍋は五つあるが……。全部失敗作か?」

「失敗作です……」

「成功率ゼロ……。本当に錬金術師か……?」

「あうぅ……」

 

 ドラコちゃんももうちょっと言葉を選んであげようか! さすがにちょっと見ていてかわいそうだよ! 私も同じこと思ったし、ドラコちゃんが言わなかったら口が滑ってしまったかもしれないけど!

 

「実は……見習いなんです……」

 

 そうしてエリーゼちゃんから語られたのは、彼女の境遇。

 エリーゼちゃんはここから少し遠い村の出身らしくて、薬草を育てる家で生まれ育ったらしい。そこで両親と一緒に薬草を育て、薬を調合していたらしいんだけど、それを魔法学園の教授に見られて学園に迎え入れられたそうだ。

 そこで錬金術を学んで順調に成果を出していたらしいけど、ある日を境にどんな調合も失敗するようになってしまったんだとか。

 今はもう退学間近とのこと。ちょっと重い……!

 

「しっぱい。どんな?」

「え? こんな感じで、どんなポーションも真っ黒になっちゃう、原因不明の失敗ですけど……」

「ん……」

 

 クロが少し考えるように顔を伏せ、そして言った。

 

「もういちど。つくる。おねがい」

「今ここで、ですか?」

「そう」

「分かりました」

 

 クロの突然のお願いにも、エリーゼちゃんは嫌な顔一つせずに頷いてくれた。

 エリーゼちゃんが棚から薬草を取り出してきて、細かく刻んですりつぶす。お鍋に水を入れて火にかけて、水が熱くなってきたところで薬草を入れた。

 さらに何かの木の実も細かく刻んで、あとは何かの粉末を少しずつ入れていって……。

 中の固形物はやがて消えて、水が濃いめの青色になっていった。紺色が近いかも。

 

「ふむ。特に問題はないようじゃな」

「そうなの?」

「ん」

 

 ドラコちゃんとクロが頷いてる。つまり今はまだ失敗してないらしい。

 何かを入れるのはこれで終わりみたいで、エリーゼちゃんはゆっくりと鍋をかき混ぜ続けている。この後はどう変化していくのかな。

 

「色がゆっくりと薄くなって、透明度のある青色になれば完成です」

「なるほど」

 

 どうして透明度が出てくるのか分からないけど、そういうものらしい。これも魔法が関係してるのかな。

 エリーゼちゃんが鍋をかき混ぜ続ける。すると色はだんだんと薄く……なるどころか、めちゃくちゃ濃くなっていってる。

 もしかして。そう思ってエリーゼちゃんを見ると、案の定と言うべきか、苦虫を噛みつぶしたような顔色になっていた。失敗ってことかな?

 エリーゼちゃんがかき混ぜるのをやめる。そうしてできあがったのは、他の鍋と同じ、どす黒い粘性の高い液体だった。ポーションというより毒と言われた方が信じられるよ。

 

「いつもこんな感じで失敗するんです……。何か分かったりしますか?」

 

 エリーゼちゃんがクロとドラコちゃんに聞いた。その顔は、諦め半分、期待半分といったところ、なんだかすごく複雑な表情だ。

 ドラコちゃんは、難しい顔をしてる。これは、分からないというより、言っていいのか困ってる、みたいな感じかも。

 そしてクロは。

 

「わかる」

 

 とても短い返答だった。

 

「え……。ええ!? 本当に!?」

「ん。げんいん。わかる。かいけつ。しらない」

「えっと……」

「多分、原因は分かるけど解決方法は分からないってことだと思う」

「なるほど……!」

 

 解決方法は分からないって聞いたのに、それでもエリーゼちゃんは興奮を隠しきれないみたいだ。ずっと分からなかった原因だけでも分かるかもしれない、というのは大きいらしい。

 

「それで、原因は何なんですか……!?」

「まりょく」

「え?」

「まりょく」

「えっと……?」

 

 エリーゼちゃんが助けを求めるかのように私に視線を向けてきた。助けてあげたいのはやまやまだけど、さすがに私も分からない。せめて魔法や錬金術についてもう少し知識があればいいのかもしれないけど、今回はさっぱりだ。

 というわけで、助けを求める先は自然とドラコちゃんになる。

 私とエリーゼちゃんが同時にドラコちゃんを見ると、苦笑いしながらも答えてくれた。

 

「魔力のこめすぎじゃな。材料に比べて魔力が多すぎるせいで、こんな色になっておるのじゃ」

「魔力……? でもいつも通りにやってますよ……?」

「おそらくエリーゼの魔力がある日を境に爆発的に増えたのじゃ。それで、いつも通りにやると魔力があふれてしまうようになったのじゃな。魔法の才能のある者には、まれにあることじゃ」

「そんな……」

 

 エリーゼちゃんは小さくつばを飲み込んで、そしてまた調合を始めた。早速改善をして調合するみたい。どれぐらい減らせばいいのかまでは分からなかったけど、さっきみたいな色にはならないはず……。

 そう思ったけど、だめだった。エリーゼちゃんが作ったポーションは真っ黒なままだ。

 

「そんな……。限界まで抑えましたよ……!」

「おおい。もっと」

「うむ……。それで限界なら、エリーゼの魔力で調合は避けた方がいいかもしれん」

「うそ……」

 

 エリーゼちゃんが膝を突いてしまった。

 つまり、エリーゼちゃんが限界まで魔力を抑えても、必要な魔力よりもずっと膨大な魔力を込めてしまっているらしい。話を聞いてると、エリーゼちゃんはこの先錬金術師を続けるのが難しそうだ。

 どうしよう。慰めてあげないといけないのかもしれない。でも何を言っていいのか、分からない。どうすればいいんだろう。

 

「エリーゼ。まりょく。たくさん。まじょ。なる」

「うむ。クロの言う通りじゃ。それだけの魔力があれば、今から魔法を学んでも大成できる。魔女を目指すことをオススメするのじゃ」

「私は……錬金術がいいんです……」

「むう……」

 

 能力的には魔女向きだけど、エリーゼちゃんは錬金術師を続けたい、らしい。

 分からないでもない。エリーゼちゃんにとって、錬金術は譲れない部分なんだと思う。ずっと目指していたのに、どうしようもない理由で諦めるなんて納得いかないよね。

 




壁|w・)錬金で魔力を使い続けて、覚醒した。そんな子です。
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