ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~ 作:龍翠
スーパーで晩ご飯の材料を買って、キッチンで料理。小さな魔女ばかりとはいえ、人数が増えてきたから一人で準備するのも大変になってきた。いや、小さくても大人顔向けに食べる子がいるからね。リオちゃんとかドラコちゃんとか。
今日のメニューはカレーライス。これなら大量に作って残っても、明日に食べてもらえればいいからね。
あとは、デザートにケーキを買ってきた。友達の両親が経営してるケーキ屋さんだ。たまにはいいかなって。
それじゃ、カレー作りだけど……。
「じゃあ、おばけちゃんはじゃが芋を切ってもらえる? 適当でいいよ」
「ばけ!」
「こばけちゃんは人参ね」
「ぱけ!」
おばけたちがお手伝いしてくれることになった。我ながら不思議な料理になってると思う。おばけと一緒にカレー作りとか、なんだこれ。いや、楽だからいいんだけど。
そうしてカレーを作り終えて大広間に戻ると、
「ん……。悪くない。エリーゼは筋が良い。魔法の才能がある」
「ありがとうございます……」
「今からでも魔法使いになるべきだと思うよ」
「私は錬金術がいいんです……」
「残念」
リオちゃんとエリーゼちゃんが何かを話してる。魔法の授業、かな?
クロはといえば、ミリアちゃんが連れてきたラキをもふもふしてる。クロはもふもふが好きだね。気持ちはとても分かる。ラキはすごくふわふわだから。私もまた撫でたい。
「つまり、ミリアの世界にも錬金術はあるのじゃな」
「うん。ドラコさんの世界にはないの?」
「あるにはあるのじゃが……。わしは詳しくないのじゃ」
こっちは錬金術の話題だ。みんなのんびりと過ごしてくれてるみたい。
そんな中にカレーライスを持ったおばけたちがやってくる。するとすぐに魔女たちが反応した。
真っ先に反応したのは、カレーが好物のリオちゃんだ。いつものクールな様子はどこへやら、ばっと顔を上げておばけを、というよりカレーライスを凝視してる。どんなに好きなんだこの子。
次はクロで、クロは手伝うためにすぐに駆け寄ってきてくれた。やっぱりクロはかわいいなあ。なでなでしてあげたい。ぎゅっとしたい。さすがに今やると怒られそうだけど。
クロには水を運んでもらって、全員で席に着く。エリーゼちゃん以外はカレーライスを食べたことがあるためか、特に目立った反応はない。
でもエリーゼちゃんはやっぱり見るのも初めてみたいで、カレーライスを見つめて頬を引きつらせていた。
「あの……。これは、なんですか? なんというか……。変な料理ですね……」
「カレーライス。至高の料理」
「そこまでの……!?」
リオちゃんはカレーが大好きなだけだからあまり気にしないでほしい。いや、私もカレーライスは好きだけどさ。というよりここにカレーライスが嫌いな子はいないし。
辛さの好みはそれぞれだけど。クロとミリアちゃんは甘口が好きだし、リオちゃんは中辛、ドラコちゃんは辛口だ。間を取って甘口寄りの中辛みたいな味付けにしてる。
「それじゃ、いただきます」
エリーゼちゃん以外の全員が手を合わせてそう言うと、エリーゼちゃんも戸惑いながら真似をしてくれた。
エリーゼちゃんが少し警戒しながらも、一口目を食べた。ちなみに他の全員はエリーゼちゃんの反応を見守ってる。あれだけ警戒してたからね、反応が気になるよね。
「わ……。なにこれ、すごく美味しい……!」
「ん」
エリーゼちゃんの口にも合ったらしい。一安心だ。リオちゃんもどことなく嬉しそう。カレー派が増えたからかな。
実はこの子たち、一番の好物はそれぞれ違ったりする。
クロはハンバーグ。焦げ目がしっかりとついたかりかりのハンバーグだ。
リオちゃんはカレーライス。特にカツカレーが好きらしい。
ドラコちゃんはオムライス。ケチャップをたっぷりかけたもの。
ミリアちゃんはアイスクリーム。デザートにアイスクリームを出してあげるとすごく喜んでくれる。
さて、エリーゼちゃんは何かな? こればっかりは他の料理も食べてもらわないと分からないけど。
カレーライスを食べ終えて、おばけたちが食器を片付ける。満腹まで食べた子もいるかもしれないけど、甘い物は別腹だ。きっと大丈夫。
というわけで。
「今日はデザートにケーキがあるよ。食べる人はいる? というよりいらない子はいる?」
そう聞いてみたけど、やっぱりみんな食べるみたいだ。あからさまな催促はないけど、みんなの目が期待に輝いてる。エリーゼちゃんだけは少し悩んでるみたいだったけど、とりあえず食べてみればいいよ。
キッチンの冷蔵庫に入れておいたケーキを取り出して、みんなに配る。シンプルに苺のショートケーキ。飲み物はオレンジジュースだ。ちょっと奮発しすぎたかな?
「ケーキ……! おねえちゃん、たべる、いい?」
「どうぞどうぞ」
早速クロが食べ始めた。フォークでぱくりと一口。あまり表情の変わらない子だけど、ちょっとだけ笑顔になってる気がする。やっぱり甘いものは偉大だ。
みんなもそれぞれ食べる中、エリーゼちゃんだけが固まっていた。
「エリーゼちゃん、どうかした?」
「あの……。これ、高いですよね……? あまりお金がなくて……」
「お金……? いや、いらないよ? 気にせず食べてね」
「で、でも……!」
「というより、エリーゼちゃんの世界のお金はどっちみち使えないし」
「あ」
この子、気付いてなかったのか。異世界だって言ってるのに。
いや、気持ちは分からないでもない。魔法陣の効果とはいえ、言葉が通じてるように錯覚してしまうから、自然と同じ世界のように思えてしまうだろうし。
あと、さすがに小さい子からお金を巻き上げたりはしないよ。
いや……。リオちゃんからはもらっちゃってるけど。でも私よりも年上らしいから、そこは許して欲しい。リオちゃんからのお金がないと、こんな生活はできないし。
エリーゼちゃんは少し逡巡していたけど、意を決したようにケーキを一口食べた。そこまでの決意がいるものじゃないんだけど。
ケーキを食べたエリーゼちゃんは、目を大きく見開いていた。
「これ……すごく……すごく美味しい……!」
これは……カレーライスよりいい反応。エリーゼちゃんの好物はケーキでいいかも。
とりあえずそこのリオちゃんは複雑そうな顔をしないでほしい。またカレーライス作ってあげるから。
「ん……。ケーキ。はじめて?」
クロがそう聞くと、エリーゼちゃんは何度も頷いた。
「はい……! 私の世界では高級品なので、食べたことがなかったんです……!」
「そうなんだ」
砂糖が高級品だったりするのかな。そうだったら、甘いクッキーとかでも喜んでくれるかも。
でも、とりあえず今は。
「ああ……幸せ……」
幸せそうに相好を崩すエリーゼちゃんの邪魔はしないであげよう。
壁|w・)エリーゼは甘いもの、特にケーキが大好き。