ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~   作:龍翠

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勇者パーティ

 

「君の力が必要だ。だから、一緒に来てほしい」

 その勇者様の手を、わたしは掴んでいた。

 

 

 

 わたしはリコリス。エルフの魔法使いだ。二百歳だからエルフではまだまだ若い方だけど、魔法の才能に恵まれたおかげか、探求の魔女、なんて呼ばれてる。

 魔法の研究にどっぷりはまってしまったせいで、エルフの中でも変わり者扱いされていつの間にか森を出ての一人暮らしをしていたけど、魔法の研究に没頭できる今の環境を私は気に入っている。

 わたしが気ままに魔法の研究をしていたら、訪ねてきたのが勇者様一行だった。

 

「失礼! 探求の魔女殿はおられますか!」

「うひぇ!」

 

 唐突に家の扉を開け放って入ってきたのが勇者様だった。せめてノックぐらいしてほしかった。

 

「ああ、あなたが探求の魔女殿で……。ちっちゃいですね」

「うぅ……」

 

 自覚はあるけど、はっきりと言われるとちょっと傷つく……。

 エルフでいう二百歳はまだまだ子供の扱い、ではあるけれど、それでも独り立ちは許される年齢だ。私の同年代の知り合いも、人間でいうところの十代半ばぐらいの背になっている。

 でも私はなぜか身長があまり伸びなかった。人里に行けば十歳あたりと間違われてしまうほどに。その代わりに魔力が他のエルフよりも多いので、身体の成長を魔力の成長に取られたのでは、というのが大人たちの見解。

 とても理不尽だと思う。好きな魔法の研究に没頭できるのは嬉しいけど、ちょっとしたコンプレックスの一つだ。

 私にとっての小さな城に入ってきた勇者様は、にっこりと優しく微笑んでいた。

 

「初めまして。僕は今代の勇者、ディアンです」

「知ってます……」

「あれ。そう? いやあ、僕も有名になったな」

 

 そう言って照れ臭そうに笑う勇者様を、私は見かけたことがあった。

 あれはちょうど半年前。魔法の研究に必要な素材を買いに王都に向かうと、ちょうど勇者様のお披露目をやっていたのだ。

 短い茶色の髪に、真新しい白銀の鎧、それに一振りの綺麗な剣、聖剣を腰に吊っていた。遠目で見ただけだけど、とても印象に残っている。

 でも、そんな勇者様にはすでに仲間がいたはずで……。

 

「へえ。これが世界一の魔女とも言われる人の家か……。ぼろっちぃな」

「アクス! 失礼でしょ!」

 

 勇者様の後に入ってきた、二人。大きな斧を背負う赤い髪の青年と、聖職者の白い服を纏う少女。勇者様のお仲間だ。戦士さんと神官さん。

 戦士さんはすごくがっしりとした体つきで、ちょっと怖い印象があるけれど……。神官さんはとても優しい笑顔でわたしに話しかけてきた。

 

「急にごめんなさい。こんなに男ばかり入ってきて怖かったよね?」

「ミレナ。魔女殿は僕たちより年上だよ」

「うそお!?」

 

 嘘じゃないです。確かにエルフでも小柄な方だけど、あまりバカにされると怒ります。怒ったところで何かができるわけじゃないけど。

 

「ちなみに魔女様……。おいくつで?」

「二百と少し、です……」

「わあ……」

 

 神官さんが遠い目をしてしまった。その反応は少し失礼だと思う。

 気を取り直して、と勇者様が咳払い。今回ここを訪ねてきた目的を話してくれるんだと思う。

 なんだろう。わたしができるのは、魔道具の作成とかポーションの調合とか、それぐらいだけど……。材料さえあればいろいろと作れるから、そういうのかな?

 

「魔女様には是非とも僕たちのパーティに入ってほしい。魔王討伐のために、力を貸してほしいんだ」

「え……」

 

 それは。それは、すごく予想外のことだった。

 確かにわたしは、恐れ多いことだけど、世界一の魔女だなんて評されてる。わたし自身、他の魔法使いにはそうそう負けない自信がある。

 でも、それだけだ。それだけなんだ。

 実戦経験は皆無。わたしに挑戦してくる人もいるにはいるけど、結界を作ってひたすらに籠もっていた。この結界すら壊せない人と戦う気はないって言って。運が良いことに、今のところは誰も壊せた人はいない。

 

 当然だけどパーティを組んで誰かと一緒に戦う、なんて経験もあるはずがない。連携とかどうやってやればいいのかも分からない。

 はっきり言って、わたしは魔力が多くて魔法が強いだけの、役立たずだ。魔族との戦いなんてできるとは思えない。

 そのことを口下手ながらどうにか伝えたけど、勇者様は笑って言った。

 

「大丈夫。僕たちだって、最初は連携も何もなかったから」

 

 それは何一つとして安心材料にはならないんですが。

 思わず頬を引きつらせるわたしに、勇者様は手を差し出して言った。

 

「君の力が必要だ。だから、一緒に来てほしい」

 

 ああ……。とてもずるい人だ。

 わたしは、一人だった。魔法の才能に目覚めてから、誰もが腫れ物を扱うような接し方だった。こうまで真っ直ぐに必要とされたことなんて、覚えている限りでは一度もない。

 誰かと関わる時は、魔道具かポーションの作成と販売の時ぐらい。それでもいい、とわたしは思っていたけど……。

 わたしは、自分が思っているよりも、人と関わりたいと思っていたのかもしれない。

 気付けばわたしは、勇者様の手を取っていた。

 

「ありがとう! 魔女様が一緒に来てくれるなら百人力だ!」

「その……。魔女様は、やめてほしい、です……。リコリス、です」

「リコリス! いい名前だね。改めて、勇者のディアンだ。よろしく」

「俺は戦士のアクスだ!」

「神官のミレナよ。よろしくね」

 

 最初は怖いと思っていた戦士……アクスさんも、話してみれば快活で明るい人だった。やっぱり勇者のパーティメンバーに選ばれるだけあって、いい人みたい。

 ミレナさんも優しい人みたいだから、臆病なわたしでもやっていけそう……。

 

「ところで。どうしてそんなすすまみれなの?」

 

 ミレナさんが怪訝そうに首を傾げた。

 

「そういえば、ディアンが入ってすぐに爆発音がしたような……」

「えと……。それは……」

 

 これは、誤魔化せないかな。恥ずかしいからあまり言いたくないけど……。

 

「ディアンさんが急に入ってきて……。驚いて落とした素材が調合中の鍋に入っちゃって……」

 

 爆発しました。

 そう言い終わると、びしりとディアンさんが固まってしまった。まさかそんなことになっていたとは思わなかったみたい。

 

「ディアン」

「はい」

「正座」

「はい」

 

 ミレナさんに命じられて、その場で正座をするディアンさん。わたしは何も気にしてないからやめてほしい。確かそれは、軽い拷問の一つだって聞いたことがあるから。

 

「リコリス。近くに川はある? 水浴びしましょう」

「え、いや、でも……」

「ディアンは戻ってくるまで正座」

「はい」

「ほら、行くわよ!」

「あわわわわ……」

 

 ここで嫌と言うことはできず、わたしはミレナさんに引っ張られるようにして川に向かった。

 




壁|w・)今回の舞台は、よくあるRPGな世界です。
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