ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~ 作:龍翠
水浴びを終えて、自宅に戻って旅の支度。ここに戻ってくることはもう当分ないだろうから、準備はしっかりと。
「アイテム袋に片っ端から入れてるけど、そんなにいるの?」
「いえ……でも残していても……わたしがいないと分かると……盗賊とかに荒らされるので……」
「あー……」
わたしのこの家は、人里からかなり離れた場所にある。近くの村でも一日歩かないといけないし、王都だと馬車で一週間だ。
この家は山の中にあるから、住む人が誰もいなくなればきっと盗賊とかの住処に使われることになる。
だから。
「焼いて、いきます……」
「え」
「旅が終わったら……また建てればいいので……」
「ええ……」
そんな信じられないものを見るような目で見ないでほしい。お金だけはまだまだたくさんあるだけだから。
必要なものをアイテム袋に全部入れる。このアイテム袋はわたしが手作りしたもので、亜空間の魔法を応用して作ってある。見た目以上に入るアイテム袋だけど、わたしが作ったこれは他の品よりもたくさん入る自慢の品だ。
入れ終わってから、家を燃やした。山火事にならないように、炎の向きを魔法で調整。魔力で炎も強くしていたから、十分ほどでわたしの家は燃え尽きた。
「終わりました……」
「だ、大丈夫? 落ち込んでたりとか……してないわね……」
「それほど思い入れがあるわけじゃないので……」
何か特別な思い出があれば別だったかもしれないけど、良くも悪くもあそこはただ暮らしていただけの家。豪邸というわけでもないので、失うことに何か思うわけでもない。
「それにしても……。見違えたな」
アクスさんの言葉に、わたしは自分の服を見下ろした。
わたしの旅の服は、白いシャツに黒いスカート、それにお気に入りの茶色のローブというもの。このローブは地味だけど、わたしがエルフの森を出る時に族長から譲ってもらったローブだ。
魔力を高める効果がある上に、見た目以上に防御力が高い優れ物。私の未来への投資、なんだとか。
緑色の髪はポニーテールにしておいた。これが一番動きやすいだろうから。
「うん……。やっぱり、リコリスはかわいいね」
「え」
「いや、なんでもない。行こうか」
今、変な言葉が聞こえてきたような……。気のせい、だよね?
首を傾げながら、わたしは歩き始めた勇者様について行った。
そんな旅立ちから、三年。魔王の城まではあと一週間といったところ。この場所は、魔族の土地に最も近い人間の砦だ。
魔族の土地は大きい島になっていて、この砦はその島と唯一陸続きになっている場所に建てられている。いわば、戦争の最前線だ。ここの人は毎日のように魔族と戦い続けている。
わたしたちも一週間ほど前に魔族の幹部と戦ったけど……。死闘だった。本当に死ぬかと思った。勝てたのは奇跡だと言えるほどに。
だからこそ、わたしたちは選択を迫られていた。このまま進むか、修行のためにも一度戻るか。
療養を兼ねて、今はみんなで考えているところだ。三日後までは自由行動になる。
「どうしたらいいのかな……」
街を歩きながら、わたしはずっと考えていた。
砦のあるここは、ちょっとした街になっている。危険な場所だけど、それでもやはり人の営みあるということらしい。
他の街と違うのは、全員が覚悟を決めていること。いつでも武器を手に取って、戦い抜く覚悟がある。どの家にも、どの店にも、かならず武器が置いてあるほどだ。
この街の人は覚悟がある。でも、わたしにはない。
ディアンたちはどうするのかな。わたしは正直、怖い。世界最強なんてもてはやされて、わたしもそうそう負けない自信があった。
でもその自信は、先日の幹部との戦いで折れてしまった。わたしよりもずっと強い魔法を操る魔族。魔王はあれよりもずっと強いらしい。正直、勝てる気がしない。
でもここで引くということは、この街を見捨てるということだ。この街、砦も、もう限界が近いと聞いてるから。むしろ今までよくもった方だと。
それを聞いてるから、ディアンは進むことを選択すると思う。あの人は、本当に優しい人だから。
でも。でも、わたしは……。
ぼんやりと考えながら歩いて。歩き続けて。
そして、それを見つけた。
裏路地の寂れた場所。そこにある、小さい光の玉。空中にある不思議な穴だ。球体のようにも見えるそれは、真っ白で何があるのか分からない。
何よりも、それからはすさまじい魔力を感じた。
「なに、これ……」
対処、しないといけない。今まで感じたこともない、途方もない魔力を内包するそれに。
わたしは結界を最大限まで張ってから、その白い穴に手を伸ばして。
次の瞬間、私は大きな家の裏庭に立っていた。
・・・・・
壁|w・)いやあ、長い旅路でしたね。