ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~ 作:龍翠
六月。梅雨前線がどうのこうので、毎日のように雨が降る日々。
我が家の魔女ちゃんたちは今日も元気です。
「あめ。あめ。しとしと」
「わふ!」
傘を持って裏庭をてくてく歩くクロと、一緒に歩いてくれてる狼のウル。たまにぶるぶるっと体を震わせて水をまき散らして、クロをびしょ濡れにしてる。
でもクロはそれも楽しいみたいで、わあ、と小さな声を上げるだけ。次の瞬間には服が乾いてるのは、魔法を使ってるんだと思う。魔法の無駄遣いだね。
「うむ! いい雨じゃ! 小夜、雨雲をぶわっと散らしていいかの!?」
「怒るよ」
「ごめん」
ドラコちゃんは何か鬱憤でもたまってるのか、たまに大きな魔法を使いたがる。ちゃんと言葉にしてくれるし、止めると従ってくれるから今はいいけど、そのうち爆発しないか不安だね。
「異世界の雨……! 何かの素材になるかも!」
「ならないと思うなあ……」
エリーゼちゃんは何でも素材にしようとするけど、さすがにこの雨は素材にはならないと思う。あまりいい雨でもないと思うし。
「あめー!」
ミリアちゃんは何故か庭を駆け回ってる。子犬のラキも一緒だ。犬かな?
そんな感じで、我が家の魔女ちゃんズは元気です。もう少し落ち着いてくれてもいいんだよ?
「みんな元気だね。とてもいいことだと思う」
「リオちゃんも走ってきていいよ」
「遠慮しておく」
「だよね」
リオちゃんだけは木の下で本を読んで、他のみんなを見守ってる。見た目だけはリオちゃんもちっちゃいのに、保護者のポジションだなって思うよ。実際、この場にいる誰よりも年上らしいし。
私もさすがに雨でテンションが上がるほど子供じゃないから、リオちゃんの隣でクロたちを見守ってる。楽しそうにはしゃぐあの子たちを見てるだけで、私は幸せだ。
「うえへへへ……」
「小夜。もう少し笑顔を隠した方がいい」
「はい」
そんなに私の笑顔って気持ち悪いのかな……?
雨が降ると何故かテンションがあがる我が家の魔女ちゃんたち。今日もいつも通りだなと思ってたんだけど、いつも通りじゃないことが起きた。
いつも通りじゃないけど、クロがいつも楽しみにしてるあの現象だ。
「ん……」
「あ」
リオちゃんが真っ先に気付いて、続いてクロがはっとしたように庭のある地点へと視線を向ける。庭のど真ん中、みんなが意図的に避けている場所。花も何も植えてないその場所に、その子はいた。
緑色の髪をポニーテールにした、茶色のローブを身に纏う女の子。その場にぺたんと座って、唖然としてる。自分の身に起こったことを理解してないみたいで、まさしく混乱中って感じだ。
多分、いきなり知らない場所に出てきたんだと思うし、当然の反応だね。
「え……?」
その子の呆然とした声に、クロが真っ先に反応した。
「おきゃくさま!」
「え?」
「かんげい。いらっしゃい。ジュース、ようい。きて。きて」
「え、え、え?」
クロに手を引かれ、家の中へと消えていく緑髪の女の子。かわいそうに、落ち着く暇もなく拉致されてしまった。クロもせめてもう少し説明すればいいのに。
「はーい、それじゃみんな、いったん戻るよー」
私が手を叩いてそう言うと、魔女ちゃんたちが家の中に戻っていく。ぞろぞろと。みんな、それこそリオちゃんまでも、どこか期待を込めた目になってる。
私もだろうけどね。今回はどんな子が来たのか、ちょっと楽しみだ。
大広間の椅子に座らせた緑髪の女の子と、その側に座る魔女ちゃんたち。リオちゃんだけはいつも通りの場所に座って、静かに見守ってる。
みんなテンションが高いままここまで来たからか、誰も説明をしていない。そのせいか、緑髪の女の子は椅子に座って縮こまったままだ。誰か説明してあげればいいのに。
私? もちろんしないよ。だってこのままの方が面白そうだし。
そのまま少し待つと、クロがキッチンから出てきた。クロの側に浮かぶおばけとこばけがお盆を持っていて、ジュースの注がれたコップがある。オレンジジュースだ。定番だね。
「おきゃくさま。ジュース。どうぞ。おちつく」
「ありがとう、ございます……」
ジュースは受け取ってくれたけど、口はつけてない。でも他の子が飲み始めたのを見て、意を決したように一口飲んだ。
「わ……。美味しい……」
お気に召してくれたみたい。その後は一気に飲み干して、クロからお代わりをもらっていた。顔を真っ赤にしていて、この子もとてもかわいい。
「じこしょうかい。わたし、クロ。よろしく」
「あ、その……。リコリス、です。よろしくお願いします」
リコリスちゃんだね。名前もかわいいと思う。
「うむうむ。ドラコじゃ。よろしくなのじゃ」
「エリーゼといいます。よろしくお願いします」
「ミリアはミリアだよ! よろしくね!」
「リオ。よろしく」
みんなの自己紹介も簡単なもの。リコリスちゃんは律儀に頭を下げていたけど、ドラコちゃんには少し警戒しているみたいだった。やっぱり魔力が多いから、かな。
そんなドラコちゃんも警戒されていることは分かってるみたいで苦笑いだ。苦笑いしながら、リオちゃんに少し責めるような視線を向けてる。
本来なら真っ先に警戒されるのはリオちゃんだからね。しれっと魔力を隠蔽してるみたいだから、リコリスちゃんは気付いてないみたいだけど。
「あの……。わたしのことは、知っていますか……?」
リコリスちゃんが聞いて、その場にいる全員が首を振った。知らない、と。当然だけど私も知らないし、多分この子はここが異世界だと気付いてないと思う。
「それなりに有名になっていたと思っていました……」
うん。やっぱり気付いてないね。
「仕方ないです。ここ、リコリスさんから見て異世界なので」
「え?」
エリーゼちゃんが言うと、リコリスちゃんが目を丸くして固まってしまった。
「この場にいるわしらは、そこにいるクロの魔法でそれぞれ別の世界から召喚されておるのじゃ。友達になれそうな、見た目がクロと同じ背格好の魔女を召喚する魔法じゃ」
「ええ……」
うん。これはいわゆるどん引きってやつだ。クロの魔法はやっぱりいろいろおかしいらしい。
壁|w・)邂逅、なのです。