ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~ 作:龍翠
師匠はとても過保護だと、クロは思います。
「まずこれ。結界の魔道具。持って」
「ん」
「さっきのは物理の結界。これは魔法に対する結界の魔道具。持って」
「ん」
「これは反射の魔道具。持って」
「ん……」
お家での準備中、師匠から渡されたものは、クロでもまだ作れないとってもすごい魔道具の数々です。正直この三つがあれば、どんな魔境でもお散歩できてしまうでしょう。
「ドラコも。エリーゼも。ミリアも。みんな持って。拒否権はない」
「わ、わかったのじゃ……」
「こ、国宝級の魔道具がいっぱい……!」
「リオちゃんすごーい!」
ドラコもエリーゼもちょっと顔が引きつっています。明らかに師匠がやり過ぎなので気持ちはとても分かります。
「私は?」
「小夜はお留守番。心配しなくても魔道具があればみんな安全。もしもの時はどうにかする」
「あははー。リオちゃんが頼もしすぎて私の立場がないね!」
そんなことはありません。クロにとって、いえこの場にいるみんなにとって、お姉ちゃんはとても大切な人です。
クロたち魔女は、自分が人から外れた存在だと自覚しています。お姉ちゃんはそんなことないと言ってくれるでしょうが、でもそれは紛れもない事実なのです。
そんな外れた存在だけど、普通なお姉ちゃんはここを帰る場所だと、みんなを待ってくれている。それがどれだけ魔女にとってありがたくて、嬉しいことか。きっとお姉ちゃんは、何も考えていないのでしょうけど。
「おねえちゃん」
「うん。どうしたの? 怖い? 行くの、やめる?」
「ぎゅー」
「うん? 甘えんぼだね。ぎゅー」
お姉ちゃんをぎゅっとします。ここが、私の帰ってくる場所。それを確認するために。
「さて。改めて確認だけど」
師匠が言います。
「クロは、リコリスの救出。それが最優先。その後は自由に動くといい。戦闘は助けたリコリスに任せればいいから」
「たたかえる」
「クロが戦うのは禁止。厳命」
どうしてでしょう。不思議でしたが、頷きました。
「ドラコは遊撃。好きに暴れて。ドラコは今更、でしょ?」
「そうじゃな。任せるのじゃ」
ドラコは戦っていいみたいです。ちょっとだけ、いいな、なんて。
「エリーゼとミリアはウルの機動性を活かして、あちこち走り回ってポーションをお届け」
「はい!」
「がんばる!」
「以上、あとはみんな、自由で。結界がみんなを守ってくれるし、もしも結界が壊れたらこっちに自動送還されるし、結界の魔道具に念じれば私に声が届くから、もしもの時は助けに行く。あと、ここで見ておく」
過保護です。とても過保護です。お姉ちゃんも納得してくれるはずです。
ちなみに魔道具は三つとも指輪になっていて、クロの手には薄い青色の指輪が三つはまっています。とっても綺麗です。ぴかぴか。
「それじゃ、いってらっしゃい」
そうして師匠に見送られて、クロたちはリコリスの世界に向かいました。
そして今。クロの目の前にはリコリスがいます。
「あ……。クロ、ちゃん……?」
「ポーション。いっぱい。ぐびー」
「ふぐう!?」
大怪我をしているみたいでした。なのでポーションを口に突っ込みました。一気に飲み干してほしいです。ぐいっと。ぐびーっと。
なんだかどこかから、師匠がくすくす小さく笑ってる声と、お姉ちゃんがクロー!? なんてすごく慌ててる声が聞こえてきた気がしました。きっと気のせいでしょう。
「けふっ……こほっ……。あ、ありがとう……クロちゃん……」
「ん」
リコリスはすっかり元気です。これでばっちり、です。
「つれていく。ゆうしゃさま。どこ?」
「その……わからなくて……。捕まってたから……」
「んー……」
それは、ちょっと困りました。それじゃあ、まずは脱出しましょう。
ここはおっきなお城の地下牢のはずです。師匠がそう言っていました。階段を上がって、とりあえず外に行きましょう。
「いく」
「外にはまだたくさん魔族が……」
「わたし。そば。けっかい、あんぜん。リコリス、攻撃」
「なるほど」
理解してくれたみたいです。では早速出発しましょう。
まずは地下牢を脱出します。どうやらここは魔封じの結界というものがあるみたいで、ある程度の魔力の魔法は無効化されてしまうみたいです。
なので魔法がちょっと使いづらかったです。師匠直伝の魔法で、鉄格子をすぱっとします。これで通れますし、この外に出れば魔封じの結界の範囲外です。
「魔法、使えるんだ……」
「ちょっと、つかいづらい」
「あはは……」
何故か苦笑されてしまいました。よく分かりません。
地下牢を出て、階段を上ります。するとすぐに、人のようで人でないものがたくさん出てきました。これが、魔族なのでしょう。
「いき、ます……」
リコリスが指を向けると、そこから小さな火球が放たれました。魔族の側で火球が爆発、魔族を一掃しました。
「おー。すごい」
「そうかな?」
「ん」
すごく派手でかっこいい魔法です。クロもちょっとだけ使ってみたいです。
壁|w・)曇らせなんてないのです。