ちっちゃい魔女の相談所 ~地球生まれの魔女、両親に冷たくされたのでお姉ちゃんと家出します。異世界からちっちゃい魔女をたくさん呼んでのんびり遊びたい~ 作:龍翠
そんな調子で階段を上っていって、地上に出ました。お城の外は阿鼻叫喚の騒ぎです。
「うはははは! かかってくるのじゃ!」
ドラコが暴れ回ってるみたいです。そっとしておきましょう。
「やっぱりドラコちゃん……すごく強い……!」
ドラコは師匠の次ぐらいに強いので、当然です。私の友達はすごいのだ。
「んふー」
「クロちゃん、嬉しそうだね……?」
「ん」
友達が褒められると嬉しいのです。
それでは勇者を探して、と思ったところで、声が聞こえてきました。
「リコリス!」
「え……。ディアン?」
廊下の奥から走ってきたのは、鎧を着た男の人です。斧を持った人や、杖を持った女の人も走ってきます。その後ろには、ウルに乗ったミリアとエリーゼ。
「リコリス! よかった、無事で……!」
ディアンと呼ばれた人がリコリスを抱きしめました。リコリスがちょっとあわあわしてます。後ろの人たちはにやにやです。
「ディアン、どうしてここに……」
「リコリスを助けるために、魔王城に向かっていたんだ。そうしたら、この子たちが現れて……あんな感じに……」
ディアンが視線を窓の外に向けます。みんながそちらを見ました。
「弱い! 弱いのじゃ! 死力を尽くしてかかってくるのじゃー!」
ドラコちゃん、絶好調です。どっかんどっかん大爆発が起こって、雷が落ちて、暴風が戦場を荒らし回っています。多分ドラコの魔法です。さすが終極の魔女。二つ名ぴったりです。
「リコリス」
「うん」
「僕は、魔王に挑む。あの子が他の魔族を引き受けてくれている間に、この戦いを終わらせる……!」
「わかった……。付き合うね」
「いや、リコリスはまだ本調子じゃ……」
「クロちゃんのポーションで……元気、だから」
ちょっと服はぼろぼろですが、体調はばっちりのはずです。エリーゼ謹製のエリクサー、とてもすごいのです。
ディアンは少し考えて、けれど最後は頷きました。
「わかった。一緒に行こう」
これから始まるのは最終決戦です。ラスボス戦ですね。クロたちももちろん見学することにしました。
そして大ピンチでした。
「くそ……っ!」
「愚かな人間どもよ。貴様ら程度が我が輩に勝てるはずもなかろう」
これは、ちょっとまずいかもです。
「どうしよう」
「うーん……。私は攻撃用の道具は作ったことがないから……」
「ミリアもあんなのに勝てる友達はいないかなあ……」
「とりあえずエリクサーばしゃー」
ウルと一緒に走り回って勇者たちを回復させます。今のクロたちは回復要員というやつです。大ピンチにエリクサーをお届け、です。
すっごい嫌がらせだ、なんてお姉ちゃんの声が聞こえた気がします。師匠が笑いを堪えてる気配がします。きっと気のせいです。
「貴様ら……! いい加減にしろ!」
魔王が大きな黒い玉をクロたちに放ってきましたが、師匠の過保護な結界が防いでくれました。傷一つありません。よゆーです。
「なんなのだそれは! 貴様らはいったいなんなのだ……!」
ただの助っ人なので気にしないでほしいです。
復活した勇者たちが立ち上がって、立ち向かって、倒れて、復活して。それをひたすら繰り返しますが、限界が来たのは勇者でした。
「ぐっ……!」
傷は治せても体力は戻りません。ついに勇者ディアンが膝をつきました。
「ディアン……!」
「ふはは……! やはり我が輩が最強なのだ……! 今度こそ、我が輩の勝ちだ!」
「くそっ……!」
困りました。仕方ないので、結界を持ってるクロたちがみんなを連れて脱出しよう、と考えたところでした。
「我! 参上!」
天井を突き破って落ちてきたのは、ドラコです。炎を纏いながら落ちてきました。
「魔王との最終決戦の見学じゃ! ……って、負けかけてるー!?」
負けかけてます。大変です。
ドラコは、仕方ないのじゃ、とため息をついて、魔王に向き直りました。
「貴様も邪魔をするか……!」
「そうじゃな。わしらはこの世界の者でないから、あまり深入りはしない方がいいのじゃろうが……」
ちら、とドラコがクロを見ました。クロが首を傾げると、ドラコは少し楽しそうに口角を上げました。
「わしの親友が、リコリスとやらと遊びたがっているのじゃ。くだらない戦いの終わりを待っていては、いつになるかわからん。故に、貴様はここで倒すのじゃ」
「ふん……。確かに貴様は我が輩に匹敵する。だが一人で勝てるとでも?」
「そうじゃなあ……。確かに、わしと同格じゃな」
強い強いと思っていましたが、あの魔王はドラコと同じぐらい強かったようです。
「魔王と戦えば、死闘になるじゃろう。わしも無事ではすまんのじゃ」
結界があるからそうでもないのでは? 思いましたが黙っておきました。クロは空気が読めるいい子なのです。
「故に! 手早く終わらせるのじゃ!」
そう言って、ドラコが叫びました。
「おい! 隠遁の魔女! 大怪我しそうじゃぞ! どうするのじゃ!」
その直後、激しい光が部屋を満たしました。クロはこの光を、一度だけ見たことがあります。
そして。その光がおさまると、魔王の姿はどこにもありませんでした。
師匠の最強の魔法。それを遠隔でぶっ放した、ということでしょう。
そしてそれを目の前で見たドラコは。
「…………。なにこれこわい」
茫然自失としていました。
「ええ……」
そして勇者たちはどん引きして困惑していました。当然の反応、というやつでしょう。
そんな感じで、人類と魔族の戦いは、あっさりと終結したのでした。
・・・・・
壁|w・)殲滅計画。
魔王の敗因は、リコリスが異世界に行くのを止められなかったことです。
本来なら、敗走からの修行→覚醒、そして討伐、という流れ……だったのかもしれない。